どうもじょーちゃんです。
性懲りもなくSSをまた書いてしまいました……w
お目汚しにならない程度に楽しんでいただけると幸いです
またたくさんのお気に入り登録、コメント、評価誠にありがとうございます!とても励みになります!
「ベッドに一番乗り!!」
勢いよく飛び込んできたルビーの体が、ふかふかのマットレスに沈み込む。
「ちょっとルビー……シーツ乱れるからやめてよ」
「いいじゃないの〜。心配かけた罰ってことで」
「はぁ……」
手足をバタバタとさせてベッドを占領するルビーに呆れながら、アタシは短くため息をついた。
せっかく退院のタイミングで、久しぶりにシーツを新しいものに変えたばかりだったのに。
「にしても、久しぶりにエレンの部屋に来たね」
モナが、部屋を見渡しながら言う。
「バイト、忙しかったからさ……」
「それもあるだろうけどさ?」
「エレンが入院してたからね〜」
「そうそう」
ベッドの上に寝転がったまま、ルビーがうんうんと大げさに頷いた。
「あんな大怪我しちゃってさ……。ルビーったら、大心配してたんだよ?」
「『エレンが死んじゃう〜!!』って、大泣きでさ」
「なにそれ、ウケる」
「ねー、ひどくない!? あたしは本当に、エレンが心配で心配で……!」
からかうような凛の言葉に、ルビーがアタシのベッドの上で暴れながら抗議の声を上げる。
だから暴れないでってば。後でシーツのシワを直すの、意外とだるいんだから……。
「あんな大怪我しちゃったし、そもそもあのバイトも危ないんじゃないかって、3人でエレンのバイト辞めさせようかって話してたぐらいなんだよ?」
「ちょっと、大げさすぎない?」
「大げさじゃないよ。友達が心配でしょうがないからね」
そう言って、ルビーが身を起こし、ベッドのヘッドボードに置かれた写真立てを指差した。
「ほら、この写真の幼馴染くんも、きっと天国でハラハラしながら心配してたんじゃない?」
「ハヤトがねぇ………」
写真の中で、ハヤトはあの頃と少しも変わらない、屈託のない笑顔でこちらに笑いかけている。
アイツだったら、アタシがあんな怪我をしたと知ったらどんな反応をしただろう。
『無茶はやめてくれよ!』って泣きそうな顔で怒るだろうか。
『女の子が危ない事しないでくれー』なんて、頭を抱えて心配しそうだ。
「……確かに、そうかもね」
「そうだよー。幼馴染くんもだし、私達のことも、これ以上心配させないでくれよー、エレン〜」
ルビーに肩を揺さぶられながら、アタシの思考はふと、現実の喧騒から切り離されていく。
脳裏にフラッシュバックするのは、あの時の光景。
血の匂い。冷たい空気。
そして、暗闇の中で鮮烈に翻っていた——ボロボロの、赤いマフラー。
『赤い、マフラー……あんた…は……?』
薄れゆく意識の中で、アタシは目の前に立つバッタの様な……異形の影に問いかけた。
『……ライダー……仮面ライダー』
低く、けれどどこか聞き覚えのあるような響きを持った声。
あの時、絶体絶命のアタシを助けてくれた「仮面ライダー」が首に巻いていた赤いマフラー。
アタシは無意識に、いつも履いているスカートのポケットに手を入れた。指先が、古びた布の感触に触れる。
ハヤトの形見である、赤いマフラーの破片。
あの夜、風に靡いていたあのマフラーと、今ポケットの中にあるこのマフラーの破片が、どうしても重なって思える。
妙な既視感。
ただの偶然の一致だと言い聞かせても、心の奥底でざわめく直感がそれを否定しようとする。
「まさか……ね……?」
ぽつりと漏れた呟きに、ルビーが不思議そうに首を傾げた。
「ん? 何かあったの?」
「いーや? なんでもない」
アタシは誤魔化すように、ポケットから手を離した。
「エレン! ゲームしよ、ゲーム!」
「私もこっそり練習してきたから、今日こそ勝つよ!」
「はぁー。はいはい。今行くよ」
コントローラーを掲げてはしゃぐ3人に向き直り、アタシは胸の内で小さくかぶりを振った。
やっぱ、別人だったのかな……。
もし……もしもアイツが生きていたら。
いや、やっぱり考えるのはやめよう。
あの仮面ライダーがハヤトかもしれないなんて、そんな都合のいい奇跡、あるはずないんだから………
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新エリー都の片隅にある繁華街、六分街。
