俺の名前は明智圭一郎。小林の良さは俺だけが知っている。   作:旧姓小林

4 / 4
諸々の情報がようやく開いたので。


第4話

(そろそろ、やんないとなぁ)

 

 いつもの様に部室には運動部の活気と心地の良い風が肌を撫でる中、圭一郎はノルマである部誌に手をつける。

 

(今日は小林も来ないし、一気に進めるか)

 

 ペンを手に取って、原稿用紙の上を走らせる。

 昨日見つけたミステリー小説がとても良いモノだったため勢いも良い。

 誰も来ない部室は作業効率も良く、趣味で改造したこの空間で過ごす時間が至福のひとときだった。

 

「ふぅ……あちっ!」

 

 作業を一段落終えて、コーヒーを淹れて嗜む。

 舌を火傷しそうになりながら、一つの違和感に気付く。

 

(こういう時、誰か冷たいモノを出してくるやつが居た気がするんだがな……小林ではない誰か、がな)

 

 その違和感をどうにかできるのなら、モヤモヤしたままにはならなかっただろう。

 モヤモヤする原因をホワイトボードに書き殴って整理してみても答えは出ない。

 

「もう閉めるか」

 

 部誌を書き終えた圭一郎は帰り支度を始める。

 

(小林ってこういう時に居るとちょうどいいんだよなぁ)

 

 来たら来たで、アレコレ思うことはあれど、一人よりかは賑やかで退屈しない。

 部室の鍵を返却した後に下校中、ふと甘いものを口にしたくなり、パティスリーに立ち寄った。

 

「いらっしゃいませ」

「どうも。チーズケーキと──」

「ブラックコーヒーですよね?」

 

 同じくらいの年のパティシエールに注文を伝えようとすると、彼女に注文を見抜かれてしまう。

 意外そうな表情をする圭一郎を見て、思わずパティシエールが笑みを溢す。

 

「ごめんなさい。前に来てくれた時にチーズケーキとブラックコーヒーのセットを頼んでゆっくり味わっていたのを覚えてしまっていて……」

「なるほど……」

 

 前回来たのはいつだったか覚えていないが、どうやらパティシエールは覚えていたらしい。

 

「よく覚えてましたね」

「一回でも足を運んでくれたお客様ですから……テラス席、空いてますよ?」

 

 どうやら座る席まで覚えられていたらしい。

 常連を名乗れるほどの頻度で足を運んでいるわけではないだけに、少し恥ずかしい気持ちになりながらも、圭一郎はテラス席に座る。

 

(一人でのんびりするのも嫌じゃないんだが……どうにも落ち着かんな)

 

 やっぱり何かが足りない寂寥感に襲われる。

 さほど時間が経たないうちに注文したセットが届く。

 

「あちっ……!」

 

 案の定、舌をコーヒーの熱で焼いてしまう。

 コーヒーの温度が下がるまでチーズケーキを味わいながら待つ。

 

(そういえば、さっきの店員。名札に帆羽ってあったが……なんだ。初めて見る名前じゃない気がするな)

 

 ここ最近、身の回りの謎が増えすぎる。

 

「今度は小林も連れてくるか……」

 

 別に、一人が嫌な訳ではなく、メニューにみくるの好物のミルフィーユの名前が見えただけのことだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

タイムスリップしたら幼馴染の距離感がバグった件(作者:大麦)(原作:名探偵プリキュア!)

Q.小さい頃からずっと一緒でスパダリムーブしがちな年上の幼馴染と一緒にタイムスリップしました。どうすればいいですか?▼A.落としましょう。そうすればお互いに(精神的にも)離れられなくなります。


総合評価:1287/評価:8.28/連載:5話/更新日時:2026年07月05日(日) 17:00 小説情報

名探偵プリキュア! 〜A Memoir White〜(作者:秋葉ばっこ)(原作:名探偵プリキュア!)

 まことみらい市で暮らす少年、工藤(クドウ)新二(シンジ)はバイト生活に明け暮れていた。▼ なんてことはない日常を過ごす傍ら、名探偵プリキュアと怪盗団ファントムの戦いに巻き込まれ、ひょんなことから彼女たちの『おとも妖精』になり行動を共にする羽目に。▼「こんな俺にも、決して譲れないモノってのがあるんだよ」▼ 2027年の未来からタイムスリップしてきたという、明…


総合評価:476/評価:8.06/連載:27話/更新日時:2026年06月16日(火) 20:00 小説情報

名探偵と死なない少年の話。(作者:HakuGozira)(原作:名探偵プリキュア!)

▼ ひょうんな事から2026年から1999年のまことみらい市と呼ばれる場所にタイムスリップした少年ユウトは、右も左も分からない無知の中で、唯一与えられた能力は不死。▼ 少年は、不死の力で自分を救ってくれた二人の少女を救う為に頑張るお話。▼ 因みに、体を張って彼女達を助け続けたユウトは見事に多数の少女の脳をこんがり焼いた状態とする


総合評価:40/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年08月02日(日) 09:59 小説情報

帆羽くれあヤンデレ概念(作者:あわわ〜ぜ)(原作:名探偵プリキュア!)

▼普段は清楚で大人びたお姉さんキャラが、好きな人にだけちょっと重めの愛を向けてくれる。そういうのってなんかいいよねって話。▼普通に一発ネタです。


総合評価:838/評価:9/連載:7話/更新日時:2026年08月02日(日) 00:23 小説情報

魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます(作者:異星人アリエン)(オリジナル現代/冒険・バトル)

『魔法少女マギアイリス』。それは人気がすこぶる高いアニメとして、名を馳せていたアニメタイトルであった。▼話としては、至極単純世界征服を目指す組織《ディスナンド》が、ミラクルパワーとかいう力を操る魔法少女によって倒される。そんな分かりやすい物語。▼だけど、そんな世界で生きることとなった身としてはたまったものではない。▼そんな世界に転生した男、須佐八雲は男である…


総合評価:12855/評価:8.05/連載:41話/更新日時:2026年08月03日(月) 12:02 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>