The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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異形

 

 

 

 

──民は民に、国は国に対して立ち上がるであろう。

 

 

 

─マタイによる福音書、第二十四章七節

 

 


 

 

セクターアルファ、保安部の完全無力化に成功しました。オーバー」ミレニアムのある生徒

 

セクターブラボー。"チーム・ジェファーソン"全生徒を拘束に成功、オーバー」ミレニアムのある生徒

 

セクターチャーリー。ミレニアム中央駅の封鎖に成功、民間人は退避させます。オーバー」ミレニアムのある生徒

 

こちら■■、現在セクターリマにて"チーム・フランクリン"と交戦中。増援求む。オーバー」ミレニアムのある生徒

 

セミナーの強権的な措置に対し立ち上がったミレニアムの生徒は、気付けば巨大な反乱軍を結成していた。セミナーの抑圧に対し立ち上がり、自らの青春を守る為。傭兵にスケバン、金に釣られた人間から、ミレニアムの玉石混同の生徒達。皆が戦っている。

 

「陽動作戦は成功だ。差押品保管庫までの道は開けた」隆一

 

「すごい火の手…」モモイ

 

外の景色を見渡しながら、モモイは思わず声を上げる。普段は色鮮やか?な夜景が見えるミレニアム自治区では、あちこちから火の手が上がり、地上には混乱する人々とそれを誘導しようとする保安部の生徒らが入り乱れている。

 

「保安部とC&C以外のほぼ全ての部活が寝返ったんだ、そりゃこんな規模にもなる…とまあ四方山話はここまでだ。折角アリスとヴェリタスが陽動してくれたと言うのに、時間を浪費する必要はない」隆一

 

「そ…そうだね。急ごう、セミナーに」ミドリ

 

 

 

 


 

 

 

 

セミナー内部に侵入して数分、ミドリの端末にハレから連絡が入った。

 

 

 

 

「先生、お姉ちゃん、ハレ先輩から連絡!アカネ先輩を閉じ込めるのに成功したって!」ミドリ

 

「よし、指紋認証システムも正常に作動したね!」モモイ

 

ここにきてヴェリタスのハレとコタマがメイド部のアカネを閉じ込める事に成功。

 

そしてチヒロが指紋認証システムをハッキング。これで一行は堂々と中を走れるように、そして生徒会は束手無策の状態になり、この混乱に対する策を取れなくなった。じゃあこれで終わり…、と言う話ではない。あくまでも今回の作戦、「ヨークタウン作戦」の目的は保安部並びにC&Cの無力化であり、彼にとって強行採決の撤回はあくまでも二次的な要求に留まっていた。しかし、セミナーの採決によって資産や思い出の品を差し押さえられられた怒りは、ミレニアムの生徒達の中に眠っていた憎悪を駆り立てるにはあまりにも十分であり、気付けば彼でさえコントロール不可能な規模まで拡大。セミナーに対する『要求』は『怒り』に、『怒り』は『』となり、生徒達を革命へと誘った。

 

 

 

 

「これで生徒会の役員達も動けなくなった……今、このタワーの中で動けるのは私達だけ!」モモイ

 

本来のエンジニア部製よりほんの少しだけ弱そうに見える、最新型のセキュリティ……上手く行ったみたいだね」ヒビキ

 

「名前を隠してたし、多分あれもエンジニア部製だとは思わなかっただろうね。その辺の塩梅も、さすがはエンジニア部!」ミドリ

 

 

階段をえっほえっほと登っていくモモイとミドリ、それを導く彼……それを

 

 

 

 

「……あの人が先生…本当に、あの男がクリーチャーなのか?むしろ普通の人間に見える。怖いが……少し、試してみたいな」???

 

 

 

 

スナイパーライフルを片手に、一人の少女がその姿をスコープに捉えていた。

 

 


 

 

「奇襲の可能性がある。十分に注意しよう」隆一

 

「え〜…私は別に気にしないのに〜」モモイ

 

「私達が気にしなくても、先生は外の人間なの!私達キヴォトス人と違って一発の弾丸でも命に関わるの!」ミドリ

 

「んも〜仕方ないな〜」モモイ

 

「仕方ないじゃない!もしここで先生が死んだら、私達どうやって責任取るの!?」ミドリ

 

 

 

 

そんな話をしながら、モモイは指紋を認証させシャッターを開こうとする。その刹那だった。

 

 

 

 

「どけ!」隆一

 

「「────ッ!?」」ミドモモ

 

 

 

 

ドガアァン!!

 

 

 

 

彼の頭部、そこに一発の弾丸が放たれた。それも対人ではなく対物()()()の弾丸、窓ガラスが完全に砕け散り、弾丸は彼に直撃していた

 

「先生!!!!!」モモイ

 

「そ……そんなっ…!!?」ミドリ

 

狙撃銃の弾丸が彼の頭部に直撃した刹那、彼の頭蓋骨は弾け飛び、当たり一面に脳味噌が飛び散る地獄絵図と化した…

 

…お姉ちゃんがあんなこと言うから!先生死んじゃったじゃん!」ミドリ

 

「ミドリだって!…」モモイ

 

二人は責任をどうするべきか錯乱してしまい、お互いを罵り合い始めるが…

 

 

 

「──…喧嘩すんなよ」

 

 

 

謎の声が、二人を諌める。

 

「…え?」ミドリ

 

「…へ?」モモイ

 

「…今、先生の声が…」

 

「いやそんなわけないでしょミドリ…いや、確かに私も…」

 

「分かんないのか?」???

