綾小路の友達   作:初期小路おもろすぎて

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ぶっちゃけ五月、六月は特に描写することないんです。
正直あそこら辺ってDクラスじゃないと関わることないじゃないですか。綾小路君も態々相談する程のことじゃないって思いそうです。証拠集めには多少協力したかもしれませんけどね。


なので、五月、六月は纏めてカッッッッッツ!!!

今回から無人島試験じゃ!!!!


5.

 

 

 ◇

 

 夏休み。中間、期末試験を終えた学生に訪れる、束の間の休息。

 本来なら、こんなあっっつい気温の中、外に出るなんて考えられない。エアコンを効かせた部屋の中で本を読みながらダラダラする。それが最適だ。

 

 ……だというのに

 

「わぁ〜! すっごい綺麗!」

「……」

「ね! 沙羅式君!」

「……ソウダネ」

 

 だというのに、俺は学校のせいで強制的に外へと引きずり出されていた。

 

 現在、俺は簡素な自室からは程遠い豪華客船のデッキの上に立っている。理由は先程も言った通り、学校側の指示だ。

 

 夏休み前に星之宮先生から話された、休暇中に開催される南の島でのバカンス。文字だけで見れば、定期試験を乗り切った生徒達へのご褒美として、学校側が用意してくれた息抜きと捉えることも出来なくはない。

 

 だが、この学校が俺たち生徒にそこまで優しい訳がない。島に着いた後か、はたまた船の上でか。まだ分からないが、十中八九何かがある。

 

 そのため、今回のバカンスは欠席するつもりだった。既に面倒事が確定している事柄に自分から首を突っ込むつもりもないからだ。

 そして、その日の内に星之宮先生にその旨を伝えに行ったのだが……悲しきかな。まるで聞く耳を持ってくれなかった。

 

 ただ、それを許可できない理由も話してくれた。

 なんでも、学年単位で行われる行事を欠席するとそれなりのペナルティが付くらしい。身体的特徴であえなく参加することのできない生徒ならまだしも、お前のそれはただのサボりだろう、というなんとも反論のできない正論を決められてしまった。そのため、しぶしぶながらもこの船旅に参加しているという訳だ。

 

「はぁ……」

「どうかした?」

「いや、なんでもないよ。ちょっと疲れてね」

 

 思わずため息をついてしまう。思ったより大きなものになってしまい、隣で海を眺めていた一之瀬に心配されてしまった。申し訳ないとは思うが、それ程までに憂鬱だ。

 

 いやまあ、もちろんこの船旅で何かが起こるっていうのも俺の勝手な推測だし、特に何も起こらない可能性だってある。だからまあ、なるべくポジティブに行くことにしよう。

 

「あ、そうだ。これからみんなでご飯食べるんだけど、沙羅式君もどう?」

「あー、嬉しいお誘いだけど、遠慮しとくよ。あまり気が乗らなくてね」

「……そっか。ならまた今度だね。じゃ、船酔いとかには気をつけてね〜」

「うん、ありがとう。また今度」

 

 一之瀬とは別れ、広い船内をぶらぶらと歩く。

 さて、一先ず散策でも行おう。恐らく行われるであろう特別試験だが、船内で行われるのか、船外……目的地に着いてから行われるのか。そこが分からない以上、なるべく施設などは把握しておきたい。

 

 それに、豪華客船なんて初めての経験だ。少しワクワクする。

 

 そんなこんなで、施設を見たり昼食をとったりしていれば、突如船内にアナウンスが流れた。

 

『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧いただけるでしょう』

 

 島……もう目的地に着くのか。となると、試験はその島で行われると考えて良さそうだな。

 なら、今の内に島の大きさくらいはある程度把握しておきたい。デッキに向かうか。

 

 丁度昼食も終わり、次は何処に行くかと悩んでいた時間であったため、良いタイミングと言える。

 無料で施設を利用できたことに有難みを感じながら、少し急ぎ足でデッキの方へと向かう。

 

 人混みは苦手だ。なるべく端の、かつ景色はよく見えるところに移動する。

 場所を確保し暫し待てば、アナウンス通り、島の全貌が見えてきた。

 

 なるほど。そこまで大きくはないが、俺たち一年生だけで使用できる島、と考えれば十分すぎるほどの大きさだ。

 

