The Hypocrite's Archive   作:Xelphyr

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第一章:砂上のバベル(アビドス)
アビドス


アロナが手紙の山から一つ取り出し、ソファで横になっている彼へと見せる。

 

「こちら緊急性が高いかもしれない事案です。ちょっと不穏な内容で。読んでもらったほうがいいかなと」

 

「どれどれ…」

 

 

 

 

連邦捜査部シャーレの先生へ。こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。

 

今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、こうしてお手紙を書きました。

 

単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。

 

それも、地域の暴力組織によってです。

 

こうなってしまった事情はかなり複雑なのですが…。

 

どうやら、私たちの校舎が狙われているようです。今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底を尽いてしまいます…。

 

このままでは、暴力組織に学校を占拠されてしまいそうな状況です。それで、今回先生にお願いできればと思いました。先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?

 

 

 

 

「…との事です。あ、地図も添付されてますね。アビドス高等学校。…アビドス高等学校…先生、どうしますか?」

 

「…行くか」

 

「流石は先生です!…あ、でも気をつけないといけませんよ?」

 

「なんでだ?」

 

「あそこは昔、かなり大きい自治区でしたが…気候の変化で街が厳しい状況になっているのだとか。確か現在の地図だと…ありました!ここです。写真も出しますね」

 

 

 

 

彼は、画面に映ったアビドスの様子を見る。そこは完全に砂漠地帯であり、多くの建物は砂に埋もれてほとんど見えていない。

 

 

 

 

「こりゃひどい」

 

 

 

 

「砂嵐の影響で砂漠化が拡大。対策も間に合わなかったようで、住宅街も砂漠化の波に飲まれたようです…そう、砂漠化は進みましたが、今でもアビドス自治区はとっても広いんですよ!街のど真ん中で遭難する人もいるのだとか!」

 

「まじか。気をつけよ」

 

そう言い、彼はリュックを取り出し、荷造りを始めるが…

 

 

 

 

「えーと…缶詰、狩猟用ナイフに麻酔針…あとは対人ツルハシと水、テトロドトキシン*1カプセルも入れておこう。」

 

「…先生、アビドスをジャングルか紛争地帯と勘違いしているのですか?」

 

「……は?だってさっきの手紙だと不良がどーのこーのっつってただろ?」

 

「え?じゃなくて!持ち物の話ですよ!なんでフグ毒のカプセルなんか持ち込むんですか!」

 

「だって、それだけ治安が悪いって事でしょ、だから不良に毒盛って抑止力に」

 

「56すつもりですか!?」

 

「…分かった、じゃあ弾薬で我慢する。それで良いや」

 

『それから水分もですからね?』

 

「…うん」

 

そして彼はささっと何かを準備しリュックサックへと入れる。

 

冷蔵庫のキンキンに冷えた水、氷、ティーバッグ…

 

「んじゃ、行くか」

 

「はい!」

 

そうして、彼はアビドスへ歩みを進める事となった。

 

 

 

 


 

 

 

 

が、意気揚々と出発した割に、トラブルに遭ってしまった。

 

 

 

 

「……どこ、ここ?」

 

 

 

 

アビドス自治区に辿り着いたは良いものの、肝心の学校が見つからないまま丸一日経とうとしていた。

 

彼が振り返った先に、特徴的な銀髪とオオカミの獣耳を揺らした少女が現れた。白いアサルトライフルを背負ってロードバイクに乗っていた少女が、サドルから降りて自転車を転がしながら隆一に近づく。

 

 

 

 

「こんなところでどうしたの?…もしかして迷った?」

 

「その通り、助けてくれて感謝する」

 

「ん、そっか…私はアビドス高等学校の2年生、砂狼(すなおおかみ)シロコ」

 

「アビドス高校?…丁度良い。俺もそこに用があるんだ」

 

「ん…どうして?」

 

「…そういや、自己紹介がまだだったな。僕はシャーレの先生、天音隆一(リュウイチ)。よろしく頼むよ」

 

 

 

「シャーレの…先生!?」

 

「ああ」

 

「シャーレの先生」と名乗った男に驚いたシロコは、まじまじと穴が開くまで彼の事を見つめる。こんな胡散臭そうな自称20代のおっさんがシャーレの先生、若干不安になりつつあった。

 

けれど、どことなく優しさが感じられるようにも思えた。

 

 

 

 


 

 

 

 

アビドスの校舎へと到着した彼は、シロコの案内を受けて校内へと通された。

 

 初めて足を踏み入れる学校に好奇心をときめかせていた彼だったが、校内に入ってから最初に目についたのは、とても学校に似合わない砂の汚れだった。 残された教室へと続く廊下を含め、壁や床にはこびりついた砂埃の黄ばみが目立ち、柱や階段の門には吹き溜まった砂が残っている。この大きな校舎すらも飲み込みつつある砂嵐の影響に、彼は彼女たちに迫る危機の重大さをひしひしと感じさせられた。

 

「ただいま」シロコ

 

「おかえり、シロコせんぱ………い?」???