その一角に一軒のレンタルビデオショップがある。
『RandomPlay』。
最新の有名映画から、旧時代のマニアックなB級映画まで、ありとあらゆるジャンルのビデオを所狭しと取り揃えたその店は、足繁く通う常連客も多い六分街の憩いの場だ。
カウンターの中で穏やかな微笑みを浮かべるイケメン店長のアキラと、いつも元気いっぱいに店内を駆け回る女店長のリン。
一見すれば、どこにでもいる仲の良い兄妹が切り盛りする、慎ましくも温かいビデオ屋に過ぎない。
だが、それはあくまで表の顔。
彼らの裏の顔は、新エリー都の暗部 ……「ホロウ」と呼ばれる超常の災害空間を自在に渡り歩き、数々の難依頼をこなしてきた伝説の非合法プロキシ。
『パエトーン』
それがこの二人の真の姿であった。
今日もまた、いつものように穏やかな時間が流れていた。
カランカラン、と小気味良いドアベルの音が店内に響く。
新作コーナーのポップを書いていたリンが、顔を輝かせてバックヤードへの入り口から飛び出した。
「いらっしゃいませ~! って、ライカンさんじゃん! 久しぶり〜!」
「おや、ライカンさんじゃないか。どうかしたのかい?」
アキラも手元のタブレットから視線を上げ、柔らかな声で出迎える。
そこに立っていたのは、パリッと整った執事服に身を包んだ、狼のシリオン。
新エリー都との富裕層……知る人ぞ知るハウスクリーニングサービス『ヴィクトリア家政』の執行責任者、フォン・ライカンであった。
彼は鋭くも理知的な瞳を細め、完璧な角度で一礼した。
「プロキシ様、お久しぶりです。平穏な日常のひとときにお邪魔してしまい、申し訳ありません」
「今日はビデオを借りに来たのかい?」
「それとも〜、ホロウ絡みの危ない方〜?」
アキラはいつものように穏やかに、リンは悪戯っぽく目を細めて茶化すように尋ねる。
ライカンは周囲の客の目を気にするように、ほんのわずかに声を落とした。
「……今回は、ご主人様からの直接の依頼でありまして。少々込み入った話になります。バックヤードの方でもよろしいですか?」
「わかった。裏に行こうか。18号、店番頼めるかい?」
「ンナ!」
カウンターの下から顔を出した高性能ボンプの18号が、力強く短い返事をする。
アキラは手慣れた様子でシステムのオートモードを起動し、リン、そしてライカンと共に、分厚い防音扉の奥――薄暗く、無数のモニターと機材が青白い光を放つバックヤードへと足を踏み入れた。
扉が閉まり、外の喧騒が完全に遮断された空間で、三人は向き合う。
ライカンは姿勢を正し、静かに口を開いた。
「プロキシ様、最近ホロウ内で確認されている、バイクに乗ったバッタのような異形の存在をご存知ですか?」
「バイクに乗ったバッタ……? そんな奇妙な化け物がホロウにいるのかい?」
「化け物、といいますか……最近、インターノットで有名になりつつある人物と言いますか……言葉で説明するよりも、見ていただいた方が早いでしょう。まるで、旧時代の特撮ヒーローがそのまま現実のホロウに現れたような……まずは、こちらの動画を」
「あぁ、見よう」
「私もみるみる〜!」
ライカンが懐から取り出したディスクを、アキラがメインコンソールに挿入する。
ディスクのデータが大型モニターに映像として映し出された。
「今から流すのは、ご主人様より経由し内密に入手した、防衛軍が捉えた映像です」
再生時間にして、一分にも満たない短い動画。
しかし、そこに記録されていたものは、アキラとリンの常識を根底から覆すには十分すぎた。
荒涼としたホロウの風景の中、轟音と共に土煙を上げて『それ』は現れた。
ロケットカウルを備え、両側面に計六本ものマフラーを剥き出しにした、旧時代のアナログなオフロードバイク。
その武骨なマシンに跨っていたのは……。
「ヒーロー………?」
アキラが思わず呟いた。
リンも息を呑んで画面に見入っている。
特撮映画のワンシーンだと嘘をつかれれば、間違いなく信じてしまうだろう。
バッタを模した機械的で無機質なフルフェイス。
深緑のヘルメットには、巨大な赤い複眼が二つ、爛々と輝いている。
額からは触角のように二本のアンテナが伸び、目の下にはまるで涙を流しているかのような黒いライン(隈取り)が刻まれていた。
首元には、ホロウの淀んだ風にたなびく鮮やかな赤いマフラー。
