The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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Cleaning(Clearing)

あっははッ!いっくよぉ~っ!

 

 

エリドゥ第三区──中央街道。

 

 

 

少しずつ陽が落ちて来たエリドゥ、夕焼けに照らされる街道、硝子張りのビル群は陽光を反射しエリドゥ全体が茜色に染まっていく。そんな中鳴り響く幾つもの銃声、連鎖する爆発、爆炎を縫う様にメイド服を身に纏った三名が、次々と迫り来るドローンを前にステップを踏む。アスナ、カリン、アカネの三名は互いに背を預けながら街道の中心で愛銃を振り回し、奮戦していた。

 

 

「アスナ先輩、後方──」アカネ

 

「大丈夫!視えているからっ!」アスナ

 

 

アカネがケースを片手に愛銃を構え、声を上げる。しかし全て云い終わるより早く、アスナは叫び、大きく身を反らした。瞬間、反った背中の合間を縫う様に突き抜ける弾丸、超人的な感覚により飛来する攻撃を事前に感じ取り、回避する。

そのまま片足で地面を蹴り、空中で身を翻し愛銃を構えたアスナは自身の背後に迫っていたドローンを意図も容易く撃ち抜く。外装を撃ち抜かれたドローンは火花を散らし、そのまま地面へと墜落したのち爆発四散した。

 

 

「四十六っ!」アスナ

 

「いいえ」アカネ

 

 

アスナの言葉に、アカネは緩く首を振って笑った。

 

 

「これで丁度五十です」アカネ

 

 

カチッ、という硬質的な音と共に彼女の後方で固まっていたドローン群、その足元から特大の爆発が巻き起こる。爆炎と爆風がC&Cの一行に襲い掛かる一方、陽光を反射した硝子片が舞う様は殺伐とした自身の周囲と相まってやや幻想的に見えた。

 

 

「すっごい爆発だったね!正にスクラップの山って感じ?ん~、想像していたよりも数が多いかも!」アスナ

 

「確かに終わりが見えないな、一体どれだけ配備されているんだ?」カリン*1

 

「さぁ?幸い派手に暴れて騒ぎを起こし、目を惹き付けるという目標はこれ以上ない程に達成出来ていますが──」アカネ

 

 

アカネは後方に残った爆発跡、散乱したドローンの残骸を一瞥しながらケースの残弾を検める。全力戦闘を行えば、後一時間半が限度か──そう思考する彼女を覆う様に、伸びる影が一つ。

 

 

「──アカネッ!」カリン

 

「……っ!」アカネ

 

 

その声に反応出来たのは訓練の賜物か。ケースを手にしたまま大きく前方へと身を投げたアカネ、一拍遅れて地面に突き刺さる弾丸、銃声。影はビルの外壁へと突き刺さり、外壁が抉れ破片が飛び散る。

 

 

「そこッ──!」カリン

 

 

カリンの視線が外壁に着地した影を捉え、銃口が火を噴く。しかし影は身を翻し、夕日を背にして跳躍、虚空を舞った。弾丸はビルの外壁を抉るのみ。

 

 

「外したッ……!?」カリン

 

 

当たると確信した程の一撃、その勘が外れる相手は限られている。影は空中で一度回転し、音もなく地面に舞い降りた。薄暗い茜色の中で、青色の瞳が煌めく。

 

 

「──随分と正確無比な射撃ですね、カリン先輩」トキ

 

「……成程、お出ましか」カリン

 

 

彼女、トキは優雅にロングスカートの裾を摘まみ、一礼して見せた。

 

 

「お初にお目にかかります先輩方、C&C所属、コールサイン・ゼロフォー(04)──飛鳥馬トキ、御挨拶申し上げます」トキ

 

 

「ふぅん、貴女がトキちゃんかぁ……」アスナ

 

「想定していたよりも、聊か早い登場ですね」アカネ

 

「どうやら、私達が此処に乗り込んで来る事は最初からお見通しだった様だ」カリン

 

「はい、リオ様は全て把握されておいでです」トキ

 

