磁石みたいな呪力してたら厄ネタも寄ってくるんだが   作:トルへパ

10 / 10
2話と3話を短かったので統合しました。
あと今までの話を少し修正してます。大して変わったところはありません。


幕間
#10 ある日の休日


 

謎の男からの襲撃を受けて数日。久々に落ち着いた時間をとることができた。最近は何かと命の危機的な状況になることが多かったし、交流会に向けての特訓をしていたこともあって忙しくしていたから、こうしてゆっくり考え事ができる時間というのは貴重だ。

本当は今日も任務があったのだが、急遽キャンセル、一日フリーとなった。虎杖と伏黒は任務、釘崎はショッピングに出かけている。俺も出かけようかとも思ったが、どうにも出るのが億劫で部屋の中で小説を読んでいる。この前七海さんにお勧めしてもらったのだが、ちょっとした教養になる話もありながら、複数の事件が起き、最後に一つにつながって紐解けていくのが面白い。休憩をはさむことなくすっと読み進めてしまった。シリーズものらしいから今度探してみよう。

 

そんな風に休日を過ごして気づけば15時。さすがにずっと部屋にいるのもアレだろうと外に出て校庭まで歩く。季節は夏のそろそろ暦の上では終わりだというのに、日差しが照っていてまぶしい限りである。これでも山の方だから都会よりは暑くないのだろうが、汗で服が張り付く。なぜ出てきたのかというと、呪力でどんな動きができるのか試してみようと思ったからだった。

 

呪力特性。通常の呪力と違い何かしらの性質を持つモノのことを言う。例えば、秤先輩の呪力はやすりのようにざらついている。一回確かめさせてほしいといったら手合わせになって殴られたからよく覚えている。他には、江戸時代には電気の呪力特性で戦っていた術師もいたらしい。蓮奈は文献からその術師の記述を発掘し、戦い方を一部参考にしているのだとか。そして俺の呪力特性は、いわば磁石。こうしてみるとあまり呪力特性を持つ人は多くない。ただ、五条先生によると、それは特徴が強く出ているだけで、みんな大なり小なり違いがあるらしい。原子レベルまで干渉するという六眼は伊達ではない。

 

俺の呪力特性は、同じ呪力同士(負と負、正と正)なら反発し、違う呪力同士(負と正)なら引き寄せあう性質を持つ。無下限みたいにバリアを張っているわけじゃないから、反発より強い力での攻撃は通るし、呪力がこもってないものを投げたりしても当たる。そういう意味では虎杖なんかはかなり相手が大変だ。呪力がなくても強いんだから。

 

あとはまれに、磁石の性質が相手の呪力に付くこともある。黒閃を決めた時なんかが多いことを考えると、強い出力で相手に触れることが大事なんだろう。ただ、これは相手に利用されることもあるから一長一短だ。

 

そして最も大きい特徴は、呪力を掛け合わせずに反転術式、正の呪力を扱えるという点である。これのおかげで呪力の消費を抑えながら回復を行うことができる。しかし本来の反転術式の出力二倍には及ばず再生する速度も遅い。さすがに同等とはいかなかった。

こればかりはかけ合わせたものとの差だろう。習得してから何度か試みているのに、成功する気配が微塵もない。かけ合わせようとしても弾かれる感触がある。磁石の片方の極だけ磁場が強いっていうのも変だし、案外そういうのが関係しているんだろうか?

 

「さて、やるか」

 

こうして特徴を整理した所で,今回は、この性質を先頭に応用できるかの実験をしてみることにする。交流会で蓮奈と戦った時や、先日の襲撃の際、正の呪力を自身の強化に使えることがわかった。つまり回復だけじゃなく回復しながら攻勢に出れるということだ。今までは呪具を引き寄せるぐらいにしか使っていなかったが、うまく使えば距離を詰めるのにも攻撃を誘導したりとできることは多いはずだ。

 

呪力を込めたものをまいて置けば緊急回避にも使えるだろう。取り回し、持ち運びが楽なものを探すか。釘崎が使ってる釘みたいなのがいいかもしれない。とりあえず木刀にしっかりと呪力を込めて地面に突き刺す。10mくらい離れてから正の呪力を軽く全身に回すと、木刀の方に引っ張られた。思ったより勢いがないな…やっぱちゃんとした呪具じゃないと離脱には使えそうにないか。