 

食い気味に、頭の傷を再生した彼が二人の間に割って入る。吹き飛んだはずの彼の脳味噌や骨は完全に治っており、なんなら撃たれる直前と同じように髪まで生えている。そして飛び散った脳味噌や骨の欠片は、黒い粉のような物体になって空に消えていった。

 

「えぇ!?先生!?」

 

「ど…どうして平気で…」

 

「あれくらい、ほっとけばすぐ治る。」

 

普通の人は治らないんですけどね

 

「…オホン、まあ兎も角、作戦続行だ」

 

 

 

(──ば、馬鹿な…何故あれほどの怪我を1分経たずしてなかったように再生する!?やっぱりアカネやユウカの言ってたように、奴はクリーチャーな…いや待て、ならばこちらも…加減する必要はない!

 

メイド部の一人で褐色肌が特徴の角楯(かくだて)カリンは、彼に困惑する他なかった。

 

 

 

 

ドガアァン!!

 

 

 

 

 

二発目の弾丸が放たれる。弾丸は彼の右腕の手首あたりに着弾し、再びあたり一体に骨や血肉が飛び散る。

 

「…先生…それ痛くないの?」

 

「な〜に、すぐ治るから問題はない」

 

と言いながら彼は全然普通に砕けた右手を治す。

 

「…おそらくこりゃただの銃弾じゃねぇ。威力と速度からして対人用でもねぇ。おそらく対戦車、対装甲車用に作られた弾丸かつ、銃もモモイやミドリの持ってるアサルトライフルでもない。スナイパーライフル。つまりスナイパーが…あ、居た」

 

彼は、弾丸が飛んできた方向を逆算し、狙撃手がビルの屋上にいるのを突き止めた。

 

(なっ…!?見つかった!?ありえない!空気抵抗があるとはいえど、弾丸はマッハ2を超えているはず…それに、何故弾丸を二度も喰らって生存している!?キヴォトス人でもない、生身の人間が!?)

 

「…え、どこ?」モモイ

 

「あっちだ。あのビルの屋上」隆一

 

「…遠くない?」ミドリ

 

「だからな。別の方法で倒すとする。」隆一

 

「別?どうやって?」

 

「…こうやって」

 

 

彼は、徐に懐から()()()()を取り出す。

 

「…何それ?」

 

「…ラブドス(Ράβδος)だ、分かりやすく言えば『魔法の杖』かな?」

 

彼がラブドス(Ράβδος)、魔法の杖と主張するそれは、杖の持ち手の上、接合部の部分に紫色のアメジストが嵌め込まれ、杖自体は黒く、少しミステリアスな道具だった。杖から漂う紫色のオーラは、次第に

 

 

 

「…魔法の杖?ってことは魔法をそこから出せるってこと?」モモイ

 

「いや、()()()()だと杖から魔法は出せない。杖ぶん投げて出来る物理攻撃ぐらいだ。…まあ兎も角、四方山話に興じるお暇はない。急ぐぞ。」

 

「はっ、はい!」ミドリ

 

 

 

 


 

 

 

 

(まずい…逃がしてしまう!早く、早く!)……

 

「(人の気配…アカネか?もうヴェリタスを倒したのか?)」カリン

 

縺ェ繧薙〒谿コ縺昴≧縺ィ縺吶k縺ョ

 

「(!?誰だ!?アカネじゃない!じゃあ一体…)」カリン

 

カリンが姿を見なくても分かった。今後ろにいるのは人間()()()()。何を喋っているのかもよく分からない。声もどこか水が入ったようなゴボゴボとした音を立てている。男の声にも、女の声にも、老婆の声にも聞こえる。ホラー映画を観た時のあの感覚が甦り、背筋を撫でるような寒気を必死で堪える。

 

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己の背後に陣取る「ナニカ」から聞こえる声のようなノイズに、彼女は耳を塞ぐことさえままならない。全身を駆け巡る寒気が体を強張らせ、碌に手足を動かす事すらも妨げるからだ。

 

 

「(化け物…でも、奴じゃない。先生じゃない。この距離をこの時間で移動できるわけがない)」

 

 

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險ア縺輔↑縺

 

 

…気持ち悪い。不気味な声が脳に直接語りかけるような、そもそも声なのかも怪しい、そんな音が脳内に直接響いてくる。耳を塞ごうが、風の音も火の音も、爆音も聞こえない中で音だけは延々と、そしてはっきりとカリンには聞こえ続ける。

 

 

「(これ以上耐えられん…仕方ない。人なのかも分からないが…奴を倒す)」

 

 

13,9mm弾を装填し、反転したらすぐに撃てるように体勢も少し変える。腹を括った。いくら恐れているとは言えど、それでも私はC&Cだ。ミレニアム一の優秀な狙撃手だ。脳の何処かに巣食うそんな矜持で恐怖を塗り潰し、意を決して振り向く。

 

「覚悟し…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みいつけた

 

 

 

 

 

 

そこに陣取っていたのは、まさしく異形という言葉が似合う存在だった。

 

「ヒィッ!!!???」

 

人間だったものがバラバラに繋がれ溶けた異形の存在。下半身と思われる部位は肉肉しいスカートのような脂肪で埋まり、上半身と思われる部位には無数の人間の一部がまるで絡み合うかのようにグチャグチャに混ざり、骨が砕かれた足や手、目や内臓だった物体がへばりつく。そして全身には無数の目や牙、溶けた人体の一部がそこにある。どちらが上で、どちらが下か分からない異形のそれは、彼女の恐怖を最大限に高めるまでは十分だった。

 

そしてその異形は、グチャグチャと言葉で表現出来ないような音を立てながら、彼女に近づく。

 

「や…やめて…やめ…」

 

 

 

それ以降の事は、彼女は覚えていない。唯一カリンが後日覚えていたのは、その異形に肉体を蝕まれる悪夢だけだった。

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