神に恋した芦の花   作:レガシィ

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毎日投稿、1週間目!
やべぇなこれ、書きたいこと多いし2週間じゃ終わりません。
兎にも角にも、記念すべき7日目です。お楽しみください!



第七話 少しくらい、正直に

 翌日の夕方5時前。

 

 生放送の時間の少し前。足を組んでツクヨミにログインし、リビングの椅子に座っているナイアの向かい側に、芦花も座る。

 

 普段ならすぐに気配に気付いて声をかける彼も、本番前で忙しいのか沈黙を保ったまま。

 

 そして美容関係に詳しい彼女は、ナイアの違和感に気付く。魔術で服装等に乱れがないからこそ、髪や目の隈、肌などにそれが顕著に表れている。

 

「眠る必要がないんだっけ……呆れる。人間を知りたいからって、人間の生活から離れちゃったら意味ないじゃん」

 

 小さくぼやいたあと、数分して芦花もログインする。

 

 彩葉はバイトでいないが、ブラックオニキスも出演するとの噂を聞いた真実の分もナイアの力でチケットを取り、二人で席に着く。

 

「芦花!ほんとにありがと〜!こんないい席どうやって取れたの!?」

 

「たまたまだよ。彩葉も来れたら良かったんだけど、バイトは仕方ないよね」

 

 殆ど最前列の席を取ったことで、真実は感謝を示す涙のエモートを使う。それを抱きとめて芦花は笑うが、真実は少し前までとの本当に僅かな違いに気づく。

 

「……なんかさ、芦花ちょっと変わったね」

 

「え、そう?」

 

「うん。私からしたらさ、前の彩葉はふっと消えちゃいそうだったんだけど……芦花は潰れちゃいそうって思ってた。かぐやちゃんが月に帰っちゃって、彩葉が立ち直って……良いことなのは勿論なんだよ。でも、だけど……辛かったね、芦花」

 

「…………」

 

「二人共大好きだもん。なのに、私になんにも言ってくれないからさ、心配だったの。だから、誰でもいいから、何でもいいから、いつでも頼って」

 

「…………うん……ありがと、真実」

 

 感情がこぼす涙を頬に感じながら、芦花の手を握る真実。そんな彼女に静かに、確かな感謝を伝えた。

 

「えへへっ、ほら始まるよ!」

 

 直後、目の前の大画面に表示されていたカウントダウンが0になり、この企画を進行する司会者の2人と、管理者、ヤチヨが熱を上げて現れ、それに呼応して視聴者達のテンションも上がっていく。

 

『今日もお勤め、果たして行くぞぉ!今回の生放送は〜!司会の忠犬オタ公と!』

 

『速報お届け!乙事照琴、そしてぇ!!』

 

『神々の皆、やおよろ〜!ヤチヨがお送りするよ〜!』

 

『5月も半ば、新生活や新たな環境でテンションダウン気味の皆の熱をぶち上げる超大型コラボ配信!!』

 

『私、この日を楽しみにしておりました〜!』

 

『さてさて、今宵ツクヨミを彩るライバーの皆、出ておいで~!』

 

 今回の出演者のセレクトはオタ公と乙事照琴。

 

 現れた4人のライバーの紹介を始める。

 

『まずはこの方!ハイスペックエルフ、テレリリ・ティートテートぉ!最近またもや新たな資格を取得し、多忙な中ですがツクヨミを盛り上げたい気持ちは同じ!是非にと出演していただきました!』

 

『テテテだよ、こんテレ〜、よろしくお願いします〜!』

 

『続くこの方!最近になってKASSEN内でランク爆上げ中!ブラックオニキスに迫る勢いか!?超絶美技のギターとPSに酔いしれろ!チェインロッカーズ、地獄の悪魔王子!リーダー、あくまヨウガァ!』

 

『刮目しろ!音に聞け!届けるぜぇ!地獄のメロディー!!』

 

『そしてそしてぇ!僅か一ヶ月でファン登録者約30万人の大型新人!甘くとろけるボイスに豊富な知識と技能とトークスキル!料理配信でうっかり顔出ししたことでイケメンフェイスが確定し登録者爆増!貴方は何を持ち得ない!人外邪神系ライバー、ナイアァァ!!』

 

『いあいあ〜。皆の隣に這い寄る混沌、ナイアだよ。今日はよろしくね』

 

『そしてそしてそして!!全ライバーの頂点!現在最もツクヨミをぶち上げる至高のライバー!PSトップ!ルックストップ!!人気度トップ!!!ブラックオニキスリーダー、帝アキラァァ!!!』

 

『よう小兎共、お前らの帝様の登場だぜ!!!』

 

 4人の紹介で頂点まで熱狂した全視聴者達、真実はブラックオニキスの登場で、限界化して頭を押さえてくらくらとした様子を見せ、芦花はいつもと違う華やかな衣装のナイアに笑ってしまう。

 

「ふ……趣味じゃないくせに」

 

「え!?何!?」

 

「ごめん、何でもないよ」

 

