The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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思い通りに

少しして、その場へ包囲網を狭める狙いで風紀委員達が進軍し、それに対してアビドスの生徒達がやってきた。

 

「…君達が、風紀委員会とやらか」

 

「ひ…ひぃ…」風紀委員会モブα

 

「腕…どうなってるのよ…」風紀委員会モブβ

 

二百余名の風紀委員会の前に立ち塞がるのは、左腕を根こそぎ千切った彼。問題なく動く右腕でリボルバーを突きつけ、抵抗の意思を見せる。

 

「随分とやってくれた…って…あれ?チナツ?」

 

「ご無沙汰してます…その怪我、大丈夫ですか?」

 

「ああ、腕?こんなもん/バキバキバキバキ/すぐ治る」

 

 

 

 

((((モ…モンスター…))))*1

 

 

 

 

「先生ぶ…―なによこの状況!?」セリカ

 

「なんでここにゲヘナの風紀委員会が?」

 

 

 

「ん……でも、なんか」

 

 

 

『…泣いてませんか?』

 

 

 

 

 

 

 

風紀委員達は銃を彼に向けて構える。

 

 

 

 

「モンスターだ!こいつ人の姿したモンスターだ!」ガチビビりモブ

 

「漏らした!今すぐ倒す!!」ガチビビりモブ

 

 

 

 

「やれやれ…人様が飯食ってる時に自治権侵害してまでこんな蛮行働いたお前らに言われる筋合いはないがな

 

 

 

 

相も変わらず、風紀委員会に対し挑発的な口調と文言で、埃と血で汚れた頭をガリガリと掻きながら口にする。

 

「ちょっと!なんでゲヘナの生徒がこっちで戦闘してんのよ!」セリカ

 

「そ…そこにいる便利屋の身柄を渡してくれれば、直ぐに帰る」イオリ

 

「…それ以前にここは私たちの自治区です。他の学園の自治区で、これだけの規模の戦力による戦術的行動を取った事……こんな暴挙を目の当たりにして、はいそうですかで終わらせることは出来ません」

 

アヤネは、そう淡々と口にした。

 

「です…よね……」

 

アヤネの発言に、チナツは申し訳なさそうな顔でそう答えた。

 

 

「うぅ…抵抗するなら、お前達も敵とみなして攻撃するぞ!」風紀委員会モブγ

 

「たかがそれだけの数で一個中隊に勝てるとでも?」イオリ

 

 

 

 

「ああ…俺は…

 

どんな卑怯なやり方でも勝つけどな

 

 

 

 

そう言い、彼は一個中隊、二百弱と同等の数の魔法陣を空中に出現させる。そしてその魔法陣は銃身を生やし、風紀委員会の生徒達に向かって移動すると、生徒一人一人に歩兵銃の銃口を突きつけた。

 

「ひ…ひぃっ!」風紀委員会モブα

 

「こんな卑怯な力…」風紀委員会モブβ

 

「ち…畜生!」イオリ

 

 

 

 

するとチナツが持っていた通信端末から、ホログラムが投影される。

 

 

 

 

「チナツ、そっちの状況はどうなっているのですか」???

 

「あ、アコ行政官!よかった!」チナツ

 

「…どうしたんですか?少し離れている間に何が?…あら、あなたは」アコ

 

「…………?」

 

 

 

 

ホログラムから現れたのはゲヘナ学園3年生、風紀委員会のNo.2に当たる行政官を務めている人物『天雨(あまう)アコ』であった。

 

 

 

 

「アコちゃん!!」イオリ

 

「誰がアコちゃんですか…どうしたんです?そんな泣きそうな顔になって、私が少し離れている間に何かトラブルでも?」アコ

 

「大有りだよ!!」イオリ

 

「……?何を言っているのですか?天下の風紀委員会が、そんなもの(たかが指名手配犯)に手こずる道理はないでしょう?」アコ

 

「手こずるよ!あんな化け物は!!」イオリ

 

「ば…化け物…?」アコ

 

 

 

 

アコはゲヘナの大部隊に命を出し、アビドス自治区へ進軍、そしてそこにいる便利屋を捕らえるように命を出していた。

 

しかし少しの間目を離していて、いま、その部隊に何があったのか知らないのだ。

 

 

 

 

「まあ気を取り直して…そちらのアビドスの方々は生徒会ということで、あっていますか?」

 

アコの問い掛けに、最初に口を開いたのはアヤネであった。

 

「ええ…私達が、アビドス()()()です」

 

「!?」ノノミ

 

「…なっ…!?」セリカ

 

「…アヤネちゃん!?」ホシノ

 

アビドスの他の面々は、動揺を隠せない。彼女らはアビドス()()()()()()()であって、アビドス()()()ではない。これもまた、彼の策謀だった。

 

 


 

砲撃のさらに数十分前

 

彼は電話をかけた。

 

「…もしもし、聞こえるか?アヤネ?」隆一

 

「は…はい?聞こえますよ」アヤネ

 

「あーなら良い。要件だ。手短に言う」隆一

 

「は…っはい!」アヤネ

 

アヤネは慌ててメモ帳を取り出す。

 

「昨日、便利屋68なる連中がアビドスを襲撃しただろう?」隆一

 

「ええ…先生が居なければどうなる事かと…」アヤネ

 

「そこで、だ。」隆一

 

「そこで?」アヤネ

 

「シャーレの一連の権限を行使して、各学園のデータサーバーを調べたんだ」隆一

 

