The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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折角大人が相手ですし、彼の本性、表すとしましょう。


アビドス砂漠にて

アビドス砂漠

 

古くより、アビドスのシンボルとも呼べる砂漠として存在していた地域。観光名所だったのか、かろうじてその近辺までは列車で向かうことが可能となっている。

 

向かう電車の中、車窓から地平線を眺めた彼は初めて見る景色に目を輝かせて気分を昂らせ、座席からその姿を見る対策委員会は微笑ましく見守っていた。

 

 

 

 

 

 

「アビドス砂漠、砂漠化が進む前から元々砂漠だった場所かぁ……」

 

「普段から壊れたドローンや警備ロボット、オートマタなどが徘徊している危険な場所ですから、十分に注意をして進みましょう」アヤネ

 

「了解~」ホシノ

 

 

 

アヤネの言葉に、全員が頷きながら砂漠を見据える。

 

 

何故かは知らないが、この砂漠地帯にはオートマタやドローン、ロボットの類が多数、頻繁に徘徊、そして来訪者を襲撃しているとの情報が寄せられている。

 

砂に沈んだ街に配備されていたものが誤作動を起こしたのか、或いは磁気異常による異常動作を含め、立てられた仮説は多いが真相解明には至っていない。別の理由があるのか。最早調べる理由も余力もなくなってしまったアビドスにとっては、謎のままで残されていた。

 

 

 

「念の為、今一度火器の動作チェックをお願いします」アヤネ

 

「砂塵には気を付けないとですね~♧」ノノミ

 

「帰ったらまた、分解清掃かぁ……」セリカ

 

「暴発は怖いからね、手入れは大事」シロコ

 

「…よし、気をつけて行ってみよー!」ホシノ

 

 

 

 

 

 

 

アビドス一行が、武器を準備してアビドス砂漠へと歩を進めるのであった。

 

 

 


 

 

 

「……っ?皆さん、前方に何かあります!……巨大な町、工場・・・・或いは駐屯地?と、とにかく物凄く大きな施設のようなものがあります!」アヤネ

 

「こんなところに施設?何かの見間違いじゃなくて?こっちからは特に何も見えないけど……」セリカ

 

「見間違いでは無いと思うのですが……取り敢えず肉眼で確認できるところまで進んでみて下さい!」アヤネ

 

 

 

アヤネが言うものすごく大きな施設へ向かって、進み出す……そして、そこで信じられないものを発見した。

 

 

 

「……なによ…これ?」セリカ

 

「でかい…とてもでかい」シロコ

 

「工場?石油ボーリング施設、ではなさそうな……」隆一

 

 

 

砂漠の奥地にあったのは本当に巨大な施設だった。

 

 

 

「見た感じこの外壁と有刺鉄線、数キロはあるな」隆一

 

「かなり大規模ですね、これは工場でしょうか?……一体何でしょう?」ノノミ

 

 

 

ノノミが中を覗き込みながら首を傾げる中、隣に立つホシノは厚く、砂塵に塗れた外壁に手を当てながら口を開く。

 

 

 

「──こんなの、昔はなかった」

 

 

 

少なくとも二年前、まだアビドス生徒会が現役で活動していた時──その当時の先輩に連れられこの砂漠へと足を運んだ当時、こんな大規模な施設は存在しなかった。

 

つまり、この施設はまだ築2年に満たないという事になる。

 

 

 

「砂漠に工場……随分と怪しい匂いがプンプンするじゃねぇか」

 

「先生の言うとおり、怪しすぎるよ…けど、ここで下手に動いたら―」ホシノ

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

伏せろ!

 

 

 


 

 

 

「殲滅完了」ドンッ!!

