The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

37 / 38
お気に入りとコメントは励みになるので皆さんお願いします
誤字脱字報告も同じく励みになります


第三章:偽りの■者篇
密会


ミレニアムサイエンススクール・セミナー執務室

 

「あら……超天才清楚系病弱美少女の来訪を、電気をつけずに迎えるなんて……来客をもてなす気がこれっぽっちもないと言う点、とてもあなたらしいとは思いますが……しかし、暗い部屋でモニターをつけていると目が悪くなりますよ……リオ」ヒマリ

 

「万全を期しているだけよ、この会談を外部に知られる訳にはいかない……その為であれば、この程度問題ではないわ」リオ

 

 

 

 

ミレニアムの全知こと明星(あけぼし)ヒマリと、セミナーの会長調月(つかつき)リオの密会。呼びつけたのはリオである。

 

 

 

 

「全く、明かり一つ点ける事すら徹底するなんて、相変わらずですね」ヒマリ

 

「何処に目があるか分からない以上必要な措置よ、そして今回の訪問がデータベースに残る事は無い、つまり第三者にこの現場を目撃されない限り、記録上私達は会っていない事になる、全ては──これから話す内容の機密を守る為よ」リオ

 

「リオったら、本当に真面目なんですから……『貴女は私の姉なの?』くらいの軽口を返せないと、ユーモアからは程遠いですよ? 今のだって、超天才清楚系病弱美少女の軽い冗談なんですから」ヒマリ

 

「……貴女は私の姉ではないわ、急にそんな非合理的な話をするなんて、どうしたのヒマリ?」リオ

 

「……えぇ、えぇ、そうでした、あなたはそういう人でしたね。ユーモアを解さずに『合理』だなんて……あなたの好きな表現でしたね、それ」ヒマリ

 

「好悪の話ではないのだけれど、事実でしょう?この会合が秘匿されるべきものである事位、あなたも理解しているものだと思っていたのだけれど……違うのかしら?」リオ

 

「それは挑発のつもりですか、リオ?」ヒマリ

 

「……そんなつもりはないのだけれど」リオ

 

「はぁ──そもそも、人目を気にするのであれば、他の場所にすれば良かったのではありませんか? えぇ、例えばですが……誰かさんがこっそり作っている、悪趣味な『要塞都市(エリドゥ)』とか?」ヒマリ

 

 

それは本来、誰にも知られていない筈の情報。たとえセミナー内部であってもアクセス不可能な程に隠蔽されていた秘匿情報であったが、どうやら彼女は掴んでいたらしい。リオは一瞬その眉を顰めたが、しかしそれ以上反応を見せる事無く努め、そして淡々と声を上げた。

 

 

「──…本題に入りましょう、ヒマリ」リオ

 

「あらあら、話を逸らすつもりですか? ふふっ、えぇ、構いませんが」ヒマリ

 

 

仕返し、或いはマウンティングとでも云うべきか。リオに一発入れてやったという事実に優越感を覚えたヒマリは上機嫌に続きを促す。リオはそんなヒマリに対し何の感情も伺わせない瞳のまま、ごく平坦な声色で云った。

 

 

「まずは認識の擦り合わせを。」リオ

 

「その口ぶりからすると、前回の鏡を巡った一連の騒動について、ですね?」

 

「えぇ、そうよ。」リオ

 

「私がわざわざ、鏡と云う手段を用意した……まさかあそこで、ユウカが犠牲になるとは思いもよりませんでしたが」ヒマリ

 

「そうね、他ならぬ──AL-1S(アリス)の正体を明かす為に」リオ

 

 

 

二人の視線が交わり、互いに互いの思考をなぞる。二人の表情は真剣であり、常は疎み合う両者が一つの物事に対し真摯に向き合っている証憑でもあった。

 

 

 

()()から随分と経つけれど、解釈の結論は出たかしら?」リオ

 

「えぇ、勿論です」

 

