特に感想もらえる瞬間が最高にテンション上がります。
(感想催促ではないので、お好きなタイミングで(汗))
何はともあれお出かけ編。
書きたいシーン沢山書いたし、少し長いですが、ちょっとくらいの矛盾は見逃してください!
それでは、お楽しみください〜!
PS
大事なシーンを追加しました。
なんか…元々書いてたんですけど没にして、やっぱりいれるべきだと思ったので追加です。
社の会話のところです。
昨晩話した通りに、二人は朝食を取りながら待ち合わせの相談をする。二人で出た方が速いのではと疑問を残すナイアだが、何故か頑なに譲らなかった芦花を駅で待つ。
魔術を使っていつもより少しカジュアルな服装を作り、少し伸びた襟足を後ろで結い、少し有名になったことと、芦花と出歩くのを考慮して黒いマスクで顔を隠す。駅前の支柱で、この待ち時間に何の意味があるのかとそわそわするナイアの背後から静かで、いつもより楽しげな彼女の声が聞こえる。
「お待たせ」
「あぁ。それで、は……」
普段からお洒落な芦花がわざわざ待ち合わせにするくらいだから、相応のお洒落をするのだろうと予想していたナイア。
がらりと印象の変わるハーフアップの髪型。季節柄、夏日が多くなることもあり、薄着にカーディガンとバギーパンツ。いつからか外していた片耳のピアスの代わりに、両耳のシンメトリーなイヤリングと、明るめのアイシャドウに目元のハッキリとしたいつものメイクだが、今のナイアには眩しくて仕方なかったのか、目を細めてしまう。
「……ナイア?」
「あっ、いや……んんっ。涼しげな髪型と、この間見ていた新作の上着かな、今日も綺麗だね、芦花。流石はファッションリーダーだ」
「珍しいね、いつもならすぐに言うのに」
「……それを聞くのかい……?」
「駄目?」
「……見惚れてしまったんだ。侮っていたよ、ここまでとは」
自分に隠し事はしないだろうという芦花の予想通り、悪戯に聞き返した彼女にナイアはあけすけに真実を語る。その言葉に満足したのか、ずっと笑顔だったにも関わらず、さらに楽しそうに芦花は笑顔を覗かせる。
「ありがと、ナイアもカッコいいよ。いつも通りでいいのに、気を使わせちゃった?」
「いや、そんなことはない……こともないか。君の隣に立つなら、それ相応の姿でいなければと思っただけだよ。それより、そろそろ行こうか」
長身のナイアは腰を折って芦花に腕を差し出す。意図を汲み取り、彼女は裾を掴んで出発した。
予定の通りに映画を鑑賞した二人。ミュージカルといいつつも、中身はラブ・ロマンス。身分違いの恋を描いたもので、退屈ではないかと芦花の視線はナイアの表情を捉える。終始真面目に次の展開を望んでいた様子だった彼の横顔を、芦花は暗闇に紛れて瞳に映していた。
上映が終わり、仄かに明るくなっていく足元をエスコートしながら感想を聞くナイアだが、互いの考えのすれ違いが起こる。
「どうだった?」
「あ~……バッドエンドだったなって」
「おや、そうだったかい?」
「だって主人公は手切れ金を貰って退散、ヒロインは望んでない人との政略結婚でしょ?」
「だが、主人公はそのお金を元に起業し、貧乏を脱し、ヒロインを影ながら見守り支えた。ヒロインの方も決して悪い相手との結婚じゃなかった。完璧じゃないにしろ、あれも一つの幸せな結末だと思うけどねぇ。もし二人が結ばれていれば、将来の苦労や家族の反対の影響でマトモな暮らしも難しかったろう」
「ナイアって何でも出来るくせに変にリアリストだよね。女の子はそういうの無視してでも好きな人と幸せになりたいんです〜」
