side渡我被身子
「ほんとにいいの?」
「はい。もう決めましたから。」
夜。流水さんと一緒にお風呂。
「渡我じゃない方がいいです。」
「……そっかぁ。」
私もあと1年足らずで卒業。……となると流水さんと結婚して、戸籍とか苗字とか色々考える事が多い。
将来設計を今のうちに……ってやつですね。
「傷原被身子。……んふふ。流水さんのモノになったって感じがしてすごくイイです。」
「……渡我流水でもいい気がするけどね。」
「それも悩みましたけど……渡我ってだけで色々不都合が起こると思うんです。…………あまり流水さんに名乗ってほしくないっていうのも本音です。」
あの両親の悪行……というか不評。背負うのは私だけでいいです。渡我という珍しい苗字。覚えてる人は覚えてると思います。
「…………被身子ちゃん。」
「私は流水さんに幸せになって欲しいんです。私の全てを使ってでも。流水さんの幸せが私の幸せです。」
「……だーめ。」
ぺしっ
「いたっ!」
流水さんに軽くチョップされた。
「私だってあなたに幸せになって欲しい。自分の幸せも。相手の幸せもどちらも望むの。叶えるの。それが結婚じゃない?……私もあなたを幸せにする。あなたも私を幸せにする。それでいいじゃない。私の幸せがあなたの幸せじゃなくてもいいよ。あなただけの幸せを掴んで欲しい。」
「……。」
考えたこともなかった。あなただけの幸せ。
流水さんがいなくなると寂しい。流水さんが泣いてると悲しい。流水さんが笑ってると嬉しい。流水さんが幸せだと私も幸せ。
じゃあ……私の幸せってなんでしょう。
流水さんが……じゃなくて私だけの幸せ。
「…………まぁ偉そうに言ったけど私も結婚なんてした事ないし、被身子ちゃんの言ってることもすごくわかるよ。私だって被身子ちゃんを幸せにしたい。人によって幸せの形なんて違うしねぇ〜。…………私が居てくれるだけであなたの幸せになっているのであれば、照れくさいけど……えへへ……すごく嬉しいかな。」
「……!」
……あまり難しく考えること無いのかもしれません。人によって幸せの形が違うのであれば……私の幸せは……
「流水さん♪」
「ん〜?」
「私……今が幸せです。」
「……今?」
「はい。何気ない日常。流水さんと顔を合わせているだけで幸せです。こうやって……手を合わせて。視線を合わせて。お互いの視界をお互いで埋めて。肌で触れ合って。2人だけの世界と錯覚するほど。それって幸せじゃないですか?」
「…………ちょっと……恥ずかしいね?」
「何を今更。」
「そうだけどさぁ……被身子ちゃんの顔がすっごくタイプだから毎日ドキドキしちゃうんだよねぇ。」
そんなの……私もですよ?……うふふ。
「もっと近くで見てもいいですよ?」
「被身子ちゃ……んっ。」
鼻腔も。口内も。心だって。流水さんでいっぱいになる。視界だけじゃない。全身でお互いを感じる。
密に。深く。混ざるように。
どちらともなく離れる。2人にに銀の橋が架かる。
「……上手になったね?」
「それほどでも。」
「のぼせちゃうからベッドに行こっか?」
「はい♪」
私たちの夜はまだまだ続くようです。