The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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からくり少女(AL-1S)

─状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します

 

 

 

 

そんな音声が聞こえた後、閉じていた《少女》の目がぱっちりと開き、体を少し起こしキョロキョロと辺りを見渡す。

 

 

 

 

「大丈夫か?」隆一

 

「………」《少女》

 

「……?」隆一

 

「………」《少女》

 

 

 

 

《少女》はキョトンとしながら、視線の先にある彼の頬に触れる。それもペタペタと赤ん坊のように。

 

「僕の顔に何かついてる?」隆一

 

「……状況を…確認、難航…説明を…お願いできますか?」《少女》

 

「説明つったって……むしろ説明してくれはこっちのセリフだ。君は誰?ここはなんだ?」隆一

 

「本機の自我…記憶、目的が消失状態にあります…本機の名称について、答える事はできません」《少女》

 

「名称…名前か…、じゃあ俺は隆一、天音隆一だ。宜しくな」隆一

 

「天音…隆一……登録」《少女》

 

 

 

 

「先生、なんでこの子は先生が触れた瞬間に目を開けたんだろう?」モモイ

 

「知らね」隆一

 

「返答、おそらく、本機の深層意識における第一反応が発生したものと推定されます」《少女》

 

「なんか…熟睡してた所を叩き起こしちまった…って感じか……ただ…ここに長居するのもアレだし」

 

 

 

 

彼は膝をついていた状態から立ち上がり、ヒョイっと《少女》をおぶさる。

 

 

 

 

「この子、シャーレかミレニアムに連れるか」隆一

 

「ええ!!?」モモイ

 

「い、いいんですか、それ!」ミドリ

 

「勝手に叩き起こしときながら荒屋(廃墟)に放置っていうのもダメだろ?」隆一

 

「そ、それはそうだけど…」モモイ

 

「確かに……このまま放置なんて酷いよね」ミドリ

 

 

 

 

一向は《少女》をおんぶし廃墟から離脱。結果としてお目当てのG.Bibleは見つからなかったものの、記憶喪失の機械少女(ヒューマノイド)と言うあまりにもファンタジーな設定の子を持ち帰る事が出来、モモイは少し満足していた。

 

 

 

 


 

 

 

 

「それじゃあ次のステップに行ってみよっか!」モモイ

 

「次の…ステップ……?…お姉ちゃん、いったい何を考えてるの……?子猫を拾ってきたとか、そういうレベルじゃないんだからね!?」ミドリ

 

「いやいや……ミドリの方こそ、よく考えてみてよ。……そもそも私たちが危険を冒してまで、G.Bibleを探してた理由は何だったっけ?」モモイ

 

「それは……良いゲームを作って、部活を廃部にさせないためでしょ?」ミドリ

 

「そう、今一番大事な問題はそれ!良いゲームも作りたいけど、まずは部活の維持が最優先。それで、そのためには二つの条件のうち、どっちかをクリアする必要がある」モモイ

 

「……腹括ったか」隆一

 

「もちろん!まぁ、ミレニアムプライスで受賞を狙うのも良いんだけど、手の内は多い方がいいからね!」モモイ

 

「え………………まさか、本当に部員にするつもり!?」ミドリ

 

 

「アリス!──私たちの仲間になって!」

 

 

なんやかんやあって無名の『《少女》』、改め『アリス』はゲーム開発部に入ることになった。まだ学生証や口調、武器の問題やら色々あるが、彼はアリスを受け入れ、アリスもまた、3人のことを受け入れていた。

 

「服装もある程度整ったし、あとは武器と……学生登録をして、学生証を手に入れないと」モモイ

 

「出来んの?」隆一

 

「まぁね! 学生証については、私の方で何とかするよ!」モモイ

 

「すごい自信だ」隆一

 

「ミドリは、アリスに話し方を教えてあげて!」モモイ

 

「は、話し方?」ミドリ

 

「今のままだとモモイが言った通り、疑われちゃうかもしれないから……もし、何かの拍子にユウカやらセミナーの人間に『本当にゲーム開発部なのか』って聞かれたとして……今みたいに機械的に返事をした暁には、全部台無しになりかねない」隆一

 

「それはそうだけど………はぁ、仕方ない。やれるだけやってみるよ」ミドリ

 

「よし、じゃあ任せた!」モモイ

 

 

 

 

ミドリがパソコンを開き、初等部用の教育プログラムを調べている間、アリスは何かを見つけていた。

 

 

 

 

