異世界放浪記 ~片眼と片腕欠損しても好きに生きたい~   作:青い灰

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2話 キマイラ撃退戦

 

 

 

 

キマイラ。

 

かつての大戦でアザリア公都怪物研究部門が開発し、そして戦場に投入した人工の怪物だ。黄金の焔獅子、山羊の魔種、サーペントの三種の怪物を接ぎ合わせ、そして複数の魔石を核として埋め込むことで怪物同士の魔力を順応、拒絶反応を無効化し、更にそれぞれの怪物の特性を強化している。

 

元よりそれぞれの怪物たちが強力であり、更に三種の怪物が連続で連携しながら立ち回るため、あの大戦ではキマイラが投入されただけで、敵味方に凄まじい被害を出した。

 

 

………そう。敵味方問わずに。

 

 

そも、人を喰らう外敵生物である怪物に、敵味方の認識など最初から出来なかったのだ。故に、この怪物は死んでもいい味方がいる場にしか投入されず、俺はこいつらと何度も顔を合わせ、殺し合う羽目になった。

 

在るべきでない姿、在るべきでない力、在るべきでない命。それ故に、その寿命は長くはなく、生き残った個体も一年を経たないうちに一匹残らず死滅していた、はずだった。

 

 

 

 

「Grooooooo─────!!!」

 

「「「─────!!」」」

 

 

飛びかかってくるキマイラから飛び退き、回避する。

他の二人も同じように下がって距離を取って、その間合いを測っている。当然だ。怪物を相手にすることも多いのだろう冒険者も、この自然にない怪物を相手にしたことはない筈。

 

そして。

 

 

「Syuuuuu────!!」

 

「遅い────ぞ!!」

 

 

しゅるり、と蠢いた尾の大蛇が、矢の如く迫ってくる。

だが、とうに見切っている。ステップを踏んで回避しつつ、右手に握るロングソードを振るう、が。

 

 

「(浅いか────!)」

 

 

蛇の体躯が揺らめき、刃はその骨にまでも届かない。そして

それは、更に鞭のようにしなってくる。

 

 

「く────ッ………!」

 

 

咄嗟に刀身で防御する、が。

弾かれるように、大きく吹き飛ばされる。

 

やはり、この巨体。

大戦のキマイラはもう一回り、いや二回りは小さかったが、こいつの大きさ。その膂力も大戦のときとは違う!

 

 

「食らいやがれぇッ!!」

 

「ッ────!!」

 

 

どうにかブーツで地面を削りながら体勢を整えたと同時に、二人がキマイラへと飛びかかる。

 

冒険者は高く飛び上がり、山羊の頭を。

鎧の男はその背後から冒険者を追って走り出す。

 

だが。

 

 

「ぐ、ぬ……なんだ!!?」

 

 

山羊へと振るわれたシミター。

だが走るのは血潮でなく、金属のような重音。

 

そして。

 

 

「Groooooo────!!」

 

「ッ、しまっ───」

 

 

得物を弾かれた冒険者を、獅子の頭が狙う。

そのアギトから漏れ出る灼熱が、その口元へ集まり……

 

 

「させると思うな!!」

 

「Gro、oo──!?」

 

 

だが、阻止される。

突進と共に放たれる大剣の剣身による強烈な打撃が、獅子の頭を打った。その口から放たれた橙の閃光は、空へ向かって大きく弧を描いた。

 

 

「ッ、ぐ……これは、熱線か!?」

 

 

だが、まだだ。

ロングソードを握る腕を振り払って、左目に魔力を込める。マナの青光がロングソードを消し去り、その手の内に新たな得物を召喚する。

 

 

「クソ、ッ……!?」

「Meeeeeeh────!!」

 

「悪く思え、冒険者!!」

 

「っ、ぐおっ!?」

 

 

新たな得物────鞭を振るい、冒険者へ向けて放つ。

山羊の鳴き声と共にマナが瞬いて、それに晒される冒険者の胴へと鞭を巻きつけ、一気にこちらへ引き寄せる。

 