「そう、良かった……なら結論を」

 

 二人の視線が交わり、リオが一度息を吸い込んだ後、続ける。

 

 

 

「アリスの正体──それは」

 

 

 

無名の司祭が崇拝するオーパーツであり、遥か古代の記憶に存在する…

 

 

 

「──名も無き神々の王女」
 
「──名も無き神々の王女」
             

 

 

 

二人の口にした台詞が重なり、静寂が周囲を支配する。ふっと、リオは肩から力を抜いた。それは安堵であり、納得である。自身に比肩する才能を持つヒマリが同じ解釈を持った事により、彼女は結論をより強固なものとしたのだ。

 

 

「……そう、やはり同じ解釈になったようね」リオ

 

「業腹ですが、その様で」ヒマリ

 

「ならばヒマリ、あの存在アリスの本質は理解しているでしょう?」リオ

 

「勿論ですよリオ、既に結論は出ています」ヒマリ

 

「その言葉に、少し安心したわ」リオ

 

此処まで来れば、もう結論に齟齬は生まれない。解釈は同じ、自分達は同じ景色を見ている。ならばそこから生まれる結論はたった一つに収束するのが自然な流れ

 

 

「彼女、AL-1S(アリス)は──」リオ

 

「えぇ、あの子は──」ヒマリ

 

 

「世界を終焉に導く兵器よ」
 
「私の可愛い後輩ですね⭐︎」
             

 

 

 

…のはずだった。一方のリオはアリス、基AL-1Sを危険すぎる存在と、一方のヒマリはただの可愛い後輩と結論告げた。互いに何を言っているのかわからず、しばらく沈黙が続いた。

 

 

 

 

「……それは冗談(ユーモア)なのかしら、ヒマリ?」リオ

 

「あら、貴女にはそう聞こえたのですか、リオ?」ヒマリ

 

「えぇそうね、そして同時に、シャーレの先生たる天音隆一を利用する」リオ

 

「…それは貴方の冗談ですか?リオ?」ヒマリ

 

「…冗談ではないわ。先生、彼の力は絶大、だからこそ…」

 

 

 

 

リオは力強く手を握り、鋭い視線でヒマリに告げた。間違っているのはわかっている、やろうとしていることの重大さも。

 

 

 

 

「だからこそ、先生の力を使って、AL-1S(あのオーパーツ)を破壊してもらうのよ」リオ

 

「その言葉の意味を、重さを、理解しているのかと……私は何度も貴女に問いただしたはずです」ヒマリ

 

「オーパーツの力は未だ未知数、恐ろしい事態に発展するその前に、先生ごと破壊(殺害)するのが一番合理的よ」リオ

 

「貴女は彼に、先生に人殺しの汚名を着せる気なのですか。あんなにも優しい方に対して!……いや、『ごと』?まさか貴女…」ヒマリ

 

『人殺し』の汚名……その一つや二つ、いくらでも背負ってやるわよ。キヴォトスを、ミレニアムを守るためならね」リオ

 

 

 

 

 

覚悟が決まっている目、ヒマリは理解できなかった。殺人の罪を背負うところではない……どうしてそこまでして、彼女を、そして破壊させようとするのかをだ。

 

 

 

 

 

「リオ、冷静になってください。この世界には先生がいらっしゃるのですよ?仮にアリスちゃんが暴走したとしても、彼が止めて─」ヒマリ

 

「一度暴走して止めて、それで安心するつもり?暴走が一度きりで止まるはずがないでしょう?………それに、それに先生は……恐ろしすぎるのよ」リオ

 

「……リオ、貴女は何を知っているんですか。それを教えてください…でないと納得できません、貴女はまるで『先生は危険だ』と言っているようではありませんか!」ヒマリ

 

「………先生の実力は認めている、アビドスを復興させ、C&Cも片手間で伸すほどの存在……それはわかっているわ」リオ

 

