The Hypocrite's Archive 作:Xelphyr
誤字脱字報告も同じく励みになります
翌朝、補習授業部──教室。補習授業部、三日目の朝。皆は時間通りに起床し、顔を洗い、食事を摂る。
「先生、おはようござ──あれ?」ヒフミ
教室へと入ったヒフミは、扉を開けた先にいつもス◯ゼロかエナドリを机に置いて仕事をしている隆一の姿が無い事に気付いた。
「あれ、先生居ないけれど……もしかして、遅刻?」コハル
「いえ、朝食の時はきちんと起床していらっしゃいましたし……」ヒフミ
「いつものお酒の缶もないし…」コハル
「授業の資料でも取りに行っているんじゃないか?」アズサ
「そうですね、アズサちゃんの言う通り、多分授業資料の準備か何かだと思いますが……」ハナコ
「ん……あ、黒板」コハル
「黒板?」ヒフミ
「もしかして、何か急なご用事でしょうか?」ヒフミ
「先生はやはり独立連邦捜査部という立場もありますし、急ぎの仕事が入ってもおかしくはないですね」ハナコ
「うん……先生も貴重な時間を割いて、私達の勉強を見てくれている」アズサ
「うぐっ……そ、そう、だよね」コハル
「一先ず、指示された通り自習時間にしましょうか」ヒフミ
「了解」アズサ
「う、うん」コハル
「ふふっ」ハナコ
「わぁ、水が入ってる~!」???
合宿所、プールサイドにて。靴を脱ぎ捨て、裸足となった少女──ミカが笑いながらプールサイドを歩き回る。
「あはっ、ここに水が入っているのなんて久し振りに見たなぁー、もしかしてこれから泳ぐの?皆でプールパーティーとか?」ミカ
「合宿さえ終わっちまったら、そういう事をしても良いかもな……んでミカ、態々此処まで出向いた用件は?」隆一
「……えへへっ。先生は上手くやっているかな~、って、ちょっと気になって」ミカ
「まぁ、今のところは何とか、上下水道その他インフラ諸々含め必要な設備は揃っているからな」隆一
「そっか、なら良かった!それにしてもナギちゃん、随分と入れ込んでいるみたいだねー、こんな施設まで貸し出しちゃって、多分中堅クラスの部活が使用申請だしても、使用許可下りないよ、こんな大きい合宿所」ミカ
「だとしても、此処に着いたばかりの時はかなり放置されていて、蔦も伸び放題出し虫もでかいし普通に汚いしで掃除が大変だったぞ?」隆一
「あはは、まぁ、そこは……ほら?トリニティは大きいし、手の廻らないところの方が多いから、管理自体は兎も角、景観とか二の次、三の次ってね」ミカ
「ちょっと、勿体ない気もするね」隆一
「派閥とか、政治的配慮とか、色々あるらしいんだよね~」ミカ
「政治的配慮、ねぇ…」隆一
「ところで、肝心の合宿の中身はどう?本校舎から遠いのを良い事に、何か楽しそうな事したりしてない?皆でパジャマパーティーとか、ここでプールパーティーとか!」ミカ
「生憎、名目は勉強合宿だから、そういうのは難しいな……」隆一
「えー、でもさ、折角の合宿何て楽しいイベントなんだし、そういう事の一つや二つくらいないと……」ミカ
「──ミカ…そんな事を聞きたくて呼んだ訳じゃないんだろ?分かってんぞ?」隆一
「……あはっ…そこまで警戒されちゃうのは心外だなー、私こう見えても繊細で、傷つきやすいんだよ?」ミカ
「──良く知っているよ」隆一
「……というか先生、顔色良くないよ?ちゃんとご飯とか食べられているの?何か美味しいものでも送ろうか?ケーキとか、紅茶とか」ミカ
「まあ最近はその辺の自販機に売ってたエナドリかコンビニで売ってたス◯ゼロとかで凌ぐ日も多いな──そういうミカも、目元の方────隈、出来ているぞ?」隆一
「……あーはは……あー、一応隠したつもりだったんだけれど」ミカ
「睡眠不足?」隆一
「あー、いや、うん、まぁ、睡眠不足なの……かな?」ミカ
「最近何か、眠っている気がしないというか、気が付いたら全然知らない場所に居る──って事が偶にあるんだよ、夢遊病?って奴かなぁ」ミカ
「夢遊病……急に気ィ失ったりとかは?」隆一
「あー、それはない、何ていうか、眠くなる感じって言うの?そういう眠気が先に来て、うたた寝とか、御昼寝したら、次起きた時に寝る前の状況と違う……的な?」ミカ
「………」隆一
「……ふふっ、心配してくれるんだ、私の事、嬉しいなぁ」ミカ
「そりゃ勿論……」隆一
「先生は優しいね」ミカ
「まぁ、先生に私の事を知って貰うのも悪くないけれど、そろそろ本題に入ろうか!あっ、因みに私が此処に居る事について、ナギちゃんは知らないから、見ての通り、付き添いもなしの単独行動!」ミカ
「ああ、信じるさ」隆一
「あ……えへへ」ミカ
