The Hypocrite's Archive 作:Xelphyr
あまねく■■の始発点
(──……ん?)
突然、彼の目の前に広がった光景。上京の時に乗った列車に似ているが、その列車とは違う。風景の移ろいやレールの継ぎ目を渡った時の揺れを一切感じない。そして眩しい
「おい、君は…」
「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」
しかし彼の訴えは彼女の耳に届かず、というか全く聴こえていないようだった。
(やれやれ、奇妙な感覚だこと)
彼はこの奇妙な空間を半分ぐらい楽しんでいた。
照り付ける陽光、奇妙な生暖かさが漂う車内、それでいて金縛りにでもあったかのように身体が動かない状況を。
「結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……」
(映画を観ているようだ……というか、血が出てるけど大丈夫か?)
「……今更図々しいですが、お願いします。天音
(やれやれ、大丈夫なら大丈夫と──…は?先生?俺教員免許持ってないんだが?それになんで俺の事を知っている?)
彼は困惑する。そりゃそうだ。こんな事想定してなかったからだ。何か託されるのは覚悟していたが、いきなり先生。やはり困惑を隠せない。
「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」
「何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……」
「ですから……大事なのは経験ではなく、選択」
(──選択?まあ確かに人生なんて巨大な大樹。分岐すれば戻れない、そんなものだからなぁ…)
「責任を負う者について、話したことがありましたね」
「あの時の私には分かりませんでしたが……今なら理解できます」
「大人としての、責任と責務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択」
「それが意味する
(──デジャヴを感じるな…嫌な方のだが)
「……ですから、先生。私が信じられる大人である、あなたになら、この捻れて歪んだ先の終着点とは、また先の結果を……」
「そこへつながる選択肢は……きっと見つかるはずです。だから先生、どうか…██を…お願いします」
(──……アンタと俺がどんな蜜月な関係だったのか、どんな事をしてきたのかはわからない…けれど、そんな怪我負ってまでお願いされたんだ、反故には出来ねぇ)
「……フフッ…貴方は…──」
彼女がそう口にした瞬間、彼の意識が遠のき始める。
(──畜生、意識が…せめて名前だけ…無理…か……)
そのまま彼は、己に纏わりつくように広がっていく暗闇に体を委ねて、深淵に意識を沈ませた。