瞬間、男のいた場所をマナの閃光が貫く。

あのままであれば、彼は上半身を吹き飛ばされていた。

 

鞭を払い、冒険者の男を空中に解放。

彼は勢いを殺して着地し、鎧の騎士もまた同じく下がる。

 

 

「ぬう……厄介だな……!」

 

「無事か!」

 

「なんとか……!すまねぇ、助かった!」

 

 

三人で並び立ち、キマイラへと得物を構え直す。

隣に立った二人は慣れない相手に汗を流し、警戒を強める。キマイラもまた、それぞれの頭を唸らせこちらを威嚇する。

 

 

「クソッ、ふざけた怪物がいたもんだな……!」

 

「あぁ、私も見たこともない……!

 あの頭は焔獅子に見えるが……尾はサーペントか?」

 

「キマイラ。背中のは山羊の魔種で、

 六年前の大戦でアザリアが使った生物兵器だ」

 

「んなもん聞いたことねぇよ……!」

 

 

冒険者の男が呼吸を整えながら吐き捨てる。

確かにキマイラについて知る者は多くない。戦場にこいつを投入した国の上層部、そして戦場で生き残った数少ない者。恐らくはそれだけ、後は兵士にも知られてなかったはず。

 

 

「大体は殺処分されたか寿命を迎えたはずだが……

 こいつ、大戦のときの比じゃない大きさだ。

 どうやら生き残った個体らしい」

 

「………大戦の兵器か。厄介なわけだ。

 君は……いや、素性の詮索は後だな」

 

「そういう訳だ。

 とにかく今はこいつを撃退する」

 

「あぁ?ここで倒しておかねぇと後が……いや待て、

 サーペントとか言ってたか?まさか……」

 

「サーペントがどうかしたのか?」

 

「そのまさかだ。

 サーペントは死ぬときに猛毒の霧を撒く。

 ここでこいつを殺せば、村は丸ごと毒霧に呑まれるぞ」

 

「……成程。それで撃退か」

 

「傷を与えたところで再生するが、

 追い詰めれば撤退するはずだ。自分の住処にな」

 

「……やるしかねぇな」

 

「あぁ」

 

 

話は纏まった。

鞭を振るって手元に戻し、左目に魔力を込めて新たな得物を喚び出す。握るは、長柄に精巧な彫刻の刻まれた細身の槍。その長柄は金属ではなく、木製のそれだ。

 

 

「……召喚魔術か。そんな風に使う者は初めて見たな」

 

「生憎と俺の手札はこれだけだ。

 俺の召喚する武器は全て十全に使えると約束しよう」

 

「さっきの剣に鞭に……その槍もか?

 バケモンじゃねえか」

 

 

まあ、そりゃそうだ。

幾つも武器を使い回すより、一つの得物を十分に振るう方がずっと戦いやすい。だが、使い回すにしても、それも利点があるということ。武器の振るい方は握れば分かる。ならば、その武器の意思に赴くままに。

 

斬りたいように切断する。

突きたいように貫く。

打ちたいように殴る。

それだけの話。

 

 

「戦場で武器を切り替えながら戦うのか。

 まともな戦術ではないが……信じさせて貰おう」

 

「ハッ……騎士様よ、あんたも見たことねぇ剣術だが、

 そこらの兵士やらとは一味二味も違うだろ」

 

「そういう君もな、冒険者。

 私には無い身軽さだ、頼りにしているぞ」

 

「あんたたちも十二分に手練れだ。

 これだけのメンバーなら戦力に不足はない。

 互いに援護しつつ、確実な致命打を狙っていこう」

 

 

即席のチームだが、申し分はない。

寧ろ、戦場でこれほどの傑物たちと組む余裕などなかった。前衛ばかりで後衛も欲しいところだが………

 

…………来たか。ナイスタイミングだ。

 

 

「わっ、わたしも戦います!!」

 

 