 このまま島につく……と思いきや、船はある程度島に近づいた段階で進路を変え、そのまま周りを回り始めた。どうやら、島の全体を外から確認させて貰えるらしい。

 確かに、ここからあの島で試験が行われるとすれば、これは意義のある景色だ。

 

 そうして、船が島の周りを一周するか、といったタイミングで再びアナウンスが流れる。

 

『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒たちは三十分後、全員ジャージに着替え、所定のカバンと荷物をしっかりと確認した後、端末を忘れず持ちデッキに集合してください。それ以外の私物は全て部屋に置いてくるようお願いします。また暫くお手洗いに行けない可能性がありますので、きちんと済ませておいてください』

 

 私物は持ち込み不可、か。まあ今回は特に何かを持ってきている訳でもないし問題はない。さっさと着替えを済ませてしまおう。

 

 少しばかり早足で部屋へと戻り、ぱぱっと着替えを済ませる。そのままデッキへと戻り、丁度よさそうな椅子に腰掛け、ボーッと外の風景を見ながら次の指示を待つ。

 

「どうだ、調子は」

 

 そんな時、ふと後ろから声がかかった。

 

「おお、清隆か。どうって言われてもな。早く帰りてぇ」

「お前は、まあそうだろうな。船に乗る前からずっと言っていたしな」

「逆になんでお前はそんな楽しそうなんだよ」

「夏休みに旅行、普通の高校生らしいじゃないか」

「普通はこんなデケェ船で移動なんてしない」

「そうか?」

「そうだ」

 

 そんな軽口を叩き合いながら、隣に座ってきた清隆の方を見る。

 ……なんとなく、特段これといった理由もない、ただの勘だが。

 

「お前、なんかあったか?」

「……」

 

 なんとなく、隣に座る友人の様子がおかしい気がした。

 立ち振る舞いや発言も、いつもと何ら変わらない。ただ、纏っている雰囲気がなんとなく違う。少し苛立っているとか、焦っているとか、そんな様な気がする。

 

「……お前は」

「ん?」

「お前は、オレのことをよく見てるんだな」

「なんだ急に」

「いや、ふと思っただけだ」

「ふ〜ん……。で、結局なんかあったん?」

「まあ、色々な。訳あって、Aクラスを目指すことになるかもしれない」

「ふ〜ん────は?」

 

 おっとぉ……これは予想外だ。

 確かに清隆は事なかれ主義とか宣いながら色々バカみたいな行動をするが、自分からAクラスを目指すなんて事を言うやつじゃなかった。一体どういう心境の変化……いや、別にこいつがAを目指そうが目指さまいがどちらでも構わないか。清隆がやりたいことなら止めはしないさ。

 

「あー、うん。そっか。まあ頑張れ?」

「煮え切らないな」

「いやまあ、ちょっと驚いてな。ま、お前がAを目指すってんなら止めはしねぇよ。俺に迷惑をかけない範囲で色々頑張ってくれ」

「……」

「どうかしたか?」

「いや……。そっちは、何かなかったか?」

「何かぁ?」

「ああ。例えば、担任に退学を仄めかされたとか」

「物騒だな急に。そんなことある訳────。ちょっと待て、お前まさか」

 

 俺のその言葉に、清隆は肩をすくめるだけ。あー、つまりは、なんだ。

 

「何お前、担任に脅されてんの?」

「その通りだ。よく分かったな」

「ほぼ答え言ってたけどな。……けど、流石に無理だろ。たかだか担任の言葉だけで生徒一人を退学になんて出来るわけない」

「さてな。ここが普通の学校だったらそれで終わりなんだが、どうも、無いと言い切れる話でもない。それに……どうやら、他からもオレを退学にさせようという動きがあるみたいでな」

「他? 何お前、別クラスと喧嘩でもした?」

「いや、オレの父親だ」

「は、おいおい、マジに言ってんのか?」

「ああ。担任曰く、あの男と繋がっているらしくてな。Aクラスを目指さないなら退学させる、ということらしい」

「……有り得ない話じゃねぇな。あの人はお前に大層ご執心だし。なるほどねぇ。せっかく学生になって初めての夏休みだってんのに、お前は休めなさそうだな」

「全くだ。……それで、だが」

「あん?」

「お前は今のクラスのまま、Aクラスを目指すつもりはあるか?」

「あー、んー。今んとこないな。他は目指せAクラス! って感じだけど、正直めんどいし。他でなんかテンション上がればやる気出るんだけどな〜」

「そうか。それなら安心だ」

「安心?」

「ああ。お前とまともにやり合うのは御免だからな」

「ふーん。つまりは俺にビビってると」

「違う」

「ビビんなって」

「ビビってない」

 