漆黒のレザースーツのような衣服に、胸部と腹部を覆うのは、強靭な筋肉を思わせる深緑のプロテクター。
手足には長い深緑のグローブとブーツを身につけている。
そして何より目を引くのは、腰に巻かれた赤いベルトだ。その中心には、風車のようなタービンが鎮座していた。
彼はバイクから降り立つと、立ちはだかる巨大なエーテリアス――通常の小隊では手も足も出ない高位の変異体『サクリファイス』を前に、全く怯むことなく、ある「ポーズ」をとった。
両手を力強く振り上げ、腰に構える。
その瞬間、ベルトの中心にある風車が、周囲のエーテルを巻き込むように猛烈な勢いで回転を始めた。
『キュィィィィン!』という、どこか懐かしい電子音が鳴り響き、彼の赤い複眼が更に強く発光する。
次の瞬間、常人はおろか、身体能力に優れたシリオンでさえ不可能な跳躍力で、彼はホロウの空深くへと舞い上がった。
そして、空中で身体を反転させ、標的に向かって一直線に急降下していく。
「ライダァァァァキッッッッ!!!!」
通信機越しに拾われたその声は、電子的なエフェクトがかかっていながらも、確かな熱と正義感を帯びていた。
放たれた飛び蹴りは、隕石のごとき速度と威力でサクリファイスの強靭な胸部に深々と突き刺さった。
莫大な運動エネルギーはサクリファイスの巨体を数メートル後方へ吹き飛ばし、瓦礫の山へと縫い付ける。
通常であれば、単なる物理的な飛び蹴り程度で倒せる相手ではない。
ブリンガーの時もかなり手こずった苦い記憶がある。
しかし、様子が違った。
蹴りを叩き込まれたサクリファイスの体内から、制御不能になったエーテルエネルギーが激しく明滅し始める。
……ズドォォォォォンッ!!!
内側から膨張したエネルギーが限界を超え、大音響と共にサクリファイスは爆発飛散した。
周囲に大量のエーテル物質が雨のように降り注ぐ中、赤いマフラーをたなびかせながら、仮面の戦士は悠然と着地を決める。
ここで、映像はプツリと途切れた。
バックヤードには、サーバーの駆動音だけが虚しく響いていた。
アキラとリンは、あまりに非現実的な光景に目を丸くしたまま、完全に固まっている。
「……えっ? 今の、新作映画のプロモーション映像か何かい? 巧みによくできた……」
アキラが乾いた唇を舐め、ようやく絞り出すように言うと、リンも呆然としたまま何度も頷いた。
「特撮のCGにしては……爆発の破片とか、飛び散るエーテルの質感とか、やけに生々しかったけど……まさか、ね……?Fairyがハッキングされてたり?」
『助手2号、私はハッキングなんてされていません。』
Fairyは不服そうに答える。
「信じられないのも無理はありません」
二人の反応を完全に予想していたかのように、ライカンは真剣な表情を一切崩さずに言った。
「しかし、これは紛れもない現実。つい先日、ホロウ内部……かつて讃頌会の施設だった場所で記録された実戦の映像です。一切の加工は施されていません」
部屋に、気まずいほどの重い静寂が漂う。
伝説のプロキシとして数々の修羅場を潜り抜けてきた二人にとっても、規格外すぎる存在だった。
「彼に……名前はあるのかい?」
アキラが真剣なトーンで問う。
「ええ……。先日、私共のメイドであるエレンが、ホロウ内で多数のエーテリアスに囲まれ窮地に陥った際、彼に助けられました。その時、彼は自らを『仮面ライダー』と名乗ったそうです」
「仮面、ライダー……」
「仮面ライダー……そのままじゃん!」
少し空気に呑まれていたリンが、ようやくいつもの調子を取り戻して声を上げた。
「ねー、ところで何で私たちにこの映像を見せたの? ただのビックリ映像鑑賞会じゃないよね?」
「ご名答です。我々のご主人様……市長閣下は、この『仮面ライダー』に少なからず警戒心を抱いております。映像の通り、彼は単機で高位エーテリアスを粉砕する尋常ではない力を持っている。そしてその力は、治安局にも、防衛軍にも属していない。」
「制御不能な不確定要素として、危険視していると?」
「その通りでございます。ですが現状、彼はエーテリアスや讃頌会といった危険分子のみを標的としており、ホロウ災害が起きた際には、自らの危険を顧みず民間人の救助活動を行っているという報告が多数上がっています」
ライカンは言葉を続けた。