突如としてその場に響いた声に視線を向ければ、先の少女が人混みを抜けて、前に出てきていた。その翡翠色の目には、確かな覚悟の色が浮かんでいる。

 

 

「頼もしい後衛が増えたな」

 

「……またも同じ獣車に同乗した者か。

 不思議な縁もあるものだ」

 

 

そう、前衛が足りていれば後衛は要るだけ嬉しいものだ。

なにせ大砲役がいるのだ。歩兵として前で敵を引きつける、そこを後衛が狙い撃つ、という、分かりやすく強いやり方で戦える。そして、その作戦は誰にでも理解できる。

 

 

「おいおい……あの子娘を守りながらやれるか?」

 

「ウッ……が、頑張ります……!」

 

「任せてくれ」「問題はない」

 

 

騎士と共に、答える。

 

 

「この剣は守勢の剣。君まで奴を通しはしないとも」

 

「魔術師、安心してあの怪物を狙え。

 前衛は三人で引き受ける。集中を乱すなよ」

 

「………!

 うん、分かりました!」

 

 

驚いたように目を見開き、笑顔と共に少女が杖を構えた。

背中を任せる、とまではいかないが、十分。

 

 

「なんだよ……心配したオレが馬鹿みてぇじゃねえか」

 

「冒険者の判断力は一番に信頼している。行くぞ」

 

「っ!?おっ、おい馬鹿野郎、待てっ!!

 クソッ、全員やるぞ!!」

 

「始めるとしよう……!」

 

「着実に……確実に。

 マナ展開────魔術式、起動!」

 

 

槍を構え、誰よりも先に地面を蹴る。

そうして追ってくる二つの足音と、こちらにも分かるほどに溢れる膨大な魔力。やはりあの娘、ただの魔術師ではない。

 

ならばこちらも……

ただの身体欠損者ではないところを見せてやろう。

 

 

「刻名限定解錠」

 

 

駆け抜ける勢いをそのままに、踏み込む。

槍を握り締める手から魔力を介して、その槍に刻まれている力の一部を解放。その穂先が黄金の光を放つと、踏み込んだ勢いを渾身の力を以て─────投擲する。

 

 

「─────■■、■!!」

 

 

それは黄金色の閃光となって飛翔する。が、所詮は投擲槍。キマイラはそれから飛び退いて回避。

光を放つ槍はその背後、破壊された鉄門に突き刺さる。

 

 

「んだよ、見掛け倒しか!?」

 

「さてな」

 

「………!」

 

 

後ろから二人がこちらを追い抜き、回避を終えたキマイラへ迫る。キマイラがそれを捉え、大蛇と獅子が唸りを上げる。そして獅子が、その口から強烈な熱気を漏らし────

 

それとほぼ同時に、冒険者が動く。

 

 

「はっ、食らえよ!!」

 

「────Gro!!?」

 

 

投げられたそれが、獅子の額で弾けた。

 

 

「──────■、■■■■────!!?」

 

 

爆ぜる炎が、獅子の頭を包む。

今の臭い、油瓶か。

隙だらけだ。

 

それと同時に手を振り払い、新たな得物を召喚。

炎で攻めるなら、それに合わせてやらせてもらおう。

 

 

「刻名解錠、第一解放」

 

 

握り締めた大剣は赤黒く、そしてその剣身に走る赤い亀裂はその言葉と同時に光を放つ。砕かれた溶岩の破片をそのまま剣としたような異形の剣。

 

それは先の槍と同じく、特殊な力を秘めた〝遺物(アーティファクト)〟。

 

 

「〝炎剣(レーヴァテイン)〟」

 

 

名を呼ぶ。

そうすることで、一部の遺物はその真価を解放する。それを縛る封印の一つを解放すれば、剣身は深紅の炎を噴き出し、それは弾けるように広がったかと思うと、その剣身を包む。

 

世界樹の天辺に住まう大鳥、或いは不死なる神を殺す剣。

それはかつて、前世で触れた神話の剣にも似ている。

二つの名、二つの力を持つ神剣。

その銘は、だがこの異世界でも通じた。

 

