The Hypocrite's Archive 作:Xelphyr
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「うわぁっ!また来たぁ!」モモイ
「こ、コトリ……!」ミドリ
「えっと、ガジェット、ガジェット──ッ!?」コトリ
アヴァンギャルド君と交戦を続けるゲーム開発部、エンジニア部一行──裏路地の危機を脱し、広い街道で再び追撃を躱し続ける彼女達は、全身に冷汗とも脂汗とも取れるそれを滲ませながら必死に駆け続けていた。此方側の攻撃は一切通らず、向こうの火力は圧倒的。背後から迫る走行音に混じり、再び聞こえて来る空転音。
「えっ、あ、あれ……?」コトリ
しかし、幾ら探れど出てくるのは
「さ、さっきので防壁ガジェットは最後でしたぁッ!?」コトリ
「嘘ぉッ!?」モモイ
全員の顔色が一変し、背後から迫る音はどんどん大きくなっていた。最後尾を駆けていたウタハが突き出されるガトリング砲に苦笑を浮かべる。
「っ、正に窮地だね──ッ!」ウタハ
だが、ウタハの瞳に諦観の色はなかった。いざとなれば諸共、そう考え足を止めたウタハの視界に、しかし弾丸の雨が降り注ぐ事はなかった。
「ん……!?」ウタハ
空転していたガトリング砲が徐々に停止し、走行していたアバンギャルド君の動きが不自然に硬直、まるで出来の悪いマリオネットの如く色褪せて行く。
「……あ、あれ?」モモイ
「アバンギャルド君の動きが……」ミドリ
「な、何か急に、ぎこちなくなった、様な?」ユズ
「ぎこちなくって云うか、完全に停止しちゃいましたね……?」コトリ
「これは一体──」ヒビキ
「ち、チヒロ先輩!?」モモイ
「んっ、皆、無事?」チヒロ
端末を握り締め驚愕の声を上げるゲーム開発部。同時にヴェリタスとの通信も回復した。
「つ、通信回復、アクセスが通った!うわぁ~ん!チヒロ先輩ぃ~!」マキ
「流石です、待っていました副部長……!」コタマ
「凄い、あの状況から此処まで持ち直す何て……でもチヒロ先輩、あんな状況から一体どうやって?」ハレ
「そうですよね!だって、エリドゥの通信網は……!」コトリ
「確か、リオ会長が掌握しているんじゃなかった?」ミドリ
「うん、そうだよ、でもこういう時の為にヒマリが秘密兵器を用意していてくれたみたいでね」チヒロ
「ひ、秘密兵器──?」ミドリ
「何やら、魅かれる響きだね」ウタハ
「それって……あ、お姉ちゃん!ユズちゃん!アレだよ、アレ!」ミドリ
「えっ、アレって何……?」モモイ
「あ、アレ……?」ユズ
「前にG.Bibleを解析しようとした時に見つけた奴!」ミドリ
「御明察、鏡を使ってエリドゥのネットワークをクラックしたの、序に通信も繋ぎ直した」チヒロ
「えっ、あれ、でも鏡って確か、まだセミナーの差押品保管所にあるんじゃ……?」モモイ
「そう、だから──」チヒロ
そこまで口にして、不意に通信の向こう側から銃声が響き渡った。それを横目に微動だにせずキーを叩くチヒロは苦笑を浮かべ、呟く。
「……絶賛戦闘中、前線に立っているのは私じゃないけれどね」チヒロ
「皆さん、御無事で何よりです」スミレ
「スミレ先輩!?」コトリ
「そうか、トレーニング部が協力を……」ウタハ
「そういう事、警備ドローン──多分リオ会長の息が掛かった部隊だろうけれど、兎に角交戦しながらサポートするよ、どれだけ耐えられるかは正直未知数……やるだけやってみる、って奴だね。ただ、持久戦なら望む所、私の銃は一際頑丈だから、最悪近接武器としても使える、弾が尽きても安心!」スミレ
「た、頼もしい……」ユズ
「流石、常日頃鍛えている方は違いますね……!」コトリ
「あっ、あれ、アバンギャルド君が、また……!」ユズ
「ちょ、ちょっと動いたかも……!?」モモイ
「鏡を使った状態でファイアウォールが反応している……パスが切れる前に先手を打つ必要があるね……こういう時こそ、ヴェリスタス──私達の出番でしょ?サブルームの復旧は終わった?」チヒロ
「バッチリ準備完了、任せてよ副部長」ハレ
「仮に私達のリソースを全部使い切ったとしても!ネットワークは維持してみせるよ!」マキ
「副部長が集中出来る様、可能な限りこの状態を保ちます」コタマ
「うん、そっちは任せた──代わりに此処からは私が皆を支援する、手始めの目の前の……妙な機体を撃退しないとだけれども……そんなに難しい事じゃないでしょう──ねぇ?」チヒロ
チヒロの視線が横合いのウィンドウへと飛ぶ。その中でゆっくりと歩みを進める人影は、レーヴァテインを手に、力強い一歩を踏み出した。
「──先生?」チヒロ
「──あぁ、俺の仕事だ」隆一
チヒロの声に応え、姿を現す大人。背後から聞こえた、余りにも覚えのある声に全員が一斉に振り向く。
「せっ……!?」モモイ
「先生っ!?」ミドリ
まさか、という想いがあった。彼が此処に居る筈がないという感情、戸惑い、しかし実際隆一は独立連邦捜査部としての外套を着込み、普段通りの様子でこの場に立っていた。
「なっ、なんで、先生、ど、どうやって此処に──!?」モモイ
「っていうか予定は!?今日、連邦生徒会とのミーティングがあるって……!」ミドリ
「問題ぁねぇ、ちゃちゃっと終わらせてきやがった」隆一
隆一の元へと駆け出し、あわあわと触れるか触れまいか、絶妙な距離で腕を伸ばしたり、引っ込めたりを繰り返すモモイとミドリ。
「アリスを助けないといけない……そうだよな?」隆一
「ッ──!」モモイ
「アリスはミレニアムの生徒で、ゲーム開発部の一員で、皆の良き友人で──大切な俺の生徒でもある…皆──まだ行けるかい?」隆一
「とッ──……」モモイ
「「「当然ッ!」」」ゲーム開発部のさん人
「先生、機体が制御権を取り戻した……!こっちで多少妨害は出来るけれど、気を付けて!」チヒロ
「──感謝するよチヒロ、もう十分だ…さて、それじゃあ
「せ、先生と一緒なら、きっと……!」ユズ
「今度こそ、皆で戦えば勝てるよ──!」ミドリ
「うん、先生……!」モモイ
「アリスを助ける為──始めよう、皆」隆一
隆一の傍へと駆け寄った生徒達、彼女達の前に聳え立つアバンギャルド君。その奇妙な顔面が一行を見下ろし、カメラが妖しく煌めいた。
だが最早そこに逃げ惑う彼女達の姿はなく、仲間に助けられ、大人の助力を経て、勝機を見出した子ども達の姿だけがある。
勝負はまだ、これからだ。
「さあ──スタートだ!」隆一
「「「「「「了解ッ!」」」」」」