磁石みたいな呪力してたら厄ネタも寄ってくるんだが 作:トルへパ
目を覚ますと白い天井と日の光が飛び込んでくる。
「…知らない天井だ」
「何言ってんだお前」
「おわっ…いたのかびっくりした」
ベッドの周りには、伏黒と釘崎がいた。第一声がそれか、という顔をしている。ちょうどいい場面だからつい口走ってしまったんだ。すまん。
「そんな軽口が叩けるんなら大丈夫そうね。心配して損したわ。」
「医者の話によると一度両足がなくなってたんじゃないかって話だが。本当になんともないのか?」
「ああ、むしろいつもより調子がいい気がする」
肩をぐるぐる回しながら答える。そのまま起き上がりベッドから出て立ち上がると、いつもならふらつくところだが、しっかりと立てている。試しにその場で足踏みや片足立ちなどをやってみるが普通にできる。
というかかなり体が動きやすくなっているような?俺の様子を見て2人も驚いている。そこにちょうど家入さんがやってきた、何でここに?
「様子を見に来たんだが、目が覚めたか。…その様子じゃ気づいたみたいだから、単刀直入に聞く。蒼夜、反転術式覚えただろ?それも呪力全部使うぐらい全力で。」
「ええ、なんかコツ?みたいのがわかったんで」
俺の言葉に伏黒がやっぱりとつぶやく中、家入さんが続ける。
「お前は結構呪力量も多い方だし、効率があんまりよくなくても全部使えば両足を根元から生やすことはできる。でも、今回治ったのはそこだけじゃない。
「脳」
「全力でやったおかげで事故でやられていた部分が再生したんだよ。反転術式は元の形に戻すていう方が近いから、麻痺のある状態の期間の方が長いこの場合治んないかと思ってたが、今回はいい
「はぁ!?」
こうして俺のハンデを抱えた生活は突如として終わりを告げた。
そのまま病院を退院し、高専に戻ってきた。帰ってくる道すがら、虎杖がなくなったことを知った。やっぱり意識を失う直前に見たのは虎杖だったのか。
「虎杖は…長生きしろって。宿儺がお前に何かしてたけど大丈夫だとも」
伏黒は悔しそうな声で虎杖の遺言を伝えてきた。
最期まで俺のことを心配してくれてたのか。俺が強ければ、俺があの特級を倒せていれば、宿儺と変わることはなかっただろうに。頭の中で後悔ばかりが浮かぶ。
「俺がちゃんと足止めして脱出できていれば、虎杖が死ぬことはなかったかもしれない。ごめん」
誰も言葉を返さない。沈黙が続く。それを破ったのは釘崎だった。
「なんで謝んのよ。…アンタたち仲間が死ぬの初めて?」
「
釘崎はあったばかりの人に泣くような女じゃないというが、強がりだろう。
そんな中声をかけてくる人が一人。
「なんだ?お通夜みたいな空気じゃねえか」
「「禪院先輩」」
「禪院って呼ぶな」
現れたのは2年の一行だった。喪中だからシャレにならないと慌てている。まだ会ったことのなかった釘崎に伏黒が説明していき、パンダ先輩が本題に入る。
「3人には京都校姉妹交流会に出てほしいんだ」
「交流会って…2,3年メインですよね?」
「3年が停学中で人手が足りねぇんだよ」
なるほど。ん?ってことは相手には…
「もちろんやるだろ?」
先輩の問いかけに
「「やる」」 「嫌です…」
俺の答えに釘崎が睨んでくる。怖い。
「はぁっ!?さっき自分がちゃんとしてればとか言っといて逃げんのかよ」
俺がばつが悪そうに黙っていると、伏黒が何かに気づく。
「そうか、今京都校には…」
どうして俺が参加をしぶっているのか納得した様子の伏黒。そんな希望を続く言葉で先輩が粉砕する。
「いや、お前は強制参加だぞ?
「…はい?」
聞き間違いだろうか?俺の拒否権というか人権がガン無視されているような発言が聞こえたような。あんな化け物と戦うなんて冗談じゃない!「万が一危ない目にあっても自衛できるようにしなきゃね?」なんて名目で何回ボコされたと思ってるんだ!?
