The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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介入

アビドス高校・部室にて

 

 

 

「──え!?大将のお店に…退去…通知!?」セリカ

 

「しかも……土地の保有者は私達ではなくて…カイザーコーポレーション!?」ノノミ

 

「はい……先ほど、大将さんから電話があって、調べてみたんです……これを見てください」アヤネ

 

 

 

 

そう言ってアヤネが机の上に広げたのは地籍帳………所謂現在の土地の所有者を確認できる書類だ

 

 

それを見て分かった事と言うのがアビドス自治区のうち今、アビドス高校とその周辺の僅かな地区以外のほぼ全ての土地がカイザーの所有物になっているというものだった。

 

 

 

 

「で、ですがどうしてこんなことに?学校の自治区の土地を取引だなんて普通出来る筈が……一体誰が?」

 

(区有地の取引…つまり…)…さては、アビドスの生徒会か?」隆一

 

「はい、取引の主体はアビドスの生徒会でした」アヤネ

 

「ん…そう言えば、ここにそれはいないって言ってたよね」シロコ

 

「うん……2年前に完全に無くなっちゃったんだ」ホシノ

 

「ですから、生徒会が無くなってからは取引はされていません」アヤネ

 

「なに……何やってんのよ!生徒会の奴らは!学校の土地を売る?それもカイザーコーポレーションなんかに!?」セリカ

 

「………」

 

 

 

 

ホシノは何かを我慢するように顔を顰める。

 

 

 

 

「そんな大事にずっと気づかず私たちは…」ノノミ

 

「それぞれの学校の自治区は学校のもの、あまりにも当たり前すぎて………借金ばかりに気を取られて気付くことが出来ませんでした……私がもっと早く気付いていれば……」アヤネ

 

「アヤネちゃんは悪くないよ、これはアヤネちゃん…というよりおじさんですら入学する前の事なんだから」ホシノ

 

「ホシノ、何か心当たりが?」隆一

 

「うん、おじさんは元生徒会だからねぇ」ホシノ

 

 

 

 

ホシノはちょこんと机の上に座り話し始める。

 

 

 

 

「おじさんが入学した頃には、もう前生徒会の人は居なくなってた引継ぎ用の書類なんて立派なものは何も無かった、丁度砂漠化を避けようとして移転を繰り返してた時期だったから前生徒会の書類関係はもう砂の中だし……まあそもそも、生徒会とは言えど、おじさんとその時の生徒会長の二人っきりだったし」

 

 

 

 

その生徒会長の話になった瞬間、ホシノの顔つきが暗くなる。

 

 

 

 

「その生徒会長は無鉄砲で会長なのに…校内でも随一のバカで……私の方だって嫌な性格の新入生でさ……私…は」

 

「…チッ」

 

ホシノと共に、彼もまた曇り始める。彼に関しては、思い出したくないような顔をしている。

 

重苦しい空気が、部室を包んで離さなかった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「でもどうして前の生徒会はカイザーコーポレーションに土地を売ったんでしょうか?」ノノミ

 

「実は裏で生徒会と手を組んでたとか?」セリカ

 

「………──それとも、カイザーがかなりの悪党だったとか」シロコ

 

「恐らく前の生徒会の子達も借金を返す為に仕方がなく売ったんじゃないかな〜」ホシノ

 

「仕方がなく?いくら借金を返す為とはいえ……」セリカ

 

「おそらく…最初は砂漠化が進んで住めない場所とかを売ったんだろうけど…そこまで大きなお金にはならない、だからお金の為にさらに売って、返済の為に更に……って繰り返すうちにループから抜け出せなくなって今の事態になってしまったんだろうねぇ」ホシノ

 

「何それ、なんかおかしくない?最初からどうしようもないっていうか……」セリカ

 

「あ~………アビドスにお金を貸したのはカイザーローン、元を辿ればカイザーコーポレーションだろ?」隆一

 

「あっ!」ノノミ

 

「それって!?」セリカ

 

「カイザーローンが学校の手に負えないくらいお金を貸して利子()()払ってもらう。そして利子の支払いの為に土地を売るように仕向ける……そういう手口なんだと思うよ~」ホシノ

 

「難しくてわかりにくいが……要するに」

 

 

 

彼はカバンから一枚の画用紙とペンを取り出し、サラサラと描き始める。

 

 

 

 

 

 

 

「まずイ社、これがアビドス高校だ。こいつは莫大な借金を抱えていて、返済に苦しんでいる」隆一

 

「「「「ふむふむ」」」」ノノミ、シロコ、アヤネ、セリカ

 

「そこで、ロ社、これがカイザーグループ。」隆一

 

「「「「なるほど?」」」」ノノミ、シロコ、アヤネ、セリカ

 

「カイザーは、『ここの区画を売れば今月の分は大丈夫』とアビドスを唆す。そして…」隆一

 

「「「「そして?」」」」ノノミ、シロコ、アヤネ、セリカ

 

「『じゃあ売るか』…こうして当時のアビドスは知らず知らずのうちに自治権すらカイザーに売り渡し、カイザーはアビドスからの『奪取』ではなく『提供』という形でアビドス自治区の大半の土地の支配権を獲得…というわけだ」

 

 

 

 

 

 

 

「そん時の生徒会の奴らどんだけ無能な訳!?こんな詐欺紛いの手口に騙されてさえいなければ……!」

 

「落ち着くんだ、セリカ。悪いのは騙される事より騙す事。ただ……尤も、歴史は勝者の仮面舞踏会、敗者は舞台装置に成り下がるだけ。こんな詐欺紛いのやり方したって、勝てば(成功すれば)カイザーは勝者として描かれる」

 

「わ、私も分かってるわよ!たまにゲルマニウムのブレスレットとか買ったりするし…下手したらここの誰よりも分かってる!悪いのは騙した方だってことは!…けど、悔しい……ただでさえ苦しんでるアビドスにどうしてこんな酷いことをするの?」セリカ

 

「……苦しんでる人達って切羽詰まりやすくなっちゃうからね~」ホシノ

 

「……え?」セリカ

 

「切羽詰まると、人はどんな手段でもやっちゃうものなんだよ……」ホシノ

 

「『窮鼠猫を噛む』なんて諺もあるほどだ」隆一

 

 

 

 


 

 

 

 

「学校の借金、このアビドスが陥ってる状況、そして私達が先生たちと一緒に見つけ出してきた幾つかの糸口……全てが少しずつ繋がり始めてる気がします」アヤネ

 

「カイザーコーポレーションは最後の土地であるこの学校を奪うためにヘルメット団を雇用していたって事ね!」セリカ

 

「実際おじさん達が入学してから襲撃の頻度は上がったらしいからね~、それまでは精神的に追い詰めるつもりだったけど本格的に武力行使に出たって事なんだろうね」ホシノ

 

「…ならこっちも」隆一

 

「先生?」ノノミ

 

「ヒナの奴が言ってたんだ、カイザーコーポレーションに不審な動きありって……だから」

 

 

 

彼はゲンドウポーズを取り、こう口にした。

 

 

 

「アビドス砂漠、突撃だ」

 

 

 

アビドス砂漠へ乗り込むことを決定した。

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