磁石みたいな呪力してたら厄ネタも寄ってくるんだが   作:トルへパ

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調べながらやってたら遅くなりました
ファンパレネタがちょっとだけ


#11 土御門家訪問

 

「ここか」

 

土御門家の呼び出しから一週間。翌日に届いた返事には、1週間後に大阪の本家でお待ちしておりますとのことだった。伊地知さんが新幹線を手配してくれたのでパッと大阪駅まで来たのだが、案内人がいるともあったので、きょろきょろと構内を見まわしていると、

 

「あなたが五条蒼夜さんですね」

 

「おわっ」

 

いつの間にか目の前に女性が立っていた。同じような制服を着ているところを見ると学生なのだろうか。白髪の髪を後ろに束ねて、よく見れば毛先がオレンジ色でポニーテールといった様相でかなり目立つのだが、全く気付かなかった。

 

「…人違いでしたでしょうか。申し訳ありません、聞いていた見た目とそっくりでしたので」

 

「ああ、すみません驚いてしまって。俺が五条蒼夜です。本日は案内よろしくお願いします」

 

「こちらこそ。…失礼、自己紹介がまだでしたね。私は土御門 燈陽(ひかり)といいます。現当主である陽明の娘に当たります」

 

 

 

 

 

 

 

燈陽さんと合流し土御門家の屋敷につくまでの間、いろいろと気になることもあったので聞こうか迷っていると、そんな俺の様子を察してか苦笑しながら、答えられることなら答えてくれるというので教えてもらうことにした。蓮奈にも言われるんだけど俺ってそんなに顔に出やすいかなぁ。

 

「燈陽さんは何年生ですか?」

 

「1年だから蒼夜さんと同学年ですよ」

 

そうだったのか、大人びてる印象だから年上と思ったけど。ということは京都校の生徒なのか。一年は交流会出ないから知らなかったな。

 

「てことは京都校の所属なんですね」

 

「いいえ?私は福岡分校の一年です。・・・やっぱり東京校の方々にも認知されてないみたいですね」

 

「福岡分校?」

 

詳しく話を聞いてみれば福岡の方に東京校の分校という扱いで存続している学校らしい。今まで全くと言っていいほど聞いたことがなかったが、今は彼女含めて4人ほど在籍しているらしい。普段は向こうの寮で生活しているが、俺が来るので帰って来いと言われたらしい。それは申し訳ないことをした。

 

「わざわざすみません」

 

「いえ、お気になさらず。私も会ってみたいと思っていたので。父からも同い年のいとこがいると小さい時から教えられていましたし」

 

この口ぶりからすると、俺がいること自体は知っていたっぽいけど・・・なんか思ってたのと違うな。てっきり何か揉めて家から出てきたとかだと思ったんだが、別に悪く言われてるって感じじゃなさそうだ。

どうして今の形になったのか疑問はあるが、それは後で党首様に聞くとして。

 

「そうなんすね…なんで京都校に行かなかったんですか?」

 

「土御門家は元をたどれば安倍晴明に連なる古い家なんですけど、今はあまり力を持ちません。でも格式だけは高いので、御三家からは疎まれているようで、あまり関係がよくないんです。加えて呪われた一族なんて二つ名までありますから。東京校に来ないかとも言われてはいたのですが、ご遠慮すると伝えたところ、福岡分校なら伝手もあるからどうだと夜蛾学長が」

 

「・・・大変だな」

 

「ええ全く」

 

やっぱり御三家とうまくいかないと苦労するのだろう。その点俺は五条家に引き取ってもらえただけよかったのかもしれない。

 

「そういえば、なんで土御門家は呪われた一族なんて言われてるんだ?」

 

「ああ、それはね」

 

だんだん向こうも砕けた口調になってきた。こっちが素なんだろうか?

そうして返答を待っていると彼女の足が止まる。周囲を見渡せば、目の前には立派な朱い鳥居と狐の像があった。ここが土御門家か。家っていうより、これは神社じゃないか?

