The Hypocrite's Archive 作:Xelphyr
誤字脱字報告も同じく励みになります
「ミカさん、一つ聞かせて下さい!セイアさんを襲撃したのも、あなたの指示だったのですか!?」ミヅホ
「うん?セイアちゃん?あぁ……あはは、そうだよ?いっつも楽園だの何だの難しい事ばっかり並べ立てて、私の事を馬鹿にしていたからさぁ」ミカ
「馬鹿にする……?そんな、セイアさんは、そんな人では──」ミヅホ
薄ら笑いを浮かべていたミカの表情に、ふっと影が落ちる。
「──でも、ヘイローを破壊しろとは言っていないよ、私は、人殺しなんか指示していない」ミカ
「っ……!?」ハナコ
「それ以上は当事者に聞いた方が早いんじゃないかなぁ?ねぇ──白洲アズサ」ミカ
「ッ……!」アズサ
「答えてよ、白洲アズサ」ミカ
「そ、れは……違う、私は──」アズサ
「違う、で片付けられる話じゃないでしょ?」ミカ
言葉に詰まるアズサ。その刹那、体育館の外から大きな爆音が響いた。
「こ、此方チームヘルメス!包囲部隊が攻撃を受け──ッ!?」チームヘルメスモブ
「なっ──!?」アリウス隊長
「……包囲部隊に攻撃?何で──」ミカ
「それは少々、甘い考えですよ、ミカさん」???
体育館の入り口から無数の弾丸が飛来し、アリウスの生徒達が次々と薙ぎ払われる。
「……歌住、サクラコ」ミカ
「えぇ、夜分遅くに、随分と騒がしいではありませんか?ミカさん」サクラコ
「や、やった……!増援……!」コハル
凛とした修道女服の生徒達が、ミカとアリウスの前に立ちはだかる。トリニティ大聖堂を拠点とする一大派閥──
「浦和、ハナコ……ッ!」ミカ
「今度は、私達が動く番です!」サクラコ
「ふふっ、残念ですが、私だけではありません──私よりも先に接触していたのは、先生です」ハナコ
「っ……!」ミカ
「ティーパーティー、聖園ミカさん、傷害教唆及び傷害未遂で、あなたの身柄を拘束します」サクラコ
「……あはっ、シスターフッドまで動くなんて、本当に想定外だよ」ミカ
「なるほどね、流石先生……これが切り札って事かな?」ミカ
「まだ、そんな余裕あるんだ」ミカ
「いや──手札はまだだ」隆一
その直後、足元に投げ込まれた閃光弾が、周囲を白く塗り潰す。混乱の中、銃声と共に灰色の制服の一団が駆け付けた。
「──守月スズミ、先生の要請により参上致しました」スズミ
「っ、トリニティ自警団……」ミカ
「お久しぶりですね、先生、お怪我が無い様で何よりです」スズミ
「ああ、久しぶりだな……んで、こいつがラストジョーカーだ」隆一
「これも自警団任務の延長線上です、数は多くありませんが──」スズミ
「あはっ、パトロールだけしていれば良いのに」ミカ
「それでは、任務放棄になってしまいます」スズミ
「……トリニティの安寧を脅かす、それを見過ごす訳にはいきません、私達も、トリニティの一員ですから」スズミ
「これで戦力差はイーブンだ、ミカ」隆一
「まだ、諦めるには早いと思うか?」隆一
「……うん、本当に、流石だよ先生」ミカ
シスターフッドとトリニティ自警団の増援を加えれば、戦力差はほぼ拮抗する。夜明けまで持ち堪えれば、アリウスは撤退せざるを得ない──その事実は、ミカの顔から笑みを消すのに十分だった。
「漸く、顔色が変わりましたね、ミカさん」ハナコ
「そうかな?まぁ、大聖堂も掃除するチャンスだと思う事にしようかな」ミカ
彼女は
「──よし!やれる所までやってみよっか!」ミカ
「……あくまで、戦うつもりですか?」ハナコ
「だからと言って諦められる筈なんてないんだよ、私は──行く所まで行くしかないんだから。シスターフッドも、自警団も、補習授業部も、全部薙ぎ倒して、ゲヘナを殲滅して、綺麗になったキヴォトスで新しいトリニティを作るんだ」ミカ
その行く手を、隆一が遮った。