「去年は憂太がいたからどうにかなったが、今は海外だし勝つには対策がいる。幸い、お前ならよく知ってんだろ?」
恐怖で体がガタガタと震える。強くなりたいと思っていた数分前の自分を殴ってやりたい。その先は地獄だぞと。強くなるにも段階というものがある。いきなり大ボスと戦ってなんてのはただの生き急ぎだ
「? アイツどしたの」
尋常ではない震え方をする俺を見て釘崎が伏黒に問いかける。伏黒は真剣な顔をして答える。
「京都校には…3年に
電話をかける。数コール鳴った後、相手が電話に出た。
「蓮奈じゃ~ん。そっちからかけてくるなんて珍しいね。どったの?」
相変わらず間の抜けた反応である。コレが現代最強で自分の兄だと思うと何とも言えない気持ちになる。こっちは気が気じゃないというのに。
「どったの?じゃないわよ。そっちの一年一人死んじゃったんでしょ。ただでさえ上からの印象悪いんだから兄貴が目を光らせといてよ。とばっちりを受けるのあんたじゃなくて
最後の言葉だけ勢いがない。ホント過保護だよねーと思いながら兄は答える。
「大丈夫、大丈夫。チョーっとけがして両足なくなったりしたけど全快してピンピンしてるから。僕らの弟としては、あれくらい倒してほしかったけど」
その発言に蓮奈は怒りと同時に驚愕する。反転術式を身に着けたのか。あれだけボコボコにしてもできなかったのに?
「大怪我どころか死にかけじゃないっ!?…全快って、使えるようになったの?反転術式」
「そ。呪力を切り替えるってことみたいだ。前から
怪我してもすぐ直るからってお前は特訓って体でサンドバッグみたいにしてたけど。と心の中で続ける。蓮奈が安心したように一息ついた後、
「よかった。じゃあもう元気なのね」
「そりゃもう。おまけに体の麻痺も治って元気100倍さ」
体の麻痺まで治ったことに思わず言葉が詰まる。そこまで治ったのか。家入さんの話だと脳の治癒はアウトプットでは難しく、自分でできるようになったとしても感知するかは未知数だという話だったが…10年間いろいろと助けていたこともあり、それが必要なくなったと思うと、喜ばしいのと同時にさみしさが去来する。
「それと蒼夜は来月の姉妹校交流会に出るから。その時には元気な姿を見れると思うよ。」
思わぬ知らせに気分が高揚する。初めて会った時から割と一方的だった関係の変化の予感を感じ取る。もうアイツは泣き虫ではないのだ。私が引っ張りあげるまでもなく、私を置き去りにするほど強くなってほしいものだ。まぁ、抜かされるつもりもないが。
「そう…じゃあ、どれくらい強くなったかお姉ちゃんが確かめてあげないとね?」
フフフ…と不穏な笑い方をする妹に大丈夫かなぁと五条は心配になるも、まあ平気だろうと考えないことにした。
「あ、そういえば」
「? なに」
兄の何か思い出したような声色に蓮奈は警戒レベルを引き上げる。こういう時の兄は大抵ロクなことを言わないと思っていると
「今回の件では誰も死んでない。宿儺の器こと虎杖悠仁君は、表向きには死んだことになってるけど生きてるよ。もしかしたら何か頼むかもしれないからそん時はよろしくね~」
「は?ちょっとそれどういうこと」
「じゃあ切るよ。生徒への指導で忙しいんでね」
「ちょっと待てやバカ兄貴、まだ話終わってな…ああもう!またこういうことがあったら承知しな──────」
スマホの向こうから怒号が飛んでくるのも構わず通話を切る。
「おー怖い怖い。なんでこう当たりが強いのかねえ僕の妹は」
五条は迷惑をかけるな、割を食うのは生徒だという言葉を思い返し
「いわれずともさ。そういうのにやられないよう育てるのが僕の目的だしね。ちゃんとやらないと
五条の通話が終わるのを待っていた虎杖が声をかける。
「先生、何だったの今の?むこう相当怒ってたけど?」
「なんでもないよ。可愛い妹とのじゃれあいさ」
先生って妹もいたんだ。っていうかじゃれあいっていうには本気で怒ってそうだったけどとつぶやく虎杖。五条は手をパンと叩いて
「そんなことは置いといて、授業を始めるよ悠仁。最強を教えてあげよう」
蒼夜の呪力は乙骨の半分くらい。足が悪かった間は疑似的に天与呪縛のようになっていたためさらに呪力が増えていた。彼がハンデを抱えながらやってこれたのはこの要因も大きい。
五条蓮奈
京都校3年生
五条先生とは腹違いの妹。弟である蒼夜をかわいがっている。
無茶苦茶なことをする兄の尻拭いをすることも多く、密かに五条家の人間で支持している人は多い。嫌がらせとして割を食う東京校の面々を心配している。
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