「なら…」

 

「でも!アレはそんなレベルの話では無いの……彼は、本気でこの世界(キヴォトス)を終焉に導ける、そんな力を秘めているのよ」

 

 

リオは手元にあるタブレットを操作し、プロジェクターから映し出された映像を空中に映し出す。それを見て……ヒマリは戦慄した。

 

 

「これは…文字…?」

 

 

IN TERRA QUAE KIVOTOS APPELLABATUR, OLIM ERANT QUI VI MIRABILI, QUAE MAGIA VOCABATUR, UTEBANTUR ET VIRGAS GEREBANT. SED PAULATIM HOMINES, CUPIDITATE POTESTATIS DUCTI, EADEM VI INTER SE PUGNARE COEPERUNT. VICI IGNI TRADEBANTUR, CAELUM RUBRUM FACTUM EST, ET MONSTRA FURENTIA PER TERRAS VAGABANTUR. POST LONGUM AUTEM TEMPUS, CUM OMNIA TANDEM QUIEVISSENT, EX CINERIBUS ORBIS NOVI PRIMUM GERMINIS ORTUM EST.

 

 

全知のヒマリでさえも、初めて見る文字。その中には燭台のようにも、鍵のようにも、或いはブーメランのようにも見える文字がいくつもあった。

 

「キヴォトスの非常に古い文献よ。そしてここを読んで欲しい」

 

リオに指示され、文章の一部分を見る。

 

 

 

MYSTERIUM EST VERA VIS, QUAE IN INTIMO ANIMI LATE OCCULTATUR. GAUDIUM ET IRA, NEC NON EA QUAE RATIONEM HUMANAM SUPERANT, IN ALIMENTUM SUUM CONVERTIT, ATQUE FALLACIAS IN FORMAM MANIFESTAM PRODUCIT.

 

 

 

「これは…?」

 

「様々な方法を駆使して調べた結果、この文章は『古代語』で書かれた文章だと言う事も判明したわ。」リオ

 

「…古代語?トリニティの古い文献に使われる言語が?何故この文章に…それに見た事がない文字です。」

 

「恐らく今の文字が確立される前に使われていた文字のようね。そしてこの文章を、私達が使う言葉に訳した結果がこうよ。『神秘とは、魂の最も深いところに秘められた真の力。歓喜も憤怒も、また人の理すら超えたあらゆるものを糧とし、奇蹟を形あるものとして顕現させる』」

 

 

 

 

 

全知であるヒマリは、その文字だけを聞き何かを察した。それは彼の周りで起こる超常的現象の存在だ。

 

……誰しもが思い描いた空想を、彼ならできる。未だPTSDでカウンセリングを受け続けているカリンの言っていた「肉肉しい異形」や、瞬間的ではあるがネルの反応速度を超え、その喉元に杖を突き刺すような一撃。或いはノアほどの智者を瞬く間に服属させるその謎のカリスマに、200kgを超える光の剣(スーパーノヴァ)を持たずして軽々持ち上げる念動力。キヴォトスの常識に当て嵌めて理解出来ない現象の数々でも、この文に綴られた「真の力たる『神秘』」ならば説明がつく…言うなれば、先生の遠い遠い先祖はキヴォトスで「神秘」を操っていた人間であり、その胤裔たる彼の周りで起こる現象もまた「神秘」、或いはそれに起因する現象である可能性が高まったのだ。

 

 

 

 

「…私たちの持つ神秘と先生の持つ神秘?は、ニアリーイコール…」ヒマリ

 

「私達キヴォトスの人間は、神秘を糧に先生の様には現象を起こす事が出来ない。……しかし」リオ

 

「その中には、稀に恵まれた神秘を持つ者がいる。それらがなんらかの影響で覚醒すれば……先生の持つ『真の力』が使えるようになる……と言うことは──」ヒマリ

 

