The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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第38駅

エリドゥ物流ステーション、第38駅

 

 

「此処が……」モモイ

 

「要塞都市──エリドゥ」ミドリ

 

「厳密に云えば、その搬入口に過ぎないけれどね」ウタハ

 

「ともあれ、漸く到着です!」コトリ

 

停車した物流輸送用の無人列車、そのコンテナの中から顔を覗かせたゲーム開発部、そしてエンジニア部の面々は周囲を見渡しながら声を上げる。エンジニア部がエリドゥへと続く路線を割り出し、秘密裏に運搬されるコンテナへと紛れ込んだ彼女達は無事、エリドゥ地下内部へと侵入を果たしていた。

 

その規模の大きさから凡そ予想はしていたが運用されている無人列車は多く、搬入口となるステーションは積み荷を降ろし集積するドローンやクレーンの類が絶え間なく稼働しており、周囲には駆動音と金属同士が擦れ合う様な音、列車が発進、停車する音が常に響き渡っていた。尤も、エンジニア部が事前に把握していた情報でこの搬入口が『第38駅』、つまり最低でも40駅手前の貨物ターミナルが存在するのは確定していたが。

 

「良し、予定通り現場に到着した、エンジニア部、ゲーム開発部共に問題なし、警報の類はどうかな?」ウタハ

 

「こちらヴェリタス、大丈夫、全部黙らせてあるから……それより列車運行に問題はなかった?」ハレ

 

「はい、流石ヴェリタスです!凄く快適でした!」コトリ

 

「うん、特に問題なし」ヒビキ

 

「そっか、ぶっつけ本番だったけれど上手くいったみたいだね」ハレ

 

 

ホログラム越しに薄らと笑みを浮かべるハレ。当然の話ではあるが、無人列車にも警報や探知機の類は存在しており、彼女達の『混入』を悟らせないようにする必要があった。その為、ヴェリタスはアラートを抑える役割を担っており、今回の隠密行動の成否は彼女達(ヴェリタス)の手腕に掛かっていると云っても過言ではない。

 

 

「うーん、ちょっと薄暗いね……?」モモイ

 

「この辺りは人の手による管理を想定していないのだろう、光も非常灯の類しか設置されていないみたいだ」ウタハ

 

「或いは、まだ建設途中なのかもしれませんね!」コトリ

 

「防衛設備とか、インフラ、コア部分の建設が終わっているのなら、最低限機能はするだろうし……」ヒビキ

 

 

廊下の片隅に固まったエンジニア部、ゲーム開発部の六名は薄暗い地下通路、その先に目を凝らす。時折小型のロボットがふよふよと宙を舞い、溶接作業をしているのが見える。左右に設置された微かな明かりを放つ非常灯が等間隔で通路を照らしており、遥か奥まで光は続いている。周囲に人の姿は見えない、予想通り要塞都市の建設・補修・管理の類はドローンやドロイドの類で完結しているらしい。

 

 

「ねぇ、あそこに居る、何か小さいロボットとかは見つかっても大丈夫なの?」モモイ

 

「アレは整備、メンテナンス作業用のドローンだから大丈夫、ただ気を付けてね、その通路の先──地上に出たらもう都市内部に入るから、そうなったら警備ドローン、或いは戦闘用ドローンも出て来ると思う」ハレ

 

「一応、こっちでも常にモニタリングしているから、何かあったら直ぐに伝えるよ!」マキ

 

「ですが此方では拾えない何かが現れるかもしれません、警戒は怠らず、御注意を」コタマ

 

「りょーかい!」モモイ

 

「わ、分かりました……!」ミドリ

 

 

ヴェリタスからの通信に頷きながら愛銃を握る一行。ウタハは持ち込んでいた端末の画面を操作すると、表示される時刻を確認した。此処への到着時間は凡そ予想通り、後は作戦開始の合図を待つだけ。

端末を片手に振り返ったウタハは、全員を見渡しながら口を開く。

 