 

 

 

 

案内された委員会室の扉をシロコが開くと、救援を待っていたアビドスの生徒たちがそこに揃っていた。

 

 

 

 

「し、シロコ先輩が遂に誘拐に手を!!?」???

 

「違う」シロコ

 

「わぁ☆シロコちゃんったら大胆ですね〜♧」???

 

「…満面の笑みだし、わかってるでしょ、ノノミ」シロコ

 

「お、お、お、落ち着いてください!こ、こういうときはですね、冷静に、冷静に…なれるわけないじゃないですかー!?」???

 

「アヤネ、動揺しすぎ。…というか、この人を呼んだのってアヤネじゃなかった?」シロコ

 

「えっ!?アヤネちゃんいつの間に!?」???

 

「へぇっ!?違います違います!心当たり無いです!」アヤネ

 

「…先生だよ、この人」シロコ

 

「へ?……先生?」アヤネ

 

「初めまして、だな。」

 

 

 

 

彼は挨拶しながら、リュックサックを下ろす。

 

 

 

 

「せ…先生?」???

 

That's right(その通りだ)*2

 

「何この人!メッチャ胡散臭いんだけど!」???

 

「酒臭かろうが臭くなかろうが俺は先生だ…ほら」

 

そう言いながら、彼は首にぶら下げていた名札を見せる。

 

「…本当だ、確かにシャーレの先生のようですね〜」ノノミ

 

彼は立ち上がって自己紹介を行う。

 

 

 

 

「シャーレ教諭の天音隆一だ…よろしく」

 

「本当に先生が―あっ、私!奥空(おくそら)アヤネです!来てくださりありがとうございます!」

 

 

 

耳が尖った赤眼鏡と黒髪の生徒が、深々と頭を下げて彼に謝意を述べた。

 

 

 

「えっと、取り敢えずこれホシノ先輩起こしたほうが良くない?…あ、私、黒見(くろみ)セリカっていいます。よろしくお願いします」

 

 

 

敬語のぎこちなさはさておき、猫耳が生えた黒いツインテールの生徒が部屋から飛び出していく。少し経つと、隣室からは「ホシノ先輩起きてー!」と叫ぶ声が響いてきた。

 

 

 

「ホシノ先輩、昨日はお疲れでしたからね〜…直ぐに起きるでしょうか……あ、先生!私はシロコちゃんと同じ、二年生の十六夜(いざよい)ノノミです♪ノノミでいいですよ〜♪」

 

「んじゃよろしくな」

 

 

 

ノノミと名乗る金髪の生徒は、愛銃のミニガンを整備しながら彼に笑みを向け、アビドスへの来校を歓迎した。『また新しい友達ができました〜♧』と、アビドスでは久しく見なかった取立て業者以外のお客さんの来校に喜んでいる様子である。

 

 

 

ガチャ、とドアが音を立てると二人入ってくる。

 

セリカと名乗った先の生徒と、彼女が「ホシノ先輩」と呼び慕っている相手だった。

 

 

 

「ふわぁ…まだ起きる時間じゃないのになんで…。…ん?」

 

 

 

生徒の中でも特に小さな背丈で桃色の長い髪を持つ生徒。右目は金、左は青、その両目が彼を捉える…彼もまたそんなホシノを見る。

 

 

 

「「………」」

 

 

 

二人は視線を交わした。ただそれだけで相手がどれほどのものか、大体見当がついた…互いに

 

 

 

((この人は(こいつぁ)強い(おもしれぇ)))

 

 

 

と確信していた。

 

 

 

「うへぇ…誰〜?普通の人じゃなさそうだけど」

 

「隆一、天音隆一だ…シャーレの先生やってる」

 

「じゃあ君がその先生?」

 

「ああ、そうだ」

 

「…へぇーそうなんだね、小鳥遊(たかなし)ホシノだよー。ホシノでいいからねー…よろしくね?」 

 

「よろしくな、ホシノ」

*1
フグの持つ毒として有名な奴。勿論だが猛毒なので飲めば死ぬ

*2
やたらネイティブ臭い発音の英語

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