「そういうものか……。まぁ、次はショッピングだね。このモールに君の好きそうなお店をいくつか見つけてあるんだ、さ、手を」
化粧用品、芦花の好む傾向の品ぞろえ、ゲーセン等。
芦花のリズムに合わせた心地良いエスコート、一夜と映画を挟んだことで冷静になれたナイアは昨日までの乱れた姿を完璧に取り繕う。
目星【成功】
「少し休もうか。飲み物を買ってくるからここにいてね」
「え、凄い、良くわかったね。それも魔術?」
「君から目が離せないだけだよ」
「もう、またそういうこと言う……」
芦花をベンチに座るように促し、近くのドリンクテナントで飲み物を買う。長身と隠していても分かる端正な顔立ちに驚かれるのはもうすっかり慣れ、少し離れた場所の為、急いで芦花の元へ戻ろうとする。
目星【成功】
聞き耳【失敗】
アイデア【失敗】
目に飛び込んできたのは、二人の男が彼女を囲む姿。
短絡的なナンパと認識したナイアは、さらに早足で駆け寄ると芦花を抱き寄せ、普段の優しい声色とは打って変わったドスの効いた声で威圧する。
「私の連れに、何の用だ?」
「「え?」」
「ちょっ、ナイア!」
「大丈夫だ。君には指一本──」
「違う違う!二人共私のバイト先の人!」
「…………え」
「えっと……初めまして。雑誌の編集で、秋元といいます。こちらは監督兼、メイクアップの鎌田さん。たまたま良いタイミングで芦花さんを見かけたのでご挨拶をと思ったのですが……」
「アラアラアラ!素敵でイケメンな彼氏さんね!やーんもう!取らないわよ!芦花ちゃんもなんで教えてくれなかったの〜!?」
「いえあの、まだ彼氏ってわけじゃ……」
「まだ!?」
「いやっ、ちょ、言葉のあやで……!ねぇ、ナイアも何か言ってよ!」
「本当に申し訳無い……」
バシバシと秋元の肩を叩きながら、女性のような言葉遣いで二人の関係性を考察する鎌田。
否定する芦花だが揚げ足を取られ、ナイアは繕っていた仮面が破れ、盛大な勘違いをしたことを平謝っていた。
「いえ、いいんですよ。芦花さんはウチでも評判の美人さんですからね。焦る気持ちも理解できます」
「アナタもイイ男よ!メソメソするより胸張りなさい!」
数分した後、落ち着いた4人。反省して項垂れるナイアを芦花が宥めつつ、良いタイミングという話の内容を聞く。
今日、撮影予定のモデルが体調不良で来れなくなり、用意した人件費とセット代が勿体ないと話している所に芦花を見つけた事を話す。
「撮影……ジューンブライド?」
「来月頭の雑誌に載せるんだ。そういうことで芦花さん、代金は勿論払う。我々を助けると思って協力してくれないかな?」
「アタシ芦花ちゃん推しなのよ〜。なのに学生だからなんて理由で弾かれちゃって。だから!スッゴク良いタイミングだったのよ!」
「えっと……」
将来を考えても、大事な巡り合わせと話。しかし、この話を受けてしまうとナイアを放って撮影するということになってしまう。自分から誘ったお出かけの時間を、自分の都合で変えてしまうことに罪悪感を感じた芦花は視線をナイアに投げる。
「……芦花、私は大丈夫だよ。これも縁だ、大切にしないとね。私はその間、適当にその辺を……」
「アラ、何言ってるのナイアちゃん。貴方はこっち。最低限で他は適当でしょ。整えたげる」
「……ん?」
──ー
「わー!まま、あの人かわいい〜!」
「あら、撮影ね。来月ジューンブライドだし、綺麗ね〜」
「ね〜、横の人めっちゃイケメンじゃね!?」
「ハーフ?脚なっっが〜」