 

「もう着いちゃったわね、続きは父さんに聞いて」

 

そういうとするすると境内に入っていく。慌てて付いていくと、最終的に和室のふすまの前に立ち

 

「父さん?蒼夜くん連れてきたよ?」

 

そう声をかけるとふすまの向こうから声が返ってくる。

 

「おかえり、燈陽。入っておいで」

 

そのまま燈陽さんがふすまを開けると、白髪の神主の装束に身を包んだ男性が座っていた。

 

「初めまして。私は土御門陽明という。今日は来てくれてありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に入ると燈陽さんは茶菓子をとってくると出て行ってしまい、いきなり一対一の状況になってしまった。こちらが黙り込んでいると向こうから話し始めた。

 

「今日は休みの中、お越しいただき感謝する」

 

「いえ」

 

「それにしても、兄に子供がいたのは知っていたが、娘と同い年だったとは」

 

「俺のことはご存じだったんですか?」

 

「ああ、もう十年以上前くらいになるが、突然家に帰ってきて「お前子供生まれたんだろ、お祝い金だ」とな。いったいどこに行っていたのやら」

 

言葉は固いが節々に笑いがこぼれている陽明さんの様子はとても楽しそうで、何かもめごとがあった人のことを話しているようには思えなかった。

 

「君はあまり兄との、父との記憶がないというが、何か覚えていることはあるか。ここに話が来た時には、兄はもう亡くなっていたからな。どう過ごしていたのか知りたいのだ」

 

「すみません。父との記憶は、なぜか思い出せないんです・・・どのように亡くなっていたんですか」

 

「周囲に残穢があったことから、呪詛師にやられたのではとのことだった。私も驚いたよ。兄はなかなかの手練れでね。家を去るまでの間に私は勝った試しがなかったから、まさか殺されているとは思わなんだ」

 

「そうだったんですね・・・父は、なぜ家を追われたのでしょうか」

 

意を決して核心の質問を切り出す。すると一瞬目を見開いて

 

「追い出されてなどいない。兄は自分で家を出たのだ、性に合わないといってな」

 

「はい?」

 

「当主を決める試合の前日に「俺はこの家を出る。海外にでも行って呪術とは無縁の生活を送ってやる。当主なんてお前が勝手にやってろ」と。私は戦いは不得手だな、兄さんは術式が無かったが呪力操作など基礎が固く、呪力特性だけで術式を持つ私は勝てなかった。普通にやっていれば当主になっていたのは兄だっただろう」

 

父さんも術式がなかったのか…どうやって戦ってたんだろうか。俺の戦闘スタイルは伸び悩んでいるから、何かヒントになるようなものがあるなら参考にしたいな。

 

「気になるか? まあやることは単純だ。戦い方はとにかく近接特化。離れようものなら呪力を込めた鞘を投げてそこに自分を牽引させて切りかかる」

 

「うわぁ」

 

脳筋が過ぎるだろその戦い方。まあその辺のものを投げるだけでできるから簡単ではあるんだろうが…

 

「君も同じ特性をしてると聞いてるが。呪力特性が遺伝したのだな。だがいくら反転術式ができるとはいえリスクの高い戦い方だ。遠距離攻撃を模索したほうがいいだろうな」

 

「ですね…」

 

俺が心中落胆していると、何か思いついたのかふむ、とこぼして

 

「その様子だと、戦い方に幅を持たせたいのか。であれば、簡易的な式神をマーカーにするのはどうだ?兄には聞き入れられなかったが…」

 

「!」

 

式神…そうか式神か!盲点だった。確かにそれなら俺の呪力がこもっているから移動のポインターとして使える。なんで思いつかなかったんだ。あとはどうやって即座に作るかだな…

俺が色々考えこんでいると、参考になったようで何よりと陽明さんがホッと一息を突いている。

 

「式神については、後で燈陽に教えてもらうといい。あの子はそういったことに向いている」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

そんな風にいろいろと話をしていると、話がひと段落したところで、燈陽さんが戻ってきた。お盆の上には人数分のお茶と、茶菓子がこんもりと乗っていた。ちょっと多くないか?

