The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

142 / 143
お気に入りとコメントは励みになるので皆さんお願いします
誤字脱字報告も同じく励みになります


さらば

隆一の銃撃が轟くたび、聖徒会の隊列は少しずつ瓦解していった。その光景を目にした生徒達の表情にも、ようやく血の気が戻り始める。

 

 

 

「す、すごい……!先生が一人で、道を切り開いています……!」シスターフッドモブI

 

 

「あの方は、本当に、人間なのですか……」正実モブA

 

 

「考えるのは後です!今は、あの背中を追いましょう!」シスターフッドモブII

 

 

「ぼんやりしている場合ではありません!先生に遅れないで!」ハスミ

 

 

「先生に続けッ!押し切れッ!」正実モブB

 

 

「道は私達が作ります!」シスターフッドモブII

 

 

「ヒナ、髪に血が付いてる。どこか怪我してないか」隆一

 

 

「ほとんど返り血。それより、前に集中して」ヒナ

 

 

「了解だ。だが、少しでも変だと思ったら、すぐ言えよ」隆一

 

 

「……分かってる。お互い様。先生こそ、ね」ヒナ

 

 

「ははっ、確かに」隆一

 

 

「右側の連中は、私達が受け持ちます!」正実モブ

 

 

「前方、残り二十ほどです!でも、後ろからも新手が来ています!」シスターフッドモブ

 

 

「後ろは見なくていい!前だけを見て!」ハスミ

 

 

「で、ですが、このままでは挟まれて……!」シスターフッドモブ

 

 

「私がまとめて薙ぎ払う。あなた達は、前へ進むことだけ考えて」ヒナ

 

 

「ひ、ヒナ委員長……!」シスターフッドモブ

 

 

「では左は私が。ヒナタさんは後方警戒を!」ハスミ

 

 

「はい、お任せください!……それにしても、私の鞄……あれがあれば、もう少し戦えたのですが……」ヒナタ

 

 

「鞄の話は後にしてください、ヒナタさん。無事に戻れたら、一緒に探しますから」ハスミ

 

 

「ほ、本当ですか?ありがとうございます……!」ヒナタ

 

 

 

包囲を突破し、増援と救援、そして弾薬を手に入れる。皆が同じ一点を見据え、死力を振り絞って前進した。

 

 

 

「負傷者は中央へ集まれ!動ける者は外側を固めろ!」隆一

 

 

「はいっ!」シスターフッドモブII

 

 

「分かりました、先生!」正実モブ

 

 

「先生の指示に従ってください!迷っている暇があるなら、一歩でも前へ!」ハスミ

 

 

「はいっ!」シスターフッドモブI

 

 

「移動しながら戦うのは慣れていないだろうが、走れ。足を止めれば、的になるだけだ」隆一

 

 

「弾薬が……もう、残り三発しかありません……!」正実モブB

 

 

「なら、三発で三人倒しなさい!外したら、拳で殴るつもりで!」ハスミ

 

 

「は、はいッ!」正実モブC

 

 

「手榴弾、これで最後です!」シスターフッドモブI

 

 

「投げてください!」ハスミ

 

 

 

爆発が聖徒会を数人まとめて吹き飛ばす。手榴弾が尽きると、弾薬から抜いた火薬に火をつけて投げた。銃弾がなくなれば、ガラス片や瓦礫を拾い上げて投げつけた。

 

 

 

「ぐっ、はぁッ……!まだ、まだ投げられます……!」正実モブA

 

 

「ええ、その調子です!あなたの一投が、道を開きます!」ハスミ

 

 

「きゃっ……!」シスターフッドモブII

 

 

「大丈夫ですか!立てますか!」正実モブB

 

 

「は、はい……ありがとうございます、まだ、走れます……!」シスターフッドモブII

 

 

「私の肩に掴まってください。一緒に行きましょう」正実モブB

 

 

「正義実現委員会の方に助けていただく日が来るなんて……」シスターフッドモブII

 

 

「今は所属なんて関係ありません!」正実モブB

 

 

「石でも何でも持って!一歩でも前へ!」ヒナタ

 

 

「こ、これ、さっきまで教会の飾りだった瓦礫ですよ……罰が当たりませんか……?」シスターフッドモブI

 

 

「それに、怖いんです……手が震えて止まらなくて……」シスターフッドモブIII

 

 

「怖くて当然です。私も、足が竦みそうですから」ヒナタ

 

 

「ヒナタさんも……?」シスターフッドモブIII

 

 

「はい。でも、一人ではありませんから。皆さんが一緒なら、きっと前へ進めます」ヒナタ

 

 