 

こうしてできることが増えるというのは楽しい。俺はみんなと違って式神も強い身体能力もない。術式もない分こういうところで工夫していかないと強くなれない。強い呪霊もを相手にすることも増えてきた。今までは守られる側だった。もうその段階は終わった。俺が助ける側になるんだ。そのためには、体術は絶対克服しないとな。

 

そんな風に鍛錬を続けている蒼夜を見ている影が一人。

 

「五条!少しいいか!」

 

振り返ると校舎の方から夜蛾学長が呼んでいる。休日でも仕事なのか、大変だな。

 

「はい!今行きます」

 

急いで後者の方まで向かう。学長の方を見ると、なんだか複雑そうな顔をしている。もともと強面なので表情が読み取りづらい人である。

 

「休日も鍛錬とは。頑張ってるな、地道な鍛錬が後々になって効いてくる。欠かさず続けなさい」

 

「ありがとうございます。それで、俺を呼んだのは?」

 

「ああ、すまんな話がそれてしまった。用件は」

 

そうして一息入れた後

 

「土御門家の方から一度顔を出しに来ないかという連絡がきた。ご当主がそろそろいいだろうとのことだ」

 

予想外の内容に咄嗟に反応できなかった。もしかして学長も親が誰か知ってたのか?というか呼び出し?なんで今なんだ。そんな風に疑問が沸き上がる俺に学長が説明してくれる。

 

「今のでわかっただろうが私は君の両親、母親についても知っている。言わないように口止めされているから教えてやれないが…あちらからは無理に来なくてもいいが、もし来てくれたら父親について教えてあげることがあるかもしれないとのことだ。」

 

そう学長は締めくくった。いきなりの事過ぎて情報が整理できていないし、疑問も尽きないが、実際知りたいことは多い。両親のことはわからないことが多い。知れる機会があるなら行かない選択肢はない。

 

「どうする」

 

「行きます」

 

「そうか…ではそのように伝えておく。日取りが決まったらこちらから伝える」

 

そういうとそのまま背を向け去っていく、かと思えば立ち止まりこちらを振り返る。

 

「五条、無理はしてないか」

 

「?」

 

「君が、五条家に預けられることに決まったのは向こうの要望があったからだが、別に術師になる必要はなかったんだ。術師として育てるべきだと言い出したのは、悟なんだ」

 

罪を告白し懺悔するように話が続く。その雰囲気に、俺は相槌を返すことしかできなかった。

 

「私は反対した。君には身体的なハンデを抱えていたし、怖がりな子だったからな。だが悟は譲らなかった。コイツは強くなれる、なんとなく自分に似てる、とな」

 

「結果的に悟の方針は合っていたのかもしれない。君は高専に来てから急激に成長した。だが怪我も多い。だから、無理をしていないか…と思ったのだ」

 

何だそんなことか。それなら答えは決まっている。

 

「心配ないですよ夜蛾学長。俺はここまで来たことを後悔してません。術師をやってきたおかげで足も治りましたし、友達も増えました。やってなかったらこうはならなかった」

 

確かに術師は過酷な仕事だ。人はすぐ死ぬし、上層部はロクでもないし、人を殺すことだってある。でも、俺には力がある。俺にしかできないことがあるなら、俺はそこで頑張りたい。それは大事なことだと思う。そう伝えると

 

「本当に真っすぐ育ったものだ。悟が主に面倒を見るといったときはどうなるかと思ったが」

 

「反面教師にしたんですよ、そういうとこは」

 

そうしてひとしきり話して日が落ちてきたころ、ゆっくり休むようにといって学長は去っていった。寮に戻ると、ちょうど3人も寮に戻ってきたところだった。釘崎は両手に買ってきた荷物だらけである。そんなに必要なのか?女子は大変だな。ファッション興味ないからわかんないけど。

 

「おかえりー、任務はどうだった」

 

「特に問題なし!!あー、腹減った飯食い行こうぜ」

 

「今からかよ、まあいいけど」

 

「伏黒ーどこかいいとこ探してよ」

 

「はぁ」

 

ため息をこぼしながらもスマホで検索し始める伏黒。なんだかんだ悪態付きながらもやってくれるのだ。

そうして夕飯を食べていつもの休日は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

土御門家から連絡が来たのは翌日だった。早すぎだろ。




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