赫々と燃え盛る剣を構える。

大きく後方へその切先を向けながら、敵を捉える。

 

 

「焼け落ちろ」

 

 

腰を落とし、足を踏み込み──────突き放つ。

 

 

 

 

 

「─────────!!!?」

 

 

 

 

 

深紅の業火が、その衝撃波が。

 

 

 

 

「マジか!?」「っ、これは……!?」「な、っ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キマイラの三つの頭を繋ぐ胴体を、大きく抉り取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだだ!!来るぞ!!」

 

 

叫ぶ。

首から下を失い、地面に落ちた三つの頭が動き出す。

 

 

 

「「「■■■■■■■──────!!」」」

 

 

 

獅子が、蛇が、羊が、咆哮する。

抉り飛ばした肉片が蠢き、膨れ上がっていく。

 

そして。

 

獅子と蛇が、大きく首をもたげた。

 

 

「クソッ、やべぇ!!下がれ騎士野郎!!

 毒と炎のブレスが来るぞ!!」

 

「っ、承知した!!」

 

 

走り込み、トドメを刺そうとした騎士がすぐに足を止める。そして後ろへ下がろうとした瞬間。

 

蛇の口から、何かが爆ぜるように噴き出された。

 

紫を帯びた靄。

 

 

「毒霧─────なんでしょ!!?なら!!」

 

 

それに、後ろから言葉が響く。

毒霧よりも早く周囲を包み込むのは、明るく、だが眩しさを感じさせない優しげな白光。

 

それはまるで、風のように毒霧を四方へと払い飛ばす。

 

 

「っ、そうか、霧払いの魔術!!」

 

「熱線が来るぞ!全員構えろ!!」

 

「Groooooh───────!!!」

 

 

即座に後ろに飛ぶ。

ここで狙われるのは間違いなく───────

 

 

「────あ」

 

 

必殺の毒霧を払った、魔術師だ。

強烈な気迫と殺気の視線に、彼女の動きは硬直してしまう。その真横に跳び、獅子の熱線が放たれるより先に腕を掴んで一気にこちらへと引き寄せる。

 

 

「っあ、え!?」

 

 

少女を抱き寄せる。鼻先を、地面を融かしながら迫る熱線が掠めた。そのまま即座に後ろへ飛び退いて、空へうち上がる熱線を見送る。

 

 

「ッづ……間に合ったな……!」「ぅ、あづっ……!?」

 

 

だが、問題はここから──────

蛇がまた毒霧を吐き出せば、完全に怯んでいるこの少女では対処出来ない。嵐の王剣で吹き飛ばせるが、加護を受けない彼女の近くで振るってしまえば間違いなく死ぬ。

 

 

「蛇を─────!!」

「任せな!!」

 

 

叫ぼうとした瞬間、それを遮って鋼の刃が空を切り裂いた。投げられたシミターが、蛇の頭へ見事に突き刺さる。流石は冒険者、手数の多さと判断力は侮れない。

 

 

「おい!やれるか!」

 

「っ、うん!任せて!!」

 

 

少女を腕から放せば、彼女はすぐさま杖を構えた。

狙いは───────

 

 

「クソ───!」「っ!?」

 

「Meeeeh──────!!」

 

 

早い。

いや、当然だ。狙いは外していたのだから。

 

羊の頭、その口元にマナが収束している。

猶予を与えすぎた。不味い、このままでは避けられ──

 

 

「させんよ!」

 

「「!?」」

 

 

マナの青光が瞬く─────よりも早く。

その射線に、騎士が割り込んだ。

 

駄目だ、幾ら重装であろうとあれだけ収束したマナの矢では跡形もなく消し飛ばされる────

いや、今考えるべきは誰を守るか。

即座に手を振り払って、右腕に盾を喚び出す。刻名の解錠は間に合わない、耐えきれるか──────!

 

 

「────ぬ、ぅうぁッ!!」

 

 

マナの光が、騎士の構えた大剣の腹に突き刺さり────

 

 

 

 

 

 

 

 

──────閃光が、弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!?」「嘘っ!?」

 

 

あ、有り得ない………!!

