マジック・ザ・プリキュア   作:MP5

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 次元によってはいない種族がいる

 中には人間がいない次元も存在する


学びの前に

 私立ノーブル学園。そこは、市街地から少し離れた島にある、全寮制の学園で、今年から高等部が設立された。カインは制服に袖を通し寮の自室へ持ってきた荷物を置いた。

「相部屋ねぇ。どんな奴が来るんだろうな」

 ずっと懐に入れていた小刀を取り出し、携帯砥石で磨き始めた。

「学舎に刃物厳禁って言われてたし、どうも平和そうな次元だな。・・・みなみ様、凛として美しかったな。嫁にほしいなぁ・・・って、馬鹿な話は無いよな」

 途端、ドアの開く音がする。カインは研ぐのをやめて素早く小刀を手に構えた。刃の先にはカインより一回り小柄な少年が腰を抜かしている。

「ヒィ!殺さないで!」

「ノックもせずに入るな、誰だお前」

「伊集院キミマロだ。ボクの名前が部屋の案内になかったかい!?」

「ん・・・あらぁホントだ。それはすまなんだ」

 小刀をしまい、頭を下げる。

「ふぅまぁいっか。ところで君がカイン君か?どんなところにいたの?」

「遠くだ。雪の山奥にいたこともある」

 詫びとして緑茶を淹れるカイン。思ってた以上に上手だったのか、思わず感嘆をもらす。

「キミマロは生徒会の仕事はしないのか?」

「みなみさんが会長をやるんだよね・・・ボクはいいよ、昔、彼女の友人を傷つけて、怒らせてしまったんだ。そんな男が側にいるなんて恥ずかしいよ」

「それは、みなみ様が決めることだ。何が起きたのか知らないが、俺の目には、反省して悔いることができる、真っ当な男がいるように見える」

 つかさからもらった瓦煎餅を豪快に噛み砕くカインを見て、思わず苦笑いする。

「君さ、この煎餅が非常に堅いこと知ってる?普通、お茶とかで柔らかくして食べるんだけど・・・」

「そうなのか、知らなかったぜ」

 ボリボリと食べながらも、キミマロと会話を弾ませる。勇猛で野生的な性格の多いティムール境では彼のような性格の人間はおらず、カインにとってとても新鮮な感じがしていた。時計の時刻を見て少し慌てる。

「そうだった、みなみ様に呼ばれているのだった。すまんが留守は任せたぞ」

 カインが部屋を出た後、キミマロは自分の荷物を片付ける傍ら、カインの荷物も片付けることにした。手を滑らせて落としてしまった袋の中から出てきたものに興味を抱く。

「石?鉱物に興味があるのかな?」

 溢れた石同士をぶつけると、火花が飛び散った。

「なんで火打石持ってんだろう、小刀然りこれ然り、何者なんだろう、彼は」

 

 

 

 

 

 

 学園に入る前に脳内に叩き込んだ地図をもとに生徒会室へ向かった。既に数名が座って待っており、入ってきたカインに注目する。

「カイン、ただいま参上致しました」

「ごきげんようカイン。紹介するわね、おっとりしているのが西峰あやか、ボーイッシュの方が東せいら。私の幼馴染でもあるの」

 紹介された二人が立ち上がって会釈する。

「西峰あやかです、今後とも宜しくお願いします」

「東せいらです、よろしくね、カイン・・・さん?」

「宜しくお願いします。畏まらなくても構いませんよ」

 190センチあり、ティムール境で鍛え上げた屈強な体格で制服もギリギリ、見た目年齢だけ見れば20代後半の彼を見て恐縮するのも無理はない。

「歳は21になります、驚くのも無理はありません」

 カイン以外のその場にいた全員が硬直した。

「皆さん?何かマズイことでも?」

「いや、その、思ったよりも若いと言うか、コワモテと言うか」

「す、すごい苦労をされたのかと思って・・・」

「ふ、二人とも」

 優しく笑い、安心するような声で語る。

「ご安心を。この学舎で過ごす以上は気を使う必要はありません、こちらこそ、よろしくお願い致します」

 時計を見ると、カインは慌てた様子を見せる。

「しまった、片付け済ませてない。今日はここで失礼します」

 大急ぎで学生寮へ帰っていった。

「ねぇみなみ、どこで捕まえたの?あのイケメン」

「ハイキング行った時にお父様がスカウトしたのよ」

 流石に多元宇宙のひとつからやって来たとは言えないため、彼の身体付きに合うような嘘をついた。

 

 

 

 

 

 部屋に戻ると、キミマロが頭を下げて謝ってきた。荷物の中身を見てしまったと。

「不用心な俺も悪いから、いいよ。俺こそ、手を煩わせてしまったな」

「君は何者だい?火打石に小刀、ロープや小型ピッケル、まるで冒険家じゃないか」

「そうだな。山や雪原、洞窟などを探検してきたよ。たまに斧で熊や猪といった野生動物と戦ったりしたけど、なかなか有意義なものさ」

 斧で熊を仕留めると言うなかなかのパワーワードに思わず凍りつくも、カインならやりかねないと思ってしまう。

「すごいなぁ。ねぇ、もしよかったら夏休みにハイキング行こうよ」

 カインはキョトンとした顔で

「?ハイキング?何だいそれ?」

 キミマロにとって他愛のない質問をしてきた。

「えっとね、山に慣れていない人でも山歩きを楽しむレジャーだよ。物足りないかもしれないけど、いいかな?」

「岩登ったり猛獣と戦ったりは?」

「あのね、それハイキング違う、サバイバル」

 真面目なのかボケてるのかわからない問答をしていると、ノックする音が聞こえる。返事をする前に猫より少し大きく、頭部は茶色で胴体から下は薄いベージュの変わった生き物がドアを開けてそこにいた。