「C&Cの判断も、動きも、そして勿論──皆さんの狙いも、全て」トキ

 

「……陽動も全部、気付いた上で此処に来たか」カリン

 

「はい、その上で僭越ながら申し上げます──これ以上の抵抗は無意味です、大人しく降伏をお願い致します」トキ

 

「ほう、降伏勧告か」カリン

 

「……へぇ~」アスナ

 

「あらあらぁ……その提案を断る、と言った暁には?」アカネ

 

「──勿論、実力で制圧するまでの事です」トキ

 

「……全く」アカネ

 

「──?」トキ

 

 

カツン、と足元から音がした。トキが視線を向ければ転がる円型の何か。全力で地面を蹴り後方へと飛びずさった瞬間、爆発。粉塵を裂き悠々と現れるアカネを前に、トキは表情を強張らせた。

 

 

「あぁ、やはりこの程度では奇襲にもなりませんか……アカネ先輩」トキ

 

 

脳内にあったアカネの情報を改めて口に出す。

 

 

戦闘に於いては爆発物を好んで使用し、広域制圧を得意とする、対多数を相手取る戦闘に於いて優秀なエージェント──そう伺っております」トキ

 

「ふふっ、初対面の後輩に面と向かって評価を口にされるなんて、何とも面映ゆいですね」アカネ

 

「私達の戦闘スタイルや装備に関して、既に情報は持っているのだろう、何せリオ会長がそちら側にいるのだからな」カリン

 

「えぇ、勿論そうでしょう、個人的には可愛い後輩との初対面がこの様な形となってしまったのは大残念に思いますが……ともあれそうですね、私達も改めてご挨拶すると致しましょう」トキ

 

「初めまして後輩さん、お名前は飛鳥馬トキ……と仰いましたね」アカネ

 

「………」トキ

 

「先日は部長が大変お世話になったそうで、それに先生──ご主人様に関しても…加えてこの様な降伏勧告(宣戦布告)まで、ご丁寧に頂けるなんて……ふふっ」アカネ

 

「あ、アカネ……?」カリン

 

「貴女がリオ会長のボディーガードだという事は事前に知らされておりましたが、あぁ、全く──」アカネ

 

 

隙は見せなかった、目を離した訳でもない。だが気付いた時、唐突にアカネの銃口が自身へと突きつけられていた。

 

 

「私達C&Cも、随分と安く見られたものです」アカネ

 

「──!」トキ

 

 

微かな発砲音と共に発射される弾丸、辛うじて身を反らし回避するトキ。同時に耳を打つ風切り音──アスナ。

 

 

「コールサイン・01、アスナ先輩……!」トキ

 

「あははっ、イッツ・ショータイム!」アスナ

 

「演算、加速──ッ!」トキ

 

 

勢い良く足を踏み締め、地面を砕く。彼女の身体は加速し、残像を見せながらアスナの強襲を凌いだ。

 

 

「わお、すっご~い、これも避けちゃうんだ!?」アスナ

 

「今度は此方の番です、砲塔起動、制圧射撃開始──ッ!」トキ

 

一斉に出現する防衛砲塔、火を噴く重機関銃の暴威。しかし──。

 

「あはははッ!全然当たらないよ!」アスナ

 

「っ……!?どう、いう……!?」トキ

 

「ねぇ、もしかしてこの程度?違うよね?仮にもリーダーに勝って──ご主人様を虐めたんだからさぁ!」アスナ

 

「この回避率、まさか予測演算?いえ、その様な装備、情報には……」トキ

 

「──アスナ先輩ばかり気にして良いのか?」カリン

 

「っ!?」トキ

 

 

一瞬の内に砲塔を穿ち抜いた弾丸、爆炎が一斉に辺りを包んだ。

 

 

「私の火力支援を甘く見ない方が良い、直撃すれば一発で意識を吹き飛ばす、それだけの威力はあると自負しているからな」カリン

 

「……コールサイン・02、カリン先輩」トキ

 

