磁石みたいな呪力してたら厄ネタも寄ってくるんだが   作:トルへパ

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#5 特訓で強くなるのって簡単じゃない

 

「んじゃ特訓始めんぞ」

 

禪い、真希先輩の合図で特訓が始まる。3人とも近接が弱いためそこを鍛えるらしい。釘崎はパンダ先輩に投げられている。自分はどうするのか真希先輩に聞くと

 

「お前は…まず体術とかやる前に体の動かし方を覚えるところからだな。いくら足が治って普通に動けるようになったって言っても、それはあくまで身体(ハード)の話。実際に操作する思考(ソフト)は足が悪い時の動きが前提になってるから、まずはどこまでできるか知ることだ。まずは狗巻とランニングとかやって来い、何やるかはそれ見て決める」

 

「わかりました」

 

確かに今の俺ができることがわかってなかった。それじゃやりようがない。何事もまずは基礎から、楽なことはないってことだな。そう考え狗巻先輩と走り始めるって早いな!!追いつくことすらできないんだが。俊足だったとは知らなかった。

 

そうしてゼェゼェ言いながら走っていると伏黒が来た。どこか行ってたんだろうか。新しい武器の模索で色々試すらしい。

 

こうして交流会に向けた特訓の日々が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

「だいぶ動けるようになってきたな」

 

ボコボコにされてるんですけど

 

特訓を初めて2週間ほど。夏も本番といった感じで日差しがすごい中、毎日毎日走り込みで嫌でも慣れて来る頃、それだけじゃ退屈だろうとパンダ先輩や真希先輩との体術の特訓も始まったのだが…まぁ手も足も出ない。

体のいたるところがあざだらけだ。というかあざになっていないところの方が少ない。パンダ先輩はまだ加減してくれてるが、真希先輩はそういうのが一切ない。苦手な体術はもちろん、武器なんてやってこなかったからかなり大変だ。

そもそも今まであんまり攻撃を躱すって意識がなかったことに気づいた。攻撃が目で追えても回避行動が間に合わないのが基本だったし、呪力量が多いので強化すれば大抵受けきれると思っていたのだ。こればかりは癖なので気を付けなければ。

 

近接戦の武器としては刀を選んだ。オーソドックスな武器だし、シン・陰流との相性もいい。腕力には自信あるし。そう思い素振りしてると真希先輩が声をかけてくる。

 

「どうだ、少しは慣れたか?」

 

「全然です。刀って簡単かと思ってたのに」

 

 「そりゃ武器なんてどれも一筋縄じゃ行かねえよ。お前は今みたいに力任せに降ればいいと思ってるだろうが、無駄な力は抜いて振るんだよ刀ってのは」

 

「うっ」

 

図星である。まだまだ頑張らなければならないようだ。そんな風に思っていると真希先輩が思い出したように

 

「そういえば蒼夜、武器としては弓を使うって言ってたよな。ちょっと引いてみせろよ」

 

「わかりました、道具とってきます」

 

「んじゃその間休憩にすっか。恵、野薔薇、休憩だ!お前ら飲み物買ってこい」

 

「パシるんかい」

 

 

 

 

 

 

戻ってくると先輩たちが集まっていた。どうやら見物客が増えたらしい。

 

「バッチリ当てろよー」 「しゃけ」 「お手並み拝見だな」

 

今立っているのは校庭の端、的は反対側の端。距離は大体60mくらいだろうか。眼はかなりいい方なのでこれくらいはくっきり見える。的は誰かが捨てた空き缶である。誰だポイ捨てしたのはと思うが有り難く使わせてもらおう。足を開き、矢を番え、弓を一定の高さに持っていき引き絞る。聞き絞るたび、ギチギチと異音がする。

 

「こいつの引いてる弓、弓力40kgあるぞ…」

 

「まじか、それ軽々引いてんのやべえな、呪力強化なしだろ?コワ」

 

「しゃけ」

 

先輩たちの反応をよそに狙いを定める。あとはしっかり引ききれるのを待ってから手を放す。放たれた矢は真っすぐ吸い込まれるように空き缶に向かっていき─────

 

ドォォォーーーン!!!

 

あたりに轟音が響き渡る。あれ、もしかしてやりすぎたか?しかし着弾地点は特に何か壊れた様子はない。空き缶に穴が開いているだけだった。

俺が心配になっていると、先輩たちが何やら真剣な顔をしている。

 

「今の音…」

 

「あいつら遅くないか?…そういえば今日だったよな、京都校の学長来る日。もしかして」

 

「来てるっていうのか、真依が?」

 

音のした方を見ると、塔の方で誰かが戦っているのが見えた。あれは…ゴリラみたいなガタイのいい奴と、伏黒?あっちで何が起きてるんだ。

そう思いながらもとりあえず矢を構える。殺すことがないよう先っちょにボールを付けたもので狙いを定める。動きが止まった、今だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本気が、まるで、感じられん!」

 

「そこまで言うなら、やってやるよ」

 

東堂と伏黒は一触即発の状態だった。そこに

 

動くな

 

狗巻の呪言によって動きを止められた東堂に、蒼夜の放った矢が追撃を入れる。さすがに遠距離からの高速狙撃には反応できなかったのか腹に直撃し吹き飛ばされている。

 

「ぬぅ!?(何という威力!飛んできた方向からして校庭あたりか。弓を使うやつはいなかったはずだが、なかなかいいのがいるな)」

 