……AL-1Sも、"覚醒"の可能性があるのよ。考えても見なさい……ただでさ未知数の力を持っている先生、それと同格かそれ以上の存在たるAL-1Sが真の力を得て覚醒する──それだけでも、生じうる影響は測定不能よ」リオ

 

 

実際彼が科学的には説明がつかない力を度々行使してるように、ネルやヒナと言った恵まれた神秘を持つ者、そしてアリスが覚醒すれば、それに見合った力に覚醒する可能性が大いにある。それが仮に暴走でもしたりなんてしたら、大惨事もいいところ。

 

 

 

 

「でも…まだそうと決まったわけではありません」ヒマリ

 

「可能性が少しでもあるのなら、それを先に阻止するのが合理的かつ、安全なのよ」リオ

 

「……仮に先生一人で勝てなかったとしても、貴女が彼と協力したならば、勝てると?」

 

「可能性は大いにあるわ」リオ

 

「…そもそも先生が、仲間(同胞)を殺すことに手を貸すとでも?」ヒマリ

 

「分からないわ……ただ、一度カリンに矛先を向けた…可能性は無きにしも非ずよ……そして訣別した暁には私とぶつかるでしょう」リオ

 

「………貴女一人で先生とアリスを殺す…と?」ヒマリ

 

「──その通りよ」リオ

 

 

 

 

突如、リオは周りには大量のAMAS(ロボット)が出現する。まるでヒマリを押さえつけるような囲い方だ。

 

 

 

 

「……私と彼は敵同士となり、争う関係になる。これは決まった未来よ?」リオ

 

「馬鹿な真似はよしてください、貴女が彼に勝てるとでも思っているのですか!?あの先生は打つ手は惜しまない人間です!!最悪、貴女を再起不能にまでする可能性だってある!彼の庇護を受けたゲーム開発部に立ちむかったユウカがどんな末路を辿ったのかはよく見たはずでしょう!?」

 

「覚悟の上よ……私は、もうこれ以上──」リオ

 

「……リオ……いい加減、話を…!」ヒマリ

 

 

 

 

 

背後からいきなり何者かに手を回されたヒマリが気付いた時、自身の首元にはシリンダーの様な細い筒が押し付けられており、何か投与されたのだと分かった。その刹那、強烈な圧迫感とともに揮発する麻酔に、程なくして蒲柳の質のヒマリは抵抗の隙もなく意識を失った。

 

 

 

 

 

「(──貴女、その、顔は……!?…──…先生────)」ヒマリ

 

「……落ちました」???

 

「そのまま、彼女を例の部屋へ」リオ

 

「かしこまりました」???

 

「……ごめんなさいヒマリ、もうこれしかないの」リオ

 

 

 

 


 

 

 

 

リオはじっと外を見る。昨今のクーデター未遂で被害を被ったミレニアムも、着々と復興していた。そして力強く、唇から血が滲むほどの力で口を噛み、涙を必死で堪え、自らの感情を抑えながら告げた。

 

 

 

 

「彼はきっと、生徒の前では本気を()()()()。余程の事がなければ……きっと彼は、人前であの超常現象を操る事はない。そんな柔和な彼が、覚醒したAL-1Sに勝てるとは到底思えない。それに……もし止められたとしても、それは彼女の破壊(殺害)を意味することになる」

 

「…………」???

 

「その罪を背負うのは、突然ここに巻き込まれた(先生)ではない。元からここに住んでいて、その力がある……私がやるべきなの……それしかないの」リオ

 

 

 

 

清廉な彼に人殺しの汚名を着せる気はない、たとえ協力してもらったとしても、その罪を背負うのは自分だけでいいと本気で考えていた。それが世界を救う方法だから──それしかないと確信してきたから──昔からそうしてきたから

 

 

 

 

「……私一人を犠牲にしてでも、ここを守ってみせる」リオ

 

「……最期までお供いたします、会長」??? 

 

「ありがとう……トキ




何気に重要な回です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。