「……はい、そうですね」シスターフッドモブII

 

 

「罰なら、後でいくらでも受けます!今は、生き延びることだけ考えて!」ヒナタ

 

 

「は、はいっ!」シスターフッドモブII

 

 

「……石を投げる戦い方なんて、初めて見た」ヒナ

 

 

「私もです。ですが、意外と効いているようですね」ハスミ

 

 

「意外とじゃない。効いてる。皆、よくやってる」ヒナ

 

 

「……ええ。本当に、頼もしい限りです」ハスミ

 

 

 

血と煤にまみれた生徒達が、泥だらけになって叫ぶ。デストロイヤーの掃射が先の敵を一掃し、隆一のハンドガンが突破口を広げた。

 

 

 

「風紀委員長、そちらは大丈夫ですか!」ハスミ

 

 

「問題ない。弾はまだある。それより、あなた達の方が心配」ヒナ

 

 

「ご心配なく。この程度で倒れたりはしません」ハスミ

 

 

「……そう。なら、遠慮なく背中を預ける」ヒナ

 

 

「ええ、お互いに」ハスミ

 

 

「……一つ言っておく」ヒナ

 

 

「何でしょう」ハスミ

 

 

「トリニティのことは、正直、今でも好きになれない。でも、今日だけは、あなた達と共闘できて良かったと思ってる」ヒナ

 

 

「……奇遇ですね。私も、ゲヘナは大嫌いです。ですが、あなたの射撃には、何度も命を救われました」ハスミ

 

 

「……そう」ヒナ

 

 

「ええ。ですから、この借りは、必ず返します」ハスミ

 

 

「期待しておく」ヒナ

 

 

「ヒナ、左の屋根の上、三体だ!」隆一

 

 

「見えてる」ヒナ

 

 

 

──ズドドドドドッ!

 

 

 

「ははっ、さすがだな!」隆一

 

 

「褒めている暇があるなら、前を見て」ヒナ

 

 

「はいはい」隆一

 

 

「先生、息が上がってないけど、本当に平気?」ヒナ

 

 

「あぁ、まだまだいける」隆一

 

 

「無理は禁物。私達は、先生に頼り切っているから」ヒナ

 

 

「頼り切っていい。そのくらいの覚悟は、とっくに出来てる」隆一

 

 

「ヒナさんの掃射、本当に凄まじい……!」正実モブB

 

 

「これが、ゲヘナ最強の力……!」シスターフッドモブII

 

 

「感心している暇があったら、足を動かして」ヒナ

 

 

「は、はいっ!」シスターフッドモブI

 

 

「風紀委員長に怒られた……」正実モブA

 

 

「怒ってない。ただ、急いでほしいだけ」ヒナ

 

 

「あの、先生……お体は、もう、大丈夫なのですか……?」シスターフッドモブII

 

 

「あぁ、平気だ。心配しなくていい」隆一

 

 

「ですが、先程から、何度も被弾されて……」シスターフッドモブI

 

 

「見た目ほど酷くない。それより前を向け。今は走ることだけ考えろ」隆一

 

 

「は、はいっ……!」シスターフッドモブII

 

 

「あと少しだ!抜けるぞ!」隆一

 

 

「……見えた、あそこが出口」ヒナ

 

 

「本当ですか!?」シスターフッドモブI

 

 

「あぁ、瓦礫の向こうに、炎のない通りが見える。そこまで走れ!」隆一

 

 

「……先生」ヒナ

 

 

「ん?」隆一

 

 

「無事に出られたら、さっきの話、ちゃんと説明して」ヒナ

 

 

「分かってる。約束する」隆一

 

 

「約束、だからね」ヒナ

 

 

「あぁ、必ず」隆一

 

 

「やった……!やりました、ハスミ先輩!」正実モブA

 

 

「無事に出られたら、皆で温かいものを食べたいですね」シスターフッドモブII

 

 

「あ、いいですね!私は甘いものが良いです!」正実モブB

 

 

「ふふっ。でしたら、トリニティ自慢のケーキを皆でご馳走しましょうか」ヒナタ

 

 

「でしたら、私が良いお店を予約しておきますね」シスターフッドモブI

 

 

「わあ、楽しみです!」正実モブC

 

 

「ゲヘナの方も、お誘いして良いのでしょうか……?」シスターフッドモブI

 

 

「……考えておきます」ハスミ

 

 

「素直じゃないのね」ヒナ

 

 

「何のことでしょう。……それより、まだ気を抜かないでください。外に出るまでが戦いです」ハスミ

 

 

「ケーキなら、俺が奢る。だから全員、無事に抜けてくれ」隆一

 