 始まった生放送。自己紹介から始まり各々の得意分野や質問コーナーが続いて冷めない熱が会場を包んでいく。

 

 いつの間にかすっかりライバーとしても馴染んだ姿に、芦花は少しの物寂しさを覚える。

 

 帝アキラの盛り上げ上手、実力派の阿久魔、テテテとナイアの知的でテンポの良い会話。大いに盛り上がる会場。それをまとめる司会2人とヤチヨ。

 

 やがて終盤になり、視聴者を巻き込んだ簡易的なゲームが開催される。

 

『つ、強すぎるぅぅ!視聴者参加、勝ち残り式ランダム対戦型ボドゲ企画、現在19連勝!唯一勝ち続けているナイア選手が強すぎるぅ!』

 

『ハッハハ、照れるねぇ』

 

『ダーツの時から思ってたけど、お前ゲーム強すぎだろ』

 

『凄いですね〜。さっきの将棋、飛車角落ちで勝つとは思いませんでした』

 

『打ち合わせの時から思ってたけど、ナイアさんめっちゃ頭いいんすよね。6桁くらい秒で暗算するんですよこの人』

 

『さて、次の探索者君は誰かな。この這い寄る混沌が遊んであげよう』

 

 アナログゲームに関して無類の強さを誇るナイア。

 

 手加減なしの台本を渡されている為、手を抜かずに瞬殺しながらも弄ぶ、ナイアの冒涜的で妖艶な微笑みに歓声が上がる。

 

『ですが残念、時間的に最後!20連勝なるか!?ラストゲームは〜……じゃん!花札です!!そしてそして〜!』

 

 ステージが和室に切り替わり、用意された大画面の花札。スポットライトが照らされ、無作為に選ばれた相手は……。

 

「『……え?』」

 

 まさか過ぎる相手に目を見開いて面を喰らうナイア。それ以上に驚きを隠せない芦花。2人の関係性は秘匿で、ここに魔術的事象は一切関与していない。

 

『相手はROKAだ〜!!ファン登録者約24万人の人気ライバー!美容系の動画を中心に活動している美人ライバーです!ご登壇ください!』

 

「凄いじゃん芦花!ほらほら、行ってきて!」

 

「えっ、ちょっ……」

 

『…………ろ、ROKAさん、だね……よろしく……』

 

『あ、はい……』

 

『『…………』』

 

 座布団に向かい合って座る2人。一切の揺らぎがなかったナイアが初めてその顔を崩し、ファンサが豊富で軽快なトーク力がウリの彼が完全に沈黙する。

 

『いやお見合いかって。絵面が強すぎるだけに面白すぎんだろ』

 

『ナイア君どうしたの、いつものトークは?』

 

『美人とイケメンがなんで沈黙してんだよ。撮れ高だからなんか喋れ。変わってやろーか?』

 

 アイデア【失敗】

 

『……い……良い天気ですね(?)』

 

 芦花の迷惑にだけはならないと約束している手前、写真一つで特定に繋がるネットの怖さを理解しきれていないナイアは突拍子もない会話の切り出し方をしたことで、先ほどまで真実の言葉を胸中に反芻していた芦花は思わず吹き出して笑ってしまう。

 

『……ふっ、あっははは!ずっと夜だし!はーっ……良いよもう、変に誤魔化す方がおかしくなる。リア友なんですこの人』

 

 見かねた芦花の判断で大事な部分は伏せつつ関係性を暴露し、たじたじなままゲームがスタートする。

 

『えっ……言って良いのかい?』

 

『偶にあるし、良いよもう。ほら、やろ。ルール知ってるよね』

 

『……テストプレイはしたから分かるが……』

 

『私うろ覚えだから、手加減してね』

 

『……まぁ、君が言うならいいか……』

 

『なんと!!こんな偶然があるんですね!?お二人はリア友!2万人以上の会場から選ばれた偶然か必然か!?ナイア選手の心を崩したぞ!』

 

 乙事照琴の実況の最中、2人は着々とゲームをすすめる。

 

 ナイアのコンディションが崩れたこともあるが、意外にも芦花の優勢で進み、次の役で終わりのところまで追い詰める。

 

 パシン、パシンッ……

 

『はい、こいこい』

 

『芦花、君普通に強くないか?』

 

『……これってさ、勝ったら握手とか出来るんだっけ』

 

『ん?あぁ、そういう企画だからね』

 

『じゃあ……』

 

 芦花はツクヨミ内のボイスを切り、現実の声で向かいに座るナイアの手を握ってリアルに引き戻し、話しかける。

 

「明日、一緒に何処か遊び行こ」

 

『っ!?あぁっ!?』

 

 突然のリアルの感触と声に、完全に油断していて驚いたナイアは誰の目から見ても分かる完全なプレイミスを披露し、それを見逃さなかった芦花がトドメを刺す。

 

『はい、雨四光。私の勝ち〜』

 

『えっ、あっ、こいこいは!?』

 

『しないよ、はい握手。私席に戻るね、放送頑張って』

 

『えぇっ!?ちょっ、芦花ぁ!?』

 

