side渡我被身子
「それで?アンタはこの子に大学行って資格取ってこいって言った訳かい?」
「……そうですけど。」
「アンタねぇ……ヒーローやってればそういうのが免除される場合もあるのに……律儀だねぇ?」
「被身子ちゃんにはそういうので苦労して欲しくないので。…………かくいう私もリカバリーガールがいなかったら不自由でしたし。」
「そういうもんかね?」
お昼休み。今日は久々に流水さんと時間が合ったので食べていると、珍しくリカバリーガールを見つけたのでお邪魔することに。
リカバリーガールもホントにそろそろ定年。……ていうか定年以上に働いているので、後継者である流水さんが居るおかげである程度楽が出来るのでしょう。あまりヒーロー界から退くことに不安を感じている様子はありません。
私も流水さんの代わりに頑張って雄英高校の養護教諭になろうとしているので、私が入れば流水さんももっとヒーロー活動に精が出せるというもの。
……そう考えると8年って長いですね。
「それよりも渡我。アンタの意思はどうなんだい?」
「正直高卒で一緒に働きたかったのが本音ですが、流水さんの言うこともごもっともですし……何よりそれが流水さんのためになるのであれば私の本望です。」
「…………愛だねぇ。全く。1度ヒーローとして務めて貰って学校も併用はダメかい?」
「それも考えたんですけど、流石にどちらかが疎かになります。現状私がそうなんで。」
「……そうかい。まぁ……アンタらの人生だ。好きにおし。」
リカバリーガールは流水さんだけじゃなく、私の事も非常に気にかけてくれてます。やれ血のストックはあるかだの、勉強は難しくないかだの、インターンで嫌な思いしてないかだの……私を見る目が孫なんですよね。
なんなら流水さんを見る目も孫です。一緒ですね?
「それに私も長くない。そろそろ後継者が欲しいと思っていたところさ。」
リカバリーガールでもどうしようもないモノ。それは本人の寿命。……年齢を聞いたことは無いですが、オールマイトどころか根津校長に対してもあの態度……相当お年を召してる事でしょう。
「……リカバリーガール。冗談でもあまり言わないでください。…………悲しくなります。」
「……んふふ。数年前のアンタじゃ聞けなかったセリフだね。」
「そんなこと……」
リカバリーガールが流水さんの手を握る。
「だって会ってくれなかったじゃないか。傷原。あたしゃアンタと一緒にヒーロー活動ができて嬉しかったんだよ?」
「…………。」
「それにこんなに可愛いお嫁さんまで出来て……絶対幸せにおなり?渡我を悲しませたりしたら許さないよ?」
「……はい。」
「よし。渡我。このわがまま娘をしっかり見ておやり。無茶するようだったらお尻を叩いてやるんだよ?」
「……はい!!任せてください!」
しっかり胸をはる。絶対流水さんに無茶なんてさせません。
すると流水さんが……
「……リカバリーガール。」
「……なんだいなんだい。子供じゃあるまいし。」
リカバリーガールを抱きしめた。私からは背中しか見えてないですけど……なんとなく悲しい背中です。
「………………なんとなくです。」
「そうかい。……大丈夫さ。アンタがここに勤めるまで最低限生き長らえるよ。」
「……はい。待っててください。」
「傷原。子供の未来を生かすのはアンタの仕事だ。自分のできることをおやり。」
「……はい!」
流水さんとゆっくり話すことは出来ませんでしたが……胸がいっぱいになりました。
流水さんとリカバリーガールの関係は、私が推し測れないモノではありますが……少しですけど、ほんの少しだけわかる気がします。
師匠と弟子。母と子以上の深い関係。
私も流水さんとそんな関係になれたらいいですね。それはとても美しいものに違いありません。