腐臭を醸し出しているそれは、私たちの前に姿を表す。
それは、あまりに冒涜的で私の精神を削るのに十分なものだった。しかし、彼女が一緒にいてくれたお陰で、正気を失わずに済んだ。
「に、逃げよう。くそが。どうしたらいいんだ」
頭の中に声が響く。
・君が私の元まで辿り着いたら、それをどうにかするのも吝かではないよ。フフ、辿り着けたらね!・
美沙の皮を被ったあいつが、声を届けてきた。いつからあいつがすり替わっていたのか……いや、最初からあれだったのか?
それがとても気になるが、そんなことよりカヲルと一緒に逃げなければ
私はカヲルの手を掴みながら、あいつから逃げた。しかし、次の角を曲がった時、それは私の前にいた……
鋭い鉤爪が襲いかかってくるのをなんとか避けながら、思考をめぐらす。
あれは、なぜ私たちの前に現れることができた?いや、人外だからで説明が着く話だが……これでは、僕たちがどんなに早く逃げたって意味が無いじゃないか!
それは、にやけながらこちらを振り向く。こいつは、遊んでいる。私たちが自分よりも弱くてどうしようもない存在であることを認識している。
カヲルが瀕死でなければ……くそ
私は思いつく。なぜ、カヲルには攻撃しない。確かに、カヲルと一緒にいた時、カヲルの方が明らか狙いやすくて瀕死状態であったのに、私にばかり襲ってきた?
僕はカヲルの手を離し、美沙のいる場所に向かって駆け出した。
それは、また先回りしてこちらを襲いかかって来て、右腕が持っていかれたが、美沙がいる場所に到着する。あぁ、痛い。
「おめでとう。まさか、あれから逃げ切れるだなんてね。正直驚いたよ。ん?あぁ安心したまえ。ここには入って来れないはずだ。しかしよくわかったね。ティンダロスの猟犬が狙っているのが君だけだと」
あれの名前はそう呼ぶのか
「やはりか……てか待て。お前がループさせたからこうなってんだろ」
美沙は、悪いとは思っていない様子で
「ごめんごめん。でも別にいいでしょ?大事な人助けられて…」
「まぁ、いい。それで、ティンダロスはどう対処するんだ?」
「それに関してはね。僕が何度か君みたいな人をループさせているせいでね、やつに怒られてしまったから、生き残った人は助けてあげる制約なんだよ」
美沙は、本当の姿を現しながら答える。
ァァァァアァ、ハッ。あ、危ない。あいつ、最後の最後に……
だが、これでハッピーエンドになったな……カヲルを迎えに行かなくては。
正直、ティンダロスの猟犬って、人から出てこれると思うんです。しかし、それはやらない。なぜなら、すぐ死ぬから