吹き抜けのモールの中央に準備された、教会風の大掛かりなセット。
スッキリとした白いウェディング衣装に花束を持ってベールを被った芦花。
その横には、黒いタキシードにぴっちりと整えられた癖毛。端正な顔立ちがさらに際立つような薄いメイク。
美男美女の二人の撮影は大勢の買い物客が足を止めて注目を浴びていた。
写真術【成功】
写真術【成功】
写真術【成功】
写真術【成功】
写真術【成功】
パシャパシャパシャパシャパシャッ
「まさか私も撮影するとは……」
「きゃ〜!!二人共良いワ!凄く良い!!ほらポーズとって!笑って!」
「ポーズ……こうか?」
手を取って優しく微笑むナイアと、突然握られた手に驚いて開いた口が閉じない芦花。
初々しいという言葉が似合う二人に、撮影スタッフや鎌田達は思わず感嘆の声を漏らす。
「芦花?さっきから静かだけど、どうかしたのかい?衣装が苦しいならスタッフに……」
「ちょ……近い近い近い!強い強い!」
「え、あっ、すまない」
「そっちはそのままでいい!」
「??」
覗き込んだナイアの顔を見れずにそらし、強いというのが手を握った力だと思ったナイアが離そうとするが、それも拒否する芦花。
ナイア以上に混乱を隠せない芦花だが、その様子さえも余さず撮影するよう鎌田が指示を出す。
腰に手を添える、手を取ってセットの階段を登る等、半ば鎌田の趣味のような撮影会が進んでいく。
「そうね〜次はお姫様抱っこで……」
「あの、鎌田さん。ソロの撮影もしたいのですが……」
「アラ、そうだったわね。ナイアちゃんこっちいらっしゃい。芦花ちゃんから撮影しましょ」
「は、はい」
ここまで強引に引っ張られた経験がない彼は鎌田に頭があがらず、大人しく指示に従う。
ナイアは用意された休憩用のベンチでお茶を飲みながら撮影を行う芦花に視線を移す。
「…………」
忍び足【成功】
「熱っぽい視線。妬けちゃうわね」
「……貴方、本当に人間か?」
信用【成功】
「モチロンよ。ねぇ、真面目な話、アナタって芦花ちゃんとどういう関係?」
「……ビジネスパートナー、のようなものだ。協力関係にも近いかもしれない。仲は悪くない自覚はあるが、貴方が思うような関係ではないよ。……私と彼女には決定的な距離も壁もあるからね」
「あら、曖昧ね。ハッキリしないオトコはモテないわよ」
「……私は他と違う。これ以上、彼女の近くで共に生きるのは、彼女にとってきっと良くない影響を与えてしまうだろう。芦花の……日常を壊してしまう」
「……」
話上手は聞き上手。その言葉の通りなのか、赤の他人に話すのが苦ではないのか、どこかで、自分の心根を打ち明けたかったのか。鎌田に対して項垂れるまま、ナイアは心の内を吐露し続ける。
「無為な日々を過ごし、ただ好奇心で動いただけだと言うのに……自分がこんなにも罪深いとは思わなかった。知らなかったこの感情に、知ってしまった名前をつけてしまえば、きっと私は戻れない。彼女の為にあらゆる手を尽くすだろう。同じ歩幅で時を刻めない時計など壊して作り替えてしまうだろう……なんて、ハッハハ、すまないね。つい、配信と同じ感覚で話してしまったよ。今のポエムは忘れてくれ、恥ずかしくて火を吹いてしまいそうだ」
首裏をポリポリとかきながら、一連の話をポエムだと言い切ってお茶を飲み干し、その場から離れようとする。その横で、彼女は一言、ナイアの核心を貫く。
「その感情の名前はね、"恋"よ」
「……っ!!貴様……!!」
拳【決定的成功/クリティカル】
判定 【回避不可】
ダメージ 【1D6+1D3=7】
バヂィンッ!