「我々の目的は、彼と接触し、新エリー都にとって害となる存在か、それとも利益となる存在かを見極めること。あわよくば、その比類なき力をヴィクトリア家政に引き込みたい……という思惑がございます」
「民間人の救助……それって、ホントのヒーローみたいだね! お兄ちゃん!」
リンの目が、純粋な好奇心と興奮でキラキラと輝き始める。
アキラもまた、口元に微かな笑みを浮かべた。
「あぁ、そうだね。それで、ライカンさん。僕たちには何を期待しているんだい?」
「我々と共に、ホロウのネットワークと情報網を駆使し、仮面ライダーの捜索に助力していただきたいのです。彼の行動パターンは予測不能ですが、貴方々の情報収集能力があれば、必ずや接触の糸口が掴めるはずです」
「わかったよ、ライカンさん。僕たちも、その『ヒーロー』には個人的に興味が湧いた。手伝おう」
「さんせー! 絶対見つけて、サインもらってビリーに自慢しちゃお!」
「プロキシ様、誠にありがとうございます。心強い限りです。追って、詳細なデータリンクを送信いたします」
ライカンは深く、優雅な一礼をすると、静かにバックヤードを後にした。
再び二人きりになった室内。
アキラの視線は、既に真っ暗になったモニターに向けられたままだった。
脳裏に焼き付いて離れない、あの圧倒的な存在感。
理不尽な暴力に立ち向かい、正義の名のもとに悪を打ち砕く、どこか昔懐かしく、泥臭くもヒロイックな彼の姿。
「いやはや……」
アキラは自嘲気味に息を吐き、後頭部を掻いた。
「僕もまだまだ子供だなぁ……いい歳して、あんな特撮の主人公みたいな彼に、本気で憧れてしまうなんて……」
その時、店舗の方から元気な声が飛んできた。
「お兄ちゃん! お客さん来たよー! ちょっときてー!」
「あぁ。今行くよ」
立ち上がり、バックヤードの扉に手をかけたアキラは、ふと思い立ち、クスリと笑った。
赤いマフラー……僕も今度、買ってみようかな?
そう思うとアキラはバックヤードから出て接客に当たった
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薄暗く、ひんやりとした無機質な空間。
鼻腔を突くのは、重苦しい薬品の臭いと、焦げた肉の匂い。
視界の端で赤と緑のランプが明滅し、鼓膜を劈くような規則正しい機械の駆動音が鳴り響いていた。
「やめろ!!!! やめてくれ!!!!!!」
喉が裂けんばかりの絶叫が、冷たい鋼鉄の壁に虚しく反響する。
手足は分厚い拘束具で手術台に完全に固定され、身じろぎ一つできない。
オレの意に反して、鋭利なメスと無慈悲な機械のアームが身体の奥深くへと沈み込んでいく。
人間としての生きた肉体が無造作に削り取られ、代わりに冷酷な金属の部品と謎の生体組織が埋め込まれていく――その冒涜的な感覚だけが、異常なほど鮮明に脳髄を焼いていた。
自分が、どんどん「人ならざるモノ」へと作り変えられていく。
執刀を指揮している黒ずくめの男――悪魔の使者とでも呼ぶべき存在が、手術台の傍らで狂気を孕んだ冷笑を浮かべて見下ろしていた。
「本郷ハヤト……喜ぶがいい。貴様は我々『讃頌会』……いや、偉大なる『SHOCKER』の輝かしい改造人間素体に選ばれたのだ」
「ふざけるな……! オレは、改造人間なんかなりたくない……!!!」
歯を食いしばり、血を吐くような思いで睨みつける。
だが、男の冷酷な眼差しは微塵も揺るがない。
「何を寝言を言っている。貴様のその身体を見ろ。お前はもうすでに、我々と同じ……人をやめた『改造人間』なのだよ」
「うそだ……うそだッ!!!」
「嘘なものか。ならば己の身体で証明してやろう。今から貴様のその身体に、600万ボルトの電流を流す。脆弱な常人ならば一瞬で黒焦げになる電圧だが、完璧な改造を施された今の貴様なら耐えられる。……やれ!」
男の無情な命令が下った瞬間、傍らに立つ不気味な覆面の戦闘員が、躊躇なく巨大なレバーを押し込んだ。
「ぐっ、がぁあああああッッッ!!!」
全身の細胞の隅々にまで、絶望的な稲妻が駆け巡る。
視界が純白に染まり、すべての神経が焼き切れるような破滅的な激痛が、オレの意識を深く、暗い底へと引きずり込んだ。
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……
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「ッッッ!!!!!!」
