The Hypocrite's Archive 作:Xelphyr
「じゃあ改めて…廃墟に行くとしよっか!」
「廃墟……何しに行くの?」
「あっ、お姉ちゃん。まだ先生にも私にもちゃんと理由を話してないよ?」
「そうだった!──んんっ!」
モモイはキリッとした顔を作り、咳払いをしてから廃墟に行くわけを話す。
「まず廃墟って言うのはミレニアム自治区の郊外にある場所なんだけど少し前までは連邦生徒会が封鎖していた場所なの」モモイ
「連邦生徒会が封鎖って…相当危ねーんじゃねーの?」隆一
「そう、誰も入ったことがないのか、そもそも入ることができないのか……それとも帰って来れていないのかそれもわからない」モモイ
「私はやめようって言ったんですよ?けど情報があるって言ってて…」ミドリ
「情報?」隆一
「フフンッ…昔のミレニアム、ううん昔のキヴォトスには『ティアマト』って言う伝説的なゲームクリエイターが居たの、そのティアマトさんがミレニアム在学中に作ったのがG.Bible」モモイ
「ほほう」隆一
「詳しい内容は知らないけどその中には最高のゲームを作れる秘密の方法が入ってるんだって!」モモイ
「…随分とまあ、ゴシップ臭いな」隆一
「違うよ!G.Bibleはあるって!読めば最高のゲームを作れるようになるゲームの聖書は絶対にある!そのG.Bibleを読めば最高のゲーム……テイルズ・サガ・クロニクル2を作れるはず!」モモイ
モモイの説明を聞き、怪しいと思いながらも少し気になっていた彼だったが、今ゲーム開発部はかなり切迫詰まっている状況なので、真偽はおろか、存在すら怪しいその聖書に賭けてみる事にした。
ミドリがモモイを怪しみながら聞く。
「お姉ちゃん、その廃墟って場所にG.Bible?があるって誰に言われたの?」ミドリ
「その廃墟はヒマリ先輩曰く『キヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる、時代の下水道みたいな場所なのかもしれない』らしいの」モモイ
「ヒマリ先輩って、ヴェリタスのあの車椅子に乗った美人のヒマリ先輩?いつもRPGの賢者みたいに『私は何でも知っていますよ〜』って感じのヒマリ先輩が『かもしれない』って言葉を使うのも珍しいね……それくらい未知の世界なんだ──待って?」ミドリ
「なに?」モモイ
「まさかとは思うけど……お姉ちゃんが『ここにG.Bibleがある』って言ったのはヒマリ先輩の言葉を聞いたから!?そ、それだけの理由で行くの!?危険すぎる!」ミドリ
「それだけじゃないよ、ヴェリタスにG.Bibleの捜索を依頼したら座標を教えてくれたの。『最後にG.Bibleの稼働が確認された座標』をね、でも、その座標が指していたのは『普通の地図には存在しない場所』だった」モモイ
「だ、だとしても……先生、先生はどう思──」ミドリ
「──行くか」隆一
「先生!?」ミドリ
「ヴェリタスとヒマリって奴が裏付けしたんなら、間違いないって事だな?」隆一
「そう!」モモイ
「じゃあ問題ないな」隆一
「軽いよ先生!」ミドリ
「んじゃ早速……行きますか!」隆一
「レッツゴー!」モモイ
「ゴ、ゴー!」ミドリ
二人はモモイの案内の元、G.Bibleがある廃墟へと向かうのだった。
廃墟構内
半壊している建物やボロボロの道にビルのようなものには草木がまとわりつき、周辺には
「出入り禁止の区域っていうからまぁ、ある程度の危険は覚悟していたけど……まぁヒヤヒヤするね~」モモイ
「あのロボット、一体何なんだろう……?」ミドリ
「あんなのがたくさんいれば、確かに立入禁止区域にもなるわな」隆一
ロボット兵達は様々な武器を所持しながら入念に当たりを巡回している。ミドリやモモイはキヴォトス人ではあるが、流石に大量の弾幕を浴びればひとたまりもない。
そしてそれ以上に危険なのが隆一、彼である。外の世界に住まう常人より身体は遥かに強いといえど、それでもキヴォトス人には遠く及ばない。弾の当たり所次第ではひとたまりもない、それどころか即死だろう。
「とりあえず慎重に行こう」隆一
「…ねぇお姉ちゃん、こんな場所にG.Bibleなんて本当にあるの?」ミドリ
「ある!絶対にあるよ!」モモイ
「モモイ、声、声」隆一
「でもここまで敵がいるのに行くのは危険だよ!先生だっているし……私達と違って、先生はヘイローを持ってないんだよ?いくら体が頑丈でも…」モモイ
『接近を確認』
「「「!?」」」