 

「色々準備してたら遅くなっちゃった」

 

そうしてちょうど三角形になる位置に腰を下ろし茶をすすり始めた。動作にまったくもって無駄のない、まるで茶道の先生のようである。俺は蓮奈に散々しつけられて最低限身に着けたが、やっぱりこういうところで生活していると自然と身に付くんだろうか。

 

戻ってきた燈陽さんをなぜか少し怪しむように見た後、陽明さんの雰囲気が変わる。どうやら本題に入るようだ。

 

「さて、そろそろ本題に入るとするか。蒼夜君も気になっているであろう我が家の成り立ちについて。そして…なぜ呪われた一族と呼ばれるようになったのか」

 

「!」

 

ついに来たか。これの理由によっては俺が預けられた理由もはっきりするかもしれない。いったいどんな話が飛び出てくるのか…

 

「まず最初に言っておこう。土御門家が呪われているといわれる理由は、言ってしまえば呪術師としての欠陥があるというところにある」

 

俺は返答を返すことなく、うなずきだけを返す。詳しいことを聞くのは全部聞いてからだ。

 

「土御門家は、知っての通り元は安倍晴明に端を発する一族だ。呪術師として強い力を持っていた。だが、それも呪術全盛である平安から時が経ち、少しずつ弱くなっていった。問題が起きたのは、400年前だ。」

 

「400年前、土御門家は完全に衰退が始まっていた。いや、もう衰退していたといっていい。どんなに研鑽を積もうとも祖である安倍晴明に並ぶ者、ましてや超えるものは現れず、それどころか術式を持たないものも増え始め、当主の娘は相伝である陰陽呪術を継いでいたが才能はあまりなく、家を引っ張っていけるだけの力を持たなかった。そこで当主は娘を五条家に嫁に出す決断をした。」

 

「五条家に?」

 

「そう。といっても実力者の男というわけでもなかったようだ。とにかく衰退を止めるために必死だったらしい。そうして娘が嫁ぎ、そろそろ子供が生まれるとなったときに問題が起きた。五条家の六(・)眼(・)を(・)持(・)っ(・)た(・)赤(・)子(・)が(・)殺(・)さ(・)れ(・)た(・)」

 

その話は聞いたことがある。

400年前、何者かによって六眼を持った赤子が殺されるということがあったとか何とか。でも結果的に六眼は現れたって聞いてるけれど…

 

「最終的に六眼は現れたが、事件が起きた当時の五条家は大荒れだった。そしてその状況で真っ先に疑われるのは」

 

「嫁に来ていた土御門家だったんですね」

 

俺のつぶやきは然りと肯定された。六眼を持った赤子の殺害、身ごもっている没落寸前の一族の娘。疑われるのは想像に難くない。五条家と土御門家にはそんな因縁があったのか。そりゃあ引き取られたときいろいろ言われるわけだ。じゃあその呪いっていうのも…

 

「お察しの通り原因不明の呪いというのはそこから始まった。当主の娘が追い出され帰ってくるまではよかったが、帰ってきた娘は失(・)明(・)し(・)て(・)い(・)た(・)」

 

「そして生まれた子供は、双子だった。それ以来、この家では双(・)子(・)し(・)か(・)生(・)ま(・)れ(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)。双子が呪術的にどのような意味を持つかは知っているだろう?」

 

呪術的に双子、特に一卵性双生児は同一人物とみなされる。真希先輩と真依先輩がその一例といえるだろう。真希先輩は呪力がほぼないことによるフィジカルギフテッド。しかし真依先輩は術式を持っている。同一人物であるために代償の関係がうまく成立しない。これは縛りにも言えることだ。呪術師をやる上で縛りがうまく機能しないというのは、それだけで大きなデメリットになる。

 

「これが起きたことで我々一族は六眼を殺したことで呪われたといわれるようになったわけだ。実際は誰が殺したのかはわかっていないし、六眼はまた現れたわけだから、とばっちりだったのだが」

 

「?じゃあ燈陽さんには双子がいるんですか?」

 

「いや、燈陽は一人っ子だ。ここ100年ほどになって呪いが薄まったのか、一卵性ではなく二卵性が生まれるようになってきていたから、何か良い兆候なのかもしれぬな」

 

蒼夜君は兄弟がいた覚えはないか?と聞かれるが、俺の記憶の中に兄妹とか双子がいた記憶はない。そもそも親との記憶すらあいまいだからどこまで信頼できるものかは怪しいが。そう答えると少し考えこんで、そうか、とだけ返事が返ってくる。今燈陽さんの方を見ていたような?

