【五感を支配する魔法『■■■■■■■■■』】   作:柿の種研究部

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難産でした、部下(新1年生)の教育の方で忙しいのと大会も近くなってきたので投稿速度が遅くなります

字数が少ないって?
シテ……ユルシテ(´;ω;`)


第4話︰修正された世界

 

 

 

 

 

 

 

勇者ヒンメルの

死から27年後

中央諸国

グレーゼ森林

 

 

何の変哲もない静かな森での正午

 

様々な木々の枝に小動物たちが今日の食料を採りに出かけ、川では偶蹄目などが耳を後ろに向けながら水を飲む

 

すると、ドォン という音とともに地響きが辺りに木霊し、その音は山に跳ね返ってやまびことなって音を何回も広げる

 

その震源地では至る所に穴が開き、土埃が舞う

 

そこに居たのは、白髪のエルフ〈フリーレン〉と濃い紫色の髪を背中まで伸ばした少女〈フェルン〉だ

 

「防御魔法は確かに強力だけど魔法の消費が大きい。広範囲の展開を続けたら数十秒で魔力切れになるよ」

 

2人は森の中を並んで歩いている

 

「着弾の瞬間に部分的に展開させるのが正解と言うわけですね」

 

フェルンは手のひらに頭ほどの大きな六角形のバリアを浮かばせる

 

「そうだね」

 

目の前に川がせせらぎ、丸太が橋として向こう側と繋がっている

 

2人は丸太の不安定な足場を手を繋ぎながら渡る

 

「防御魔法の練習ばかりですね」

 

フェルンは不満そうではなくとも、少し疑問を持って問いかける

 

それもそうだ、魔法使いは派手に魔法の撃ち合いをしているのが大衆の一般的な偏見である

 

間違ってはいないが、魔法使いの戦い方の性質的には根本は少し違う

 

「生存率に直結するからね」

 

結局のところ、魔法使いに高速で迫り来る近接武器や高速の魔法を回避する事はほぼ不可能なため、ガードを磨くことが1番強くなるのである

 

「確かに、防御魔法ひとつでほとんどの攻撃魔法が防げますからね。強力すぎて不思議です」

 

その言葉を聞くなり、フリーレンは何かに気づいたようにフェルンをジトっと見る

 

「フェルン、渡した魔法史の本読んでないでしょ。魔法は実践だけが大事な訳じゃないんだよ」

 

フリーレンが向こう側で手を引いてフェルンが草に降りる、フリーレンが言った事などあまり耳には入っていないようだ

 

それを見たフリーレンは ムー とする

 

「やっぱり寝る前に読み聞かせてあげないと駄目か……」

 

その目は身長が高くなり精神も大人になったフェルンではなく、まだ幼いフェルンを見ているようだった

 

それだからなのか、フェルンが またか…… という表情になる

 

話の内容に限らず、こうなることは日常茶飯事なのだろう

 

「自分で読みます」

 

子供じゃないんだから…… と他愛もない会話を繰り返しているうちにあるひとつの村にたどり着く

 

フェルンはまた変な魔法の収集に来たのかと問うたが、今回は違うらしく、野暮用があるらしい

 

なんでも、一度来たことがあるんだと

 

 

 

「クヴァール…」

 

その質問に答えるように、案内係の老人が口を開く

 

()()の賢老、クヴァール……。

80年前にこの地にやって来て悪逆の限りを尽くした魔族です。

それを勇者ヒンメル様御一行が討伐してくださったのです」

 

「だけどその後、()()()()()()()()()が起きたみたいだから原因を見つけに来たんだけど。なんで私が来るって知ってたの?このことは誰にも知らせていないよ」

 

その疑問に老人は懐かしいように答える

 

「30年ほど前までヒンメル様が毎年のように村を訪れておりました。年々湧き出てくる魔物の退治のためだそうで」

 

「相変わらずお人好しだ」

 

薄れながらも記憶にしっかりと残っているヒンメルの姿を思い浸るようにフリーレンは言う

 

「フリーレン様のこともお話しておりました。様子も見にこない薄情者だと」

 

老人は記憶の背景に 冷たいねぇ と言い合っているまだ少し若い老人と禿げてしまったヒンメルを思い描く

 