 一ヶ月かけてて築いた信頼はあった。その自覚も勿論ナイアにあった。しかし、今朝会った時より何故か急激に縮まった距離感と予想外の連続にキャラが崩れっぱなしのまま呆けてしまう。

 

『20連勝阻止〜!!』

 

『致命的なミスを見逃さなかった!お見事!』

 

『凄〜い……!ナイア君負けたの初めて見た』

 

『お前ってデカい声出せたのな』

 

『…………』

 

『あらあら~、可愛いところもありますね〜邪神さん?余裕綽々なクールキャラが崩れてましてよ〜?』

 

『……ふっ……ククッ……ハハハ……やられたよ。本当に』

 

 出演者総出で弄り倒され、顔を抑えて沈黙する。

 

 芦花は席に戻り、ナイアもすぐにいつもの笑顔を作り、放送を再開する。ある意味でのトラブルがありつつも、つつがなく残りのイベントも進行し、放送も終わりかけの頃、帝アキラからの重大発表がなされる。

 

『小兎共、ここで俺達ブラックオニキスからの重大発表だ』

 

 帝が壇上で派手なパフォーマンス共に指を鳴らし、大画面で表示されるKASSENの場面にメンバー、戦闘時の雷と乃依が映しだされ、直後にRANSEN帝の文字が浮かび上がって、PVが流れ始める。

 

『ヤチヨちゃん協力の下!俺達ブラックオニキス主催のSENGOKU大型トーナメントを開催するぜ!!』

 

『参加資格はチームの中にSETUNA、SENGOKUどちらかのランキング50位以内のメンバーがいること!三人+補欠で参加決定で、1ヶ月後に行うよ〜!優勝者にはなんと!ブラックオニキスとのSENGOKUで対戦の後、MV撮影会が待っている!黒鬼を倒して!物語の英雄になるのは君だ〜!』

 

 ヤチヨは傘を広げてくるくると舞い、着物をたなびかせると同時に碧色のライトアップでルールを説明する。今日一番の盛り上がりを見せたところで、熱狂的な空気のまま放送は終了した。

 

 およそ6時間の生放送を終え、現実に戻る二人。

 

 目を開けると、先に戻っていた芦花が頬杖をついてナイアに向かって笑いかけていた。

 

「ふぅ……っ、芦花」

 

「お疲れ様。楽しかった?」

 

「…………力を合わせるという君達の十八番。部下や使い魔を使ったり、一時的に目標を同じくすることはあっても、協力することは無かった」 

 

「……つまり?」

 

「……楽しかったよ、とても。でも……やっぱり私は予想外が好きなようだ。ファンの皆には申し訳ないが……君と花札をしたあの瞬間が一番楽しかった」

 

 ナイアは気恥ずかしそうに後ろ首をかきながら問いに遠回しに答える。今朝見た表情よりも穏やかで、どこか和んでいる表情にいつもの態度が保てない。

 

「ふふ、それで、明日何処行く?」

 

「は、ハッタリじゃなかったんだね……?」

 

「当たり前じゃん。ナイアのことだし、本当だった時のことくらい考えてたでしょ?」

 

 全て見透かされていたことを察したナイアは、静かに自分の頭の中で組み立てていたプランを話し始める。

 

「……朝 、家で朝食を共にして出かける準備をする。まずは、映画館で君が見たがっていた映画を観て、昼はショッピングをしながらデパートを巡る。お昼のピークタイムは少し時間をずらして、私が働いているカフェでゆっくりランチをして、デザートには抹茶のスイーツを食べよう。帰り道には、君と1日を語り合って、笑い合ってここに戻る……なんて、我ながらありきたりかもしれないが……」

 

「ふふ……サイコーじゃん、そうしよ。明日、よろしくね!」

 

 今までの彼と違う自信のなさ気な態度に反して、今までの静かな笑みと違う、純粋な笑顔を見せる芦花。立ち上がって明日の準備を始める為に部屋へと戻っていくのを見送り、一人取り残されたリビングで、頭を抱えてテーブルに突っ伏すナイアはボソボソと独り言を呟いた。

 

 心理学【失敗】

 

「なぜ急に……?いやそれより……私が?いやいや……いやいやいや……相手は人間だぞ?無いだろう。無いはずだ。人間に?いやでも……はぁ?」

 

 抑えの利かない自分の手足がソワソワと動き、まさか自分がと独り言を連呼する。もしもを思う自分を小馬鹿にしながら、決して嘲笑出来ないこの思いを抱え、夜に身を任せるのだった。




一気に進展した感じが出てきましたねぇ!
ここから最初の山場です、次回は初のお出かけ編!(一応買い出しくらいは描写外でしてますが)同じく午後8時に投稿予定です。乞うご期待ください!
よければ評価、感想など凄く励みになりますのでよろしくお願いします!!
なんかクトゥルフ要素弱くね?ツクヨミ内ではそんなに技能振る場面ないからね、仕方ない仕方ない。
オリキャラ、阿久魔ヨウガ君。その内オリキャラ達の設定も出します。
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