The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

2 / 22
第零章:あまねく(■■■)■■の(■■■)始発(■■)
あまねく■■の始発点


 

 

 

 

 

「……私のミスでした」

 

 

 

 

(──……ん?)

 

突然、彼の目の前に広がった光景。上京の時に乗った列車に似ているが、その列車とは違う。風景の移ろいやレールの継ぎ目を渡った時の揺れを一切感じない。そして眩しい夕日(朝日)に照らされ、顔を上げるのも億劫になりそうだ。仕方なく右手で太陽を覆おうとするが、手が動かない

 

 

 

「おい、君は…」

 

 

 

 

「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」

 

 

 

 

しかし彼の訴えは彼女の耳に届かず、というか全く聴こえていないようだった。

 

 

 

 

(やれやれ、奇妙な感覚だこと)

 

彼はこの奇妙な空間を半分ぐらい楽しんでいた。

 

照り付ける陽光、奇妙な生暖かさが漂う車内、それでいて金縛りにでもあったかのように身体が動かない状況を。

 

 

 

 

「結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……」

 

 

 

 

(映画を観ているようだ……というか、血が出てるけど大丈夫か?)

 

 

 

 

「……今更図々しいですが、お願いします。天音()()

 

 

 

 

(やれやれ、大丈夫なら大丈夫と──…は?先生?俺教員免許持ってないんだが?それになんで俺の事を知っている?)

 

彼は困惑する。そりゃそうだ。こんな事想定してなかったからだ。何か託されるのは覚悟していたが、いきなり先生。やはり困惑を隠せない。

 

 

 

 

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」

 

「何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……」

 

「ですから……大事なのは経験ではなく、選択」

 

 

 

 

(──選択?まあ確かに人生なんて巨大な大樹。分岐すれば戻れない、そんなものだからなぁ…)

 

 

 

 

「責任を負う者について、話したことがありましたね」

 

「あの時の私には分かりませんでしたが……今なら理解できます」

 

「大人としての、責任と責務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択」

 

「それが意味する心延(こころば)えも」

 

 

 

 

(──デジャヴを感じるな…嫌な方のだが)

 

 

 

 

「……ですから、先生。私が信じられる大人である、あなたになら、この捻れて歪んだ先の終着点とは、また先の結果を……」

 

「そこへつながる選択肢は……きっと見つかるはずです。だから先生、どうか…██を…お願いします」

 

 

 

 

(──……アンタと俺がどんな蜜月な関係だったのか、どんな事をしてきたのかはわからない…けれど、そんな怪我負ってまでお願いされたんだ、反故には出来ねぇ)

 

 

 

 

…やるか

 

 

 

 

「……フフッ…貴方は…──」

 

 

彼女がそう口にした瞬間、彼の意識が遠のき始める。

 

 

 

 

(──畜生、意識が…せめて名前だけ…無理…か……)

 

 

 

 

そのまま彼は、己に纏わりつくように広がっていく暗闇に体を委ねて、深淵に意識を沈ませた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。