 

「時間的に余裕はあるね、それじゃあ私達は一度此処で待機しよう、C&Cが暴れたら騒ぎに乗じて行動を──」ウタハ

 

「――待って」ハレ

 

 

C&Cからの合図を待つ旨を皆に伝えようとして、しかしそれよりも早くハレが鋭い口調で声を上げた。

 

 

「早速反応がありました、数は三!」ハレ

 

「気を付けて!何か来るよ!?」マキ

 

「えっ……!?」モモイ

 

 

続いてコタマ、マキからの通信。モモイ達が慌てて通路に目を向ければ、何やらメンテナンス・ドローンよりも大柄な、地上を走行する影が見えた。薄暗い通路を突っ切り、此方へと近付いて来る稼働音。照らされた外装と左右に設置された銃口を目にした瞬間、ウタハは目を瞬かせながら感心した様な声を上げた。

 

 

「おや、中々素敵な子だね、迷子かな?」ウタハ

 

「うん、でも見た事ないタイプ……」ヒビキ

 

「大型の一輪駆動ですか?確かにミレニアムでは珍しい──……」コトリ

 

「ち、違います、この形──!」ミドリ

 

「リオ会長のじゃん!?」モモイ

 

 

見覚えのあったゲーム開発部は思わず身を震わせ、慌てて叫ぶ。姿を現したのはリオの扱っていたロボット── AMASである。それが三機、隊列を組んで一行の前に姿を現していた。

 

 

「もしかして、もうバレたんですか!?」ミドリ

 

「さ、作戦開始前に、ゲームオーバー!?」モモイ

 

 

ミドリとモモイが焦燥を滲ませて悲鳴染みた声を上げれば、端末の中でヴェリタスはコンソールを叩きながら首を横に振った。

 

 

「大丈夫!こっちで周辺ネットワークは制圧してあるから!」マキ

 

 

マキがミドリとモモイに対し親指を突き出し、破顔する。既にこの辺りに対しては対策済み、戦闘が発生しても問題ない様に準備を済ませていた。

 

 

「地下のドローンはリンクを切断して孤立させた、欺瞞措置でネットワーク上では何の問題もなく稼働している様に見えるけれど、今なら破壊してしまっても問題ないよ」ハレ

 

「本当なら、乗っ取ってしまうのが一番良いのですが……流石に、其処まで許してくれる手合いではなさそうです」コタマ

 

 

ハレとコタマが画面を一瞥し、そう口にする。ともあれ、幸いにも作戦が開始前に頓挫という事はなさそうで、ゲーム開発部の面々は露骨に胸を撫でおろす。

 

 

「そ、そんな事も出来るんだ……」ミドリ

 

「流石ヴェリタスの皆さんですね!」コトリ

 

 

決して信じていなかった訳ではないのだが、中々どうして一回きりの作戦となると気負いもする。冷汗を額に滲ませた彼女達に反し、エンジニア部の面々は変わらず飄々とした態度で持ち込んでいた愛銃を手に取った。

 

 

「ふむ、悪くない走り出しだ、なら今の内に対処してしまおう」ウタハ

 

「なるべく、派手な攻撃はしない方が良い……かな?」ヒビキ

 

「そうだね、騒ぎはC&Cに起こして貰わないと、戦闘の際は周囲に配慮して戦うとしよう」ウタハ

 

「分かりました!」コトリ

 

「りょ、了解です……!」ミドリ

 

「よーし!いっくよッ!」モモイ

 

「援護は任せて下さい……!」コトリ

 

 

撃破しても悟られないとは云え、物理的な光や音ばかりはどうしようもない。故に派手さは控えめ、なるべく静かに、手早く処理する必要がある。その条件に頷きを返しながら戦闘態勢を取るゲーム開発部とエンジニア部。

先頭に立ったモモイは突貫してくるAMASを前に、その表情を勇ましく染め上げ、叫んだ。

 

 

 

 

「──戦闘、開始するよ!」

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