The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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破壊()

「私はゲームの内容に詳しくはないけれど……辞書的な知識ならばあるの、だから一つ貴女に質問がある」

 

「しつ、もん……」アリス

 

 

「ええ、貴女は勇者を自称している様だけれど──勇者というのは、大切な人に剣を向け、傷付け、悲しませる存在なのかしら?」リオ

 

「ぅ……ぁ──」アリス

 

「寧ろ、貴女の今回為した事、周囲を傷付け破壊を齎すのは──世界を滅ぼす、魔王ではなくて?」リオ

 

「アリスちゃんッ!」ミドリ

 

 

瞬間、ミドリはアリスに飛びつき、その頭を抱きかかえる。まるで彼女を語る毒から守るように、涙を流しながらリオを睨み付けた。

 

 

「こんな言葉、聞かなくて良い……!」ミドリ

 

「み、ミドリ……」アリス

 

「生徒会長が変わり者だとは聞いていたけれど、こんな人だとは思わなかったッ!」ミドリ

 

「ミドリの云う通りだよ!」モモイ

 

「こんな酷い人の言葉なんて聞く必要ない!そんなにアリスを虐めて楽しい訳!?この鬼!悪魔っ!人でなし!」モモイ

 

「……虐めているつもりはないのだけれど…それに、真実から目を背けるのは断じて思い遣りではない、それは単なる現実逃避に過ぎない──負うべき責任の放棄は極めて非合理的な行動よ」リオ

 

「合理的だとか、非合理的だとか、そんなの関係ないよ! アリスは魔王なんかじゃない、私達の仲間なんだからッ!」モモイ

 

 

モモイは両手を握り締め、精一杯叫ぶ。その心はボロボロで、今も尚穴だらけだ。それでも、彼女はその背中に大切な仲間を庇いながら叫んだ。

 

 

「アリスがそんな事、望んでする筈ないって、私達は信じているもんッ!」モモイ

 

「お姉ちゃん……!」ミドリ

 

「も、モモイ……ッ!」ユズ

 

「……みんな」アリス

 

 

仲間の背中を見つめながら、アリスは胸を締め付けられる思いだった。だからこそ彼女は問う。

 

 

「アリスは……アリスは、一体どうすれば良いんですか……?」アリス

 

「……さっきも口にしたけれど、全てはアリス、あなたが此処に存在しているから起きている。それなら話は簡単よ、存在するから傷付ける──なら爆弾は安全な場所で解体すれば良いだけ」リオ

 

「ばく、だん……?」アリス

 

 

 

 

「つまりアリス──貴女を殺害(のヘイローを破壊)すれば全て解決するのよ」

 

 

 

 

部屋の全員が言葉を失った。

 

 

「ヘイ、ローを……破壊──?」アリス

 

「ええ、もしそうならば尚更貴女を放ってはおけない──貴女はきっと、このキヴォトス全てを呑み込む悪夢そのもの」リオ

 

「──ざけないでよ……ふざけないでよッ!?」モモイ

 

 

モモイはリオの襟元を掴むと、全力で引き寄せながら言葉を叩きつける。普段ユズやアリスは愚か、ミドリにさえ見せない剣幕でリオを怒鳴りつける。

 

 

「ヘイローを壊すって、それ本気で言ってるの!?そんなの、受け入れられる訳ないじゃんッ!?それってッ!それってつまり、アリスを殺すって事でしょッ!?」モモイ

 

「……私の言動が不愉快ならば謝罪するわ、昔から私の事が嫌いな生徒は多かったもの」リオ

 

「好きとか、嫌いとか、不愉快とか、そんな話じゃ……ッ!?」モモイ

 

「でも、理解されなくとも構わない──私は皆を守りたいだけ」リオ

 

「──その守るべき生徒にッ!どうして、アリスが入っていないのさッ!?」モモイ

 

「──どれほどの聖人であろうと、敵対者を守る事は出来ないわ」リオ

 

 

どれ程高潔な人物であろうと、敵を守る事は出来ない。何かを守るには、何かを切り捨てなければならない──それがリオの信じる正しさだった。

 

 

「……ついでに云っておくべき事があるわ」リオ

 