 はー、やれやれ。あの最高傑作君が俺みたいな半端者にビビっているとは。

 ……だが、なるほど。あの人が清隆を退学にさせようって動いてんなら何をやっても不思議じゃない。それこそ、担任を買収したりなんだりして、嘘の違反行為をでっち上げさせることだって平気でしてくるだろう。

 

 けどなぁ、あの人が本気でやろうってんならそれだけで終わるとは思えねぇんだけども。

 ま、今はいいか。こいつだって、そこまで切羽詰まってるって感じでもない。マジでヤバいんならちゃんとこっちに相談してくるだろ。そん時に動けばいい。

 

「つか、いいのか? あっちの方にお前のクラスメイト結構集まってるけど」

 

 そう言って指を指した方向に、清隆は顔を向ける。

 ここから少し離れた場所に、俺の記憶が正しければDクラスの面々が揃っていた。全員がジャージに着替え、俺たちと同じように次の指示を待っている。

 

 いいのか、というのは、このままここで話してるとまたボッチが加速するぞ、という意味だ。

 その意図を感じ取ったのか、清隆は一つため息を吐き、立ち上がる。

 

「ああ、そうだな。そろそろあちらに合流するとしよう」

「おう、そうしとけそうしとけ」

「お前はいいのか?」

「俺はお前と違って友達作って青春キャピキャピ! とかはもう諦めてんの」

「……別にそこまではオレも求めていないが」

「ま良いんだよ細かいことは。さっさと行け行け」

「はぁ……」

 

 随分と呆れた様子で、あいつはそのままDクラスの面々が居る方へと歩いて行った。

 その少し後。風景を見るのも飽きてきたタイミングで、拡声器を通した教師の声が響く。

 

「ではこれより、Aクラスの生徒から順番に降りてもらう。それから島への携帯の持ち込みは禁止だ。担任の先生に各自提出してから下船するように」

 

 Aクラスから、つまりBクラスの下船の順番はそれなりに早く来るらしい。であれば、もう移動しないとここからでは間に合わない。

 仕方なく椅子から立ち上がり、Bクラスの生徒達が集まっている方へと向かう。

 

「お、千聖〜! こっちだこっち〜!」

 

 集団の方へ近付いたタイミングで、辺りをキョロキョロと颯と目が合った。

 手を振りながらこちらへと声をかけてくる颯に片手を挙げてリアクションを返しながら、あちらの方に歩いていく。

 

「お前どこ居たんだ? 飯の時も居ないし部屋にも居ないからちょっと心配してたんだぜ?」

「ごめんごめん。ちょっと船の中を回ってたり、人の少ないところで休んでたりしてたんだ」

「いや、何もないなら良いんだけどさ。……てか、長くないか? 荷物検査だけならここまで時間はかからないと思うんだけど」

 

 

 そう言って、颯は下船の待機列の方を見た。釣られて、同じ方へ目を向ける。

 普通の下船より時間がかかっているが、その原因は明白。降りる際、生徒の両脇を教師で挟み、荷物検査を行っていたからだ。

 

 携帯は没収、余計な私物の持ち込み不可。定期テストと同じか、それ以上に厳しいチェック。恐らく、島内での催しのためだろう。

 

「……まあ、学校側が所有してる島だし、変なものを持ち込まれて島内を汚されることを考えてって感じじゃないかな」

「あーまあ確かに。学校の敷地内とかゴミのポイ捨てたまにあるもんな」

 

 その後は適当な話しながら、待機列が進むのを待つ。

 俺たちの番が来た時も検査の厳重さは変わらず、やけに厳しい検査を受けた後タラップを降りる。

 

 待っている場所は多少日陰もあったが、島に降りてすぐの砂浜にそんなものはなく、日光をダイレクトに浴び続けることになる。

 正直いってめちゃくちゃ不快だ。これだから夏は嫌なんだよ。

 

「大丈夫か、沙羅式。随分と酷い顔だが」

 

