side渡我被身子
「今日の晩御飯はね〜。ハンバーグにしよっかなって。豆腐いっぱいあるし。」
「いいですね。私流水さんのハンバーグ大好きです。」
「あ〜……でも冷蔵庫の野菜クタクタだったっけ。野菜炒めしてもいいなぁ。」
「豆腐と煮込んだらどうですか?前作ってくれましたよね?すっごく美味しかったです。あれも大好きです。」
「あっ……野菜で思い出した。そうだ。ゴーヤ貰ってたんだっけ。ゴーヤチャンプルーとかどう?」
「ゴーヤチャンプルーですか?流水さんの作るゴーヤチャンプルーは美味しいので大好きです。」
「も〜。なんでも大好きじゃん。」
「流水さんだからですよ?」
「絶対そう言うと思った。……ありがと。」
「どういたしまして。ゴーヤチャンプルーは明日にして、今日は野菜の処理をしちゃいません?」
「そうだねぇ。じゃあこのひき肉は豆腐野菜炒めに入れちゃお。」
「はい!」
学校から帰ってすぐ。流水さんと近くのスーパーに買い物に行きました。
まだ。完全には復旧しきれたとはいえない街並み。戦争の傷の大きさを物語っています。
この家も。あの家も。それぞれ住んでいた人の思い出が詰まった場所だったのに。
……少しだけ歯がゆいです。
「…………ね。被身子ちゃん。」
「はい?」
「ヒーローってさ。なんでいると思う?」
「……え?」
「だってさ?すごーく嫌な言い方するけど、ヒーローって事前に出来ることってほぼ何も無いじゃん。全部後手後手。何かが起こってから対処。……まぁそれはほぼ全部に言えるんだけどさ〜。」
「え……ええ。そうですね?」
「起こってから対処ってなると、それだけ被害が広がる訳で、何かが奪われた後の人だっている訳だ。……それってその人からしたら相当な苦痛だよね。」
「…………。」
自然と先程の家に目がいく。奪われた人。苦痛。
「……だからね。私が居ると思う。」
「え?」
「半分敵みたいなヒーローが居るんだと思う。」
「……」
「どこからか事前に情報を持ってきて、予め対処させる。それで何も起きてない社会を作る。虚像だよね。」
「……でも。それで何も知らない人々には社会は平和に見えているってこと……ですよね?」
「そうそう。結果的に被害が最小限だけど、人権なんてほぼない……みたいな人が居ないと成り立たないよね。」
……前に言ってた。仕事をミスすると流水さんの命が無くなるって。改めて……嫌な気持ちになりますね。
「……。」
「安心してよ。居なくなったりしないから。……守るものが増えちゃったし。」
「……!」
「言わなくてもわかるでしょぉ?」
「うふふ。……誰ですかぁ?」
「もー……被身子ちゃんだよ。渡我被身子。……あなたが居るから私は生きられるの。私の生きる理由だよ。」
「……嬉しいです。流水さん。」
さっきの嫌な気持ちはどこへやら……流水さんは魔法使いですか?
「ふふ。……話を戻すけど、じゃあ私みたいなヒーローばかりだと良いのかって言われるとそれも違うよね。そんなの正義と悪の境がめちゃくちゃになっちゃう。」
「……はい。」
「だから……今が1番バランスがいいんじゃないかなって思うの。」
「……バランスですか?」
「うん。この程度の被害で抑えて、対処しきる。これくらいの塩梅が1番ちょうどいいんじゃないかな。色々と……さ。」
「…………少し……複雑です。」
「アハハハ!そうだよね!……でも。これも私達の仕事だから。この被害を背負って進むのも。復旧して後の世代に被害がなかったように見せるのも。全部。全部。」
「……はい。」
全部……背負って前に進む。何も無かったように見せる。それってきっと社会が強くないと出来ない事ですよね。
私達が、ヒーローがいるってだけで社会全体が強くなれるのなら……私だって。
「うん。いい顔になったね♪見惚れちゃうよ。」
「まだ見惚れてなかったんですか?」
「毎日見惚れてる♪」
「ですよね♪」
「さーて。帰ってご飯作るぞー!」
「おー!」
まだまだ明るい夕焼け空。夏はいいですね。私……この時間が大好きです。