 

「──え?」モモイ

 

「貴女達が慕う『先生』、彼もまた──アリスと同様に、今のキヴォトスでは理解の及ばない存在よ」リオ

 

「な、何言って……せ、先生が、だからってどうしたって言うのッ!?」モモイ

 

「あの人の持つ力、知識、…その全て。私が調べた限り、到底説明が付かない。彼もまた、アリスと同種の──『異物(異常存在)』」リオ

 

「そ、そんな訳……先生は、ずっと私達を助けてくれて──ッ!」ミドリ

 

「ええ、優しい人だという事は否定しない。だからこそ厄介なのよ、その優しさに誰もが気付かない。もしその裏で、ミレニアムを崩すような事をされたら取り返しがつかない──だから私は貴女達に頼みたい…」

 

 

アリスと先生、その両方をこのミレニアム(キヴォトス)から取り除く事に、協力してくれないかしら?

 

 

 

 

その言葉に、全員が凍りついた。アリスだけでなく、先生までも──信じられない、信じたくない提案だった。

 

「……ふ、ふざけないでッ!」モモイ

 

「先生を、アリスと一緒に、排除する……? そんな事、絶対に承知しないッ!」ミドリ

 

「そう、断ると。それも予想の範囲内よ」リオ

 

「……説明は果たした、大人しくアリスと先生の身柄、引き渡して頂戴」リオ

 

「絶っ対に嫌だッ!」モモイ

 

「アリスちゃんも、先生も、絶対に、絶ッッッッッ対に、渡さない……ッ!」ミドリ

 

リオの言葉に反発するゲーム開発部。ユズはアリスに寄り添い、ミドリは力一杯彼女を抱き締める。説得は失敗した──リオはそう判断を下した。

 

「──そう、そうね、こうなる事も想定していた、だからこそ準備は万全に整えているわ」リオ

 

軽く手を払い、モモイの腕を弾く。微かに乱れた衣服を整えながら、リオは背後へ合図を送った。

 

「さぁ、貴女の出番よ──」リオ

 

コツリと、靴音がした。明かりに照らされ伸びた影が、ゲーム開発部を覆い隠す。

 

「──美甘ネル」リオ

 

「ッ……!」モモイ

 

「なっ……!」ミドリ

 

「ネル、先輩……!?」ユズ

 

 

現れたのは見慣れた矮躯、C&Cリーダー・美甘ネル。彼女はしかめっ面のままリオとゲーム開発部を一瞥し、舌打ちを零した。

 

 

「余り悪く思わないで頂戴、元々C&Cはセミナー──正確には私直属のエージェントなの、そこに私的な感情は存在しないわ」リオ

 

「っ……!」モモイ

 

「C&Cのリーダー、ネル相手ではゲーム開発部だけで抵抗は出来ないでしょう? 外部への連絡も無駄よ、この周囲は既にAMASで掌握済み」リオ

 

「さぁ、仕事の時間よ、ネル──アリスを回収しなさい」リオ

 

「ぅ──ッ!」ネル

 

リオの指示に、ネルの赤い瞳がゲーム開発部を射貫く。それでも彼女達が退かなかったのは、背後にアリスが居るからだ。

 

「──なぁ、リオ」ネル

 

「……何かしら、ネル?」リオ

 

「目の前のソイツが──チビが、テメェの云う『回収対象』なのか?」ネル

 

「ええ、そうよ」リオ

 

「……あたしには、今にも泣き出しそうなチビがひとり、ぽつんと蹲っている様にしか見えねぇんだがよ」ネル

 

「それは『そう在る様に創られている』からに過ぎない、ソレの本質は全く異なるわ」リオ

 

「……本質、ねぇ」ネル

 

「それは、詳細を知らされていなくても、か?」ネル

 

「──引き金を絞るのに、それ詳細は必要かしら?」リオ

 

「……そうかよ」ネル

 

顔を逸らしたネルは涙を堪えるような顔でグリップを強く握り締める。持ち上がった銃口は、立ち塞がるゲーム開発部へと向けられた。

 

「C&Cはこの時(ミレニアムの危機)の為に編成された組織──その役目を果たしなさい、ネル」リオ

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