綾小路の友達   作:初期小路おもろすぎて

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【 高度育成高等学校データベース 】

・氏名 沙羅式千聖

・学籍番号 ──────────

・部活 無所属

・誕生日 02月01日


『評価』

─学力 B+
─知性 B
─判断力 B
─身体能力 B+
─協調性 D


・面接官のコメント

平均して高い水準の能力を有しており、学力と身体能力は同年代の中でも優秀といえる。
能力面だけ見ればAクラスであってもなんら問題ないものである。

しかしながら、面接の中でも感じさせる程協調性は低く、それは本人も自覚している。
今後、学園生活の中で他者と触れ合い、その欠点を改善していくことを期待する。

以上を以て、Bクラスへの配属とする。




協調性はDです。きよぽんと同じ。やったね!……はい、流石に今はもう少し高いです。これは入学前の数値(表向き)ですので。
つまり、元の社交性は綾小路君と殆ど変わりません。




【挿絵表示】


ちゃっかり主人公君も描きました。適当に顔面だけなんで、自分のイメージで見たい方は見ないことをオススメするぜい


3.

 

 

 ◇

 

 五月一日、朝。月の始まり、普通の学校生活を送っていれば特段何もない筈であろうこの日は、俺達高度育成高等学校に通う生徒からすれば重要な日だった。

 

 越してきて一ヶ月も経てば自分の部屋にも慣れたもの。

 いつも通りの時間に起き、スマホを確認する。今月振り込まれた金額は────七万二千ポイント。

 

 やはり、と言うべきか。貰える額は随分と減った。いや、学生がこれだけの額を月の初めに貰えると考えれば十分破格なのだろうが。

 

 さて、まずは確認だ。ようやく使うのにも慣れてきた端末で連絡先を持っているクラスメイトに確認をとる。もちろん振り込まれた金額についてだ。

 

 結果は全員同じ。とすれば、月初めに配布されるポイントの額はクラス全体で共通と考えて良さそうだ。

 

 では次。他のクラスの金額を確認するとしよう。これが分かれば、各クラスが序列順であるという俺の考えが確固たるものになる。堀北生徒会長との会話で殆ど確定ではあるが、やはり答え合わせは必要だ。

 

 まずはDクラス。ここは清隆が居る。あいつなら、この時間であれば既に起きている筈だ。そう教育されてるからな。

 メッセージを飛ばせば数秒で通知音が鳴る。……起きてたとしても早すぎるとは思うが、一先ず気にしない方向で行こう。

 返ってきた返事によると、Dクラスの今月の配布分はゼロポイントらしい。そんなことあるか? 

 

 およそ普通とされる様な授業態度をとっていれば、十万からは減るとしてもゼロになることは有り得ないと思っていたが……。まあ良い。次だ。

 

 順番でいけばCクラス。Cクラスに知り合いは居ただろうか。俺は交友関係が広い訳ではないし、これまで特段他人のクラスについて気にしてこなかった為、関わった人間の中でCクラスが居れば良いのだが……、っと。この子、確かCクラスじゃなかったか? 

 

 椎名(しいな)ひより。清隆と図書館を見に行った時に知り合った文学少女だ。どっちかと言うと清隆とよく話していた為、ついでといった形で連絡先は交換していたんだが、ここは有効活用させてもらおう。

 

 椎名さんからの返事によれば、Cクラスに振り込まれたポイントは四万九千ポイント、と。なるほど。どうやらCクラスとDクラスでは生徒の出来にそれなりの差があるらしい。

 

 さて、最後Aクラスだが……。っと、もうそろそろ登校しないと間に合わなくなるな。クラス全体で評価が決まると分かった今遅刻なんてすれば袋叩きに遭う。面倒事は避けたい。

 

 それに、CクラスとDクラスのポイントを聞けただけで十分だ。やはり、各クラスはAからDまでで序列順に並んでいる。もちろん、Aが一番上で。

 

 ふむ……。つまりは、だ。Aクラスは出来がよく、Dクラスは不良品、という認識で良いはず。

 この学校には謳い文句として希望する進学、就職先にほぼ百パーセント応えるというものがある。しかし、考えてみて欲しい。学校内、それも一つの学年の中ですら不良品というレッテルを貼られる人間に、希望した進路が与えられるだろうか。

 

 否だ。少なくともあの謳い文句はDクラスには適用されないと思われる。いや、最悪の場合は────

 

 ───おっと、考えを巡らせるのも悪くないが、そろそろ本当に時間がマズイ。恐らく朝のホームルームか何かで種明かしはされるだろうし、一先ずもういいか。

 

 いつも通りの慣れた手つきで弁当を二人分作り、なるべく見た目を崩さない様に鞄の底の方に入れ、学校へと向かう。

 

 因みに、なぜ二人分かと言われれば、一之瀬さんの分だ。

 というのも、清隆との弁当作り対決以降、俺が料理にハマってしまいのめり込んだ結果、今では随分と上手く料理を作れる様になってしまったのだ。そのため、あの日審査員をしてくれた一之瀬さんへのお礼として、一度だけ弁当を作り渡した訳だが……。まあ、どうやら気に入ってしまったようで、その日からポイントを交換条件に弁当作りを頼まれている。

 

 ポイントは貰えるし、元より俺の分はこれから作るつもりだった為問題は無い。練習にもなるし、申し訳ないとは思いつつ、夜に作って余ってしまったおかずの処理もさせてもらっている。つまりはWin-Winの関係というやつだ。

 

 しかしながら、弁当一つであそこまで喜ばれるとは。やはりまだ高校生に対する認識が甘いか……? 