 

紆余曲折あって、彼率いるアビドス一行は敵を壊滅させる事に成功したが…

 

「うへぇ、すごい量の瓦礫だ…」ホシノ

 

「でも、これでしばらくは静かになる」シロコ

 

「結構疲れましたねー…何気に粘られましたし」ノノミ

 

「今のうちにぱぱっと調べちゃいましょう?」アヤネ

 

 

 

 

あたりに散らばっているオートマタ兵士の破片や戦車の残骸を後ろにアビドス一行は歩く、彼は腕に三発、胴体に七発ほどの銃撃を受けたが、すぐに治癒出来た為大した問題ではない。

 

さっきいた場所に着くと辺りを散策…そしてアヤネが何かを見つけた。

 

 

 

 

「皆さん、外壁に何か、ロゴかマークが……」アヤネ

 

「ロゴ?」ホシノ

 

 

その言葉に、全員がアヤネの指差した方向へ視線を向ける。

 

すると、皆の視線に僅かに掠れたマークが目に飛び込んで来た。

 

 

 

 

「これって……!」

 

 

 

「このマーク、この集団は──」

 

 

 

 

描かれていたマークは、三角形に描かれたクロスする帯。

 

そしてその下に記された企業名──

 

 

 

 

KAISER PMC

 

 

 

 

「──カイザーPMC…?」

 

 

 

ホシノがどこか、呆然とした様子で呟いた。

 

 

 

「……今、照合しました、ホシノ先輩の仰る通り、これはカイザーPMCのものです」アヤネ

 

「カイザー……カイザーって、こいつらもカイザーコーポレーションって事!?」セリカ

 

「PMC…なるほど、民間軍事会社(Private Military Company)か…」

 

「カイザー……カイザー、カイザー、カイザー! どこへ行ってもッ!一体、何なの!?」セリカ

 

 

 

アビドスから金をせしめて、ブラックマーケットと繋がっていたのはカイザーローン。

 

頸の廻らなくなったアビドスを甘言で惑わし、土地を騙し取ったのはカイザーコンストラクション。

 

そしてそれを裏から支援するカイザーコーポレーション──それに加えて、今度はアビドスの砂漠にカイザーPMC。

 

会社を象徴するタコのように、様々な分野に手を伸ばすカイザー。

 

生徒達は表情を歪め始めた。

 

 

 

「『PMC』という事は、まさかさっきのオートマタは──」ノノミ

 

「…ノノミ?どうしたの?」シロコ

 

 

 

ロゴを見つけた瞬間から、どこか険しい表情を浮かべていたノノミ。

 

 

 

シロコが疑問符を浮かべる。そして真剣な表情で外壁を見つめるノノミが呟く。

 

 

 

「PMCとは、先生の言った通り、Private Military Companyの略…言うなれば…民間軍事会社の事です」

 

「ぐ、軍事って……!?」

 

「ヘルメット団のようなチンピラや日雇いの傭兵とはレベルが違います、本当に組織化されたプロの戦闘集団……文字通り、軍隊です。退学した生徒や不良達を集めて、カイザーが私兵として雇っているという噂がありましたが、まさか…」

 

 

 

ノノミがそこまで口にした所で、空からヘリが数台やってくる。

 

 

 

「増援!?」セリカ

 

「ここからじゃないって事は…別の場所から?」シロコ

 

 

 

そしてそのヘリから50人前後の兵士達が現れ、その中心から1人の人物が現れる。

 

 

 

「……なんだこれは…一体…この場で何があった!!」???

 

「…あれが首領か…」隆一

 

「──そうか…アビドス!やはり貴様らか!よくもこんな真似を!!」???

 

「…あいつは…確か」

 

 

 

 

赤のスーツを着込み、特徴的なラインヘッドを用いた人物が現れる。

 

その大柄な体躯は優に二メートルは超えるだろう。

 

 

 

 

「……初めましてかな、アビドスの生徒達、わたしはカイザーコーポレーションの理事を務めている者だ──つまり、君達アビドス高等学校が借金をしている相手だよ」???

