The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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再会

「到着した、此処がエリドゥ中央タワーの管制室……!」モモイ─

 

「ユズちゃん、警戒を!」ミドリ

 

「う、うん……!」ユズ

 

 

──タワー上層、中央管制室。

 

開いたセキュリティドアからゲーム開発部が室内へと飛び込み、四方へと視線を飛ばす。タワーへと侵入し中央管制室へと足を進める中、妨害らしい妨害は決してなく、AMASを嗾けられる事も無かった。薄暗い管制室はモニタの薄ぼんやりとした光に照らされ、人の気配はない。

 

 

「誰も居ない──?」モモイ

 

「モニタは点いているみたいだけれど……」ユズ

 

 

部屋の中は静寂が支配していた。まさか既に此処を離れて──そんな考えが過った瞬間、不意に声が響いた。

 

 

「──此処まで来てしまったのね、貴女達は」リオ

 

「ッ……!」モモイ

 

 

咄嗟に銃口を声の聞こえた方へと向け、身構える一行。隆一はゲーム開発部を背に、リボルバーを向ける。硬質的な靴音を鳴らし現れる人物──モニタの淡い光に照らされたリオは、暫し向けられる銃口を注視しながら無言で佇んでいた。

 

 

「アリスなら確かに、この先に居るわ」リオ

 

「生徒会長っ……!」モモイ

 

「ッ──!」ミドリ

 

 

彼女の姿を目にしたモモイ、ミドリ、ユズの三名は歯を食い縛り、その瞳に危険な色を宿す。

 

 

「まだ、戦うつもり!?」モモイ

 

「もしそうなら、私達だって!」ミドリ

 

「もう、容赦しません……ッ!」ユズ

 

 

リオはその光景を目に焼き付けながら、静かに自身のホルスターに指先を伸ばした。

 

 

「───」リオ

 

 

抵抗しようと思えば出来る余地はあった──しかし、それがどれ程無意味な事であるかをリオは自覚している。故にその指先がグリップに触れる事はなく、指先は力なく、彼女は目を伏せ告げた。

 

 

「……いいえ、抵抗するつもりはないわ」リオ

 

 

ゆっくりと挙げられる両手。その姿にゲーム開発部の面々は思わず目を見開き、身動ぎする。

 

 

「トキが倒された時点で私が持っている手札は全て消えた──私の負けを、認めるわ」リオ

 

「……リオ会長…」モモイ

 

 

生徒会長自らの敗北宣言──彼女は手にしていたタブレットをコンソールの上に置き、小さく吐息を漏らす。

 

 

「本当に、貴女達は此処まで辿り着いてしまったのね、近い将来キヴォトスを脅かす事が確定している、あの子(AL-1S)を救う為に……遮るもの、全てを薙ぎ払ってまで」リオ

 

「──当たり前だよ!」モモイ

 

 

モモイの返答は激しく、まるで彼女の内面をそのまま吐き出したかのような色を伴っていた。

 

 

「ずっと最初から、私は、私達はそう言っていたんだから!」モモイ

 

「……そうね」リオ

 

「良いのね、AL-1Sがキヴォトスに終焉を齎すとしても、貴女達はこの選択を……」リオ

 

「アリスはそんな存在じゃないって何回も言っているでしょう!?良いから、アリスを返してッ!」モモイ

 

「……私は、ただ」リオ

 

 

凄まじい剣幕で食らい付くモモイに、リオは一瞬言葉を呑み込んだ。尚も何かを言い募ろうとするモモイ、しかし彼女の肩に手が掛かった。はっ、と言葉を呑んだモモイが振り向けば、痣塗れの顔に、それでも笑みを貼りつけた隆一が直ぐ傍に立っていた。

彼はゆっくりと首を横に振ると、モモイの代わりに一歩を踏み出した。

 

 

「リオ」隆一

 

「……先生」リオ

 

 

リオは一瞬顔を上げ、それから再び視線を下げた。其処には強い罪悪感と後ろめたさが見え隠れしている。

 

 

「先生、貴方も、私の行いを独善であると、そう判断するかしら……いえ、そう思われても仕方のない事(貴方とあの子に対する殺害未遂)を、既に私は為してしまっている。それでも、私は──私は、学園(ミレニアム)のみんなを……っ!」リオ

 

「──さっき、リオは言っただろ?」隆一

 

 

彼女の言葉を遮り、隆一は声を発した。口調は余りにも穏やかで、優し気でさえあった。

 

 

「俺らが『アリスただ一人だけを救う為に、此処まで来たのか』って?」隆一

 

「……えぇ、確かに、そう言ったわ」リオ

 

「それは、少し違う」隆一

 

 

リオの言葉に、隆一は首を横に振った。

 

 

「トキも、それにリオ(アンタ)だって、俺の生徒(仲間)だ」隆一

 

「っ……!」リオ

 

 

 

隆一はリオに向けてゆっくりと手を差し伸べる、傷だらけで、若干血の滲んだ掌を。

 

 

「話し合おうリオ、俺らとアンタには話さなくちゃいけない事が沢山ある、あの日もすれ違って、お互いに山ほど傷付けあった、蟠りもあるだろう、それでも──まだ俺らは一緒に歩んで行けるって、そう信じている。」隆一

 

「───」リオ

 

 

リオは差し出された指先を見下ろし、沈黙した。

 

 

「助けに来たよ──リオ」隆一

 

「っ……!」リオ

 

 

彼女は隆一の手を取ろうと腕を伸ばし、それから触れ合う寸前で止めた。暫し沈黙を守ったリオは、ゆっくりとその指先を握り締める。涙を一筋流しながら、指一本分、ほんの微かに触れ合う程度に、隆一の差し出した手に触れた。それが彼女の許せる──『自分自身を許せる』、明確なラインであった。

 

 

「……アリスは、この奥の中央隔離室に居るわ」リオ

 

「っ!」モモイ

 

「セキュリティは解除してある、障害はない筈よ」リオ

 

 

俯いたまま力なく放たれたそれ、同時にリオの背後にあった扉が開き内部を晒す。

 

 

「ユズ、ミドリ……!」モモイ

 

「う、うん!」ユズ

 

 

リオの脇を抜け、示された扉の先へと足を進める三人。隆一は一歩踏み出し、すれ違いざま、リオに呟いた。

 

 

「リオ、落ち着いたら一緒に話そう」隆一

 

「………」リオ

 

「今度こそ──」隆一

 

 

リオは告げ、ゆっくりとした足取りでゲーム開発部を追う隆一の姿を見送った。

 


 

隔離室へと踏み込んだゲーム開発部は、床に伸びるケーブルの類を跨ぎながら中央の寝台へと駆け寄る。其処にはアリスが制服を身に着けたまま横たわっており、幾つもの見慣れない機器に繋がれ意識を失っていた。モモイは寝台に備え付けられていたライトを払い除ける様に退かし、アリスの頬に手を添える。

まだ、生きている──破顔し、涙を滲ませたゲーム開発部は上擦った声で叫んだ。

 

 

「アリス、お待たせ!」モモイ

 

「ごめん、遅くなってちゃって……!」ミドリ

 

「で、でも、これで──」ユズ

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