「うるせぇよ、小僧」
最も触れてはならない彼にとっての禁忌にやすやすと踏み込んだ鎌田に激怒し、紅い眼光で睨みつけたナイアの額をかなり強く指で弾く。唐突で、何の特別な力もない人間に一撃を加えられたナイアは目を見開いて呆ける。
さらに、先程の口調とトーンからは考えられないドスの効きすぎた声に、ナイアの心臓が驚きで跳ねる。
98【失敗】
減少値【3】
「逃げんな、目ぇ背けんな。芦花ちゃんにとって、てめぇはとっくに"日常"だ」
「っ!!?」
「ライバーだがイケメンだが妖怪だか神だか、何処の誰だか知んねぇが、惚れた女一人幸せにする覚悟がねぇ腰抜けの玉無しがよぉ。うだうだ言ってねぇで腹ぁ括りやがれ」
「…………君、本当に同一人物か……?」
説教にも思える鎌田の言葉に動揺を隠せない。直後に柔らかな表情に戻り、彼女は缶コーヒーを一口、口にして言葉を直す。
「アラ、ごめんなさいね。ついカッとなっちゃった。でもね、芦花ちゃんったら凄く楽しそうに貴方のこと話すのよ?」
「……芦花が……?」
「えぇ。直接名前や関係は言わなかったけど、友達が〜って。勘違いだったけど、芦花ちゃんを助けに来るアナタを見て、すぐにピンときた。祝おうと思ったら、まだその段階なんだもの。腹も立つわよ」
「……」
「言ったでしょ、腹括りなさいって。待たせる男は嫌われるわよ」
「……はぁ……なんなんだ君は……。だが……そうか……礼は言わないぞ」
「いらないわよ」
再び芦花に視線を戻す。認めてしまった、名を持った感情がナイアの視界を極彩色に彩る。閉じられた感情の蓋が、確かに開いた音が彼のなかで木霊した。
次の撮影だと、手を小さく振って合図する芦花に手を振り返して駆け寄った。
「何話してたの?」
「ただの世間話だよ。それより、1人の撮影は終わりかい?」
「うん。ナイアもあと一枚、っていうか一本っていうか」
「……映像?」
「なんか、広告映像にダンスシーン入れたいんだって」
「代役に頼むものではなくないか?でも……そうか」
「流石に私も踊ったことないし、今ことわ……え、なになになに」
断ろうとしていた。そう続くであろう言葉を、ナイアが手を取って膝まずくことで遮られ、反対に彼は言葉を続ける。
「私と踊ってくれるかな?お姫様」
「ちょっ……!」
「ちなみに……」
芸術[ダンス]【成功】
続けて流れるように立ち上がり、芦花の右手を握って腰に左手を回し、リードしながらステップを踏み出す。
「答えはYESしか用意していない。合わせて、私に身を委ねるだけでいいよ」
「なんでこういう時だけ強引なのかなぁ!」
「ハハハハ!上手だよ、ほら、次はターンだ」
「あっ、ちょっと、もうっ!」
積極的に踊り始めたナイアに、困ったようにしながらも撮影中とは違う、無邪気な笑顔を見せる芦花。
釣られてナイアも素で笑い始める。先程までの大人びた撮影とは違う雰囲気ながらも、その姿を気に入ったスタッフ達と鎌田が余すことなく映像に収めたのだった。
──ー
「協力ありがとうございました、芦花さん、ナイアさん。良いものが作れそうです」
「特に最後のダンスシーンなんか最高よ!!アタシが完璧なPVにしてあげるわね!」
「……今更だが、これ視聴者に何を言われるか分からないね」
「ビジネスパートナーって明言してるし、その辺で誤魔化そ」
「ハッハハ、いっそ本当に──」
バシンッ!
