The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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【後日談】ミレニアムプライス

ミレニアムプライス、会場。

 

D.U.地区の大展示場*1を丸々貸し切って行われるミレニアムでも有数の行事は、ある意味キヴォトスの最新技術が並ぶ博覧会でもある為他の学校や企業もかなり注目している。また、どっかの先生が起こした内乱の影響で延期せざるを得なくなり、今日に至る。

 

 

 

 

「これより、ミレニアムプライスを始めます!司会及び進行を担当するのは、ミレニアムサイエンススクールエンジニア部所属、豊見コトリです!今回は、ここ数年のミレニアムプライスの中でも最多の応募数となりました。恐らくはセミナーの方針転換により、部活動維持のための成果が必要となった影響かと思われます!」コトリ

 

「……結構まずくねぇか?」隆一

 

「うぅ、確かに困る…」モモイ

 

 

 

 

応募数が多くなるという事は、つまりそれだけ倍率が上がる=金賞を取れる確率が下がるという事。その中で金賞を勝ち抜けば、成果の証明となり、ノアに部としての成果を証明してもらえるかもしれない。

 

「でも、ここで一位になったら、自慢できるね!」モモイ

 

 

 

 

「昨年の優勝作品である生塩ノアさん著の思い出の詩集は、その形而上的な言葉の羅列がミレニアム最高の不眠症に対する治療法として評価されました」進行役1

 

「尚、これは本来の意図とは少し違ったようですが……今回も歯磨き粉と見せかけてモッツァレラチーズが出る持ち歩きチーズ入れミサイルが搭載された護身用の傘ネクタイ型モバイルバッテリー光学迷彩下着セットちょうど缶一個なら入る筆箱型個人用冷蔵庫……その他様々な珍妙ゲフンゲフン…失礼、個性的な作品などが数多く応募されています」進行役2

 

「(…????)」*2隆一

 

「あれやっぱり気になりますよね」ミドリ

 

「色々大丈夫なのかな…」ユズ

 

「そして!今キヴォトスのインターネット上でセンセーショナルを巻き起こしているスマホやタブレット、パソコンなどでマルチプレイが楽しめるレトロ風ゲーム、テイルズサガクロニクル2などなど、今回出品された三桁の応募作品のうち、栄光の座を手にするのはたったの7作品!」コトリ

 

「いよいよだ…」

 

「ゴクッ…」

 

 

「それでは七位から受賞作品を発表します!………第七位、エンジニア部、ウタハさんの光学迷彩下着セットです!」

 

 

「「「「なぜ!!!?」」」」ゲーム開発部一同

 

「なんで一番評価しにくそうな作品が……」隆一

 

 

 

 

七位に選ばれた物はなぜか光学迷彩下着セットノリと勢いで反乱を起こすほどの隆一でも尚この作品がやばいと言うことは理解していた。

 

 

 

 

「これは身に付けてもその下の素肌が見えてしまうため、着ているのかそうでないのか分からないというエキセントリックな作品ですが………露出狂の患者さんが合法的に趣味生活を営めるようになるという点で大変高い評価を………その評価した審査員が一体誰なのか気になってしまいますね!」

 

 

「(…????)」*3隆一

 

 

 

 

一旦息を吐き、続く受賞作品を眺める。第六位、第五位。テイルズ・サガ・クロニクル2は受賞作品の名前に上がらない。

 

第四位も、第三位も、第二位も名前が上がらなかった。

 

 

 

 

「そして、」コトリ

 

 

 

 

3桁を超える応募作品の、頂点。

 

 

 

「も、もしかしたら…」モモイ

 

「お願い……」ユズ

 

「栄えある第一位を受賞した作品は……」コトリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(((((さあ、どう来る………?)))))」ゲーム開発部&隆一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────トレーニング部…エッ?ランキングに変更?もう一位発表…は、はい分かりました。失礼しました!ランキングに誤植があったようです。今回、最高賞は金賞との記載がありましたが、()()()()()()()()第一位の上に『最優秀賞』があるとの事です!」

 

 

「えっ!?」ミドリ

 

「これもしかして…」モモイ

 

「…ワンチャンあんじゃねぇのか!?」隆一

 

 

 

「コホン、気を取り直して、栄えある最優秀賞を受賞した作品は……」コトリ

 

「作品は…?」モモイ

 

「作品は…?」ミドリ

 

「作品は…?」隆一

 

 

 

「と、その前に。ミレニアムプライスは皆さんのご存知の通り、生徒達の才能と能力で作られた作品に対し、実用性そして先進性を軸に据えて授賞を行ってきました。これはより良い未来を求め、実現していくというミレニアムサイエンススクール側の趣旨に基づいています。

 

しかし、

 

今回の作品の中には、新しい角度から実用性を感じさせてくれたものがありました。その作品は懐かしい過去を鮮明に思い出させ、未来への可能性を感じさせてくれたのです。よって、私達ミレニアムプライスはこの度、異例の選択をする事にしました」

 

 

 

「それって……もしかして!」モモイ

 

 

 

「最優秀賞、受賞作品……ゲーム開発部テイルズ・サガ・クロニクル2です!」

 

「ええっ、嘘ッ!?」

 

「な、何が起きてるの……」

 

 

 

 

2人の疑問を置き去りに、審査員の一人はコメントを綴る。

 

 

 

 

「レトロ風という、一見するとミレニアムの最新鋭嗜好とは異なる、時代を超えたコンセプト、常識に縛られず次々と想像を超え、続々と現れる敵に味方に、想像もつかないユニークな展開。

 