 

「我が土御門家の呪いの説明としてはこんなところだ。では、相伝である陰陽術式について話そうか。突然だが、狐については詳しいか?」

 

「狐?」

 

なんか少し強引に話を終わらせたような気もするが、気になることは聞けたからいいか。

よそ者である俺があまり詮索するのもあれだし。

それにしても、狐ねえ。人に化けるといったイメージくらいしかないな。あとは稲荷神社で祀られてたりすることもあるってぐらいか。

 

「狐が人に化けるというイメージは、元をたどれば中国の陰陽思想に基づいてのものだ。陰陽思想は、あらゆるものが陰と陽で分けられる。男性は陽の気、女性は陰の気といった風にね。陰陽思想とはこの二つの循環・中和が重要なんだ。この中で狐というのは陰に属するとされる」

 

「なるほど?」

 

いまいち話の流れが掴めないが、とりあえず聞くことにする。すると今まで黙っていた燈陽さんが補足を入れる。

 

「陰陽とはもともと『混沌』という原初の一が分かたれたもの。陽が天、陰が地となり、もとが同じであるがゆえに引かれあい混ざり合う。そうして木・火・土・金・水の五元素が生じた。これが陰陽五行というものじゃ。燈陽の術式はこれに基づいておる」

 

「・・・」

 

何か口調がおかしいような?戻ってきてから雰囲気も変だし…

その疑問を聞くよりも早く話が続く。

 

「狐が人、特に女性に化けることが多いのは、男性から精を得ることで陽の気を循環させ自らを完全なものとするためだと考えられるためとされる。こうした考え方は、日本に渡ってきて日本の狐にも影響を与えた。狐には子供が成長すると巣から追い出すという習性があるのだが。それが結びついた結果、狐が女性に化け子をなすが、正体がばれてしまい姿を消す、という伝承が語られるようになった。わゆる異類婚姻譚というやつだ」

 

ふむ、狐と陰陽の関わりが深いことはわかったが…なぜわざわざ狐の話を?

待て、そういえばここに入ってきたとき狐の像を見たような。もしかしてここ正真正銘神社なのか?

 

「そうした話の中に、こんなものがある。とある男が森の中で狐を助けて、狐は葛の葉という娘に化けて妻となり童子丸という子供が生まれる。しかし正体がばれたことで手紙を残して消えてしまうという話だ。いくつかパターンは存在するが、この童子丸は、のちに成長し――――安倍晴明という高名な陰陽師になったといわれている」

 

「!?」

 

そう繋がってくるのか!じゃあここで祀ってるのは…

 

「こうしたことから土御門家は稲荷神社として葛の葉、安倍晴明の母である白狐を祀っている。…ふぅ。説明が長くなって申し訳ない。相伝の術式を説明するのであれば、この家の成り立ちも説明したほうがいいと思ったのでな」

 

「ありがとうございます。おかげでよくわかりましたし、勉強になりました」

 

話を色々と聞いていたからかだいぶ疲れた。ふすまの方から漏れる光は、自国がもう夕暮れ時だと知らせてくれる。式神のことが聞けないのは残念だが仕方ない。そろそろ帰る旨を伝えると

 

「もう遅い時間だし泊っていけ。どうせここには私と娘しかいないのでな」

 

「? ほかに誰もいないんですか?」

 

「御三家のように栄えていればいただろうが、落ちぶれた家なのでな。早くに妻も亡くしていてここは無駄に広いん。掃除するだけでも一苦労だ」

 

ホントにねと燈陽さんが続ける。よく部屋を見渡せば部屋の奥には仏壇があった。恐らくは彼女の母のものだろう。確かに二人しか住んでいないなら、この屋敷は広すぎるだろう。燈陽さんが立ち上がりこちらを見る。どうやら案内してくれるらしい。

 

「部屋まで案内するから付いてきて」

 

いわれるがままついていき部屋に通されると、ここで待っているようにとのことだった。夕飯になったら呼びに来るという。泊めてもらってごはんまでというのも申し訳ないから手伝うというと、客人だからゆっくりしていろとのことだった。何か言う前に出て行ってしまい、場所がわからない以上、うろつくわけにもいかずじっとしていると、

 

「あ、いたいた」

 

「え?」

 

そこにいたのは、さきほど夕飯の支度に行ったはずの燈陽さんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神主が先ほどまで話していた少年、兄の子供である蒼夜について考えていると、ふすまが開き白い着物に金髪を靡かせた女性が立っている。その目は神主である男に訝しげな視線を向ける。

 

「なぜ妾(わらわ)の話をしなかった?してもよかっただろうに」

 