 

「沙羅式、おはよう」

 

 と、考えていれば後ろから声がかかる。足を止め振り返れば、神崎が片手をあげながらこちらに近づいてきていた。

 

「神崎か。おはよう」

 

 慣れたものだ。同じようにこちらも挨拶を返し、そのまま二人並んで歩き出す。

 

「それで、先程のメールだが」

「ああ、ちょっと評価の基準をね。みんな同じポイントだったし、評価の単位はクラス全体、と考えていいかな。学年全体の可能性もあったけど、他クラスの知り合いに聞いたらそれぞれのクラスで貰えてるポイントは違ってたし」

「なるほど。……考えると、恐ろしいな」

「何が?」

「こう言ってはなんだが、沙羅式がだ」

「あ僕が?」

「ああ。初日であそこまで学校のルールを理解したお前が、だ」

「そういうものかな?」

「少なくとも俺はな」

 

 ふむ、やっぱり初日のあれは失敗だったなぁ。どう考えても目立ちすぎた。入学初日、新生活の始まりってことで浮かれてた。

 

 俺の予想が正しければ、これからはAクラスの座の奪い合いが始まる。そうなれば、今のままだと巻き込まれるのは確実だ。

 ……なるべく面倒事にならないといいなぁ。

 

 そんなことを考えながら、表では神崎と他愛もない会話を続ける。

 やれこの前の小テストがどうだった、他のクラスのポイントはどうだった、と。そんな話をしていれば教室に着く。中に入ればクラス中の視線がこちらに集まり、その後一人の生徒がこちらに近づいてきた。

 

 なんだ? 喧嘩か? とも思ったが、結果は外れ。

 

「ごめん! 初日にあんだけ説明してくれたのに信じきれなくて、授業中居眠りとかたまにしちゃってたんだ! そのせいで貰えるポイントは減ったし、ホントにごめん!」

 

 という謝罪と共に、頭を下げられる。

 なるほど、そういうことか。

 

「いや、僕は気にしてないよ。言うだけ言ってその後は何もしなかった僕にも問題はあったしね。それに、ここから評価を伸ばすことだってできる筈だ。過去を悔いるより、これからどうするかを考えていこう。……って、在り来りな言葉になっちゃうけどね」

「沙羅式……ああ、そうだな。ありがとう」

「あはは……」

 

 気にしてないって言ったよね俺? なんでもう一回頭下げちゃってる訳? そのせいで滅茶苦茶目立ってるし。どうすんだよこれ。

 いや悪気ないのは分かるんだけどさ、謝罪の気持ちも分かるんだけどさ。それはそれとしてだよ。

 

「みんなにも、ごめん!」

 

 俺に向かって頭を下げていた彼は、その後振り返ってクラス全体に頭を下げる。すれば、『気にしてない』『これから頑張ろう』という声があがる。そして、続々と立ち上がり謝罪する生徒は増え、こちらが記憶している限りで授業態度が時々悪かったか、と思われていた生徒は全員が謝罪をする、という事態にまでなった。

 

「はーい、みんな席に着いて……って、どうしたの? この状況」

「あはは……。反省会というか、なんというか。ほら、みんな座って! ホームルームが始まるよ!」

 

 教室に星之宮先生が入ってくるまでその状態は続き、一之瀬さんが声をかけたことでようやくこの謝罪ラッシュは収まりを見せた。

 

 そして、朝の挨拶もそれなりに、今回の件の種明かしが始まった。

 と言っても、多少の誤差はあれど殆どは俺が予想した通りだった。新しく聞けたのは、クラスポイントの存在か。

 

 ……ああ、颯は少し分かってなさそうだな。恐らく先生が退室した後に聞かれるだろうし、自分なりに纏めて紙にでも書いておくとしよう。

 

 一、毎月一日目に配布されるポイント、プライベートポイント(以下PPt)は、そのクラスの評価の現れ、クラスポイント(以下CPt)によって決まる。恐らく、各月の最後に残っているCPtを百倍した値が翌月最初に振り込まれるPPtの額となる。

 

 二、CPtは入学と同時に各クラスに千ポイント与えられ、クラス内の人間が評価を下げる行為(遅刻、欠席、授業中の私語や居眠り等)を行う度にCPtが減少していく。

 

 三、AからDクラスの序列はCPtによって定められており、下位のクラスにCPtの値を上回られた場合、その序列が変動する。そして、例の謳い文句が適用されるのはAクラスに限定される。

 

 大まかに分けて三つ、か。

 ……三という数、何かを纏めて思考する時に便利すぎるな。これからも重宝しそうだ。

 