息を殺しつつ移動していた3人は、突然流れた音声にビクッとなりすぐに離れる。するとまだ音声は鳴る。
『────対象の身元を確認します…………………………才羽モモイ、権限を有していません』
「え、え!?何で私の事を知ってるの!?」
『────対象の身元を確認します…………………………才羽ミドリ、権限を有していません。生体情報より………才羽モモイとの血縁関係を確認しました』
「私の事も…一体どういう……?」
2人の疑問を置いてきぼりにする謎の機械音声。まるで当然の如く彼女達を知っているのは、恐らく彼がシッテムの箱を介してサンクトゥムタワーのデータベースにアクセスしているからだろう。もしそうなら、それだけの権能をこの工場は持っているのだ。
『────対象の身元を確認します……先生』
そして、その確認は遂に先生の方へ向く。そして…
『────資格を確認しました、入室権限を付与します』
「え、どゆこと?」モモイ
「先生には…反応した?」ミドリ
そして、パスした、というよりされた先生は無言で、その巨大なプラントを支配する"それ"を眺めていた。
『────才羽モモイ、才羽ミドリの両名を、『
────下部の扉を開放します』
「……下ぁ?この扉じゃなくて?下の階ってことか?」隆一
「それより、下部ってもしかして……?」ミドリ
ミドリは恐る恐る下を見る。鉄製の冷たい床。非常灯の明かりに照らされた床には、よく見ると一筋の線が入っていた。
「さ…流石に…。どこからどう見てもただのゆ
かぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!???」
「―ッ
唐突な落下に、受け身を取り損ねた彼は尾骶骨が腰にめり込む形で腰を痛めてしまった。
「こ、こわかった〜〜…」モモイ
「…ってて……ド■フでもあんな派手なセットの壊れ方はしないぞ……いやするか」隆一
「先生、あれ………」ミドリ
「どうしたミドリ……ってありゃなんだ、マネキン?にしちゃ随分精巧だな…」隆一
広い空間にポツリと存在する機械の椅子に一糸纏わぬ姿で眠る少女。
黒の流麗な髪。雪月花のような美しい顔に、きめ細やかな肌。華奢な美しい手足。その姿はまるで童話を彷彿とさせるような純真無垢な眠り姫だった。
想定外の発見に、彼女ら一行は困惑する他なかった。そしてこの場所だけがキヴォトスから切り離されているような…そんな光景にも。
数秒後、はっとした2人は慌てて少女の方に歩み寄り360度隈なく観察する。そして、その2人の後を先生がついてくる。彼の表情は懐かしいものを見たような……本当に優しい表情を浮かべていた。
「こいつ……寝てんのか?」隆一
「この子、怪我とかじゃなくて……パソコンとかスマホの『スリープ状態』みたいな感じがしない?」ミドリ
「そう? 確かに言われてみれば、何だかマネキンっぽいね。どれどれ……凄い、肌もしっとりしてるし柔らかい……あれ?見て!ここに何か文字が書かれてる!」モモイ
少女の肌を指先でつんつんしていたモモイはその肌に文字を見つけた。刺青のように刻まれているのだろうか。
「……AL-1S……」ミドリ
「……アル、ワンズ……エー、エル、ワン、エス? どう読むのか分からないけど、この子の名前って……アリス?」モモイ
モモイとミドリは2人で頭を悩ませていた。名前にしてはあまりにも無機質なアルファベットと数字の羅列。そこから導き出された名前はアリス、某今際の国に出てきそうなキャラクター。だが、その読みは若干こじ付けのようにも感じられた。抑の話、彼女の名前が『アリス』ならば英語の綴り通り『ALICE』と刻む筈だからだ。
「なんで放棄されたこのプラントにこんな清潔なモノが……この場所、どうにもキナ臭くてたまんねぇな」隆一
「起きて話してくれるなら良いんだけど……とりあえずこのままじゃ可哀そうだし、服でも着せてあげよっか」ミドリ
「へえ、予備の服なんて持ってきてたんだ……ってそれ私のパンツじゃん!」モモイ
「違うよ、これは私の。猫ちゃんの表情が違うでしょ」ミドリ
言いながらてきぱきと服を着せるモモイとミドリ。数分も経たずして、一糸纏って居なかった少女は白のミレニアムの制服を纏った姿になった。
その瞬間だった。
「警報……?」モモイ
「ううん……この子から聞こえた気がする」ミドリ
「え?も、もしかして……」
─状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します