「「「!?」」」
「何、急に!?」
「……何でもないよ。それより、良い時間だ。そろそろ行っても良いかな?」
「えぇ、本当にありがとうございました」
「あ、ナイアちゃん。これ」
「?」
本当に。その言葉の続きを自らの口をたたくことで止める。その奇行に三人は驚愕し、肩をビクリと跳ねさせる。鎌田は行こうとするナイアを引き止めて名刺を胸ポケットに押し込む。
「アナタのこと、気に入っちゃったわん。また連絡して頂戴!」
「……えぇ、私の気が向けば。行こう、芦花」
少し素っ気ないような気もする返事をして、ナイアは芦花の手を取って次の目的地へと歩き出す。
予定よりも少しだけ遅く最後の目的地である、ナイアのバイト先へと辿り着く。
得意げな顔でパスタとケーキが美味しい、雰囲気の良い店だと紹介する彼だが、芦花はこの場所をよく知っている。親友が粉骨砕身の精神で働き、特に親しい三人で集まる憩いの場。
「……まさか、君が知っているとは……」
「あはは……そういうこともあるよ。でもセンス良いね、ここ選んだのは正解。花丸つけてあげる」
「……ハハハ、君には敵わないな。なぜだか今日は、いつにもまして君の笑顔が魅力的に見えるよ」
「ふふ、だって笑顔は一番の化粧だもん」
「ッ……本当に、敵わないな」
恥ずかしそうに不甲斐なさを嘆くナイアは顔を右手で押さえ、机についた左手の指をトントンと鳴らし、その手の甲に人差し指でくるくると丸を描いて芦花は笑う。
「え、ナイア君すっげぇ笑顔なんすけど……」
「いつも絶対に口開けて笑わないし、あんなニコニコしませんよ……?」
「店長、俺怖いです」
「いやぁ……ナイア君にもそういう感情あったんだねぇ」
「あの子、確か酒寄さんの友達だよね?注文取ってきなよ。ついでにどんな関係か聞いてきて!」
「よ……喜んで〜」
普段のナイアの笑顔や様子を見ているスタッフ達は、芦花の前で無邪気な楽しさを見せる彼の姿のギャップに店員達は一周を回って怖いと口にし、彩葉が注文を取りにいく。
「ご注文はお決まりですか〜?ナイア君、芦〜花っ」
「彩葉!今日バイトだったの?」
「おっと……互いに紹介はいらなさそうだ。二人は友人だったのかい?」
「ナイア君こそ、女の子の友達って芦花のことだったんだ〜……」
「彼女とは少し複雑な縁でね、今日は1日、私の我儘に付き合ってもらってしまったんだ」
「どっちかって言うとソレ私だけどね?」
仲睦まじそうな二人の様子を見て、ナイアは微笑を浮かべる。
「にしてもナイア君、見事な慧眼だけど、芦花はレベル高すぎだよ〜?」
「ちょっと彩葉!」
「ハッハハ!それは君がいるからかい?」
「そのとーり!もし芦花を泣かせたら、その頬には花丸じゃなくて真っ赤なモミジマークつけるたげから」
「おぉ、怖い。愛されているね、芦……花……」
心理学【決定的成功/クリティカル】
彩葉と顔を合わせて笑う芦花の表情に、ナイアはクスクスと笑う。何気ない会話で彩葉の言葉を軽く受け止めて流すが、その様子を見ている彼女の心情を、嫌でも理解してしまう。数時間前に解し、名をつけたこの感情を受け止める覚悟はあった。しかし、芦花の瞳、声、表情、彩葉に向けるそれらは、自分に向けられることのないものと悟った。
「……そうか……こういう……辛いな……」
聞き耳【失敗】
聞き耳【失敗】
「ナイア?」
「おっと……すまないね。酒寄先輩、話に花を咲かせるのもいいが、そろそろ注文してもいいかな?」
「あっとと、ごめんごめん。ご注文どうぞー」
普段と同じ笑顔、心地のいいテンポの会話に、透明で甘い声。ランチを済ませ、紅茶を嗜みながらデザートに二人はケーキを食べながら今日を振り返り会話を弾ませる。
「今日のプランは気に入っていただけたかな」
「勿論、超楽しかったよ。映画見て、ショッピングして、撮影なんかしちゃって、初めて会ったときみたいに二人でお茶して……うん、最高だった」
