The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

109 / 109
お気に入りとコメントは励みになるので皆さんお願いします
誤字脱字報告も同じく励みになります


解放者

「……とにかく、手掛かりを探しましょう、時間はまだ、あるかもしれません」ハナコ

 

 

 

その一言に、皆は改めて気を引き締め、屋根裏部屋の捜索を再開する。テーブルの下、クローゼットの中、床板の隙間まで──僅かな痕跡でも見逃すまいと、目を光らせながら。

 

 

 

「……何も、出て来ませんね」ヒフミ

 

 

「メモの一枚も、ないな」アズサ

 

 

 

十数分の捜索の末、めぼしい手掛かりは何一つ見つからなかった。焦燥が再び皆の胸に広がり始めた、その時──ヒフミのポケットの中、端末が着信音を鳴らした。

 

 

 

「──ッ!?」ヒフミ

 

 

「な、なに……!?」コハル

 

 

 

全員の視線が、ヒフミの手元へと集まる。ヒフミは震える指先で端末を取り出し、画面を確認した。

 

 

 

「……表示、されていません、番号非通知です」ヒフミ

 

 

「……出るべきでしょうか」ミヅホ

 

 

「念の為、スピーカーにして下さい」ハナコ

 

 

 

ハナコの指示に頷き、ヒフミはスピーカー通話に切り替えると、震える声で応答した。

 

 

 

「……はい、もしもし……?」ヒフミ

 

 

──ヒフミ?」???

 

 

 

その声に、その場にいた全員が息を呑んだ。

 

 

 

「──せ、先生!?」ヒフミ

 

 

「せ、先生って、あの先生!?」コハル

 

 

「そんな……どうして──」ハナコ

 

 

 

端末から響くその声は、紛れもなく──囚われの身であった筈の、先生からのものであった。

 

 

 

皆、無事か!?隆一

 

 

「先生、その、一体どういう事ですか!?先生は、ティーパーティーに拘束されていた筈じゃ……!」ヒフミ

 

 

 

困惑を隠せないまま、ヒフミは矢継ぎ早に問い掛ける。しかし、返って来た声には──先生自身の困惑もまた、色濃く滲んでいた。

 

 

 

……それが、俺自身にもあんまし良く分かんネェんだよこれが隆一

 

 

「分からない、とは……?」アズサ

 

 

さっき、突然監禁されていた部屋の鍵が開いて……ティーパーティーの連中が、何・故・か俺を釈放したんだよ」隆一

 

 

「しゃ、釈放……?」ヒフミ

 

 

あぁ、拘束は解かれて、おまけにネームタグに外套まで返された、結局何をすればいいかもわからず、そのまま部屋を出て行ったって具合だ」隆一

 

 

 

その説明に、補習授業部の面々は互いに顔を見合わせた。

 

 

 

「……意味が、分かりません」ハナコ

 

 

「拘束されていた先生が、突然解放される……その理由が、まるで見えて来ませんね」ミヅホ

 

 

 

ミヅホは眉を寄せ、腕を組んだまま考え込む。ハナコもまた、思案するように視線を落とした。

 

 

「私も、色々と考えているんだが……ナギサが心変わりでもしたのか、それとも──」アズサ

 

 

「──ナギサさんの事なんですだけど」ヒフミ

 

 

 

アズサの一言に、電話口の先生の声が僅かに強張った。

 

 

 

「せ、先生……実は、ナギサ様のセーフハウス、もぬけの殻だったんです」ヒフミ

 

 

……何だって?」隆一

 

 

「争った形跡はないんですが……忽然と姿を消していて」ヒフミ

 

 

 

電話口の向こうで、先生が息を呑む気配が伝わった。

 

 

 

……そう、か」隆一

 

 

「先生の解放と、ナギサ様の失踪……何か、繋がっているのでしょうか?」ヒフミ

 

 

正直、俺にも分からない」隆一

 

 

 

その言葉に、部屋の中に沈黙が落ちた。誰も、その因果関係を紐解く事が出来ずにいた。ミヅホとハナコ、この場で最も聡明な二人をしても、答えは見えて来ない。

 

 

 