「──そんな事はさせねぇ!」隆一
「……先生」ミカ
「ミカ……本当はそんな未来、ハナから望んでないだろ?」隆一
「先生とはもう、あんまり話したくないんだけれどなぁ……声を聞けば聞く程、胸が苦しくなるんだもん」ミカ
「……先生はさ、まだ私が戻れるって、本当にそう思うの?」ミカ
「思っていなきゃ俺はお前の事をとっくのとうに見捨てているか、セイアのように殺しているさ」隆一
「優しいなぁ、ホントに……でも、先生がそうでも、周りはどうかな?」ミカ
「──俺がどうにだってしてやるよ」隆一
「ナギちゃんは、きっと、私を許してくれないよ」ミカ
「そんな事は無い、それにナギサこそ、誰からも許されるようなことをしていない」隆一
「……何で、そこまで私を気に掛けてくれるの?」ミカ
「気に掛ける理由なんて、要るのか?」隆一
「──まっさか自分から吹っかけておいて忘れたのか、ミカ?」隆一
その一言に、ミカの唇が歪む。滲んだ視界の中、乾いた笑いが零れた。
「あ、あはは、やめときなよ、先生……そんな事をする価値なんて、私には──」ミカ
「俺の仲間は補習授業部だって、ティーパーティーだって、自警団だって、シスターフッドだって、トリニティもゲヘナも、アリウスも──ミカだって」隆一
「皆、俺にとって唯一無二の、大切な生徒だかんな」隆一
ミカの目が見開かれ、揺れていた銃口がやがて力なく地面へと落ちる。頬を伝う涙を自覚した彼女は、大口を開けて笑った。
「あは……ははっ、あはははッ! はぁー、もう~……ほんと、やだなぁ」ミカ
項垂れたまま、彼女は独白する。何であの些細な悪戯が、こんな結末に繋がってしまったのか。本当はいつか、皆と笑い合える未来を望んでいただけだったのに。
「でも、駄目だよ、駄目なんだよ先生、今更、戻るなんてさぁ……積み重ねたら、積み重ねた分だけ、その拳を降ろすには勇気が要るの……私は──行くところまで、行くしかないの」ミカ
「戻れないなら、今からでも引き摺り戻してやる」隆一
「ふふっ、良いなぁ、先生のその目──いやー、駄目だなぁ、私……あはは……」ミカ
そんな彼女に、ハナコが歩み寄る。
「ミカさん、セイアちゃんは……」ハナコ
「……本当に、殺すつもりなんてなかったの、ほんの少し、脅かすつもりだったんだよ……セイアちゃん、元々体が弱かったし」ミカ
自らが重ね続けたあまりにも重すぎる業を、一生背負って生きていく──そう覚悟を決めていたミカに、ハナコは静かに告げた。
「セイアさんは、生きています」ハナコ
「──……え?」ミカ
「本当、ですか……?」ミカ
「はい、間違いありません」ハナコ
「襲撃犯が見つからなかった為、今は安全を確保する為にトリニティ外部で身を隠しています、傷はまだ治り切っておらず、目も覚ましてはいませんが……それでも命に別状はなく、救護騎士団のミネ団長が今も直ぐ傍で警護しています」ハナコ
ミカは目を見開いたまま、ハナコを凝視する。そこに、慰めや嘘の色は見えなかった。
「……そっ、かぁ──生きて、いたんだ……セイアちゃん──なぁんだ……あはは……は……」ミカ
それは、安堵の声だった。ずっと自分が殺したのだと、その死に報いなければと走り続けて来た日々。けれど、その前提そのものが間違っていた。自分がやって来た事は、ただ独りよがりに暴走しただけの、間抜けな騒動に過ぎなかった。
そこまで考えて、ミカは笑った。嘲笑ではない、自分自身に呆れ果てた、そんな笑みだった。
「あはは、はぁ、はーッ、そっかぁ~……分かった、降参、私の負けだよ」ミカ
愛銃を放り投げ、両手を大きく投げ出したミカは、清々しそうに目を瞑る。
「おめでとう、補習授業部、そして先生……あなた達の勝ちって事にしておいてあげる」ミカ
「ミカ……」隆一
「私の事も、好きにして、もう今更抵抗するつもりなんて無いよ」ミカ