「……? 正体不明のものを発見、確認を行います」アリス

 

「ん?あっ、そ、それは……っ!?」モモイ

 

「……雑誌?」隆一

 

「……はい。ちょっと恥ずかしいんですけど、実はその中に、テイルズ・サガ・クロニクルが載ってるんです。……まぁ、すごい酷評されちゃったんだけどね」ミドリ

 

「………クソゲーランキング1位にはなっちゃったけど、アリスちゃんがどう思うかは分からないし……」ミドリ

 

「……ミドリ?」モモイ

 

「アリスちゃん、ゲーム……やってみない? 会話をしながら進められるから、ゲームをやってみるのも勉強になるかも」ミドリ

 

「……? ここまでの言動の意図、完璧に把握しかねます。しかし………肯定。アリスはゲームをします」アリス

 

「ほ、本当に!? ちょ、ちょっと待ってて、すぐにセッティングするから!」ミドリ

 

 

 

 

ミドリは急いでゲームをセッティング、アリスは隆一の膝の上に座り準備万端、彼自身も、クソゲーランキング首位に躍り出るほどのゲームがどんなものなのか内心ワクワクしていた。コイツは根っからのクズである。

 

 

 

 

「よし、準備完了!」ミドリ

 

「………アリス、ゲームを開始します」アリス

 

「タイトルから分かるかもしれないけど、このゲームは童話テイストで、色彩豊かな王道ファンタジーRPGなの」モモイ

 

 

 

 

コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた………

 

 

 

 

「えっと、王道とは言っても、色々な要素を混ぜてたりするんだけどね。トレンドそのままでもダメだけど、王道に拘り過ぎても古くなるからってことで」ミドリ

 

「……?」*1

 

 

 

 

これよりチュートリアルを開始します

 

 

 

 

まずはBボタンを押して、目の前の武器を装着してみてください

 

 

 

 

「…………ボタンを押します」アリス

 

 

 

 

 

 

 

ドガァァァァァァン!!!

 

 

 

 

 

 

 

「?????」

 

 

 

 

YOUR DIED

 

 

 

 

「!?!?」アリス

 

「……は?」隆一

 

「あはははははっ! 予想できる展開ほどつまらないものはないよね! 本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないの!」モモイ

 

「お姉ちゃん……? 学生証を作りに行くって言ってなかった?」ミドリ

 

「行ってきたんだけど、遅い時間だったからか誰もいなかったの。また明日行くことにするよ……それはさておき、あらためて見てもこの部分はちょっと酷いと思う」モモイ

 

「酷い云々以前に、初っ端からハイパー無慈悲な理不尽はブラウザゲーだけにしとけって話よ」隆一

 

「…………も、もう一度始めます……再開……テキストでは説明不可能な感情が発生しています」アリス

 

「あっ、私それ分かるかも! きっと興味とか期待とか、そういう感情だと思う!」モモイ

 

「ポジティブな思考……手伝おうか?」ミドリ

 

「い、いえ、これは…アリスがやると決めたことなので」アリス

 

「分かったよ」ミドリ

 

 

 

 

2時間後…

 

 

 

 

「……電気処理系統、及び意思表示システムに致命的なエラーが発生」アリス

 

「頑張ってアリス、ここさえ乗り越えれば待望のクライマックスだよ!」モモイ

 

 

 

 

ゲーム開発部が作り出したゲーム、テイルズ・サガ・クロニクルは、はっきり言って人間という存在をあまりにも舐め腐って出来た成れの果てだった。

 

 

 

「……質問。どうして母親がヒロインで、尚且つ実は前世の妻で、さらにどうして主人公の母親兼前世の妻の元に子供の頃に別れたきりの腹違いの姉妹がタイムリープしてきているのか……………………エラー発生、エラー発生!」アリス

 

「前世の妻が今の母親でヒロインで、その母親の子供の姉妹…いや違う、前世の妻の子供……タイムリープ…で………あーもう!情報がゲシュタルト崩壊かますわこんなん!」隆一

 

 

正直に思って、道徳を何処かに捨てたようなコメントの数多は、あながち間違いではない、というか8割がた合ってるという事実に戦慄する隆一であった

 

 

「が、頑張ってアリス!クライマックスまでもう少しだから!」モモイ

 

 

 

 

さらに1時間後

 

 

 

 

ボンッ!!!