「元より私達C&Cの真価はチームでの作戦行動、そう易々と勝てる等と思わぬ事です──あぁ、勿論大人しく投降するというのであれば、先の件も水に流す事も出来ますよ?」アカネ

 

「……それは、無理な相談です。私とて、リオ様より命令を受けた身です──その命令に背く事は出来ません」トキ

 

「ふ~ん、随分と真面目ちゃんなんだね、トキちゃん」アスナ

 

「まぁ、想定通りの反応だ」カリン

 

「……C&Cは潜入、工作、秘密裏に活動する事を主眼に置いた組織、最初は隠密行動による攪乱を想定し、それに備えておりましたが──よもや正面突破を試みるとは思いませんでした」トキ

 

「隠密しか(only)出来ないと、隠密(also)出来るは、大きな違いがあります、あらゆる状況、戦術に対応してこそのC&Cです。ご主人様(先生)のご要望には、あらゆる手を尽くして応える、当然の事でしょう?」アカネ

 

「──御尤もです。しかし、これもまた想定の範囲内、それに──ネル先輩の姿が見えないと云う事は、私との正面対決を避けたのでしょう?」トキ

 

「あら……」アカネ

 

「合理的な判断です、部隊を二つに分けミレニアム最強と名高いネル先輩をフリーにする、皆さんの役割は時間稼ぎ、そうでしょう?しかし、その様な策を講じたとしても──」トキ

 

──あぁ?誰がてめぇを避けたって?」???

 

 

一拍遅れてトキの佇む街道、その脇にあったビル一階部分が爆発によって吹き飛ぶ。燃え盛る緋色を背に歩く小柄な人影──ネル。

 

 

「っ、これは……!?」トキ

 

「あははっ!部長、遅かったじゃん!」アスナ

 

「派手なご登場ですね」アカネ

 

「まぁ、部長らしいと云えば部長らしい」カリン

 

「雑魚共が存外多くてよ、取り敢えず周辺の連中は粗方片付けてやったぞ」ネル

 

「……作戦通りではありますが、どれ程相手取って来たのですか?」アカネ

 

「んなモン、一々数えていられるかよ、多分千はいってねぇだろう……よぉ──リベンジマッチに来たぜ、トキ」ネル

 

「……ネル、先輩」トキ

 

「あたしが別行動していたら、てめぇは絶対に止めに来るだろう?一々段取り考えるのも面倒だしよぉ、こっちから会いに来てやったんだ」ネル

 

「………」トキ

 

「チビを助け出すのは大前提、だがコソコソ目を気にして動くなんざ性に合わねぇ、だったらあいつを助けるのは、てめぇをぶっ倒した後でも遅くはねぇ訳だ──そうだろう?…それにこの前は随分と好き勝手やってくれたなぁ?しかも先生の前でよぉ──つぅ事で、先輩(C&C)に楯突いたらどうなんのか、その辺りをじ~っくりと教えてやるよ」ネル

 

 

「──…………要請、武装の限定使用許可」トキ

 

 

──武装の限定使用許可、確認」???

 

 

息を吸い込み、彼女は自身の装備を一部パージした。露となる白いレッグギア──あの時と同じ装備に、ネルの戦意が天井知らずに膨れ上がる。

 

 

「──戦闘、開始します!」トキ

 

「はッ!良いぜ、あの時の続きと行こうじゃねぇか!」ネル

 

「アスナ、行っくよ~ッ!」アスナ

 

「目標確認、敵は逃がさない」カリン

 

「ご主人様に愛を、仇なす者には鉄槌を!」アカネ

 

 

飛び出す双方、先頭に立ったネルは地面を踏み砕き、勢いそのままに飛び蹴りを繰り出す。トキは飛来する影をアームギアで受け止める。腕に走る威力と痛みに顔を顰めるトキ、至近距離で睨み合う二人の耳に、鎖の音が響く。

 

 

 

 

 

 

 

「C&C──掃除を始めるぞッ!」

*1
(「異形」参照)襲撃でPTSDになったが、自前の胆力でなんとか復帰した

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