The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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一旦閑話を挟みます。


生塩ノア

シャーレの当番

 

簡単にいうと、学園や立場を問わずキヴォトス内の生徒たちがシャーレへとやってきて一緒に仕事をしたり、或いは悩みがあったりしたら話をしたりなどする制度の物。

 

元々はリンがシャーレにまだ慣れていない時の彼の為に作り上げた物で、それを利用して先生たる隆一と他の生徒達との交流を深めようと思い始めた。

 

その制度を利用した生徒達は数多くおり、気づけば相応の生徒が彼と交友関係を持つようになった。

 

そして今日の当番は、ミレニアムサイエンススクール2年生、ユウカの同級生の生塩ノアである。*1

 

 


 

 

「先生、この資料は何処に置けば…」ノア

 

「あ〜それ?三番目の棚の2段目にオレンジの付箋貼ってあるクリアファイルあるからそこに入れといて〜」隆一

 

今日は二人で分業。他の日であればある程度仕事を片付けてから当番の生徒のお悩み相談に乗ったり、或いは一緒にゲームをしたり茶をしばいたりして時間を潰すのだが、今日は生憎ゲーム開発部への遠出が長引いた以上、いつもの何倍も書類があり二人三脚で仕事を片付けていた。

 

 

 

二時間後

 

しばらく続け、山積みになっていた書類に終わりが見えてきた頃、ノアは隆一の横顔を見る、キリッとした目つきに素早く動く腕。

 

(先生……普段が少し抜けているからあんまり気にしませんでしたが……やはり、整ってますね)

 

そう、彼は寝癖のまま生活したり、スーツを着ずに私服で仕事したり、メガネが傾いたまま仕事したり…まあ兎も角私生活が無頓着であまり気付かれないが…めちゃくちゃ顔が整っている細マッチョイケメンなのだ。

 

「…先生」ノア

 

「ん?」

 

「先生って、元の世界でも、その…モテたりとかはしてたんですか?」ノア

 

「…モテるとかそういうのとは無縁だったからな…結婚したのも半ば親同士の政略みたいなもんだし、結局妻とは子供一人も残せないままそれっきりだし」

 

「…妻?それっきり?」

 

 

まだ二十半ばにも満たないというのに、嘗て妻が居た、しかも「それっきり」?そんな疑問を、彼の言葉が遮る。

 

 

「ああ。結局、今日まで遺留品の一つも見つかっていない、と言う訳だ。親父は『神隠しに遭った』とか言って大社から神職の人間呼びまくったけど、母親は二人目の妹産んですぐ癌で死んだし、妹以外の他の親類も妻が居なくなってから一月経たずして殺されたし。俺に付き纏う、ある種の『呪い』なのかなって」

 

彼の表情が曇る。

 

しかし、確かに彼の言う「呪い」には一理ある。

 


 

実際先生が赴任したあの日以降、D.U.で活動していた不良やスケバンの活動が、まるで神隠しにでも遭ったかのようにハッタリと消え、度重なるヴァルキューレの取り締まりにもあれほど抵抗していた不良達が、まるで彼の飼い犬のように大人しくなった。七囚人の一人であった、ワカモでさえもだ。「災厄の狐」なんて物騒な二つ名がついていたのにも関わらず、気づけば彼の忠実な下僕(しもべ)になってしまっている。

 

ノアは都合上、シャーレの当番以外の用事でもD.U.を訪れる事が多い。しかし、彼が来てからと言うもの、不良に絡まれる事はおろか、不良を見る事すら滅多だ。たまに、独立連邦捜査部所属を示す水色のヘルメットか腕章をつけた生徒が三人一組(スリーマンセル)を組んでのんびりと警備、と言う名目の散歩をしているだけで、不良が()()()()()()()、と言うよりは、まるで()()()()()()()()()()()かのような違和感を拭う事が出来ない。

 

じゃあ、持ち前の戦闘力で不良を倒して集め、()()でもしているのだろうか。だからと言って、元不良と思われる独立連邦捜査部の生徒達に聞き込みを行っても、彼に関する不評や不平不満の類の話は聞いた事がない。普通、人間が他の人間と付き合う以上、例え親友以上の深い関係であっても尚、相手に対する不満の一つや二つはあるものだ。きっとノアの親友であるユウカにとっても、ノアに対する不平不満の一つはあるはずだ。

 

人の話を何度も聞き、そしてD.U.に何度も通い、覚えているからこそ、ノアにとっては、彼が来てからのD.U.が、住人が、独立連邦捜査部所属の生徒が、不思議で堪らなかった。

 

これも彼の言う「咒い」なのだろうか?そんなことを思っていると…

 


 

「ノア、コーヒー入ったぞ」隆一

 

「あ、ありがとうございます」ノア

 

彼から差し出されたコーヒーを、彼女は口にする。

 

「(温かい……でも…これ…)先生…これ…」ノア

 

「ノア、どうした…」隆一

 

これ、なんですか?

 

ノアは飲みかけのコーヒーカップを先生に向けながら、コーヒーの中に浮かぶ白い粉を指差す。

 

「あぁ…悪い…シュガー溶け切ってなかったな。コーヒースプーン、貸そうか?」隆一

 

「あ…お願いします」ノア

 

そう言い、ノアは隆一からコーヒースプーンを貰い、残ったシュガー?を掻き混ぜて溶かした。

 

溶け切って暫くした後、ノアはコーヒーを飲み干した。

 

「先生、ありがとうございます。ミレニアムの仕事もあるので、今日はこの辺で失礼します。」ノア

 

「ああ、また来いよ」

 

そう言い、彼はノアを温かく見送った。

 

 


 

 

ノアが居なくなってから、暫く後の執務室。

 

(危ねぇ…()()()のバレたかと思った〜)

 

ある錠剤をコーヒーミルでパウダー状にしながら、彼は人目を気にして作業する。

 

(一応砂糖に混ぜ込んで乗り切ったけど、…まあ味で若干バレてるかもしれないがな…)

 

生徒にバレてはいけない。とは言えど、バレたらバレたでニューライザーを無理矢理でも流し込めばそれだけだ。

 

「えーと、あ行あ行…」

 

彼が開くのは、各校のデータベースから情報を()()して作った巨大な名簿。ほぼ全ての生徒の名前と学籍が記され、更には学校の廃校などで籍を失った生徒などのプロフィールさえも記されたこの巨大な名簿こそ、門外不出の一品である。

 

「…生塩生塩…あった」

 

ノアのデータを見つけ、その上から巨大なスタンプを押した。

 

 

 

Educated

 

 

 

と。

*1
前話の翌日、先生は一旦仕事を片付ける為にシャーレに戻っている

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