「光栄だ。……いい席だね。黄昏が君の瞳の中にある」
「そういうナイアの瞳は真っ赤だよね。輪郭だけ分かるくらい」
心理学【成功】
そういって見つめた芦花から、ナイアは僅かに目線を逸らす。いつもなら自分から外さない限り見つめてくる彼の珍しい行動に芦花は疑問を口にする。
「……ねぇ、どうかした?」
「……なにがだい?」
「なんか、笑った顔がいつもと違う……ような気がする?」
言いくるめ【成功】
「……ふふ、気のせいだよ。それか、君と過ごす今日が楽しくて、表情筋が緩んでいるのかもしれないね」
「そう?だったら嬉しいな。……ナイアさ、働きすぎだし配信しすぎだし。寝てないでしょ?人を知りたいから人並みの生活してるのに、それじゃ本末転倒だよ」
「驚いた、完璧に隠せていると思っていたのだけれど」
「美容系ライバー舐めんな〜、髪とか肌とかで分かんの。やっぱり人間じゃない頃の感覚抜けてないんだね〜」
「そうだね……そう。まぁ、私は神だからね。ほら、これでどうかな?」
芦花の心配を他所に、ナイアは自分の顔を手で覆って指摘された部分を全て治す。相変わらずの魔術に驚くものの、もう慣れた光景だった。
「あ、そうだ。真美が帝のRANNSENに出たいんだって。補欠に名前入れていい?」
「真美さんというと、確かチケットをあげた相手だったかな?構わないよ。その様子だと、酒寄先輩と真美さんと出るんだろう?」
「うん。ナイアはKASSENやらないんでしょ?」
「戦闘は苦手でねぇ、やらないかな。当日は観戦していようかな」
「彩葉が強いから、もしかしたらって感じだけどね」
「応援しているよ。さて、そろそろ出ようか。もう少しでこの店は騒がしくなるからね」
「あ、お会計」
「もう済ませてあるよ。さ、手を」
「いつのまに……ねぇ、流石に悪いってば」
「いいんだ。最後までエスコートさせてくれ、君は私の……大切な友人なのだから」
「…………そっか……ありがと」
ナイアは出かけた言葉と感情を押し殺して振る舞い、帰り道を変わらず紳士的にエスコートする。家について二人分の飲み物を用意し、今日について話して笑い合っていると、不意に芦花が口にする。
「ねぇ、ナイア。ツクヨミ行こ」
「今からかい?」
「そう。ちょっとだけ、20分くらいだからさ」
「時間は大丈夫だよ。すぐにかい?」
「うん」
芦花の頼みを聞き入れ、二人でツクヨミへとログインする。いつもと変わらず、そこかしこの画面ではヤチヨが配信したり出店通りを賑わせている人達がいるが、1ヶ月後に行われるRANNSENの為か、人数は気持ち少ないように感じる。
「ねぇ、あれってROKAとナイア様じゃない?」
「本当だ!手繋いでる〜!」
「えっ、そういう関係なの!?」
「ショック〜、ワンチャンあるかもって……」
「ろ、芦花っ、このままはでは……」
「……そんなの、言わせておけばいいじゃん。それより速く、こっち!」
ナイアの手を取って先導する芦花。昨日の生放送の影響か、二人が並ぶ姿を見て感嘆の声をあげる者達に、誤解をさせまいと芦花の手を緩めようとするナイアと、固く握り直す芦花。
「……芦花、ここは……」
「……ようこそ、私のお気に入りの場所へ」
人混みをかき分けて辿り着いたツクヨミのマップの端の場所。長い階段を上り、辿り着いた一つの場所。
人はおらず、特に目立つ催し物があるわけでもなく、ファストトラベルのポイント指定にもされていない山の奥に佇む、屋根や手水舎などが作りかけの社。
「お気に入り……?ここが?君のことだから、もっと華やかな場所が好きかと……」
「多分、没マップなんだと思う。昔この辺ウロウロしてたらたまたま見つけてさ。見てて」
そう言うと芦花はふじゅーを物体化させて投げ、二礼二拍一礼、神社を参拝する方法を披露する。直後、彼女を祝福するように和楽器が鳴って光のエフェクトが後を追うようになる。
