The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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謎のロボット

シャーレの執務室。届いた着信に画面を滑らせると、興奮した様子のマキが映し出された。

 

 

「先生、居る!?そこってシャーレ!?」マキ

 

「あぁ正解正解大正解。そんなゴキブリでも出たみてぇに慌てて、どうしたマキ?」先生

 

「あのね先生、聞いて聞いて!世紀の大発見があってさ!」マキ

 

「……世紀の大発見?」先生

 

 

 

またか、と隆一は内心で苦笑した。ミレニアムの生徒達は好奇心旺盛で、珍しい物を見つける度にこうして連絡を寄越す。大抵は誰かが不法投棄したガラクタか、経年劣化した旧型機材の見間違いだ。

 

 

 

「マキ、いくら何でもそれは大袈裟。内部解析もまだなのに」ハレ

 

「変わったものを見つけたのは事実ですが、普段ミレニアムで見つかる物の大半はガラクタです。統計的にも今回もそうである可能性が高いかと」コタマ

 

「もう、ロマンがないなあ二人とも!」マキ

 

 

画面に割り込んだのはヴェリタスの部員、ハレコタマだった。

 

 

「先生ならこの手のものでも解析できる伝手があるかもしれないし!」マキ

 

「先生、今からお時間大丈夫ですか?」ハレ

 

「あー問題ねぇ。幸いにも仕事は粗方片付いてる。向かう場所はヴェリタスの部室でおk?」先生

 

「あ、来てくれるんだ……ありがとう」ハレ

 

「やった! 先生来るならパーティーしよう!」マキ

 

「はい、ピザを注文しましょう」コタマ

 

 

盛り上がる三人との通信を切り、彼は外套に腕を通す。腕章を固定しながら、ふと呟いた。

 

 

「世紀の大発見、ね……」隆一

 

 

大した代物ではないだろう、いつものように苦笑交じりの結末を迎えるはずだ。だが視界の端で、彼は自分の足元──シャーレ地下に隔離した一本のメモリのことを思い出していた。

 

 

「アロナ、以前話した予備の素体、見つかったか?」隆一

 

「件のオーパーツですね。検索と捜索は続けていますが、進捗はその、あまり……」アロナ

 

「……そうか」隆一

 

廃墟区画の発見地帯周辺だけ妙な痕跡があるのですが、類似の材質や設備は見つからず……」アロナ

 

「いや、元から当たれば幸運程度の話だったんだ、無理を言ってすまない」隆一

 

貴重な存在に予備の素体があるとすれば、それは計画を万全にする鍵になる。しかし手が届かない場所にあるのか──もし、今回の呼び出しが自分の想像通りなら。隆一は険しい表情のままオフィスを後にした。

 

 


 

 

ミレニアム中央区・部室棟。ヴェリタス部室へ向かう廊下で、聞き覚えのある声に呼び止められる。

 

「アリス、先生を発見しました!」アリス

 

「こ、こんにちは」ミドリ

 

「やっほー、先生!」モモイ

 

駆け寄って来たのはモモイ、ミドリ、アリス、ユズ──ゲーム開発部の面々だった。

 

「マキが面白いものを見つけたって教えてくれてさ!」モモイ

 

「インスピレーションを貰えたらラッキーです」ミドリ

 

「取り逃しは避けるべきです!」アリス

 

 

どうやらマキは彼女達にも連絡していたらしい。ゲーム開発部の面々の中には滅多に外出しないユズの姿もあり、隆一は少し驚いた。

 

「珍しいな…ユズまで…」隆一

 

「あぅ、良いアイディアが貰えるかもと思って……こ、此処まで来るの、大変でした」ユズ

 

 

そこまで会話を交わし、隆一はふと言葉を呑んだ。表情は生徒達に気づかれない程度に強張り、視線が険しさを帯びる。それは懸念と不安から生まれたものだった。彼は行動を起こす──万が一に備えた保険を。

 

 

「──すまん、アリス、ちーと買ってきて欲しいブツがあるんだ」先生

 

「えっ、今ですか?」アリス

 

「うん、どうしても今必要でね」先生

 

隆一は財布から紙幣を数枚抜き、アリスの手に握らせた。

 

「本校舎のショップで大容量モバイルバッテリーを買って来てほしいんだ。こないだちょっとぶっ壊れてな。」隆一

 

「先生からのお願いなら断る理由がありません! 任せて下さい!」アリス

 

「アリスちゃん一人だと心配だし、私も一緒に行きます。お姉ちゃんとユズは先に行っていて」ミドリ

 

結局アリスにはミドリが同行し、ヴェリタスへはモモイとユズ、隆一の三人が向かうことになった。

 

 

「……珍しいですね、先生が誰かにお使いを頼むなんて」ユズ

 

「──ちとな」先生

 

隆一の声は、いつも通りに聞こえた。少なくともユズには。

 

 


 

 

 

薄暗いヴェリタスの部室。出迎えたハレ、マキ、コタマに挨拶しながら、隆一は素早く室内を見渡す。並んだPCと配線、製作中のガジェット──見覚えのある光景に混じって、部屋の隅にシートを被せられた大きな何かがあった。

心臓が跳ねる。予感が的中しつつあった。

 

 

 

 

「取り敢えず例のモノに関しては──此処にあるよ」ハレ

 

 

マキが弾んだ声と共にシートを取り払う。露になったのは、整備用ハンガーに吊るされた奇妙な機械だった。球体状の胴体、内側に固まった黒いケーブル、光を失った円型装甲、外側に伸びる六本のケーブル

 

 

それを目にした彼の表情が歪む。

 

「……やっぱり()()()か」隆一

 

「この機械は、何処から?」隆一

 

「ミレニアム学区の郊外で発見されました。此処にあるのは五体、現地にはあと二十体前後廃棄されていました」ハレ

 

「起動は試した?」隆一

 

「電源ボタンも接続ポートも見つからず、外装に継ぎ目すらありません。内部が見られないので、起動しない理由も分からなくて」ハレ

 

「だから先生を呼んだんだ。無理に外装を溶断する事も出来たけど、万が一危険物だったら大変だし」マキ

 

「その判断に感謝する」隆一

 

 

隆一は皆の慎重さに感謝しながらも、声色は真剣だった。彼女達はその様子に、彼が何か知っているのではと期待の視線を向ける。

 

 

「もしかして、これが何か知っているの?」ハレ

 

「そうだね……多少な」隆一

 

「本当に!?」マキ

 

「それでこのロボットは──」ハレ

 

「…おそらくこのロボット…」

 

僅かな逡巡の後、隆一が慎重に口を開いた、その瞬間だった。

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