無防備な状態で直撃したにもかかわらず、東堂は大したダメージを受けた様子がない。その様子に伏黒がドン引きする中、パンダと蒼夜が駆けつける。

 

「何、やってんのぉ!」

 

「伏黒!無事か!(頭から血が、かなりボコられたみたいだな)」

 

伏黒に駆け寄り呪力を反転し治療を試みる、が。

 

(やっぱりだめか。負の呪力と正の呪力はくっつくから治療できないかとと思ったが、かけ合わせて生み出してないから出力は通常と変わらないし、くっついてもすぐ霧散するしで効率が悪すぎるな。アウトプットができるようになればまた違うかもしれないけど)

 

正の呪力を扱えるようになってから蒼夜が検証した結果明らかになった研究成果として、反転した呪力特性は今までの反発と異なり、負の呪力と引き寄せあう性質を持つ。つまりN極とS極の関係性であり、起こる場面は少ないだろうが正の呪力同士の場合負の呪力と同じように反発しあうということがわかった。

 

伏黒が俺の手を退け立ち上がる。そのままゴリラ野郎の方をにらんでいるためつられて視線を向ける。ゴリラ野郎が矢をこっちに向けながら話しかけてくる。

 

「これを撃ったのはお前だな?俺は京都校3年の東堂葵だ。一年、名前を名乗れ」

 

「…五条蒼夜だ」

 

「五条…そうか連奈の弟か!なるほど強いわけだ。ところで、どんな女がタイプだ?俺は(ケツ)身長(タッパ)がデカイ女が────」

 

「なんで性癖答えなきゃなんねぇんだ、伏黒ボコしといて言うことねぇのかよ先輩」

 

「いいから答えろ、性癖には人間性のすべてが出る。これが退屈な奴は詰まらんのだ。ガッカリさせないでくれ」

 

(何なんだこの人…伏黒をボコしたのもこれが理由なのか?っていうか性癖って、この人の匙加減じゃねえか)

 

そうは思いつつも有無を言わさぬ雰囲気に答えるしかなさそうだ。

俺の好みのタイプ、う~ん…

 

「…俺を引っ張ってくれるお姉さんタイプ」

 

「随分と主体性がないな。術師なら我を通せ」

 

「うっせぇなアンタが言えつったんだろ」

 

ああもう、なんで文句言われんだよ。はぁ、恥ずいわ

 

「さて、聞くべきことは聞いた。思ったよりは退屈しなさそうだが、乙骨にも来いと伝えとけ」

 

パンダ先輩に帰れと言われると、満足したのか帰っていった。嵐にでもあった気分で、もう二度と会いたくないと思った蒼夜だった。なお、今は知る由もないが、東堂葵が交流会で超親友(ベストフレンド)を得て、さらにキモくなることを、彼らはまだ知らない。

 

こうして特訓を積み重ね、ついに交流会当日を迎えることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げろ順平!!」

 

(無為転────)

 

ピシャーーーーン!!!!

 

真人と虎杖が向かい合う中、術式を発動し順平を弄る真人を遮るように、場違いな()()が響き渡った。強烈な音と光で両者が状況を理解できない中、眼を開けるとそこに順平の姿はなく、大量の血痕だけが残っていた。

 

 「そんな、順平、順平ーーーッ!!!」

 

順平を助けられなかったことで悲痛な叫び声を上げる虎杖に笑みを隠そうともしない真人は、胸中先ほどのことの疑問が渦巻いていた。

 

 (今のは一体…何が起きたのかさえ分からなかった。順平には術式を使ったし腕も千切れてるから死んでるとは思うが、七三術師が助けたのか?いや、だとしても姿がわからないほどのスピードが出せるとは思えない)

 

真人は今の現象に疑問が絶えない中、救えなかった無力感に打ちひしがれる虎杖を見て、思考を虎杖を弄ぶ方に切り替える。どうせなら虎杖に順平を殺させたかったが、まあ死んでいるのだからさして問題はない。

助けを乞う虎杖を嗤う宿儺と真人に怒りをあらわにした虎杖は

 

ブッ殺してやる

 

「祓うの間違いだろ、呪術師」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しまった、術式が発動する前に助けたかったけど、間に合わなかったか」

 

里桜高校の校舎から1キロほど離れた場所で、腰ほどまである白髪を靡かせながら、五条麗奈が姿を現す。あたりは通ってきた道を示すようにそこだけ地面が焼け焦げており、バチバチと()()()()()()()()。彼女はわきに人を抱えており、その体からは血が流れ右腕がない。

 

(これ助かるかなぁ…七海さんの話だと魂に干渉して弄る術式だって話だし)

 

悟から、七海さんに虎杖悠仁(宿儺の器)を預けたからなんかあったらサポートよろしくとだけ連絡され、伊地知さんからの電話で飛び起きて大慌てで来てみれば特級に手をかけられているものだから驚いた。おかげで声をかける暇すらなく離れてしまった。

 

「もうちょっと連絡が早ければなぁ。援軍に行きたいけど、この子一刻も早くどうにかしないと」

 

どうしようかと思っていると、そういえば今年の一年にこういう事態に向いてそうな術式を持った一年(新田)がいたことを思い出し、再び姿が消え雷鳴だけがあたりに響き渡る。

 

 

 

五条麗奈 一級術師。五条悟を除き長年最速の術師と呼ばれた禪院直毘人をして神速と評された天才。

その異名を─────鳴姫

 

 

 

 

 

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