あんなただの大剣で、マナ収束砲を防いだのか!?

 

いや、今の一瞬見えたのは……結界か!?

だとしたらアレも遺物──────聖剣の類いか!!

 

 

「今だ!!」「───!!」

 

「魔術式構築───!!魔力封印解放!!」

 

 

即座に、騎士と同時に左右へ飛ぶ。

今、この場で突っ立っていれば射線に入る。

 

魔術師の射線に入ること、それは戦場では死を意味する。

 

 

 

 

 

魔術。

 

魔法術学では、生命に宿る魔力を『マナ』と呼称する。そも魔力とは世界中に満ちるエネルギーであり、人間と、そして一部の生物はそれを取り込み、マナとして魔術、魔法として用いるわけだ。ちなみに取り込まれていない世界中に満ちる魔力は『エーテル』と呼ぶが、基本的は魔力呼びだ。

 

魔術とは、そのマナを生活及び有事の戦闘に用いる技術だ。その最も用いられるものが、マナを収束させ発射するもの。俺の腕を吹き飛ばしたのもそれだ。

それは『マナの矢』と呼ばれる、最も簡単な戦闘術だ。

 

とはいえ、マナを体外で収束させる、という時点で難しいと言われる技術だ。マナを体内で回し外傷を治す治癒術の方がよっぽど簡単で感覚的にも分かりやすいらしい。故にこそ、治癒術は戦闘に出る者であれば基本的に誰もが習得する。

 

 

………残念ながら、俺はマナを取り込めない体質だ。

つまり俺は基本中の基本である治癒術すらも一切使えない。恐らく、異世界からの転生が影響しているのだとか。

 

 

 

つまり、体外でマナを操作し、事象を引き起こす。

それが〝魔術〟であり、それを成す者を〝魔術師〟という。

 

 

そしてマナによる攻撃は()()()()()()()()()()()

魔力へ耐性のある武具ならそれを防げるが、まず間違いなく完全に防ぐことは不可能だ。あの騎士の剣は例外だが。

 

故に、魔術師は敵対者にとって大きな脅威であり。

 

 

 

 

 

仲間であれば、形勢を変え得る〝希望〟だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────肌を震わせるほどの膨大なマナが、渦を巻く。

 

マナの色は基本的に青みがかっている。濃くなるほどに色は青を強くしていくが、彼女のマナは異質だった。

 

 

白いマナ。

 

 

純白の雪のようにそれはキラキラと輝きを放ち、杖を構える少女を中心に舞い踊る。

 

熟練の冒険者。

聖剣の騎士。

古戦場の死に損ない。

 

 

誰もが並みいる者たちではない、その中でも。

 

 

 

 

 

彼女が、誰よりも異質な存在だった。

 

 

 

 

 

「〝その身に杭を突き立てん〟!!!」

 

 

 

 

 

羊の魔種、そのマナ収束砲と違わぬほど濃縮されたマナ。

まるで柱のように形を成したそれが、消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

「■──────

 

 

 

 

 

 

 

短い断末魔を残して、羊の頭を純白の杭が呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────え」

 

 

獅子が、その前足だけを再生して少女へと飛びかかった。

羊の魔種は消滅、サーペントは突き刺さったシミターによる再生阻害、そして獅子の炎は既に絶えた。それでも、まるで執念が如く、獅子は動いていた。

 

確実に殺すべき、少女へ。

 

 

 

 

 

 

その牙が、剥き出されて。

 

 

 

 

 

 

 

「〝神槍(グングニル)〟」

 

 

 

 

 

 

この間に割り込んで、名を呼ぶ。

鉄門に突き刺さったままの槍、そして空を握る掌に、黄金の稲妻が迸る。槍は揺れ、そして閃光となって─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獅子の頭を、飛び散る肉片と血潮に変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまでだ」

 

 

この手に握られた槍が、黄金の稲妻を走らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

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