「それで、説明ついでに他クラスのCPtも教えちゃうね。えーっと……

 Aクラスは940CPt、Bクラスは720CPt、Cクラスは490CPt、Dクラスは0CPt。って感じだね。うん、みんなもAクラス、とまではいかなくても、十分すぎるくらい優秀だね」

 

 そう言いながら、チラリとこちらに視線を向けてくる。なんだろう、ピースとかしといた方が良いのだろうか。いぇーい。

 あ、そんなため息つかなくても。

 

「さて、とりあえずはこの位かな〜。あ、もちろんCPtを増やす方法はあるよ。直近だと、次の中間テストだね。成績次第ではあるけど、それによっては最大100CPtの増加も有り得るから。それと、みんななら心配要らないと思うけど、次の小テストとか定期試験で赤点になっちゃうとその時点で退学になっちゃうから。気をつけてね。で、これはこの前の小テストの結果。みんなの前に出されちゃうのが嫌な子も居ると思うけど、我慢してね〜」

 

 張り出されたクラス全員の小テストの結果。皆平均して高い点数をとっている。なるほど、上から二番目であるBクラスの名は伊達ではないということか。

 

 ……にしても、なぁ。まさか成績出されるとは思わなかったよね。なら最初から言っといて欲しかった。

 

「クラスで一位は……沙羅式君だね。点数は百点。いや〜、流石の私もびっくりしちゃった」

 

 ニヤニヤ、そう擬音が付くくらいの笑みを浮かべながらこちらを向く星之宮先生。先生がそんな顔を生徒に向けて良いのか? 

 

 ああ、面倒事の匂いがする。勘弁してくれほんと。

 というか、こういうのって個人情報ってことで生徒には隠されるんじゃないのか? ……いや、この学校に常識を求めるのは無理か。仕方ない。

 

「よし、じゃあ説明はホントにこれくらいかな。次の中間テストだけど、みんななら退学者なんて出さずに乗り切れるって確信を持って言える。頑張ってね」

 

 そう言い残して、星之宮先生は教室を後にした。

 ……それにしても、最後のあの目。これまでの、興味や揶揄う様な視線とはまた違う真剣な眼差し。あの目になったのは、『退学者を出さずに乗り切れるって確信を持って言える』そう言った時だ。……いや、もう少し狭められる。……なるほど、『確信』か。

 

「───式」

 

 あの言い方的に、今回の中間試験には何かがある。それも、確実に赤点者を出さず、クラス全員が生き残れる様な何かが。

 恐らく、勉強方法だとか、みんなで協力して、なんて下らない内容ではない。もっと確実な方法。……過去問、か? 

 確証は無いが、可能性は高い。勘ではあるが、試してみる価値は────

 

「───沙羅式」

「っ……と。ごめん、何?」

 

 思考に耽っており気づかなかったが、神崎の声によりようやく思考の波から意識が引き上がる。

 声の方を向けば、神崎と一之瀬、このクラスのリーダーとも言える二人が集まっていた。

 

「大丈夫? 何か考え事してたみたいだけど……」

「ああ、大丈夫大丈夫。もう終わったから。それで、どうしたの?」

「次の中間試験について、意見を聞きたくてな」

「……そういうこと」

 

 予想していた通りではある。……が、どうするか。意見を言うのは別に良い。協力するのも別に良い。ただ、なあ。目立ちたくない、というか、人の視線を感じたくないんだよなぁ。どうするか。

 

 何にせよ、一先ず場所は変えよう。ここはどうしたって目立つ。

 

「良いよ、少し話そう。ただ、場所は変えさせてもらっても良いかな? 幸い、学校側もこういった事は想定していて、次の授業までは時間があるみたいだし」

「……分かった。お前が言うなら従おう」

「じゃあどこが良いかな? あんまり人が居なさそうな場所って言ったら……」

「屋上でいいんじゃないかな?」

「あ、そうだね。そうしよっか」

 

 ということで、屋上へ行くことになった。時間があると言っても、余裕がある訳ではない。さっさと行こう。……と、その前に。

 

「颯、これ纏めといたから。ちゃんと読んどきな」

「え? あ、先生の話のやつ! サンキュー千聖!」

 

 書いた紙は渡しておく。追加で話されたことも書いておいたし、あれを見れば態々思い返す必要もない。

 

「あ、沙羅式君。さっき柴田君に渡してたやつ、後で見せてもらってもいい?」

「構わないけど、必要?」

「みんなに説明する時にあった方が良いかなって」

「なるほどね。……っと、やっぱり人は居ないみたいだ」

 

 屋上の扉を開ければ、少し風を感じる程度で人の気配は一つもない。これ程密談に適した場所もないだろう。

 

「さて、まずこれだけは知っておいて欲しいんだけど」

 

 そう前置きして、クラスの中で言っていたら間違いなく反感を買うであろう言葉を吐く。

 

「今回の中間試験、僕は何もするつもりはないよ」

 

 ……こちらの予想通り、その言葉を聞いた二人は随分と驚いている様だった。

 

 

 






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