「カインのペットかい?」

「飼ってないぞ。見たことのないやつだ」

 優しく抱き上げると、何かを伝えたいような目線でこちらを見てくる。

「すまないが少し外す。なぁに心配しなくてもいいからね」

 

 

 

 

 

 

 あまり使い慣れてないスマートフォンを使ってみなみを人通りのない、寮裏のベンチに呼び出した。みなみはこの生き物のことを知っていたような表情をする。

「あなた、確かロックの依代になってた、クロロね?」

「はい。あの時はその・・・」

「いいの、それよりあなたも無事だったのね?」

 カインの膝の上で小さく震えた。

「怖かったロロ。上半分顔のない悪魔が手をかざすと急に街の人が眠り出して、訳わからないまま一生懸命逃げて、青い三角の門を潜ったら、この世界にきて、一人ぼっちで・・・」

「もう大丈夫よ。トワもカナタ王子も、パフもアロマも、ミス・シャムールも、こっちの世界に来てるわ。あなたが無事でよかったわ」

 クロロの話に出てきた顔のない悪魔と言う単語に、カインは引っかかった。多くの人々を一瞬で沈黙させるだけの力を持つ存在を、どこかで聞いた事があるからだ。

「みなみ様、俺はプレインズウォークして情報を集めてきます。始業式には間に合わせます」

「わかったわ。クロロは大事に預かるから、任せて」

 カインはクロロをみなみに預けると、青白く光る門を召喚し、そこを潜ってプレインズウォークした。

 

 

 

 

 

 

 カインがプレインズウォークした先、そこはおとぎ話の次元、エルドレイン。アーデンベイル城に赴いた彼は、ある人物を訪ねた。元プレインズウォーカーの、ウィル・ケンリス。カインとウィルが初めて出会ったのは、忌まわしき眠り解放の後、エルドレイン来訪時、僻境と呼ばれる危険な野生動物と魔の領域に足を踏み入れようとした時、視察に来ていたウィルが止めに入ったのだ。その際、力を示し、互いに健闘を称え合った。顔面や胴体がボロボロになるまで。

「おぉカインじゃないか、どうしたんだい、その格好は?」

「このたび、学校に通うことになったんだ。みんなが知らない次元のね」

「ストリクスヘイブンとどう違うのか気になるな。皆はどうしてるんだらう」

 ウィルは大学での出来事を思い出していた、大騒ぎだったが楽しかった思い出があるはずなのに、何故か表情に影を落としていた。カインは心配して声を掛ける。

「ウィル。感傷してる時に悪いが実は君に聞きたいことがあるんだ。忌まわしき眠りのような魔法が、別の次元で使われた。心当たりはないか?」

「何だって、エルドレイン以外で忌まわしき眠りが!?」

 アーデンベイル城の決戦で苦戦した魔法を、別の誰かが使っている。ウィルには心当たりがあった。

「カイン、私は灯がないから一緒には行けないが、可能性は二つある。一つはエリエットが仲間を集めて発動したこと。もうひとつは、忌まわしき眠りを知っているプレインズウォーカーが一人で発動したことだ」

「誰だそいつは?」

「アショク。エリエットと共にローアンを操っていたプレインズウォーカー。詳細はわからないが、奴は顔の上半分がなく、黒い霧を発している。絶対に触れるなよ」

 ウィルの頬に涙が流れた。喧嘩別れしてしまった双子の姉、ローアン・ケンリスのことが、今でも心に影を落としているようだった。

「もしもでいい、ローアンを見つけたらエルドレインに連れ帰ってほしい。また二人でやり直したいんだ」

「わかった。お前の気持ち、しかと受け止めた」

 カインはプレインズウォークし、ノーブル学園へ帰っていった。

「リリアナ・ヴェス教授、ガラク、また逢えたらいいな」

 

 

 

 

 

 ノーブル学園に帰還し、みなみにウィルから聞いた話を伝える。人のいない生徒会長室で真剣な眼差しで話を聞いた。

「あなた以外のプレインズウォーカーね。誰でもなれるのかしら?」

「いいえ。プレインズウォーカーの灯がとても低い確率で生まれた時から備わります。それが覚醒すれば、プレインズウォーカーになります。ですので、知らないで一生を終える事が多いのです」

「覚醒すればなれる。プリキュアも似てるのかしらね」

 またしても聞きなれない単語に困惑した表情のカイン。

「何ですその、プリなんとかというのは?」

「プリキュアよ。私達はプリンセスプリキュアと名乗っているの、前にカナタ王子が言っていた、グランドプリンセスでもあるわ。これを使って変身するの」

 可愛らしいが、どこか気高さのあるパフュームを見せてくれた。

「あなたと似て、私も秘密があるわ。みんなには内緒にしてね?」

「心得ました、みなみ様」

 カインは素朴な疑問を聞いた。

「ところで、変身中にやられませんかね?」

「一瞬だから安心して。・・・もしかして、変な事考えてないかしら?」

「滅相もございません」

 みなみの判断でクロロは海藤家に引き取られることになった。これは、パフとアロマ、シャムールがいるためである。ではカナタとトワはどこにいるのか、ノーブル学園中等部で過ごしている。兄妹の去就は理事長権限によるものが大きく、トワは生徒として、カナタは用務員として置かれることになった。学校が始まってすぐに、ちょっとした騒動が起こるのは、別のお話。




次回、新たな刺客現る

悪しき者にティムールの一撃を
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