 

「え、うそ!?」

 

「じゃあこの人が……」

 

「私はカイザーコーポレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ、現在はカイザーPMCの代表取締役も務めている」カイザーPMC代表取締役、以下「取締役」

 

「──そんな事はどうでも良い、要はあなたがアビドス高校を騙して、搾取した張本人って事で良い?」セリカ

 

「……ほう?」取締役

 

「そうよ!ヘルメット団と便利屋を仕向けて、ここまで私達をずっと苦しませて来た犯人があんたって事なんでしょ!?あんたのせいで私達は……アビドスはッ!」

 

 

 

続けてセリカが取締役の所業を糾弾すれば、呆れたとばかりに首を横に振る。

 

 

 

「──やれやれ、最初に出て来る言葉がソレか、人に申す態度が成ってないな、アビドス」取締役 

 

「…何…よ……!?」セリカ

 

「勝手に私有地へと侵入し、善良なる我がPMC職員たちを攻撃し、施設を散々破壊しておいて…ここまで本当にやりおって…くくっ、面白い」取締役

 

「……善良な職員にしては、何で警告もなしに発砲したんだろうね〜」ホシノ

 

「正当防衛さ、何せ見知らぬ人物が家に無断で入り込んで来た様なものだからな。強盗相手なら、君達とてそうするだろう?」取締役

 

「………」ノノミ

 

「──口の利き方には気を付けた方が良い、ここはカイザーPMCが合法的に事業を営んでいる場所、まず君達は今、企業の私有地に対し不法侵入しているのだという事を理解するべきだ」取締役

 

「っ貴様……!」セリカ

 

 

 

取締役がそう告げると、周囲を囲んでいたオートマタが一斉に銃口を突き出した。その威嚇行為にアビドスは一歩退き、悔し気に表情を歪ませる…しかし彼は全く動じず、むしろ昂っているような表情を浮かべている。

 

 

 

「さて、話を戻そう──アビドス自治区の土地だったか、確かに買い取ったとも、しかし、だからどうした? 全ては法の範疇での取引、記録も全て存在している……まるで私達が裏稼業をしているかのような云い方はやめて貰おう、それとも此処に私を挑発しに来たのかね?」取締役

 

「っ、どの口で……!」セリカ

 

「正直、何故君達が此処に来たのかは知らないが……どうしてアビドスの土地を買ったのか、その理由が知りたいのか?」取締役

 

 

 

カイザー理事がそう問いかければ、背後で彼を睨みつけていたノノミが答える。

 

 

 

「……確かに、こんな砂漠に大規模な施設を建築して、おまけに自治区まで接収して何をしているのか、その理由は気になります」ノノミ

 

「ふむ──ならば教えてやろう、私達はアビドスのどこかに埋められているという宝物を探しているのだ」取締役

 

「……そんな出任せ、信じる訳ないでしょ!?」セリカ

 

「それはそう、もしそうだとすると、このPMCの兵力について説明がつかない──もしかすると、この兵力は、アビドス自治区を制圧する為のものじゃないの?」ホシノ

 

「……数百両もの戦車、数百名もの精鋭の兵士達、数百トンもの火薬に弾薬──たった五人しか在籍していない学校の為に、これ程の用意をすると本気で考えているのか?」取締役

 

 

 

 

 

 

 

…いえいえ

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

 

(わたくし)はただ、御社と取引がしたかっただけなのですが、この暴れ馬(アビドス生)達の粗相、代表してお詫び申し上げます…」隆一

 

彼の雰囲気がまた変わった。以前にも増して上品な口遣い、物腰柔らかな態度、そして自らが率いていたアビドス生たちを『暴れ馬』と唾棄する変わり身ぶり。

 

本当は護衛用に連れてきたのですが、この子達の暴れっぷり。後で補償金と見舞金は約束しますので…」隆一

 

「…ほう」取締役

 

「ちょっと!先生!何やって…/一旦黙ってくれ、俺の作戦だ/…わ…分かった」セリカ

 