「悪かったね」

 

バツが悪そうにフリーレンが言う

 

「でも、村を見捨てるほど薄情ではない、自分が死ぬ頃にはやってくる。そう仰っておりました」

 

「そう」

 

そうやって森を歩いて抜けた先にあったのは、ただ広く、それでいて凸凹とした地形の草原だった

 

「随分とデコボコした地形ですね」

 

「クヴァールとの戦闘があったところだからね」

 

その不規則で奇妙な大地は、フェルンに謎の恐怖を抱かせた

 

老人はその反応に慣れているのか、ただ前を見るだけである

 

「だいぶ大きな魔力反応が向こう側にあるね、明日には片付けよう」

 

 

場面は移り変わり、宿

 

辺りが暗くなる中、フリーレンとフェルンの2人は明日のために布団に入ってはいるが、まだ起きているようだ

 

フェルンは布団に転がっていたが、何を思ったのか体を起こし、フリーレンに話しかける

 

「気になって魔法史見てみたのですが、この最も魔王に近かった魔族って……」

 

「そう、それがクヴァールだよ」

 

「【人を殺す魔法(ゾルトラーク)】奴の開発した史上初の貫通魔法。人類の防御魔法はもちろん、装備の魔法耐性も無視して貫通し、容易に人体を直接破壊する。

この地方では冒険者の6割、魔法使いに至っては9割が【人を殺す魔法(ゾルトラーク)】によって殺されたと言われている」

 

そのとんでもない経歴からフェルンの顔から恐怖がでてくる

 

「そんなの強すぎるじゃないですか」

 

フリーレンはいつも無表情であるが、今回は顔を少し顰める、それはかつての死地を思い出したのか、はたまたあの日の異変を思い出したのか、あるいはその両方だろう

 

「そう、人類の魔法と違って術式展開をする必要がない癖にあらゆる地点から放出が可能で、戦士でも死ぬ覚悟でやっと隙が作れるかなぐらい、しかもクヴァール自身の魔力探知の精度も異常に高い」

 

それを聞いてフェルンの顔はもっと青ざめる、魔法使いの唯一の弱点である魔法展開までの隙すらないなら、それは魔法使いの領域すら逸脱しているように感じたからだ

 

「そんなの……フリーレン様はどうやってクヴァールを倒したんですか?話を聞いた限り、とても倒せないと思うのですが……」

 

フリーレンは黙り込む、次の言葉をだそうにも上手く表現ができずにいるようだ

 

「……勝てなかった、勝てるはずがなかったんだ……だけど……」

 

「だけど……」

 

フェルンはその先の言葉に期待する。

それもそうだろう、そんな魔王に匹敵するほどの魔族を倒したフリーレン達がどんな手を使ったのかは誰でも気になる

 

 

「…………戦闘中に大きな隙ができたんだ」

 

「大きな…隙ですか」

 

フェルンは驚く、それはフリーレンの奥義か何かを使って辛勝したのだろうと思っていたからだ

 

いや、それ以前に驚いたというのも一因だろう。

なんせ、クヴァールのような強敵相手がそう簡単に大きな隙を見せるはずがないと思ったからだ

 

「魔力制限による不意打ちですか?」

 

「いや、それは寸でのところで躱された」

 

「それじゃあ一体……」

 

フリーレンが本を閉じて、過去の記憶を振り返る。

何十年経った今でも、それは焼印のようにフリーレンの記憶の奥から蘇ってくるのだ

 

「まるで居ないかなように扱われた、いや……あれは多分居ないと錯覚していたのかな?」

 

「精神操作魔法ですか?」

 

「いや……私でも魔法による干渉は感じなかった、あるとするなら、呪いかな」

 

「呪い……ですか?」

 

1日でこんなにも分からない単語を聞いたのは、フリーレンの弟子として魔法術式展開について教わった時以来だな……とフェルンは思う

 

「そういえばまだ説明してなかったね、呪いっていうのは魔族や魔物が使う人類の魔法技術では解析不能な魔法のことだよ。

魔族が人類の魔法と違って自分で作った自分だけの魔法を使うのは言ったよね」

 

「はい」

 

「そういった《呪い》なんかは探知魔法による逆探知とか、かかってる人達の解析なんかは視覚的にわかる魔法以外は気づけないんだよ」

 

