The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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揺れ動く

「…私はそろそろドロンかな」

 

「え?どこかに用事でも?」

 

「みんながどうしてるか気になっただけで今日はオフなんでねー……先生も柴関で誰かと話すって言ってたし、おじさんもどこかでゆっくりサボってるよー、なんかあったら連絡よろしくー」

 

「あ、はい。わかりました。…またお昼寝ですかね」

 

 

 

 

ホシノが歩いていく。

 

最初はゆっくり途中からは走って迷いなく、ある場所に向かう。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

無人ビル。管理されていない筈の建物のエレベーターは稼働している。エレベーターに乗って上へ上へとホシノは登る

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

辿り着いた先に、()()はいた。

 

 

「お待ちしておりました。暁のホル………いえ、失礼。小鳥遊ホシノさん……未だにキヴォトスには不慣れで……こちらへどうぞ」???

 

「…今度は何の用…黒服

 

 

 

 


 

 

 

 

「いっただきまーす!」ムツキ

 

「ひ、ひとり一杯……こんな贅沢、してもいいんですか…?」ハルカ

 

「隆一の知り合いだろ?替え玉もサービスだ、遠慮すんな」柴大将

 

「…との事だ。みんな、遠慮すんなって」隆一

 

 

 

 

湯気が立ち上る。

 

スープの香りが、空腹を刺激する。

 

 

 

 

柴関ラーメン。

その入口近くの六人席に、便利屋68with隆一(シャーレの先生)は陣取っていた。

 

 

 

 

先生の奢りでありつけた久しぶりの“ひとり一杯”。

 

ただそれだけ。それだけなのに──妙に、妙に嬉しい。

 

「んぐ……美味しいのに、誰もいないって、なんか変ね」アル

 

「場所でしょ。廃校寸前の学校の近くだし、交通も死んでるし」カヨコ

 

「……まぁ、人少ない方が楽でいいけどね」カヨコ

 

 

 

 

―――――――――Toki ha Nagarete―――――――――

 

 

 

 

「「「「ごちそうさまでした」」」」便利屋一同

 

 

 

 

便利屋は先生の奢りのラーメンを食べ終えていた。

 

「ありがとう先生…この借りはいつか返すわ」アル

 

「ありがとね〜先生。昨日から何も食べてなかったから、もう大満足!」ムツキ

 

「…他の味も食べられてよかった、ありがとう先生」カヨコ

 

「あ…ありがとう…ございます…先生…」ハルカ

 

「構わんよ。勝手に呼び出したのも俺だし。むしろ、礼を言うのはこっちだ。ありがとうな。こんな俺の誘いに乗ってくれて」

 

 

 

 

「それで先生…お話って?」

 

「ああ、そうだったな。アル…じゃなくて便利屋68…

 

シャーレに来ないか?

 

 

 

 

「それ…依頼じゃダメなの?」

 

「さあな。社長たるアル()次第だ。シャーレ特戦隊(KSCU)所属なら毎月の給金は保証するし、無論福利厚生もだ。宿舎は風呂トイレ等水回り完備、職場?にも直結だからラッシュに揉まれる必要もなし、棟内にはコンビニ、食堂、体育館、ゲームセンターに図書館、庭園やジムもある。別に今の学校に通いたいなら、学費もコッチで出すさ。シャーレ所属か特戦所属ってだけで、今より融資もかなりハードルの差はあるだろうしな〜」

 

「うぐッ……!」

 

先生の言葉に思わず息を呑むアル。いざこうして聞かされると好待遇──いや、それどころの話ではない。公園生活(ホームレス)すら体験した便利屋にとって、三食付きに安定した給与、更には宿舎完備で必要なものが全部揃っている環境は天国にすら思えた。以前のアルであれば、もしくはその待遇の良さに折れて頷いていたかもしれない。

 

 

 

 

しかし──しかしである。

 

今の便利屋には依頼料として依頼主から贈られた資金があった。アルは胸を張り、鼻を鳴らしながら先生の提案を一蹴する。

 

 

 

 

「で、でも私達は誰の指示も受けない、孤高のアウトローを目指しているのっ! 首輪を付けられるなんてごめんだわッ! 提案は凄く……凄く魅力的だけれど、それはそれ、これはこれよ!」

 

「そうか。じゃあ保留と言う形にしておくよ。」

 

そう言い、彼はカバンから出し掛けていた書類(おそらく契約書の類)をしまい、チャックを閉めた。その時だった。

 

 

 

 

「ねえ先生?何であの時あんなことをしたの?」

 

「…()()()()()?」

 

「そうよ。襲撃した時、普通ならあそこで怒るとかが普通なのに貴方は見逃すどころか医者まで呼んでくれた…あれは嬉しかったわ」

 

 

 

 

ムツキが彼に訊く。普通ならあそこで襲撃(敗北)者は何をされても文句は言えない…しかし彼は怪我をした四人に追い打ちをかけるどころか、何ならシャーレの部室に一晩泊めた挙句、セリナに手当までさせて貰った、彼女らにとっては、それが謎で謎でたまらなかった。

 

 

 

 

「簡単だ。ただ敵であろうと、傷ついている人間が居たら助けるし、礼を払う。それが善き人としての在り方ってもんだ」

 

 

 

 

彼は淡々と、そう口にした。

 

「…本当にそれだけ?」アル

 

「…まあ本当はもうちっとある。俺はこのキヴォトスについて、よく分かってない事が多い。だからこそ、こうやって横の繋がり(対人関係)を大事にするつもりだ」隆一

 

「…意外と素直なのね」アル

 

「まあな、俺の長所だからな」隆一

 

「…もし、もしそうだとしてもよ。私たちは一度貴方達を襲った張本人なのよ?どうしてここまで関わろうとするの?」アル

 

 

 

 

彼は手を合わせ『ごちそうさま』と言う、そして、アルに言った。

 

 

 

 

「俺は"先生"だ。素行が悪かろうと、引く程クソ真面目だろうと、問題児だろうと。抑の話、人と仲良くなりたいと思うのは至って普通」隆一

 

「……悪人でも?」アル

 

「悪人でも、な。俺がここにいる限り…ここにいる生徒達はみんな俺の仲間、困ったことがあれば手を貸すし助けて欲しいなら助ける…そう決めたからな」隆一

 

「…フフッ…フフフフッ」アル

 

「?」隆一

 

「そう…それが貴方なのね」アル

 

「??」隆一

 

「シャーレ転属の件、喜んで受理するとするわ」アル

 

「…ホントか?」隆一

 

「えーと…仲良しになった、ってことですか?」ハルカ

 

「そうみたいだね……まあ先生との繋がりはゲット?かな」カヨコ

 

「アルちゃんナイス〜〜!じゃあ先生!これから先何かあったら……」ムツキ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし──その瞬間。

 

 

 

 

ドゴォォォンッッ!!!

 

 

 

 

テーブルが、吹き飛んだ。

 

木片が宙を舞う。

 

 

 

 

爆音。

 

衝撃波。

 

 

 

 

理解が追いつかない。

 

 

 

 

──上空。

 

 

 

 

迫撃砲弾が、煙を引いていた。

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