「それで、改めて本題だけれど──先生ってさ、ナギちゃんから取引とか提案されなかった?」ミカ
「取引、というと?」隆一
「例えば、そうだなぁ……【トリニティの
「……若干違うな、『
「……ふぅ、やっぱり、もうナギちゃんったら、予想通りなんだから──それで、何か詳しい情報とかは?そういうのは何もなしで、ただ探してって言われた感じ?理由とか目的は?どうして補習授業部がこういうメンバーで構成されているかとか、ナギちゃんは教えてくれなかった?」ミカ
「あ〜、多少は説明されたけれど……詳しい所までは、余り」隆一
「そっかー……もう、ちゃんと説明しないで先生にこんな重荷を背負わせるって……」ミカ
「──でも、ナギサには悪いけれど、提案は断ったよ」隆一
ミカにとって「断る」。その答えが予想外だったのだろう。目を瞬かせ、驚きの表情を浮かべる。
「えっ、そうなの?どうして?自分達の生徒を疑いたくないから?それとも──」ミカ
「疑いたくないというのは勿論あるよ、でも、疑いたくない以上に──信じたいんだ、俺の生徒を」隆一
「……へぇ」ミカ
「そっか、そっかぁ……まぁ確かに先生は独立連邦捜査部の所属だもんね、トリニティとは本来無関係な第三者、私達にとってはずっと『トリニティ』そのものが世界の中心みたいな感じだからアレだけれど、先生にとってはそうじゃない」ミカ
「ものの見方は立場によって変わる……でも、俺は、俺が正しいと思った道を選んだつもりだ」隆一
「ふーん……」ミカ
予想だにしない答えを前に、ミカの目が興味に輝く。両腕を組んだ彼女は、何かに納得するような素振りを見せ、何度も頷いた。
「もしトリニティの味方じゃないんだとしたら、ゲヘナの味方?それとも所属的に連邦生徒会とか?前に騒動に巻き込まれたって言う、アビドスかな?或いは──誰の味方でもない、とか?」ミカ
「ミカ、もしかして分かっていて聞いている?」隆一
「いや全然?」ミカ
「俺は、キヴォトスの味方だ」隆一
「そっ、かぁ……キヴォトスの味方、かぁ……それは予想外だったなー……うーん、なら、あ、あのさ、先生?」ミカ
「うん?」隆一
「生徒の味方って事は、その……」ミカ
「どうした?」隆一
「先生は一応、私の味方でもあるって考えても良いのかな?私もほら、ティーパーティーの一員だけれど、トリニティの生徒って立場だし……困っていたら、助けてくれるのかな……なーんて」ミカ
「勿論──ミカが困っているのなら助ける、迷っているのなら手を取り導く、ミカがミカらしく在れるように、俺は俺の最大限寄り添うさ」隆一
「……わーお。さ、さらっと凄い事を言ってのけるね、先生……」ミカ
「こういう事で、生徒に嘘は吐かないようにしているんだ」隆一
「そ、そうなんだ……へー……ふーん……」ミカ
「大人だねぇ、そういう話術?って思う気持ちもあるけれど……多分、何となく、うん、先生が本気だって分かるし……ちょっと純粋に嬉しいかも、えへへ──」ミカ
「でも、先生はさ、私だけの味方には──なってくれないんだよね?」ミカ
「………」隆一
「あはは、ごめん、ちょっと我儘言っちゃった……うん、さっきの言葉、先生以外の人が言ったのなら、ただの傍観者じゃんって言いたくなっちゃうけれど──先生は文字通り、本当に心の底からそう思っているんだね」ミカ
「どれだけ傷つけられても、どれだけ辛くても──先生は、生徒の傍に寄り添い続けるんだ?」ミカ
「……あぁ、そうだ…それが俺の仕事だからな」隆一
「……そっか」ミカ
「なら……私から先生に、取引を提案させて貰おうかな?」ミカ
「取引?」隆一
「うん、そう──」ミカ
「──補習授業部の中に居る裏切者が誰なのか、教えてあげる」ミカ
「ナギちゃんの言うトリニティの裏切者、今必死に探して退学にさせようとしている、その相手──と言っても、先生は既に気付いているみたいかな?」ミカ
「……さぁ、どうだろうね」隆一
「誤魔化さなくても良いよ、私としてはどっちでも良いんだし……元々先生がナギちゃんに振り回されているのを見ているのは申し訳なかったから、これは取引言々を抜いても先生に伝えようと思ったんだ……実際の所、少し複雑で大きい問題もあってね」ミカ
「──そもそも、先生の事を補習授業部の担任として招待したのは私だから、この事は知っていた?」ミカ
「……いや、初耳だ」隆一
「そう?ナギちゃんにはずっと反対されていたんだ、せっかくの借りをこんな風に使うのはどうだのこうだの、って……先生とナギちゃんの間に、色々あったみたいだね?──まぁ、私の方も色々あったけれど……あぁ、ごめん、それより裏切り者のお話だったね。補習授業部の裏切者、その正体は──」ミカ