「そうなんですね」

 

「だから……クヴァールの事を妬んだ魔族が、クヴァールにナニカをしたというのが現実的なところかな」

 

「そもそもクヴァールに精神操作魔法をかけられるものなのですか?」

 

「そう、そこなんだ。あのクヴァールなら精神操作魔法を食らって気づかなかったことは考えづらいからね」

 

「それは……」

 

「分からない」

 

フェルンが言葉を続ける前にフリーレンがそう遮るように話す

 

「魔族は従属関係になることはあっても基本的に相棒とか恋人とか他を信じきることはしないから、一番考えられるのは…」

 

「クヴァールでも気づかないほどの精神操作魔法を持った魔族がいるってことですか?」

 

「まぁ、そうなるね……でも、もしそんな呪いがあったとしても何かしら発動条件があるはず……

実際七崩賢の魔族にも似たようなのがいるしね。

とにかく、そんなこと考えても仕方ないから明日に備えて早く寝るよ」

 

そう言ったフリーレンは本をポイッと枕元に投げ、布団に被さってしまった

 

「もう、本は読んだら片付けないと」

 

発言が完全にお母さんのフェルンがフリーレンの顔の横にある魔導書を机に置くと、ランプの灯りを消してベッドに潜る

 

「(魔王の魔力感知に並ぶ魔族の魔力感知を掻い潜る程の精神操作魔法……一体どのようなものなのでしょうか……)」

 

目をつぶりながら考えた事は、睡魔と共に脳の中に消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇者ヒンメルの

死まで■■年

■■■■

 

 

 

「それが私の思い描く理想像だ」

 

何処かも分からない建物の中、2つの影がそこにあった

 

壁に設置されたロウソクは木で作られた壁を優しく照らし、部屋に循環する僅かな風によって炎が揺れる

 

多くの机や椅子が並んでいたり、半円の細長い机と色とりどりの瓶が壁の棚に並んでいるところを見るに、ここはきっと酒場かなにかだろう

 

だが、夜だからなのか賑わっているであろう空間は冷気を纏って静かにアルコール臭を漂わせる

 

2人は円形の机の対面に座っており、その中心には銀に装飾された華やかな燭台にロウソクが乗り、その炎を絶やさずにいる

 

「ほんまや、確かに理屈は通ってやんな」

 

少し特徴的な喋り方をしているのは、白髪の好青年である

 

顔は特徴的な細い糸目と薄ら笑いが見える口、見ただけでわかる飄々とした態度は、まさに悪戯好きの化け狐であった

 

「ええで、その話乗ったわ」

 

「フフ……君なら理解してくれると思っていたよ」

 

対面に座るは、茶髪に四角いメガネをかけたおよそ30代に見えるイケ男、不気味ながらも穏やかな雰囲気を漂わせているが、中身はどす黒い感情が渦巻いている

 

「そんなん決まったら、最初は何すんねん」

 

「そうだね、最終的な目標はごめんね、まだ見せられないかなだけど、その障壁になる人物は排除しておきたい」

 

「排除……ほな、権力者とかか?」

 

「いや、そういう奴らは支配した方が都合がいい」

 

「そしたら、アズールはんの支配が効かへん、しかもまぁまぁ影響力ある人間ってことやな」

 

「そうだね、()()()()2人はもう支配下だし、帝国に関しては細工済みだ」

 

「もうそんなにできてるんか、ほんま大したもんやな」

 

「だから1番の障壁は……生ける魔導書大魔法使いゼーリエかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美しきを愛に譬ふのは

 

愛の姿を知らぬ者

 

醜きを愛に譬ふのは

 

愛を知ったと驕る者

 

 

 

 

()




アッアッアッアッ こんなに沢山の人たちに読んで貰えるなんて……トレッビアァァァン!!

すみません月山が出てしまいました

感想、評価、誤字報告、バンバンください!


追記︰コメントでも来てたのですが、クヴァールが早めに死んだことにより、ゾルトラークが人類の一般攻撃魔法として浸透しなくなるのではないかというのが来てましたが、
クヴァールが死んだあと、天才茶髪の眼鏡が頑張って開発したことにします

別に誰とは言いませんよ誰とは
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