跳ね起きると同時に、乱れた荒い呼吸が静寂の部屋に響いた。
「はぁっ………はぁっ…………」
暗闇の中、網膜が徐々に現実の光景を捉え始める。
ブラインドの隙間から入り込む毒々しいネオンの光。遠くで聞こえる電車の走行音と、新エリー都特有の喧騒の残り香。
ここはルミナスクエアの外れにある、しがないボロアパートの一室だ。
「チクショウ……胸糞悪い夢だ……………」
じっとりと汗をかいた手のひらで顔を覆い、オレは重苦しい息を吐き出した。
汗で肌に張り付いたシャツの不快感が、ここが紛れもない現実であることを告げている。
オレは軋む万年床から這い出し、フラフラと立ち上がった。
結果から言えば、オレの身体は、脳髄と生殖機能を除いたほぼすべての器官が、SHOCKERの狂気の手によって改造されてしまった。
骨格は未知の特殊合金に置き換わり、筋肉は強靭な人工繊維へ、心臓は膨大なエネルギーを生み出す超小型の動力炉へと変貌を遂げている。
あの絶望の手術室から、一体どうやって脱出したのか。
そして、あのオーパーツめいた…マシン――『サイクロン号』を、どうやって奪取したのか。
肝心な部分の記憶は、あの600万ボルトの激痛のせいか、すっぽりと抜け落ちている。
ただ無我夢中で、死に物狂いで施設から逃げ出したことだけが、断片的な映像として残っているだけだった。
ひび割れた唇を舐め、乾ききった喉を潤すため、オレはシンクに向かい、戸棚からガラスのコップを取り出した。
蛇口をひねり、冷たい水を注ぐ。
そして、コップを持ち上げようと指に力を込めた、その瞬間だった。
――パリンッ!
「くそっ……」
手の中で、ガラスのコップがいとも容易く粉々に砕け散った。
鋭い破片と冷たい水滴が、床に音を立てて散乱する。
オレの手のひらには破片が突き刺さっているはずなのに、痛みすらまともに感じない。
ただ、強靭すぎる硬質な人工筋肉がガラスを容赦なく弾き砕いたという、不気味な違和感だけが残っていた。
「また、力加減をミスっちまった………」
砕けたガラスを見つめたまま、自嘲気味な笑みが漏れる。
パッと見は、どこにでもいる一般人と何ら変わらない青年の姿。
だが、この皮膚のすぐ下では、生体部品と冷たい機械が絶えず蠢き、常人とはかけ離れた化け物じみた力を生み出しているのだ。
「もう……オレの身体は、人間じゃないのにな………」
水でびしょ濡れになったシャツを乱暴に脱ぎ捨て、部屋の隅の洗濯籠へと無造作に放り投げる。
それにしても、まったく悪趣味で緻密な仕事だ。機械で構成された身体に、わざわざ精巧な人工汗腺まで組み込んで汗を流させるなんて。
日常に溶け込ませ、いざという時に人を欺くための偽装工作。
さすがは完璧を狂信するSHOCKER様々だ。
奴らはそうやって、平気で人の尊厳を踏みにじり、人間の自由を根こそぎ奪い取っていく。
新エリー都の闇に密かに根を張り、ホロウの脅威に怯える人々をさらに深い絶望の淵へと突き落とそうとしている。
だがな……。
オレは、洗面台のくもった鏡に映る己の姿を睨みつけた。
目は、人間だった頃のままだ。
燃え滾るような怒りの炎が、そこには確かに宿っていた。
身体は奪われた。
人間としての肉体は一度死んだ。
だが、オレの魂は、オレの心だけは、決して奴らに売り渡してなどいない!
オレがオレ自身の意志を保っている限り、貴様らの好きには絶対にさせない。
「SHOCKERの敵……人類の味方…………」
その言葉が、暗い部屋の空気に溶け出すように、自然と口をついて出た。
誰に名乗るわけでもない。
だが、己が何者として生きるべきか、魂が激しく叫んでいる。
『仮面ライダー』
人々の自由と未来を奪う悪魔を討ち滅ぼす者。
そして何より――あの平和な日常を取り戻すために。
オレの……大切な幼馴染を守り抜くために。
「絶対に……奴らを、この手で潰す…………っ!!!!」
静かな、しかしマグマのように熱く確固たる誓いが、冷たい夜明けの風に乗って闇の彼方へと消えていった。
エレン 幼馴染がもしかしてライダー?と思ってしまい少し自己嫌悪
アキラ ライダーに脳が焼かれたぞ
ハヤト SHOCKERの敵……人類の味方………!
讃頌会についてはSHOCKERの世を忍ぶ仮の姿………という設定でやっていこうかなーと思っております。