「……綺麗だ」
「でしょ?なんで正式に実装されなかったんだろうね」
「……いや、存外これが正規の姿なのかも知れないよ」
芦花の近くに寄り、指を鳴らす。
すると、終わったはずの和楽器の演奏が継続して鳴り続け、ナイアはそれに合わせて芦花の手を取って軽くステップを踏み、芦花も身を任せる。
「ツクヨミの人間は、"神々"と呼称されるじゃないか。廃れかけ、神すら逃げ出した社。それを見つけて復興させるのは、プレイヤー達の役割なんじゃないかな」
「なるほど〜……一理あるかも。さっすが神様。そういうのに敏感なんだね」
「私の場合は大抵、教会か森の祭壇だけどね」
昼間に踊ったステップを再現し、一段落したあとに裏手の社の縁側に芦花がナイアを連れて座る。裏手には小さな水辺があり、そこには稲科の植物が生え揃う。そんな景色に彼女は仰向けに足を放り出す。みっともないと叱るものの、ここには二人だけだから気にしないと彼の腕を引いて二人で仰向けになる。
「気持ちいいでしょ。やっぱ日本人だよね〜。ナイアはどう?」
「畳も悪くないね。身体を横にするのも気持ちいいものだ。それに、水面に揺れているあの花達……君の花だ」
髪を優しく撫で、季節外れな為に咲くことのできない芦の花達を指差す。
「あぁ……芦ね。地味でしょ?誰も気に留めないし、華やかなんて言葉とはほど遠い……十五夜で飾るようなススキでもないし、なくてもいいような植物だよね〜」
心理学【決定的成功/クリティカル】
そう呟く芦花の瞳は遠くを見て揺れていた。リアルとは少しだけ違う、メイクのないアバターながら表情は全く変わらない。誰にそんなことを言われたのか、そんな言葉は彼女に似つかわしくない。そう心の中で呟いた彼は、無意識のうちに隣にいる芦花の手を強く握りしめていた。
「な、ナイア……?」
「暗紫色の慎ましくも美しい花。時が経つごとに金色に移り変わり、やがて水面の月を揺らす風を吹かせる。夏には爽やかに新緑が芽吹かせ、次へ進む気高さをもつ素晴らしい花だ……どこが華やかじゃないと?」
「えと……」
「寂しいことを言うな芦花。君の心は綺麗で、強く繊細で……誰よりも美しい。知っているか?芦の花の花言葉は、
「は……は……い……」
「……ッ!すまない!感触がないとつい……!」
「……うぅん……謝らないで、ありがとう。嬉しい、そんな風に思ってもらえたの……初めてだから」
いつの間にか押し倒すような形で詰めていたナイアは自分の失態を謝罪し、すぐに離れる。驚いただけだと笑った芦花は、なんでもないというように感謝を伝える。
その表情と反応に少しだけ寂しさと哀しさを覚えながら、続けられる彼女の言葉を聞く。
「……ここさ、誰にも言ってないんだよね。別に秘密にしてるわけでもないんだけど、なんとなく話すことでも無いかなって」
心理学【失敗】
「だったら……何故私に?」
「……さぁ。自分でも分かんないけど……何故かナイアには言いたくなったの。凄いと思わない?一億人を超えるユーザーの中で、私達たった二人だけの場所。なんて」
縦だと見下ろす彼女の顔が、横になった時は近くなり、彼女の端正な顔立ちがナイアのすぐ近くに来る。
仰向けに夜空を仰ぐ彼女の顔と、二人だけ、秘密などという期待の言葉は、恋心を自覚した彼を余計に傷つける。しかし、その苦しみの反面、心底喜びが溢れてしまい緩む自分の頬を掴んで矯正し、話を逸らす。
「……そうか……もしかしたら私の予測は当たっているのかな」
「何のこと?」
「ツクヨミの管理人殿は、覗き見がお好きらしい。わざわざ廃れた社に暇をつぶしに来るとは思えないなぁ」
起き上がったナイアが紅い瞳で虚空を見つめる。
すると、ポリゴン体が先に傘を生成し、玉鈴の音と独特な挨拶とともに月見ヤチヨが現れる。
「あらあらあら阿羅漢像〜……じゃんっ、月見ヤチヨ登ッ場!」
「えっ、ヤチヨ!?」
