向かう所敵なしだった彼女たちの前に立ち塞がるのは、サイボーグと化した
全身を改造した異能の総支配人たちとまで戦わなければならない百合たちは、むき出しの殺人本能をうならせる
死亡遊戯で飯を食うために――
場所は
テーブルに並べられた多種多様な料理を囲むのは7人の少女たちだ
殺人ゲームのプレイヤーグループである伽羅一派は最後のゲームが迫る中、最後の作戦会議を始める
「サイボーグ、と言っていたのが気になりますね」
ラム肉を切り分けながら、萌黄が最後のゲームの懸念点を挙げた
先日、百合への襲撃を止めた
尸狼は今回の敵チームに配属されているのだ
「私たちの
外国からお取り寄せした高級ナッツを砕きながら呟いたのは、一派の頭領である伽羅だ
鎧とは百合と伽羅が防弾防刃目的で体に埋め込んだ鉄板のことである。
ゲーム内への武器の持ち込みは厳禁だが、防御に関する運営の締め付けは弱い
「筋電義肢を硬い素材で作って鋼鉄パンチとかできるようにしてるんじゃないかな」
エージェントさんができるって言ってた、と百合が付け加えつつ答えた
「えっ、初耳です、私」
高身長の弟子2人に挟まれた小さな萌黄は困惑の声を上げた
そう、実は百合と萌黄のエージェントは同じなのだ
「この前、尸狼のプレイヤーチームを襲撃した時に私が指なくしちゃったでしょ。その時に色々教えてもらってサ」
百合が新しいオモチャを自慢するように指を掲げて返事をした
「ああ〜、そういうことでしたか。どんな感じですか? 握力が上がっているとか…」
合点のいった様子の萌黄が続けて質問をする
「悪くはない…かな。見た目は本物そっくりだし、動きも日常生活なら問題ないよ。機械だけあって力も少しは上がってるかも」
「なら僕たちもやってみよう!」
無邪気な笑みを浮かべた
「でも
百合が気まずそうに返した
「…」
小学生くらいの
プレイヤー兼使用人である
宴もたけなわとなった頃、伽羅の家のチャイムが鳴らされた。
もう1人の使用人
「<デス・ゲーム>への招待にあがりました。皆様、ご準備はお済みですか」
一派の構成員は日頃からコンディションを整えていた。
問題ないと答え、エージェントの先導でマンションの駐車場へ停められた送迎用の車へ向かう
百合たちをゲームへ迎えに現れたエージェントの車は、なんとリムジンだった。
プレイヤーに公平な運営にしては珍しいVIP待遇である
「おお〜…」
少女たちは異口同音に驚嘆の声を上げる
一派の全員が同じ車両に乗り込んだ。
7人全員が両手を伸ばせるだけの広さがあり、映画でも滅多にお目にかかれないほど豪勢な内装が少女たちを出迎える
数分後、驚き終わった少女たちは高そうなソファに腰掛けて一服した。
機密保持のために服用させられる睡眠薬が手渡されるのは、あと何時間か先のことらしい
それまで適当にお喋りしながら伽羅一派は英気を養った
◇
百合たちは高級ホテルのラウンジと
周囲には数十人のエージェントが控えていた
リムジンに同乗していた運転手とは別のエージェントにより、ルール説明が開始された。
マスコットではなく、人間が説明するのは異例なことである
巨大なプロジェクターを背後に高らかな声で説明が始められた
「本日はよろしくお願いいたします!」
最初の説明でゲームは2チームの対戦型であると告げられた。
相手チームには全身を強化義体に換装した9名の運営総支配人がいる、とも。
強化義体というのは、ゲーム中にプレイヤーの前に立ち塞がるエネミー役の運営職員によく施されている超人的な身体能力の正体だろう
「今回のゲーム会場は過疎化によって消滅した海辺の街を丸ごと改造したものです」
エージェントたち含めてラウンジの全員が思い思いに歓声を上げた
「ここだけの話、ゲームの規模に関わらず開催にかかる費用は一定しているのですが、このルールが原因で今回は通常の100倍近い費用がかかっているみたいですよ〜」