「葛(・)の(・)葉(・)殿(・)が娘に化けるからでしょう?何か意図があるのかと思いましてな。それにほら、せっかく狐にゆかりがある地に来たのですから、彼には狐につままれてもらおうかと」

 

男は追及をまるで気にかけずけらけらと笑う。それにいらだったのか葛の葉と呼ばれた女が言い返す。

 

「その名で呼ぶなといっておろう。妾はその狐ではない。そして小僧、妾の意図を組もうなぞ100年、いや1000年早い。」

 

「もう流石に小僧という年ではありませんよ」

 

「妾からすれば50年などすぐじゃ。気づいた時にはもうよぼよぼになっとるではないか」

 

相変わらずだとため息をつく男。この方は人を突き放すような態度のくせに、その実さみしがりなのだ。兄が出ていった時も、妻・・・白乃が亡くなったときも、一番悲しんでいたのはアナタではないですか、なんて言い返したくなる。大事に思っているならもう少し出力の仕方を考えてほしいものだ。

 

「しかし、なぜ今になってここに呼んだのじゃ?もう何年か早く呼ぶこともできたろうに」

 

「兄の要望ですよ。従妹がいることはお互いが16になるまで秘密にしとこう、その方が面白いからと。まあ私は伝えていましたが」

 

「はぁ、そんなことじゃったのか」

 

「それにしても・・・驚きました。彼は、燈陽と生(・)ま(・)れ(・)た(・)日(・)が(・)燈(・)陽(・)と(・)同(・)じ(・)なんです。それに今日会ったばかりだというのに、随分と打ち解けている。まるで本当の兄妹のようだ」

 

「・・・恐らくそれは偶然ではない」

 

「! お狐様、それはどういう」

 

「あの小童、蒼夜と燈陽には魂(・)の(・)つ(・)な(・)が(・)り(・)がある。何か強い縁で結ばれておるのは確かじゃ。それがどんなつながりなのかまではわからんが・・・前世というやつかのう?」

 

「私には魂を知覚するということはできません。ですがそれが本当だとすると・・・」

 

同じ日に生まれてきた、魂につながりのある二人。それはまるで

 

「それではまるで、あの二人が双(・)子(・)のようではないですか」

 

「かもしれん。400年前の呪いはまだ無くなっていない、ということか。いや、むしろ」

 

「おぬしたちが最後だったのかもしれんな」

 

「というと?」

 

「案外、仲が良すぎてまた一緒に生まれてきただけかもしれんということじゃ。生まれてくる土壌として整っていたからここに生まれただけ、ということもあり得ようて」

 

それはなんとも、平和でいいですなぁ。なんて打って変わって気の抜けた返事を返す男に、娘の事なのだからしっかりせいと喝を入れる。いくつになってもマイペースで楽観的なのに、年を食って雰囲気だけ威厳が付いてきているのが困る。妾がしっかりと注意せねばと狐は思案する。

出ていったあやつの忘れ形見がどんなものかと見に来たが、なかなか見込みがありそうだ。明日、燈陽と一緒にもんでやるかのぉ。それにしても

 

「白乃・・・あの子が生まれた時、もう一人いた気がするなどと言い出した時は死の淵の幻想か何かかと思っておったが、おぬしが正しかったな」

 

「お狐様?」

 

「なんでもない。陽坊(はるぼう)、夕飯の準備を手伝え。今日は少し豪勢にいくぞ。腕によりをかけてな」

 




お狐様
土御門家に住まう狐。神社での信仰、畏れによって生まれた呪霊であるが、あり方は精霊に近い。
いつからいたのかは定かではないが、両面宿儺を見たことがあるとの証言から1000年は存在していると考えられる。
術式によって人の姿をとっているが術式の詳細は不明。

土御門 陽明
土御門家の現当主。蒼夜の父である夜影の双子の弟。
術式は陰陽呪法であり、戦闘や占いなどやれることは多いが、それ故に使いこなすのは難しく、衰退の原因の一つ。

土御門 燈陽
現当主陽明の娘。東京校の分校である福岡分校に通う一年。母である白乃は燈陽が生まれた際に亡くなっているため、お狐様を母のように思っている。
術式は五行術式であり、火、水、木、金、土の属性を使い分け攻撃や式神の召喚を行う。
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