「……幾つか、可能性を考えてみましょう」ハナコ

 

 

 

ハナコが静かに切り出す。

 

 

 

「一つ、ナギサさんが自身の行いを悔い改め、先生を釈放した──しかし、それならば何故、彼女自身が姿を消す必要があるのでしょう」ハナコ

 

 

「二つ目、ナギサさんの身に何らかの不都合が起こり、それが原因で先生を釈放せざるを得なくなった」ミヅホ

 

 

「三つ目は……ティーパーティー内部で、何か大きな出来事が起きた可能性ですね」ハナコ

 

 

「──しかしいずれも、決定打に欠けます」ミヅホ

 

 

「うぅ……」コハル

 

 

 

三つの可能性、どれも辻褄が合うようで、しかし決定打には至らない。あくまで推測の範疇でしかなかった。

 

 

 

……取り敢えず、今は落ち着いて考えよう」隆一

 

 

「そう、ですね……」ヒフミ

 

 

皆は今、どこに?」隆一

 

 

「ナギサ様のセーフハウスです、この後どう動くべきか……」ヒフミ

 

 

分かった、こっちも状況を整理する、また連絡する」隆一

 

 

 

通話が切れた後も、部屋には重い沈黙が残った。誰も、次の一手を口にできない。刻一刻と過ぎていく時間だけが、彼女達の焦りを煽っていた。

 

 

 

「……時間が、ないですね」ハナコ

 

 

「試験開始まで、あとどれくらいだ」アズサ

 

 

「あと、僅か……」ヒフミ

 

 

 

誰もが、答えの出ない問いを抱えたまま、次の行動を模索し続けるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

探究者の為の世界樹(作者:ロングコート)(原作:ブルーアーカイブ)

これは色彩が去り、キヴォトスに平和が戻った後の物語。▼ゲマトリアに属し、黒服と共に行動していたこの物語の主人公"ユグドラシル"。黒服から下された指令「キヴォトスの学園に属すること」を遂行する為に「智神ジル」として過ごす事になった彼女に待つ出会いと事件、そして過去の因縁、それらが織り成し待ち受ける終極とは……


総合評価:-2/評価:3.33/完結:57話/更新日時:2026年08月19日(水) 06:17 小説情報

銃社会を、吸血鬼は生きる(作者:MIKAZUKIN2525)(原作:ブルーアーカイブ)

体は子供。記憶はなし。そんな状態でキヴォトスに転生してしまった主人公。▼つらくても、苦しくても、めげずに生き抜いてやる。▼本編は0章からになります。


総合評価:243/評価:5.14/連載:105話/更新日時:2026年09月08日(火) 06:00 小説情報

自由自在に反転できる男(作者:天叢)(原作:ブルーアーカイブ)

転生してから反転できる何でもありな男がキヴォトスで生きる話▼尚、元の世界でもチートだった模様▼リメイク版↓▼https://syosetu.org/novel/425721/


総合評価:393/評価:5.07/連載:27話/更新日時:2026年09月09日(水) 12:00 小説情報

楽しい銃社会の生き抜き方(作者:WEVE)(原作:ブルーアーカイブ)

ミレニアムサイエンススクールに所属するキヴォトス唯一の男子生徒『居待(イマチ) ウツキ』がなんやかんやありながら学園生活を満喫(?)する話▼今後必須以外タグ追加の可能性があるので苦手な方はブラウザバックを推奨してます▼大体許せるよって方は是非読んでいってください!▼現在の進捗▼アビドス編1,2章 完結▼ミレニアム編1章 完結▼エデン条約編1,2章 更新中


総合評価:554/評価:6.89/連載:51話/更新日時:2026年09月02日(水) 15:30 小説情報

都市の住人、透き通る世界へ(作者:一般通過市民X)(原作:ブルーアーカイブ)

都市にいるとある一人の住人がキヴォトスへ行って何を見、何を思うのか▼都市で一人の特色にまで上り詰めた人間の透き通る学園生活▼とてもとても下手な文章ですがどうか頑張って読んでください


総合評価:59/評価:-.--/連載:15話/更新日時:2026年07月17日(金) 15:25 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>