デスゲーム99回クリアRTA   作:黒瓜阿礼

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1()0()回目:キャンドルウッズ(裏:伽羅)

 

 前々から、女の子たちを集めた殺人ゲームがあるという噂は聞いていた。

 暴走族ブームが再来したり、行方不明者が増えたりと治安が悪くなってきているせいで生まれた都市伝説だと、最初は思っていた

 

 しかし、<エージェント>と名乗る黒服に出会い、作り物とは思えないスナッフムービーを見せられ、サンタクロースが実在すると言われた子供のように喜んだ。

 二つ返事でゲームへの招待を承諾した

 

 ゲームなら殺人が咎められることはない。

 自分の好きなように過ごせるのだ。

 ペナルティが皆無であるどころか、萌黄(モエギ)のような可愛いオマケまで付いてくることもあった

 

 弟子だけでなく、友の存在まで得た。

 百合は同好の士であり、今まで負けなしだった自分を負かせるだけのバトルセンスの持ち主なのだ。

 これ以上ない理解者と言えた

 

 3人で同じゲームに参加できた時は――最高だった。

 見ていて全くイラつかない可愛い容姿の持ち主2人と、堅苦しさの代表みたいな教会を舞台に殺戮を(うな)らせ、大暴れしてやった

 

 伽羅(キャラ)は、我が世の春は今だと確信した

 

 

 

 

 10回目のゲームへの招待を受けた後、眠りから目覚めた時に感じたのは服の締め付けだった。

 これさえ無ければ、と常々思う

 

 このゲームは興行で開催されているらしく、参加者は見た目の整った女の子ばかりだ。

 ブスは見ているとイラつくので、その点は良いのだが、着せられる衣装が問題だ

 

 映像に映えるようにするためか、可愛い衣装を着せられるのだ。

 ゆったりとした衣装なら文句ないのだが、今回のバニーガール衣装のように体にピッタリと合った締め付けるタイプの衣装だとハズレであった

 

 衣装の締め付けを緩められないか、あちこち弄っていると、周囲の人々が動いた。

 結構な人数がいるのは見ずとも分かっていたが、何百人もいる光景を実際に見てみると、中々()応えがある

 

 人が動いたのはルールの解説役であるマスコットが喋り始めたのが理由のようだ。

 ゆるキャラみたいな(たぬき)が媚びるような口調でルールを語った

 

 機械音声で発表されたルールの中で伽羅の興味を引いたのは、バニーガール以外のチームがいるということ

 

 自分の好みに合う衣装だったら奪おう、と思った。

 自分が所属する<うさぎ>には生き残る以外に面倒なクリア条件はないようだから、良い服が手に入れば心置きなく殺戮ができるだろう

 

 熟練の気配を醸すプレイヤーが音頭を取っている。

 経験者は集合してマスコットへの攻撃を手伝うように要請していた

 

 狸のマスコット相手なら、<うさぎ>は勝てる、と言っている。

 伽羅は、かちかち山の内容を想起した。

 勝てそうだからアイテムを隠し持っているか探っておきたい、という主張が付け足される

 

 名乗り出るのはやめておいた。

 参加自体は10回目だが、ゲームの攻略には真面目に取り組んでこなかったからだ。

 本音は、仕事を振られるのが面倒だっただけだが

 

 経験者が『保護する』、と言って集め始めていた初心者の集団に潜り込むことにした。

 護衛・監視がつくことが予想されるが、今まで世間様にバレないよう殺人を繰り返してきた伽羅なら、抜け出すくらい朝飯前だろう

 

 <うさぎ>たちが部隊を編成して、<切り株>たちを倒しに行くことにしたという情報が伝わってきた。

 まあ、そうだろうなと思う

 

 今は初心者グループについている経験者の集中力が続いている。

 自分が<切り株>の服を奪いに行けるのは<うさぎ>の部隊が出払った後、経験者が気を抜いたタイミングになるかもしれない

 

 それまでは、下界と違って見ていられる顔をしたバニーガールたちを眺めて過ごすことにした

 

 

 

 

 何時間か経った後、ようやく伽羅は抜け出せた。

 分かっていたことだが、自由に動けなかったことに気分を害されたので、服を奪ったら暴れてやろうかと思う

 

 迷路の壁ばかりで退屈なので、青空を見ながら散歩のつもりで<切り株>を探した

 

 しばらく歩き回っていると、大和撫子(ぜん)とした容姿の<切り株>に遭遇した

 

