The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

159 / 159
お気に入りとコメントは励みになるので皆さんお願いします
誤字脱字報告も同じく励みになります


絶望

『次の装填まで、数分の猶予がある』。そう、誰もが、信じていた。それが、全くの的外れである事を知ったのは、あまりにも遅過ぎた。空が、再び青白く染まったからだ。

胸の赤い点を目掛けて、無数の光が、空を曲がりながら降り注いでくる。まるで、夜空そのものが、牙を剥いた様だった。

 

 

 

「瓦礫の裏へ!早く!」アズサ

 

 

 

アズサの叫びに、数人が弾かれた様に動いた。ミカが、ハナコの腕を掴んで引き倒し、サオリがコハルを、抱える様にして、抉れた地面の窪みへ飛び込む。ヒフミとレイナも、その後に続いた。

 

 

 

「サオリさん、ありがとう」コハル

 

 

「礼など要らん、頭を下げていろ」サオリ

 

 

「ミカさん、ハナコさん、無事ですか」ヒフミ

 

 

「うん、何とか、皆は?」ミカ

 

 

「全員、揃っています、今は、動かないで」レイナ

 

 

窪みの底で、七人は、体を丸めて耐えた。頭上を、灼ける様な熱が、幾筋も掠めていく。耳元で、空気が裂ける音がした。

 

 

 

──ズドガァッ!

 

 

 

轟音が、荒野を埋め尽くす。

 

 

 

「ぐあああッ!」風紀委員モブR

 

 

「きゃあああッ!」正実モブK

 

 

「ミカ様、お逃──ッ!」パテル分派モブT

 

 

「くそ、避けら……!」正実モブK

 

 

「どうしt……!」風紀委員モブR

 

 

「ヒナ委員長!伏せて下さい!」イオリ

 

 

「イオリ、あなたも──」ヒナ

 

 

 

二つの声が、光の中に、呑み込まれていった。

悲鳴が、幾つも重なった。

窪みの縁から、七人は、息を殺して顔を覗かせる。そこには凄惨な光景が、広がっていた。

 

 

 

「ひ、光が、曲がって……!?」ヒフミ

 

 

「見て下さい、点を、正確に追っています、これは、誘導弾です」レイナ

 

 

「どうして……隠れているのに……!」コハル

 

 

「あの光は、隠れた先まで追って来る、遮蔽物は、意味を成さない!」アズサ

 

 

「心臓、肺、頭……狙いは、全員の急所です!」ハナコ

 

 

「そんな精度で、これだけの人数を、同時に……」レイナ

 

 

 

誰もが、言葉を失った。

 

 

 

「そんな……」ヒフミ

 

 

「ミカ様……ッ、ミカ様ぁ……!」パテル分派モブT

 

 

「……っ、ごめん、ごめんね」ミカ

 

 

 

窪みの縁を、強く握り締めたまま、ミカは、動けなかった。助けに行けば、自分も、同じ運命を辿る。その事が、痛い程に、分かっていたからだ。

数秒前まで、立っていた生徒達が、糸の切れた人形の様に、次々と地面に倒れていく。

 

 

やがて、光は消え、荒野に再び静寂が戻った。

 

 

「……全員、無事ですか!?」ハナコ

 

 

その呼び掛けは、七人だけでなく、荒野全体に向けられたものだった。けれど、返事は、返ってこなかった。

 

 

 


 

 

 

七人が、窪みから這い出した時、そこにあったのは、倒れ伏した生徒達の姿だけだった。

 

 

 

「……っ、委員長!」イオリ

 

 

 

絞り出す様な声が、瓦礫の向こうから聞こえた。

その傍らには、意識のないツルギの体が、横たわっていた。先程の一撃は、既に傷だらけだった彼女を、容赦なく襲ったのだろう。

 

ヒナは、地面に膝をつき、口元を押さえていた。指の隙間から、鮮やかな鮮血が零れ落ちる。

 

 

 

「ごほっ……」ヒナ

 

 

 

「委員長!しっかりして下さい!」イオリ

 

 

 

