The Hypocrite's Archive 作:Xelphyr
ヴェリタス
ミレニアムサイエンススクールの非公認部活。
ホワイトハッカー集団を標榜しているが、残念な事にメンバーの倫理観は副部長のチヒロを除いて低く、思い付きなどで度々トラブルを起こし、それが発覚してはチヒロに説教されて、懲りずにまたトラブルを起こし…と言った様子。特にコタマの盗聴・盗撮癖は酷く、チヒロに依頼してスマホなどの電子機器、そして彼の使用する執務室などにある種のジャミングをかけてもらうほどだ。
翌日、一行はそんなヴェリタスにG.Bibleの解析の結果を聞きに来ていた。
「G.Bibleのパスワードの進捗、どうだ?」隆一
「それならマキが作業中ですよ」???
椅子を回転させ、此方を見ながらそう言ったのはヴェリタスに属する少女
「おはようミド! 来てくれたんだね、ありがと!」???
ドアを一枚隔てた作業スペースから出てきたのは件の少女、
「全然いいよ〜…って、モモと…シャーレの先生はどうしたの?」マキ
「ただの付き添いだ。気にすんな」隆一
「なるほど……」マキ
「それより、G.Bibleはどうだった?」モモイ
「あーそれ?ちゃんと解析できたよ。あれはあの伝説のゲーム開発者が作った神ゲーマニュアル……G.Bibleで間違いないね」マキ
「や、やっぱりそうなんだ!」モモイ
「ファイルの作成日や最後に転送された日時、ファイル形式から考えても確実。作業者についても、
「ということは、つまり────」ミドリ
「うん、完全にオリジナルのG.Bibleだろうね」マキ
「す、凄い!それじゃあ─」モモイ
「でも、ファイルのパスワードについてはまだ解析できていないの」マキ
「えぇッ!? それじゃ結局見れないじゃん!?がっかりだよ!」モモイ
「うッ……だって私はあくまでクラッカーであってホワイトハッカーじゃないし……」マキ
「でもオリジナルかどうかわかっただけでも十分、ありがとうな」隆一
「こちらこそ!」マキ
先生が褒めてくれてまた元気が戻ったマキ、コホンと息をつき切り替える。
「兎に角!解析ができないからって、それ以外に方法が無い訳じゃない」マキ
「そうなの?」
「あのファイルのパスワードを直接解除するのは、多分不可能。でも、セキュリティファイルを取り除いて中身を丸ごとコピーするって手段ならいけるんじゃないかな……で、そのためにはOptimus Mirror System……通称、
「ぜ、全然話についていけない……」ミドリ
「ど〜いうこと〜!?」モモイ
「うーん……つまり、今のままじゃG.Bibleは見れないから、『鏡』ってプログラムを使って見る必要があるだってことだな?」隆一
隆一がある程度内容を簡潔にまとめて話すと、才羽姉妹は納得した様子で頷く。
「じゃあその鏡はどこにあるの?」モモイ
「あたし達ヴェリタスが……持ってた」マキ
「……ん、待って!?持って『た』!?過去形!?」モモイ
「そう。今は持ってない。
「セミナー……ユウカとノアがいる所か」
「急に押しかけて来てさー!?『不法な用途の機器の所持は禁止』、それだけ言ってプログラムを回収していったんだよ!もう本当にやだ!」マキ
「その鏡ってやつはそこまで危険なものなの?」
「そんな事はないよ。暗号化されたシステムを開くのに最適化されたツールってだけ。ただ……」ハレ
「世界に一つしかない、私達の部長ヒマリ先輩が直々に製作したハッキングツールで…」
「…ヒマリ?」
「ヒマリ先輩はヴェリタスの部長さんなの。身体が不自由でいつも車椅子に乗っているから、見かけたらすぐ分かると思う……本当に、凄い人でね。身体の事はあるけど、それであの人に同情したり軽視したりするような人は、少なくともこのミレニアムにはいない。所謂天才、っていうのかな。ミレニアム史上、まだたった3人しか貰えてない学位、
