The Hypocrite's Archive 作:Xelphyr
誤字脱字報告は生き甲斐です
アビドス校門前
1台の現金輸送車が止まっていた。
今日は利息の返済日で全身義体のドライバーが、返済額の確認をしている。
「…お待たせしました。変動金利等を諸々適用し、利息は788万3250円ですね。すべて現金でお支払いいただきました、以上となります。カイザーローンとお取引いただき毎度ありがとうございます。来月もよろしくおねがいいたします」
義務的に事務的に話すべきことを話したドライバーは、車に乗りアビドスを去っていった。
「はぁ…今月もなんとか乗りきったね〜」ホシノ
「……アヤネちゃん、完済まであとどれくらい?」セリカ
「309年返済だよセリカちゃん…」アヤネ
「アヤネちゃんよくパッと数字出るね…」セリカ
「所で、カイザーローンはなんで現金だけなんでしょう…わざわざ現金輸送車まで手配して」ノノミ
「お上がアナログなんじゃねぇの?知らんけど」隆一
「先生!」セリカ
「では報告をはじめます。一つ目は昨晩の襲撃、便利屋68についてです。リーダーの
「……ゲヘナか」
「先生…まさか、ゲヘナもトリニティも知ってるの?」
「最低限の知識はここに来てからねじ込んである。ただ、中身はさっぱりだ。知っているのは名前だけ。」
まだ彼はここに来てから日が浅く、まだ分かっていない事も多い…仕方がないのでアヤネが説明する。
「このキヴォトスには数多くの学園が存在しているのですが…その中でも飛び抜けて規模が大きいのが、
「ゲヘナの方は自由と混沌を校風としている…まぁ治安はいい方ではないかな〜」ホシノ
「ん…逆にトリニティは規律とかミッション系のお嬢様学校といった雰囲気だよ、治安はまだいい方…けど、一部じゃいじめなんかもあるって噂もある」シロコ
「この二つの学園って昔から対立してるんだよねぇ〜ゲヘナの子は『苦労も知らないお嬢様に見下されてるのが気に入らない』とか、逆にトリニティの子は『ルールも守れない野蛮な連中で、見るのも嫌!』みたいなね」ホシノ
こんな感じで説明され、彼はなんとなく理解…そして一言。
「何も学ばないんだな」
「……それ言っちゃう?」
「『人の振り見て我が振り直せ』だ。顔も知らない余所者を陰で叩く前に、せめて自分の体裁を整える。…そんな安直で単純明快な事さえ理解出来ない古腐った肥溜めのような脳味噌なのかと思っただけだ」
欠伸をしながらも流れるように毒を吐く彼に少なからず引きつつ、アヤネは彼の言葉に応える。
「…他人ばかり見て、自分達の悪い所を直そうともしないのが嫌と?」アヤネ
「その通り。偏見と厭悪で人を判断し、見下し、嘲笑い、貶す。
「まあちょっとわかるけど…」ホシノ
「話を戻しますと、陸八魔アルさん達はそこに在籍していて…
「社長って自分で言ってたね〜。学園の校則無視して起業とか、かなり問題児だねぇ」ホシノ
「実際、ゲヘナでは指名手配も受けているそうです」アヤネ
「なるほどね…(指名手配…最悪それ口実にアビドスの学園運営にゲヘナが首を突っ込む可能性が無きにしも非ず、注意せねばならんな)」隆一
「そして次の報告です」
アヤネが違法部品を机に並べる。
「再三の襲撃事件の犯人、カタカタヘルメット団は何らかの組織に雇われていて、雇っていたと思われる人物は、既に取引がされていない型番である違法部品を使っていました。生産が終わっている装備を入手する方法は、表立ったものは存在しません。…つまり、ブラックマーケットから仕入れたものと断定しました」アヤネ
「ブラックマーケット?」隆一
「まぁ掃き溜めだよね〜……中退、退学、放校・除籍処分…他にも色んな理由で学校を辞めた、或いは辞めざるを得なかった連中が集まって、連邦生徒会非認可組織を形成する、一種のブラックボックス、大体のものはあそこに流れ着くんじゃないかな〜」
「……闇市か。」隆一
「まあ、そんな感じかな〜」ホシノ
「そのブラックマーケットでも、便利屋68は騒ぎを起こしているそうです」アヤネ
「つまりその共通点を探ってみよう!という話ですね?アヤネちゃん」ノノミ
「はい。現状、他に有効な選択肢がないので、ひとまずの目標をそれに設定するのがいいと思ったんですが…どうでしょう、ホシノ先輩」
「いいんじゃなーい?んじゃ、シロコちゃんの眠気覚ましも兼ねて、早速行ってみようか〜」ホシノ
「これで以上です。他に何か、ありますか?」
アヤネの言葉が、部室に響く。これで今日の所は一旦終わりだ。そう思った時だった。
「追加だ」
彼が手を挙げながら、そう口にする。
「は…はい。先生?どうしました?」
「そのアヤネの言う
「「「「!?」」」」
「丁度、見つけてきた。」
全員で書類を確認する。目に映る内容を理解する度に、顔を顰めていく。
「…返済者、アビドス高等学校。788万3250円の集金を確認。…支援、カタカタヘルメット団。任務補助金500万円提供………!?」セリカ
「…こ、これって…」シロコ
「…私たちのお金で、私たちの学校を襲った奴らを支援していた…?」ノノミ
「…つまり、再三アビドスを襲撃したカタカタヘルメット団はカイザーローンに雇われた。そしてそのカイザーローン自体はカイザーコーポレーションの子会社。これで全てが繋がった。」隆一
「で、でも!り、理解できません!学校が破産したら、貸し付けたお金を回収出来ないじゃないですか!どうしてこんなことを…!?」ノノミ
セリカとアヤネが呆けていて理解が追いついていないらしい。
ノノミの言葉は尤もである。
そもそもの話銀行は、相手にお金を貸し(①)、その貸したお金を返済して貰う際、貸したお金に
しかし、その貸付先の返済能力を奪うのは、貸したお金が踏み倒される(③)、即ち延々と損をし続ける(④)だけで常識的に考えれば自らの首を絞めているのと変わらない。
だが、そもそも返済能力を失わせることそのものが目的だとしたら。たとえカイザーローンが不利益を被ろうと、親会社であるカイザーコーポレーションにとっては切り捨てればいいだけで痛くも痒くもない。
「……この件、銀行単独の仕業じゃなさそうだね、カイザーコーポレーションが関わってるとしか思えない」シロコ
「やっぱり!直接潰したほうがいいんじゃ…」
「だめだ、相手は
「…もう」セリカ
隆一の指摘に、生徒達はどんどん曇り始め、皆揃って難しそうな顔をしていた。