「ほう…」アヤネ

 

「便利屋68、ゲヘナ風紀委員会に指名手配されてるそうだ」隆一

 

「はい…はい?つまりどうしろと?」アヤネ

 

「それをこれから言う。アビドスが風前の灯になっているのはおそらくゲヘナの情報部隊が掴んでいる。生徒会が解散して、アビドス自治区が事実上の無地主状態になっている、そこに便利屋68が彷徨っている状況は、奴らにとって便利屋を捕える盲亀浮木のチャンスだ」隆一

 

「は…はい…」アヤネ

 

「つまり近日中、最悪今日中に、風紀委員会の大群が彼女ら(便利屋68)を拘束しようと大挙して押し寄せる可能性が非常に高い。」隆一

 

「え…で?」アヤネ

 

「もし、万が一ゲヘナ風紀委員会と接敵した場合、君達が『アビドス廃校対策委員会』、つまり『生徒会』を名乗らないと、仮にアビドス校舎が襲撃されても文句が言えなくなる可能性がある。だから万が一、他校の生徒、風紀委員やら生徒会あたりと接触したら、アビドス()()()()()()()、ではなく、アビドス()()()を名乗ってくれ」アヤネ

 


 

 

「…話が早いですね…では最初に。先程までの愚行は私から謝罪を。私たちゲヘナの風紀委員はあくまで、便利屋68という校則違反者を逮捕するために来ただけです。

 

此方でも中々手を焼く面倒な生徒たちで…やむを得なかった、ということでご理解いただきますと幸いです。

 

風紀委員としての活動にご協力いただきたいのですが…お願いできませんか?」

 

 

 

勿論ながら、他人(アビドス)敷地(自治区)に無断で入っているが故、例えどんな大義名分があったところでそれが正当化されることはない。

 

 

 

「…そもそも他学園の自治区での戦闘行為は自治権の観点から明確な違法です。

 

何処の学園でも恐らくそうでしょう。例え便利屋のみなさんが私たちの学園で違反行為をしたとしても、それを対処するのは私たちの仕事です。

 

処遇も私たちが決めます。なにより、今回便利屋のみなさんは、私たちアビドス対策委員会の、客人…のようなものですから。勝手な事をされては困ります」

 

アヤネの発言に、アビドス一行は頷く。

 

 

 

「…なるほど。…他のみなさんも同じ考えのようですね」

 

 

 

「……………」

 

彼はアコをよく見ていて、アコがフフッと笑う。

 

「先生、私の目的は最初から貴方なんです」アコ

 

「……察しは付いていたがな。」隆一

 

「シャーレの先生…貴方、どう考えても怪しいですよね?条約の締結に忙しい時期に突然現れた前歴不明の人間が、超法規的措置を行える権限を持つ組織を率いて、ひとつの学園(アビドス高校)を支援し始める。

 

その上、初日に既に正義実現委員会、そして私達風紀委員会と繋がりを持ち、挙げ句の果てにはミレニアムの『生徒会(セミナー)』とも繋がりを持ったそうで」

 

 

「……顔と名前を知っただけで『繋がりを持った』とは、妄想癖にも程があるな

 

 

「余りにも不確定すぎるシャーレという変数(イレギュラー)が条約にどのような影響をもたらすのかまるで分からない、ただでさえ忙しいのに、あちこち動き回るであろう先生の様子を監視する余裕はない。

 

なので…シャーレにトリニティや他学園からの戦力が増える前に、我々の手に負えなくなる前に、此方で先生を保護(拘禁)しておこうかと。手元にいてくれた(思い通りに動かす)ほうが楽ですから」

 

 

 

「何、つまり私たちはついで!?ならなんで攻撃なんてしたのよ!」アル

 

「あわよくばそのまま撃退しようかと…合理的!って奴です」アコ

 

「……それ、私たちは知らないんですけど?」チナツ

 

「あらごめんなさい、言ったら反対するでしょ?」アコ

 

 

アコは職権濫用でゲヘナの大部隊をアビドス自治区へ進軍させて、風紀委員会をアビドスと衝突させ、そのどさくさに紛れ便利屋を拘束…そしてメインディッシュである彼を確保しようと画策していたのだ。

 

そのために、邪魔な便利屋を無力化しようとした…そう言うことだ。

 

 

 

「さて先生、私の話が分かりました…?」アコ

 

「………」*2

 

「…せ、先生?」

 

 

 

「………貴様はやりすぎだ。」

 

そう口にしながら、彼は腰に隠し持っていた脇差を抜く。

 

「…!」

 

アコが、首筋を何かが掠めたと気づいたその刹那だった。アコの首には、凶器で斬られた傷口が残っていた。誰にとっても通信越しの攻撃はあまりにも想定外。傷口からは血が流れ、アコの意識は混濁し始める。

 

「なっ…!」イオリ

 

「はぁっ!?どうなって…」セリカ

 

「………アコ」隆一

 

「な…なんです…か?」

 

 

 

 

 

「人の神経逆さ撫でするような行動、やめた方がいいぞ?忠告だ。次は喉笛だ」

 

 

 

 

 

彼が()()()()()本当にキレた時、彼は丁寧語で話し、そして流れるように人に脅迫をするようになる。こうしてアコは、最初に地雷を踏み抜いた記念すべき(あまりにも不名誉な)第一号となってしまった。

*1
風紀委員一同の心の声

*2
無言&無表情で目の色変えてバチギレる隆一先生

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