「…要するに、歴代で一二を争うほど頭が良い人ってか」隆一
「簡単にまとめれば…そうだね」コタマ
「うん、本当に凄い……けど、それはそれとして、どうしてせっかく作った装備を取られちゃったの?」
「……分からない。ただ、『不法な用途の機器の所持は禁止』と保安部の生徒に言われて、それっきり」ハレ
「うわあぁん!早く鏡を回収しないと部長に怒られちゃう!」
「兎に角……整理すると、君達ヴェリタスも"鏡"を取り戻したい。そして、ゲーム開発部にとっても、G.Bibleのパスワードを解くためには、ヴェリタスの"鏡"が必要不可欠……言いたい事は分かったか?」隆一
頭を抱えるマキと流し目で此方を見るハレ。セミナーに押収された、ヒマリが作成した暗号解除ツール。
そんな大事なものは早く取り返したいが、かといってセミナーと押し問答を繰り広げるのは流石にやばい。権限の都合上、下手にセミナーに逆らえばヴェリタスもゲーム開発部も取り潰しになり、彼女らが築いてきた功績も何も差し押さえになるだろう。
じゃあ実力行使!と考えるが、先述の通り下手な動き方をすれば取り潰しは免れない。なんなら停学・除籍すらも可能性としてはある。だからこそ何処かに力を借りたいが…セミナーに一緒に喧嘩をしに行ってくれる者なんていない……そう、今までは。
「……ああ!そういう事か!」モモイ
「ふふ、流石モモ。話が早いね」マキ
「目的地が一緒なんだし、旅は道連れってね」ハレ
「共にレイドバトルを始めるのであれば、私達はパーティーメンバーです!」アリス
「ま…まさか…まさかみんな……本気で?」ミドリ
「んじゃあ利害の一致、統一戦線だ。目標はセミナーの撃退、並びに"鏡"の奪還と言った具合かな?」隆一
「けど…大きな問題がある」マキ
「問題?」
「『鏡』は生徒会の差押品保管所に保管されているんだけど、其処を守っているのが実は……メイド部、なんだよね」
「……え?メイド部、ってもしかして……」モモイ
「…?女中の何が危険なんだ?」隆一
「先生、セミナーの…いや、ミレニアムのメイドは……普通じゃないんです。実は…」コタマ
メイド部
ミレニアムサイエンススクールで活動する組織の通称であり、正式名称はCleaning&Clearing、略称C&C。
制服がメイド服である為表向き「メイド部」と呼ばれる事がある。一聞すると単なる清掃業者やお手伝いさんのようにも聞こえるが、実際には凄腕のエージェント集団であり、戦闘力はミレニアムトップクラス。事実上セミナー傘下の特殊部隊でもある。
そして、メイドらしい流麗な『所作』とその丁寧な『奉仕』で優雅に敵を『
「じゃあ…その『メイド部』が"鏡"を?」
「そうそう!まあ、些細な問題なんだけどさ~」マキ
「そっか~!そうだねー、うーんなるほど~……よし、諦めよう!」モモイ
「諦めちゃダメだよモモ!G.Bibleが欲しいんでしょ!?」マキ
「そりゃ欲しいよ!でもだからって、メイド部と戦うなんて冗談じゃない!」モモイ
「で、でもこのままじゃ、
「うぐっ……も、勿論廃部は嫌だけど……でもそれとここれとでは、次元が違う!C&Cの『奉仕』で壊滅させられた団体やサークルは数えきれないもん!」モモイ
「……最後には痕跡すら残さず、綺麗に『掃除』される。有名な話だね」ハレ
「いや死体の一つや二つは残るだろ流石に。というか『掃除』て…昨今のセミナーの動向と言い、完全に独裁国家のそれじゃねぇかよ!」
メイド部が仕事を終えた後には塵一つ残らない。まるではじめから無だったように。それほどまでに強力で恐ろしい集団、それがメイド部なのだ。