 <切り株>の衣装はジャンパースカートだった。

 好みの衣装であっただけでなく、その持ち主の背格好が自分と近いことに伽羅は喜んだ

 

 <うさぎ>に虐められたのか、怪我をしていた。

 お淑やかそうな顔をしていたのもあって、頼めば服をくれるかもしれない、と思えた。

 順調すぎて笑いそうだった

 

「ねえ、その服脱いでよ」

 変な意味ではない

 

「……!?」

 手負いの<切り株>は、通り魔だけでなく強姦魔までいるのか、と目の前の人物へ軽蔑の視線を向けた

 

 そういう視線が伽羅の虎の尾であるとも知らずに……

 

 次の瞬間、体を地面に叩きつけられた<切り株>は、自分に何が起こったのか分からないまま絶命した

 

 その一方で、伽羅は未知の感覚を処理しようと固まった

 

 怒りを発露させた時の感覚よりも、先に伽羅へ届いたのは新しい快感だったのだ

 

 今まで自分が好んできた()()()()()とは、一味違う。

 どこかへ突き抜けるような衝撃が伽羅をくすぐった

 

 百合が言っていた()()()とは、これに違いない

 

 例えるなら、高級料理とファストフードの関係だ。

 一口の質を求めたディナーと、ドカドカと食らう量を求めた昼飯。

 それぞれ競い合う場所の違う()()()があったのだ

 

(こういうのも、いいねえ)

 

 "縛りプレイ"というやつをやってみることにした。

 百合が紫苑(シオン)たちとの会話中に言っていたテレビゲーム用語だ

 

 今回のゲームでは、1人のプレイヤーに攻撃できるのは1回だけにする。

 伽羅は通路の奥の方を歩いている<うさぎ>に視線を合わせ、舌なめずりをした

 

(百合がいれば落ち着くまで添い寝してくれるけど、いないんだったらしょうがない!)

 

 

 

 人を一撃で殺害するのは、人を開く時よりも素早く動く必要があるため、伽羅の体力は普段よりも早いペースで消耗されていった

 

 <うさぎ>の本拠地を攻め落とした頃には疲れて、いつの間にか怒りが過ぎ去っていた

 

 まだ日が高いところにあるので、適当な木陰で休みながら暇つぶしに<うさぎ>たちのリーダーだったプレイヤーをバラすことにした

 

(落ち着くなあ)

 

 怒りを誤魔化すためにやっていたことが、今は安息の時間となっていた。

 伽羅は今日のことを百合に教えてやろう、と満足感に酔った

 

 日が落ちたときに、その女は現れた

 

 一瞬、自分の友人である百合が来たのかと見間違えた。

 しかし、すぐに似ているだけの別人だと分かった

 

 バニーガール衣装を着ていたので、もしスタート地点で見かけていたら忘れるはずがないというのが1つ。

 髪色や瞳の色は似ている、というか殆ど同じだが髪型が違うというのが2つ

 

 そして何よりの理由は、そのプレイヤーが傷だらけだったということ。

 右目など防腐処理の綿で塞がっていた。

 百合がそんなヘマをするはずが無いのだ

 

「あなたが、これを――」

 声質は近い。

 もう少し活発にすれば百合の声になるだろう

 

 自分の傍に転がしておいたプレイヤーの開きを一瞥して、少女は犯人が伽羅なのかと尋ねた

 

「うん」

 何故だか照れ臭い気持ちになりながら伽羅は頷いた

 

 その後も何度か会話を交わした。

 会話が終わったのは、少女が伽羅が殺戮を行った理由を聞かされた時の反応にある

 

 眉を顰め、伽羅の思考の順序への疑問を口にしたのだ。

 伽羅が目をギラつかせる動機としては十分である

 

 伽羅に一瞥された少女は身を強張らせた。

 しかし、伽羅に戦闘を仕掛ける気はなかった

 

 いつもより疲れているのもあるし、友人との話のネタになる収穫を得たというのもある。

 それらを上回る1番の理由は――

 

「別に殺さないよ、好きなやつに似てるんだ」

 

 もう本当にそれだけだった

 

「こいつが気になるんなら、どっか行くからさ」

 

 少女は自らの師匠を視界に収め、居ても立っても居られず伽羅に飛びかかっていった。

 恐怖を乗り越えるために、師匠の()()を継いで

 

 伽羅が殺人を面倒に思ったのは初めてだった。

 シャワーを浴びたくなっていたので、無視して迷路の中へ走った

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