百合の専属エージェントがウェルカムドリンクを配りながら言った
この言葉には百合たちも納得だった
一緒に参加したゲームを除いて、約200種類のゲーム情報が伽羅一派にはある。
が、最大のもの――すなわち<キャンドルウッズ>だが――でも今回のゲームの10分の1にも満たないだろう
思わず浮き足立ってしまうのも頷けるというものだ。
硬派で有名なエージェントが拍手をして囃し立てているのを見て、百合はそんなことを思った
「今回のゲーム最大の特徴は建物の1つ1つにゲームが設置されていることです」
異常な特徴に合わせて伝えられたのは、各ゲームをクリアした時に手に入るのが賞金ではなく、アイテムや【マネー】であるという更に異常な特徴だった
これまでのゲームから考えて、獲得したアイテムがなければ他のゲームが攻略できない、という詰み状態にはならないように設計されているだろうか…
「マネーでは様々なアイテムや設備が購入できます」
スライドには食料や水、武器はもちろん建物まで購入できるとある。
ただし、建物は屋内に設置されたゲームをクリアしてからでなければ、その建物の購入および
「ゲーム開始から1日以内に拠点を定める必要があります」
購入した建物のみ、拠点に設定することができる
「勝利条件は何と3種類!」
1.相手チームを壊滅させろ!
これは対戦型のゲームでは恒例のものだ。
これに関しては殺人鬼集団である伽羅一派の右に出る者はいない
2.街の51%を支配しろ!
これは建物内のゲームをクリアすることで
陣取りゲーム形式の対戦型でもあるということだろう
3.敵拠点のフラッグを奪取しろ!
拠点に必ず設置しなければならないフラッグを自陣に持ち帰ることでも勝利となる。
百合たちは初見のルールだった
そして、降参・寝返りは認められないことも同時に伝えられる
「なるほど…。勝利条件に合わせてチーム分けすることになるのかな?」
百合はチームを組むなら遊撃班、探索班、攻撃班の3つになるのだろうか、と思い付く
「
萌黄が懸念した
「各個撃破は僕たちもやるもんね」
紫苑が言い添える
ルールの説明に続きがあったので一派は口を閉じた。
その後に説明された諸則をまとめると以下の通りである
プレイヤーの行動に制限はかからない
タイムリミットなし
各所にエージェントが運営職員として配置されており、【マネー】で従わせられる。
これは運営権の獲得とニアリーイコールである
職員の獲得が可能なゲームもある
報酬となっている職員は専門性の高い技能を修めている。
ヘリ、水上バスの運転などが例としてある
拠点として購入した建物のトラップは操作できるようになる。
お互いに思い思いの要塞と軍勢を組織する想定だろう、とビデオゲーム好きの紫苑は予想する
つまり、今回のゲームは何でもありの壮大な陣取り合戦である
◇
ゲーム開始から数十分後、伽羅一派はショッピングモールを拠点にした。
モール内をうろつく強化義体のキラーを始末するのがクリア条件のなんてことないゲームだった
過去最高のコンディションを誇る伽羅一派に殺しで勝てる者なんていないのだ
今はフードコートに隠れていた最後のキラーを仕留め、拠点化の手続きを済ませたところである
「案外チョロいねっ!」
紫苑が軽口を叩く
「私はヒヤヒヤしましたよ…」
未だ<三十の壁>を越えていない樺子は震える声で言った
「設置されてるゲームは普段より難易度低めかも。メインじゃないからかな?」
伽羅が櫛枝と萌黄を連れて、コーヒーショップから戻ってきたので一服することになった
そのまま始まった作戦会議で、3つの勝利条件を同時に目指すことになった
各個撃破の危険が無視できない作戦だが…?
7月10日(金)より劇場版「死亡遊戯で飯を食う。 44:CLOUDY BEACH」が2週間限定で公開されます!
映画館へ急げ!
更新が遅れて申し訳ありません。
完結までの目処は立っているので、もう少しだけお付き合いいただければ幸いです。