 夏に対しての恨みを募らせていれば、横から神崎が声をかけてくる。

 いや、むしろなんでそんなに涼しい顔してられるのか聞きたいんだけど……。

 

「あはは……。ちょっと昔から夏は苦手でね。室内なら良かったんだけど、こうして外に出ると、日光とか直に感じちゃうからさ。それがどうにもね」

「そうなのか。……ふむ、ならこうすれば多少は楽になるか?」

 

 そう言って、神崎はジャージの上着を脱ぐと、それを傘のようにして俺へと降り注ぐ日光を遮ってくれた。先程に比べれば随分とマシである。

 えっ、やだ。何この人イケメン。惚れちゃいそう。

 

「あー、めっちゃ楽になった。本当に助かる」

「気にするな。恐らく先生から何かしらの説明がある。それまではこうしておこう」

 

 いやー、神崎マジで良い奴だわ。

 どうしよ、俺も神崎の為にAクラス目指そっかな。いやまあ流石にめんどいからやらんけど。

 

 そうして、十数分が経った位だろうか。星之宮先生が俺たちの前に立つ。

 

「はーい。今からBクラスの点呼をするから、みんな名前を呼ばれたらちゃんと返事してねー。じゃ、みんな整列!」

 

 指示に従い、他のクラス含め、生徒たちは一斉に整列を行う。神崎に感謝を述べてから別れ、それぞれ位置につく。

 点呼は他のクラスも同時に行う様で、そこかしこで教師や生徒の声が上がっている。

 

 しかしながら、ほとんどの生徒は緊張という文字をしらないかの如く、だらだらと喋りながら次の指示を待っている。

 

 程なくして、Aクラスの担任である真嶋先生が砂浜にぽつんと置かれた白い壇上へと上がった。

 生徒のざわめきも、壇上へ登った真嶋先生を見れば次第に収まっていく。それを確認し、一つ頷いてから、先生は拡声器を構える。

 

「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。しかしその一方で、一名ではあるが、病欠で参加できなかった者がいることは残念でならない」

 

 先生の話に耳を傾けながらも、視線を別の方へと向ける。

 生徒たちとは違い、教員達の顔はバカンスとほ程遠い険しい表情。そして、その少し遠くの辺りで作業員と思わしき大人たちがテントの設営を行っているのが見てとれた。

 

 他の生徒たちもそれに気づいたのだろう。先程までとは少し違う、困惑一色といった様な空気になった。

 そして。それを待っていたかのように、真嶋先生は喋り出す。

 

「ではこれより────本年度最初の特別試験を行いたいと思う」

 

 特別試験……。文字通り、普段の定期試験とは違った試験なのだろう。やはり、ただのバカンス等ではなかったという訳だ。

 

 なんとなく予想できていた俺に、さほど驚きはなかった。そんな事より、この暑さをどうにかしてほしい位だ。

 しかしながら、他の生徒達はそうもいかない。

 

 学校側からご褒美として与えられたバカンス。これまでの定期試験によるストレスや、日常生活等でも素行を気をつけなければならないという緊張。それらを癒すため、先生たちの善意で行われていると思っていたそれが、ただの幻想であったことに、彼らは今気付かされた。

 

 しかし、そんな気持ちであっても、真嶋先生の説明は続く。

 

「期間は今から一週間。八月七日の正午に終了となる。君たちはこれから一週間、この無人島で集団生活を行い過ごすことが試験となる。なお、この特別試験は実在する企業研修を参考にして作られた実践的、かつ現実的なものであることを言っておく」

「無人島で生活って……船じゃなくて、この島で寝泊まりするってことですか?」

「そうだ。試験中の乗船は正当な理由なく認められていない。この島での生活は眠る場所から食事の用意まで、その全てを君たち自身で考える必要がある。スタート時点で、クラス毎にテントを二つ。懐中電灯二つ。マッチを一箱支給する。それから日焼け止めは制限なく、歯ブラシに関しては各自一つずつ配布することとする。特例として女子の場合に限り生理用品は無制限で許可している。各自担任の先生に願い出るように。以上だ」

 

 なるほど。つまり、学校側は俺たちに無人島サバイバルをさせるつもりらしい。

 しかしながら、ただの学生がこれだけの物資で一週間を無事に過ごすこと等できる訳がない。それは学校側も分かっているはずだ。だからこそ、他に何かあるはず……。

 と、一人で思考を回していたが、少し遠く、おそらくはDクラス辺りだろうか。そこから騒ぎ立てるような声が聞こえてくる。

 