イオリは、ヒナを庇う様に覆い被さっていたが、その背中にも、深い傷が走っていた。

 

 

 

「……私は、平気……イオリは、手当てを……」ヒナ

 

 

「そんな、委員長が、先……!」イオリ

 

 

「……お願い、自分の事を、考えて」ヒナ

 

 

「……っ、私の、せいで……」イオリ

 

 

「違う、あなたは、悪くない」ヒナ

 

 

「委員長……!お願いです、目を開けて下さい!」イオリ

 

 

「……イオリ、あなたは、まだ、立てる、でしょう」ヒナ

 

 

「そんな、立てる訳……!」イオリ

 

 

 

ヒナは、微かに笑おうとして、そのまま、力無く意識を手放した。傷口から、じわじわと血が滲み続けている。

 

 

 

「委員長……!委員長!!」イオリ

 

 

 

イオリの叫びが、夜空に、虚しく響き渡った。

 

 

 

「……私が、守る、私が、委員長を……」イオリ

 

 

 

イオリは、よろめきながら立ち上がろうとした。けれど、足に力が入らず、そのまま、ヒナの傍らに、崩れ落ちる。

 

 

 

「イオリさん!」ハナコ

 

 

 

返事は、無かった。浅い呼吸だけが、二人の間で、静かに繰り返されている。

 

少し離れた場所では、マコトが、仰向けに倒れていた。

 

 

 

「キ、キキッ……」マコト

 

 

「マコトさん!」ハナコ

 

 

「……何を、見ておる……私の事など、構うな……」マコト

 

 

「そんな訳にはいきません、傷を、見せて下さい」ハナコ

 

 

 

マコトの胸元は、血で赤く染まっていた。ヒナと同じ、急所を、正確に貫かれている。

 

 

 

「ふ、ふん……あの化け物め、やってくれたな……」マコト

 

 

「万魔殿の議長が、この様とは……情けない……」マコト

 

 

「情けなくなんて、ありません、あなたは、最後まで、戦っていました」ハナコ

 

 

「……キキッ、当然だ」マコト

 

 

「喋らないで下さい、傷に障ります」ハナコ

 

 

「……っ、頼んだぞ……あの化け物を、必ず、止めてくれ……」マコト

 

 

「……はい、必ず」ハナコ

 

 

 

そう言い残し、マコトも、ぐったりと動かなくなった。

 

 

 

「……」ハナコ

 

 

 

ハナコは、唇を噛み締め、そっと、彼女の体を横たえた。

辺りを見渡せば、そこかしこに、倒れた生徒達の姿があった。

 

 

「うぅ……」風紀委員モブR

 

 

「くそ……動けない……」正実モブK

 

 

「情けない……あれだけ、大口を叩いておいて」正実モブT

 

 

「そんな事、ありません……!」ヒフミ

 

 

「……あんた、いい子だな」正実モブK

 

 

「誰か……誰か、助けて……」風紀委員モブM

 

 

「しっかりしろ、まだ、息はある」正実モブX

 

 

「あ、あんたも、怪我してるのに……」風紀委員モブR

 

 

「お互い様だ、今は、動くな」正実モブK

 

 

「大丈夫です、すぐに、手当てします!」ヒフミ

 

 

「あ、ありがとう………」風紀委員モブR

 

 

 

ヒフミは、震える手で、包帯を取り出した。応急処置をしようにも、手が足りなかった。

 

 

 

「どうしよう、どうしたら……」ヒフミ

 

 

「ヒフミちゃん、落ち着いて、一人ずつ、順番に」ハナコ

 

 

「は、はい……!」ヒフミ

 

 

「ミカ様……申し訳……ありません……」パテル分派モブT

 

 

「喋らないで、お願い、今、助けるから」ミカ

 

 

「……ミカ様の、お役に……」パテル分派モブT

 

 

「もう、十分役に立ってるよ、だから、休んで」ミカ

 

 

 

ミカは、泣き笑いの様な顔で、そっと、彼女の頭を撫でた。

 

 

 

「みんな……」ミカ

 