「芦花ちゃんナイア君、昨日ぶり〜!」
「やぁ、ヤチヨ。こんばんは。昨日はどうも」
「楽しかったね〜!ところで、なんで私に気づいちゃったのかな?」
「いや全く?ただの勘だよ」
心理学【成功】
対抗心理学【成功】
「本当に〜?」
「本当だよ。疑り深いねぇ」
「それよりヤチヨ、なんでここに?」
「あ、そうそう。この辺でバグが起きちゃったみたいでね、修正に来たんだ。因みに、ここは彼の言う通り没マップじゃないよ。作ったのも最近だけどね〜」
「違うんだ……でも、こんな所に神社なんて作って何を想定してたの?」
「ここはね、まさに今君達がやってることに使われる想定だったんだよ〜」
「憩いの場かな?だとしたらもう少し分かりやすくするべきだと思うがね」
「ノンノン!表立ってイチャイチャ出来ない若人達の甘酸っぱ〜い空気を助長する為の場所なのです!」
「えっ……!?」
「表の社からは綺麗な花火が!裏手のここではお月さまと芦の花が見える十五夜が!いぇ~い!一つで二回お得〜ってわけなのです!ちなみに、公表するつもりはまだないから、今は君達だけの場所だよ〜」
指をくるくると振ってナイアの言葉を否定し、予想外にも、この場所を逢引の為に作ったと発言する。
それに芦花は感嘆の声を漏らすものの、ナイアは頬杖をついて怪しげに笑い飛ばす。
「……ハッハハ……だとしたら、8000年の経験も初心なものだね。彼女と私は、残念ながらそんな関係ではない。軽率な言葉は人の心を傷つけるということを知らないのかい?」
82【失敗】
77【失敗】
減少値【1】
減少値【4】
「…………」
「あ、あら〜……手厳しいね、ナイア君。でも、折角見つけてくれたんだし、ゆっくりしていってね。これはやっちょからのプレゼント!じゃ、さらば〜い!」
そう言ってヤチヨから二人へと線香花火が支給され、直後にFUSHIからバグの修整報告がなされてふわふわと飛び去ってしまう。
「線香花火?」
「……折角だしやろっか。そうだ、勝負しようよ」
「勝負……花火で?」
「先に落ちたら負け。ほらほら、準備して」
先程の言葉で少しだけ静かになってしまった芦花だったが、気を取り直してといった様子で表の境内で勝負を挑む。ナイアの知識にある花火は大きく空に咲くものだったらしく、目の前の小さな火の塊に感動する。
「おぉ……花火は打ち上げるものなのに、これは落ちるんだね。しかも小さい」
「あはは、確かに。でも、綺麗でしょ?」
「……あぁ、とても綺麗だね。ところで、勝負に負けたらどうなるのかな?」
「ん〜……特に考えてないなぁ。じゃあ……」
ポトッ……
「7月に、現実で夏祭りがあるの、次は本物を見に行こうね、約束」
「……お安い御用だ。喜んで」
約束という言葉をどちらかが使った時に、自然と指切りをする癖がついた二人は、穏やかに線香花火が落ちるまでの刹那を噛み締める。
目星【成功】
まるで自分が勝つことが分かっていたかのように自然に繋げた言葉に、ナイアは迷うことなく答えた。直後、少しだけ顔を曇らせるが、得意の仮面を張り付けて誤魔化す。それに気付く芦花の不安な視線に気付くことはなかった。
現実に戻った二人は静かに今の時間を語り合い、部屋へと戻っていく。
芦花はベットで横になりながら、心の内のモヤと楽しかった今日の記憶を胸に抱え、ナイアはついぞ渡せなかった小箱を虚空にしまい、いつもの癖で椅子に座って眠った。
2回に分けても良かったかも…?
さて、明確に"恋心"を自覚したナイア君ですが、まだ複雑な女心までは解していませんね。
ここからどうなるのか、明日にご期待ください!
PS お気に入りや評価、コメントなどが支えです!気が向いたらでいいのでよろしくお願いします!
あとファンブック届きました!まさか泣きすぎて読むのに2時間もかかるとは思いませんでしたが…。泣きすぎると本当になんも見えなくなるんですね。