 

「えっ、本当ですか、先生!」正実モブA

 

 

「あぁ。ゲヘナの分もまとめて面倒を見てやる」隆一

 

 

「……私の分も、入ってる?」ヒナ

 

 

「当たり前だろ」隆一

 

 

「……そう。なら、なおさら生き延びないといけない」ヒナ

 

 

「はいっ!皆で、絶対に!」シスターフッドモブI

 

 

 

瓦礫の切れ目の先に、炎のない通りが見えていた。包囲網を抜ける、その寸前だった。

 

 

 

「ここを抜ければ、きっと味方の皆さんとも合流できるはずです!」ヒナタ

 

 

「ツルギ委員長も、きっとどこかで戦っておられます……!」正実モブA

 

 

「サクラコ様も、無事でいらっしゃいますように……」シスターフッドモブII

 

 

「ええ、信じましょう。あの方々が、簡単に倒れるはずがありません」ハスミ

 

 

「はい……!私達も、負けていられませんね」ヒナタ

 

 

「そうなれば、負傷者の手当ても、ようやく……!」シスターフッドモブI

 

 

「皆さん、あと少しだけ頑張ってください……!」ハスミ

 

 

「全員、聞こえるか」隆一

 

 

「は、はい!」正実モブII

 

 

「ここまで、本当によく頑張ってくれた。誰一人置いていかない。全員で、この通りを抜ける」隆一

 

 

「……はいっ!」シスターフッドモブI

 

 

「だから、最後まで諦めるな。俺が、必ず道を開く」隆一

 

 

「先生……!」ヒナタ

 

 

「……お願いします、先生。ですが、先生お一人に背負わせるつもりはありません」ハスミ

 

 

「あぁ、分かってる。一緒に行こう」隆一

 

 

 

──ぞくり。

 

 

 

全員の背筋を、冷たいものが這い上がった。

 

 

 

「っ……!?」ハスミ

 

 

「……今の、何……」ヒナ

 

 

 

聖徒会でも、アリウスでもない。さらに遠く、さらに深い場所から、何かがこちらを見ていた。尋常ではない殺気だった。生徒達の足が、一斉に止まる。

 

 

 

「な、何……この感じ……」ヒナタ

 

 

「……動けない……」正実モブB

 

 

「足が、足が言うことを聞きません……!」シスターフッドモブI

 

 

「皆さん、落ち着いて!動いてください、止まってはいけません……!」ハスミ

 

 

「で、でも、身体が……っ」正実モブC

 

 

「神様……どうか、どうか……」シスターフッドモブI

 

 

「祈っている暇は……ありません……ですが、これは……」ハスミ

 

 

「ヒナ委員長、これは、一体……」ヒナタ

 

 

「……分からない。ただ、とても嫌な予感がする」ヒナ

 

 

 

ヒナの指先は、引き金の上で凍りついていた。隆一の顔から、笑みが消える。

 

 

 

「まさか……」隆一

 

 

 

彼が言いかけた、その瞬間。

 

 

 

──緑色の閃光が、辺りを襲った。

 

 

 

「ッ!?」ヒナ

 

 

 

まぶしさに、生徒達は反射的に目を伏せた。それが、彼女達にとって最大にして最悪の失策だった。

 

 

 

──ズドォォォォンッ!

 

 

 

音は、ひと拍遅れて届いた。ライフルの射程をはるかに超えた位置からの狙撃。

 

 

ゆっくりと目を開けたヒナの視界に、さっきまで隆一が立っていた場所が映る。

 

 

 

「…………先生?」ヒナ

 

 

 

隆一は、そこに立っていたと言うべきか。顔の右半分は抉り取られ、左腕は鎖骨ごと消え、右の太腿もごっそり削がれていた。均衡を失った身体が、ぐらりと傾く。

 

 

 

「あ……」ハスミ

 

 

「いや……いやあああああッ!」ヒナタ

 

 

「う、そ……先生が……」シスターフッドモブII

 

 

「そんな、こんなの……嘘です……!」正実モブA

 

 

「先生が……撃たれ……」ハスミ

 

 

「目を、開けてください……先生……っ!」ヒナタ

 

 

「先生ッ!!」ヒナ

 

 

 

崩れ落ちる隆一のそばへ、ヒナが駆け寄る。彼女の叫びは、遠くの炎の向こうへと吸い込まれていった。




おやすみなさい。先生

更新の頻度はどれぐらいにしてほしい?

  • 1日〜2日に1本
  • 2日〜3日に1本
  • 1週間に1本
  • 2週間に1本
  • つべこべ言わず毎日書け♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。