 

 

ミカは、拳を強く握り締めた。爪が、掌に食い込む。

 

 

 

「私のせいだ、みんなを、巻き込んだのは、私なのに」ミカ

 

 

「ミカさん、自分を責めても、何も変わりません」レイナ

 

 

「それでも……!」ミカ

 

 

「……今は、前を見ろ」サオリ

 

 

 

サオリの声は、静かだった。けれど、その握った拳は、ミカと同じ様に、震えていた。

誰もが、一撃で、戦闘不能に陥っていた。威力は、先程の光の束とは、比べ物にならない程に、高められていた。

 

 

その時、アズサが、はっと顔を上げた。

 

 

 

「……おかしい、早過ぎる」アズサ

 

 

「アズサちゃん?」ヒフミ

 

 

「最初の攻撃から、一分も、経っていない」アズサ

 

 

「そんな……チャージには、数分の猶予があると、考えていたのに」レイナ

 

 

「それは、完全に、的外れだった」アズサ

 

 

「クールダウンの時間が、あまりにも早い…私達が最初の攻撃を受けて持ち直している間に、あの火力の攻撃を何度も放つ事が…」レイナ

 

 

「そうだとしたら、タイミングを読んで動く事すら、出来ない」ハナコ

 

 

 

アズサは、悔しそうに、歯を食い縛った。

 

 

 

「奴は、私達が考えるより、ずっと、先を行っている」アズサ

 

 

 


 

 

 

夜風が、血の匂いを運んでくる。

 

 

月は、変わらず、冷たい光を、荒野に注いでいる。倒れた生徒達の影と血が、点々と、地面に染み付いていた。

戦える者は、ほとんど残っていなかった。補習授業部の五人、ミカ、サオリを除けば、立っているのはごく僅かだった。

 

 

 

「……状況を、整理しましょう」ハナコ

 

 

 

ハナコの声は、冷静を装っていたが、僅かに震えていた。

 

 

 

「陽動に使う予定だった戦力は、全滅だ」サオリ

 

 

「ヒナさん、マコトさん、ツルギさんも、動けません」ヒフミ

 

 

「これじゃあ、作戦どころじゃ……」コハル

 

 

「ミカさんの特攻を、成功させる為の道が、全て、断たれてしまいました」レイナ

 

 

 

誰もが、絶望的な表情を浮かべていた。

 

 

 

「……」隆一

 

 

「先生……?」ヒフミ

 

 

「……すまない、俺にも、今は、何も浮かばない」隆一

 

 

「だが、諦める訳にはいかない、お前達を、此処で終わらせたくない」隆一

 

 

「先生……」ヒフミ

 

 

「先生は、悪くありません、私達が、必ず、道を見つけます」ハナコ

 

 

 

隆一の声が、静かに、響いた。いつもの余裕は、何処にも、感じられない。

 

 

 

「そんな……」コハル

 

 

「……っ、悔しい、こんなの、勝ち目なんて……」コハル

 

 

「コハルちゃん……」ヒフミ

 

 

 

コハルの目の端に、じわりと涙が滲んでいた。

 

 

 

「それでも、立ち止まっては、いられません」ハナコ

 

 

「……魔石の魔力は、まだ尽きていない筈だ」サオリ

 

 

「どういう事ですか?」レイナ

 

 

 

「さっき魔石数百個分、とは言ったが、あれが最大火力(フルバーストだった)とは限らない、恐らく奴はまだ余力を残している」サオリ

 

 

「……最悪、ですね」レイナ

 

 

「立ち止まったら、ヒナさんも、マコトさんも、助けられなくなります」ハナコ

 

 

「……でも、あの光は、隠れても追ってくる、近付く事すら、出来ない」アズサ

 

 

「しかも、威力が、桁違いに上がっている、あんなの、一発でも受けたら……」コハル

 

 

「私達だけで、あれに、挑むの……?」ヒフミ

 

 

 

その問いに、答えられる者は、誰も居なかった。

 

 

 

「でも、どうやって……」ヒフミ

 

 