一見してそれらとマッチしそうにない不可思議な世界観。様々な世界を旅して、一つ一つ新たな絆を結びながら、ボスを倒しに行く……そういったRPGの根本的な楽しさが、しっかり込められた作品だと思います。

 

プレイしながら、かつて初めてゲームに夢中になった幼い頃を鮮明に思い出す事ができました。そういった点を評価して、この作品に……今回、ミレニアムプライスの最優秀賞を授与します」

 

 

 

 

ゲーム開発部はランキングにこそ載らなかった……しかし、最優秀賞という結果を手に入れた。丁度その頃。

 

プルルル…

 

「ありゃ、ノアからだ」

 

ノアから、唐突に電話がかかってきた。

 

 

「おめでとうございます。ゲーム開発部の皆さん……私もプレイしてみました。……良い作品に出合えた後の、あの独特な感覚を味わう事が出来て、良かったです」ノア

 

 

プルルル…

 

そしてそれが呼び水にでもなったのか、彼の持つ二台目の携帯からも電話がかかってくる。

 

 

「モモ!ミド!あたしもTSC2やってみたよ! すっごい面白かった! 今ネットでも大騒ぎだよ! ヴェリタスの調べだと、今、有名アイドルの名前よりTSC2の検索数が多くなってるってさ!」マキ

 

 

「え、あ、ほ、ほんとに……?」モモイ

 

 

 

いざノアやマキから話されても、まだ頭が処理できず困惑したまま。

 

 

 

「確認しました。3時間前にアップしたテイルズ・サガ・クロニクル2は、先ほどまでダウンロード7705回、計372件のコメントが付いていましたが……

 

ミレニアムプライスの発表以降、約26秒間で総ダウンロード数が7万を超えました。

 

コメントも約2800件追加。

 

うち言葉のニュアンスからして否定的・懐疑的なコメントが815件、肯定的・期待のコメントが917件。残りは評価との関連は不明、もしくは評価を保留にしているコメントです」コタマ

 

 

 

「な、七万!?」隆一

 

「こ、これってつまり、廃部にはならないんだよね!?」モモイ

 

「えぇ、勿論です。しかし、本来の形での正式な受賞ではありません、しかし、セミナーとして、ユウカちゃんの行った行為に対する私達なりの贖罪、と言った形で、一旦、ゲーム開発部の部室の没収及び資産の差し押さえ、そして廃部を取り消す決定を致しました」ノア

 

 

 

セミナー側が予期した賞を授与したわけではない、かといって後出しじゃんけんの形で最優秀賞を無効にするのはそれじゃあゲーム開発部に示しがつかない、これによりゲーム開発部の廃部は取り消しという形になった。

 

 

 

「……ごめんなさい。どうやら、ユウカちゃんが、ゲーム開発部のこれまでの成果物を『ガラクタ』だと唾棄したみたいで……私も、ゲーム開発部の皆さんのおかげで、小さい頃に遊んだゲームの事を久しぶりに思い出す事が出来ました……」

 

 

 

ノアは電話越しに、明るい声でゲーム開発部に礼を言う。

 

 

 

「しかし、部室の借用延長申請、部費の受付処理など諸々の精算は必要なので、また後日、生徒会室を訪ねてください。──本当に、おめでとうございます。」

 

 

 

そして彼女は電話を切った。

 

 

 

「……やったぞ!」隆一

 

「やったぁぁぁぁぁ!」モモイ

 

「良かった……!本当に良かった……!」ユズ

 

「やった……嬉しい……!」ミドリ

 

「……?え、えっと……?」アリス

 

 

 

状況を今ひとつ理解出来てないアリスの手を、ミドリは涙混じりの満面の笑みを浮かべながら握る。

 

 

 

 

「アリスちゃん!私達、最優秀賞を受賞したんだよ!この場所も、私達ゲーム開発部の部室のまま!」ミドリ

 

「えっと、つ、つまり……アリスはこれからも……皆と一緒にいて、良いんですか……?」アリス

 

「うん!勿論!」モモイ

 

「これからも、よろしくね……!アリスちゃん…!」ユズ

 

「そして…先生!ありがとう!!先生が一緒に廃墟に行ってくれて、C&Cの時も頑張ってくれて!私をバカにしないで、励ましてくれて…」モモイ

 

「私達に励みの言葉をずっと投げかけてきてくれて」ミドリ

 

「わ、私たちを…信じてくれた…」ユズ

 

「アリスも!先生も!──ありが…とう…」モモイ

 

涙ながらも、ゲーム開発部の皆は言葉を紡ぐ。

 

「おめでとう、そしてお疲れ様」

 

 

 

その言葉を聞き、ゲーム開発部は喜びの笑顔と感動で感情がぐちゃぐちゃになる。

 

 

 

「アリスちゃん!」ユズ

 

「私達……!」ミドリ

 

「これからも…ずっと…一緒だよ……」モモイ

 

「……はい!これからも、よろしくお願いします!先生も!これからも、いつまでも!」アリス

 

「ああ…」

 

 

 

初めはゲーム開発部どころかミレニアムさえもよくわからない彼は不安でいっぱいだった。自らの策謀さえあればこの子達(ゲーム開発部)を守れるのか?失敗した時、この子達にどれほどの重荷を背負わせる羽目になるか…しかし、若干場当たりなやり方でも、彼女らの居場所と笑顔を守り抜けた。

 

 

 

「(たまには人間讃歌も…悪くはないな…)」

*1
規模的には東京ビッグサイトぐらいかと思ってもらえればおk

*2
「お前は何を言っているんだ」と言いたげな顔

*3
「お前らは何を言っているんだ」と言いたげな顔

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