「私は部活を守りたい。でも、だからと言って皆を切り捨てるわけにはいかない、でもどっちも選んだ所でメイド部の四人と戦う羽目になる!危険すぎる!」モモイ
「た、確かにそうだけど…」ハレ
「それに!いくらアリスがとんでもなく強くても限界はある!私たちなんて足手纏いだし……チートキャラがいないとダメだよ〜〜!!」モモイ
「そ、それは………」ハレ
「『戦える』ってなら、俺でも良いが」隆一
「……え?」一行
そんな事を彼が口にした時。彼のスマホから電話がかかってきた(着信音:ヤマトのテーマ)。
「悪い!電話かかってきたから一旦抜けるわ」
「どうしたんだ?ウタハ?」隆一
「実は…協力して欲しい事がある」ウタハ
「協力?むしろ協力したいのはこっちだ。こないだのレーヴァテインの件。あの武器のお礼を…」隆一
「その件は後日話そう。早急に頼みたい事がある」ウタハ
ウタハの普段ではありえない慌てっぷりに、彼は少しびっくりする。
「先生、『
「『造兵廠』…?一体どういう…」
「さっき、本当についさっきなんだ。
保安部の生徒が乱入してきて、『セミナーの指令で不法な用途の機器を回収しにきた』とだけ言われて、私達の工具セットや、開発途上の武器を根こそぎ奪われてしまったんだ!」
「…なっ!?もう魔の手が…」隆一
「…ん?先生?今
「ああ、今まさにヴェリタスの生徒と話をしていた所だ。ヴェリタスもツールや機器の類をかなりの数スラれたらしい。なんならゲーム開発部に関しては廃部を強要されて今まさにヴェリタスと抵抗するつもりだ」隆一
若干話を誇張しながら、確実にエンジニア部を味方に引き込むべく彼はウタハと話す。
「廃部…?確かにクソゲーランキング一位にランクインしていたが、いくらなんでも罰が…」ウタハ
「ああそうだ。セミナーのこれまでの動きはこうだ!
『セミナー内部で採決を完結させる→気に入らない部活に校則違反の冤罪をなすりつける』
じゃあどうなるか、ウタハなら分かるだろ?」隆一
「……部活の存続の為にセミナーに擦り寄り、存続を許される代わりに抵抗可能な一切の能力を奪われる…」ウタハ
「そうだ。セミナーの功利主義的な姿勢はあくまでも
「そ…そんな…じゃあ、私達の発明は…エンジニア部の皆は、どうなってしまうんだ!」ウタハ
「奴らが法、逆らえば
「!?教えてくれ!先生!このままだと私…もう…」ウタハ
ウタハにとってエンジニア部は自分の居場所であり、そして何よりも大切な後輩との居場所でもあり、そして青春の一部でもあった。だからこそ、彼の言う『覆す方法』にエンジニア部の存続の一縷の望みを託し、藁にもすがる思いで彼にその『方法』を聞こうとする。目に涙を浮かべながらも。
「ミレニアムの生徒会は?」隆一
「…?セミナーだが…」ウタハ
「じゃあそんな生徒会、並びに各学園を束ねる機関は?」隆一
「…連邦生徒会…?」ウタハ
「じゃあそんな連邦生徒会の
「…独立連邦捜査部…!!先生!まさか!」ウタハ
「ああ、
「たとえこのミレニアムでアンチセミナーの反乱を起こした所で、馬鹿正直にやれば君達はミレニアムの校則に抵触して最悪除籍、身分もクソもなくなってキヴォトスを彷徨う
「先生は、独立連邦捜査部の所属も相まって罰則を免れる…」ウタハ
「だから君達を名義上『独立連邦捜査部の協力メンバー』とすれば、君達も罰則を免れられる。ただ、俺は卑怯な人間でな。ゲーム開発部にヴェリタスに、そしてお前らエンジニア部も巻き込んでやる!すまんの。こんなメイド部?とやらとドンパチ殺り合う環境にブチ込んじまって」隆一
「先生!ありがとう!」ウタハ
「ああ、こちらこそな」隆一
戦いの火蓋が、切って落とされようとしている。燻ってきた怒りという炎は燃え上がり、やがてミレニアムを焼き尽くす…そんな事を思いながら、彼はヴェリタスの部室に戻っていくのだった。