アズサは、懐の銀の弾丸を、そっと握り締めた。これだけが、唯一、"トフー"に届く可能性を持つ弾丸だ。しかし、そこへ辿り着く道が、見つからない。

 

 

 

「……私が、行く」ミカ

 

 

「ミカさん、待って下さい!今、飛び出しても、ヒナさん達の二の舞です!」レイナ

 

 

「……分かってる、でも、このまま、何もしないなんて」ミカ

 

 

「気持ちは、痛い程分かります、ですが、今は、堪えて下さい」ハナコ

 

 

「……」ミカ

 

 

 

ミカは、俯いたまま、静かに唇を噛んだ。

ハナコは、それ以上、答えなかった。月明かりの下、七人の影だけが、長く、地面に伸びている。

 

 

絶望的な状況の中、一行は、次の手を決めあぐねていた……

更新の頻度はどれぐらいにしてほしい?

  • 1日〜2日に1本
  • 2日〜3日に1本
  • 1週間に1本
  • 2週間に1本
  • つべこべ言わず毎日書け♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

元SRT学園のNo2の転生者がヴァルキューレで閑職をやる話(作者:宵越しのモルス)(原作:ブルーアーカイブ)

キヴォトスに転生した前世持ちが、色々と頑張った結果。ヴァルキューレで閑職やったり、人に好かれたり、心配されたりする話。▼こちら前菜の、自己肯定感低低少女が自己犠牲を繰り返しながら周辺の脳をこんがり焼き焼きしていくお話です。サラダと合わせてどうぞ。


総合評価:3969/評価:8.05/連載:46話/更新日時:2026年04月24日(金) 22:27 小説情報

転生者共の学園生活(作者:矢守龍)(原作:ブルーアーカイブ)

ある日、俺は転生してしまった………ブルーアーカイブの世界で頑張って生きていこう考えていたが………▼だが、自分一人だけじゃなくて他に一人、二人、三人………いやおおくね!?▼転生者共が自分たちで学園を立ち上げてこのブルアカ世界を生きてくしかねえ!!!▼


総合評価:1503/評価:7.22/連載:102話/更新日時:2026年11月08日(日) 08:00 小説情報

偽りの道をもう一度(作者:Mrふんどし)(原作:ブルーアーカイブ)

その”大人”は再び歩み始める。▼エデン条約編第一章スタート。▼ただしストーリーのさわりのみ思いついている程度なので投稿頻度はかなり遅めになると思います。▼ブルーアーカイブ最終編のネタバレがガッツリ含まれているので、まだストーリーを読んでない方は是非読んでから見るのをオススメします。▼あと、スマホで書いてるので段落分けなどおかしい部分があるかもしれませんのでご…


総合評価:599/評価:8.4/連載:121話/更新日時:2026年11月06日(金) 19:59 小説情報

巡る探索者、青き青春の果てを見る(作者:抹茶3939)(原作:ブルーアーカイブ)

▼自分から首を突っ込み、勝手に巻き込まれ、探究心から、あるいは死した人を蘇らせるために、狂気の世界へと足を踏み入れる者――「探索者」▼彼らはそんなクソったれな世界で平穏な暮らしを求め、狂気を追い、狂気に抗い続ける。▼これは、そんなクソったれな世界を生き抜いてきた一人の探索者が、邪神の気まぐれによって別世界へ放り込まれた物語である。▼そこは、銃弾が飛び交い、怪…


総合評価:1283/評価:7.83/連載:129話/更新日時:2026年11月05日(木) 18:15 小説情報

運命に翻弄されし少年の青春録(作者:ラストオーダー5秒前)(原作:ブルーアーカイブ)

 ───その少年は平和を求めた。これ以上血を流して欲しくないと。▼ ───その少年は平穏を求めた。これ以上皆に飢えて欲しくないと。▼ ───その少年は願った。己の大切な人達が、幸福な生活を送ることを。▼ ──喜べ少年、その願いはようやく叶うかもしれない。


総合評価:32/評価:-.--/連載:6話/更新日時:2026年10月30日(金) 19:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>