…とまあさておき、取引と行きましょう。」隆一

 

「…そうだな」取締役

 

初めまして。独立連邦捜査部(Independent Federal Investigation Club)顧問の天音隆一と申します。」隆一

 

そう口にし、隆一は取締役に名刺を手渡す。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ええ…こちらこそ、よろしくお願いします」取締役

 

こうして、取締役と先生の、大人の取引が幕を上げた。*1

 

 

 

 


 

ではまず、私から

 

口火を切ったのは隆一だった。

 

この場を借りて、アビドス生による私有地での狼藉の数多…周辺の地理に明晰と思い連れてきた私の責任ですので、ここに謝罪致します

 

「…謝ってくれるなら問題はない。」

 

…今回のような、学園間と企業間の紛争は可能な限り零に抑えたいので、連邦生徒会の代理機関たる独立連邦捜査部と、キヴォトスを代表する大企業たるカイザーコーポレーション、お互いの不可侵を定めよう、というのが私の一存ですが、貴方はどのような意見をお持ちでしょうか?

 

「…私も今回のように、アビドスのガk…ゲフンゲフン失礼、子供達と無用な争いをするのは抑えたい一存だ」

 

……ええ。話が合うようで何よりです。そこで…です

 

「そこで?」

 

彼は(おもむろ)に、一枚の書類と、クリアファイルに挟まれた数枚の書類を取り出す。

 

独立連邦捜査部、基連邦生徒会とカイザーコーポレーション、その子会社同士で『取り決め』を結ぼうと

 

 

 

 

隆一が出した条件は三つ

 

学園とその自治区に干渉しない代わりに、各学園もとい連邦生徒会もカイザーコーポレーションに干渉しない

カイザーコーポレーションは各学園の自治区から撤収する

アビドス高校とカイザーローンの間に結んだ貸借関係を棄捐する

 

 

 

 

「…うむ」

 

……ええ、こちらでどうでしょうか?

 

「…『アビドス高校との賃借関係の棄捐』、これは完全に、君の私情ではないか?」

 

取締役の質問に、彼が口を開く。

 

あくまでも()()()()()()は単なる『生徒の代理人』。ここの解決に対し生徒達に全てを委ねれば今回のような諍いが何度も起こるでしょう。ここで生徒達の願いを代弁しているのが私です

 

「それがなんだ?」

 

生徒達の平和(青春)に、楔を打ち込むような事はやめて欲しい、それが私の私情であって、借金の棄捐は全く以て私の私情ではありません

 

「フッ、随分と傲慢だな…私にはまだまだ財力もあれば権力もある…武力もな」

 

それは私もです。独立連邦捜査部の財力、そして超法規的機関としての権力、そして生徒達を編成・訓練・組織して得られる武力…

 

「…いつまでこの話を続けるつもりだ?私にも仕事がある!」

 

……貴方がこの取り決めに首肯するまでです。

 

腕時計を見ながら、取締役は焦ったような表情を浮かべる。仕事があるのだろう。

 

「…分かった!私は同意する!」

 

…ありがとうございます。

 

「…しかし、条件がある。」

 

…と、言うと?

 

「独立連邦捜査部顧問天音隆一…君も要求次第では、我々の肩を持ってもらうからな!」

 

分かりました。生徒や学園、他の企業に手を出さないなら、喜んで協力致しましょう

 


 

こうして、時間に押されたカイザーが借金の棄捐を約束したことによって、この一件は戦略的に隆一とアビドスの勝利に終わった。

 

有意義なお時間、ありがとうございます

 

「ん……帰ろう」

 

 

 

 

くるりと背を向けたシロコに続き、対策委員会と彼はカイザーPMCの基地を後にした。

*1
フォントが洒落てる方が隆一先生です




紆余曲折を描くのが面倒臭くて省略しました。蝉になって謝罪します
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