「はぁっ!? もしかしてガチの無人島サバイバルとか、そんな感じ!? そんな滅茶苦茶な話聞いたことないっすよ! アニメや漫画じゃないんすから! テント二つじゃ全員寝れないし! そもそも飯とかどうするんですか! あり得ないっす!」

 

 確かに、この説明だけでは不平不満が出るのも仕方ない。だが、そんな事は教員たちも分かっていたのだろう。壇上に立つ真嶋先生だけでなく、周りに居る教師たちも平然とした顔をしていることから、この事態も予想通りなのだろう。

 

 現に、先程大きな声で騒ぎ立てていた生徒は真嶋先生や担任である茶柱先生により窘められている。

 

 彼の意見も分かる。しかしながら、この場では教師たちの意見の方が筋が通っている。

 それを理解してしまったのか、先程声を上げていた生徒は声を抑え、ただ俯くだけになってしまった。

 

 だが、先程も言ったように、彼の意見も理解できる。なんなら、俺は彼の意見に一部賛成している。

 当然だろう。今は夏季休暇中。そして、今回はその期間中での旅行という名目で俺たちは引っ張り出された訳だ。

 

 休業中にも関わらず、社内旅行と偽って社員を無人島に放り出す企業が何処にあるのか。そして、あったとしてもそれは一流企業だとは到底言えない。

 

 ……まあ、簡単に言えば俺はイラついている、という訳だ。

 

 声を荒らげるなどはせず、ただ無言で手を挙げる。

 

「ん? 君、何か質問でも?」

「いえ、質問というよりは疑問、もしくは不満なのですが」

「ほう、良いだろう。言ってみたまえ」

 

 全生徒の視線が集まるな中、少しばかり声を張るようにして話し出す。

 

「現在我々は夏季休暇の期間です。そして、我々はその期間中に行われる旅行、といった名目でここに連れてこられました。先生方の仰られることも分かりますが、普通の企業の研修で、このように人を騙す様なことをするケースはあまり無いと思いますが」

「ふむ、なるほど。確かに、それについては間違っていない。不平不満が出てしまうのも納得だ。だが、安心していい。これは君たちに過酷な生活を強いるための試験ではない、ということを言っておく」

 

 そうして、真嶋先生は再び拡声器を用い、生徒たちに説明を行っていく。

 やはり、というべきか。まだ説明事項は存在していた様だ。

 

 しかし、それならさっきのタイミングで説明してくれても良かったのでは、とも思ってしまう。これも生徒の自主性やらなんやらといったやつなのだろうか。

 

 そして、今回新たに説明されたものを要約すると────

 

 一、今回の試験では、前提条件として各クラスにそれぞれこの試験でのみ運用できる特別なポイントが三百支給される。そのポイントを利用することで、今回の試験を実質的な旅行の様に過ごすことも可能である。

 

 二、そのポイントを使用するため、各クラスに一つずつマニュアルを配布する。島内での注意事項についての説明や、購入できるものの詳細等が載っている。紛失した際は申し出ることでもう一度マニュアルを再発行してもらえるが、それにはポイントを消費する。

 

 三、ここが重要。今回の試験でのみ運用できるポイントだが、この試験が終わった後、使用しなかったポイント全てををそのままCPtに加算する。

 

 こんな感じか。

 やはり目を惹かれるのは最後。今回、試験で配布されるポイントは一律三百。極端な話だが、このポイントを全く消費せずこの一週間を乗り切れば、その三百ポイントがそのままCPtとなる。

 

 Aクラスを目指す生徒たちにとって、これは非常に大きいだろう。俺としても、日頃貰えるPPtが増えるのは有難い。みんなにはなるべく頑張ってほしいものだ。

 

「では、私からの説明は以上だ。この後は各クラスで集まり、担当の教師から説明を受けてくれ」

 

 そんな解散宣言を聞き届け、生徒達はそれぞれクラス毎に固まっていく。

 また面倒なことになったと思いつつ、俺もBクラスの面々が集まっている方へと歩いていった。

 

 

 






色々忙しく、気づいたら思ったより期間が空いてました。
これからはなるべく早めに投稿していきたいと思っている所存。

次回からはようやっと無人島試験にがっつり入っていくわよ〜
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