 

 

 

「アリスちゃん!?」モモイ

 

「アリスちゃんの頭から爆発音が!?」ミドリ

 

「……(漸く終わった…)……」*2

 

「……&!)$&8%&……*%#%#……」アリス

 

「アリスが変な言葉を言い始めた……けど、すごいよアリス! 開発者二人が一緒とはいえ、3時間でトゥルーエンドなんて!」モモイ

 

 

 

 

アリスと隆一がタッグを組みテイルズ・サガ・クロニクルをトゥルーエンドまで持っていったのだが、はっきり言ってもう二人の脳内処理は限界を迎えていた。

 

 

 

 

「もしかして、ゲームをやればやるほど……、アリスちゃんの喋り方のパターンが、どんどん多彩になる……!?」モモイ

 

「…の割には、あまりにも代償がデカすぎる…モウヤメテクレ」隆一

 

「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はそれを肯定しよう」アリス

 

「うん、確かにそう……かも?」ミドリ

 

「ゲームからそのまま覚えたせいで、まだちょっと不自然だけど……」モモイ

 

「前よりは全然良いね!」ミドリ

 

「と、ところでその………こういうのを面と向かって聞くのは、緊張するんだけど……」モモイ

 

 

 

「……?」アリス

 

 

 

 

「「わ、私たちのゲーム、面白かった!?」」モモミド

 

 

 

 

「……………説明不可。」アリス

 

「え、えぇっ!? なんで!?」モモイ

 

「……類似表現を検索……ロード中」アリス

 

「も、もしかして、悪口を探してる……? そんな事無いよね……?」ミドリ

 

「……面白さ、改善の余地……それは、明確に存在……」 アリス

 

「おおっ!」モモイ

 

「プレイを進めれば進めるほど……、まるで、別の世界を旅しているような…………夢を見ているような、そんな気分……」

 

 

 

 

「あー、早くユズにも教えてあげたい……!」モモイ

 

「ユズ……?」隆一

 

 

 

「……ちゃ、ちゃんと、全部見てた」???

 

「ユズ?」アリス

 

 

 

ゲーム開発部部室。その隅に存在したロッカーの中から一人の少女が飛び出してきた。

 

 

 

「ユズちゃん!? あれだけ探しても見つからなかったのに! いつからロッカーの中にいたの?」ミドリ

 

「み、みんなが、廃墟から帰ってきた時から……」ユズ

 

「なんか気配がすると思ったら…」隆一

 

「あ、アリスや先生は初めてだよね。この人が私たちゲーム開発部の部長、ユズだよ」モモイ

 

「えっと、あの、その……。あ、あ、あ……」ユズ

 

「あ……?」アリス

 

「……ありがとう。ゲームを、面白いって言ってくれて……もう一度やりたいって言ってくれて………………本当に、ありがとう」ユズ

 

「?????」アリス

 

「面白いとか、もう一度とか……そういう言葉が、ずっと聞きたかったの」ユズ

 

 

 

ユズはアリスの手を握りながらそういい、アリスはキョトンとしながらそれを見ていた。

 

 

 


 

 

 

「あらためまして、……ゲーム開発部の部長、花岡(はなおか)ユズです。この部に来てくれてありがとう、アリスちゃん……よろしくね」ユズ

 

「よろ、しく……?……理解、……パンパカパーン!ユズが仲間になりました!……で合ってますか?」アリス

 

「あ、うん。大体そんな感じ、かな」モモイ

 

「ふふっ、その様子だと、本当に私たちのゲームを楽しんでくれたんだね。RPGを面白いって思ってくれたなら、私がおすすめのゲームを教えてあげる」ミドリ

 

「ちょっと待ったぁ! アリスにおすすめするのは私が先!良質なゲームをやればやるほど話し方も自然になって、私たちの計画の成功率も上がるんだし!」モモイ

 

「けどゲームの種類はたくさんあるし…──んじゃ、俺も手伝うか」隆一

 

「ほんとですか!?」ユズ

 

「うん、ただ、俺はネトゲだけじゃなくて……俺の知っている、面白いボードゲームを教えるとするよ」隆一

 

「ボードゲーム…」モモイ

 

「……わかりました、アリス、ゲームを再開すると同時に、先生から色々と教わります!」アリス

 

 

 

それからしばらくの間、ゲームをやるアリスに付ききっきりで部室に残り、アリスと一緒に夜通しチェスに興じるのだった。

*1
早速文章の違和感に気づく天音先生の図

*2
付き添っただけなのに物理的に情報量で脳破壊寸前に陥った隆一先生の図

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