「なっ!? 正体がバレたぁっ!?」
休日を挟んだ後の月曜日の放課後。基本的にこの日は、毎週死神達が集まって状況報告をすることとなっていた。苗木が死神仲間である創、楓、終一に先週あった出来事を打ち明けると、創が素っ頓狂な声を上げた。
「はい……一応、希望ヶ峰学園浄霊計画のことは伏せておきましたけど」
苗木はそう言うが、創達は頭を抱えていた。
「まぁ、相手が相手だから、話さないわけにはいかないだろうけど……」
「探偵は、諦めることを知らないからね……」
楓と終一が苦笑しながらそう言った。創もこめかみを揉みながら、頷く。
「見方を変えれば、悪いことばかりではない……のか? 事情を知っている人が増えれば、行動範囲も広がるだろうし。でも苗木、あまり迂闊な行動は取るなよ。今回は相手が霧切だったからまだ良かったものの、口が軽い相手とかだと厄介なことになりかねないぞ」
「そ、そうですね。すみません……」
苗木は気まずそうに頬を掻く。創は続けて尋ねた。
「それで、この一週間はどうだった? 慣れたか?」
「霊があまりにも多くて驚きました。創先輩、去年これを一人でこなしたんですよね。すごい……」
「まぁ、枝垂や七海もいたから完全に一人……ではなかったけど、相当な激務だったな」
当時のことを思い出したのか、創は遠い目をした。
「っと、俺のことは別に良いんだ。それでこの一週間、皆には各自で動いてもらったわけだが……何か収穫はあったか?」
創と楓は主に学園内の浄霊作業を、苗木は本科生が利用する施設での浄霊作業を担当していた。そして終一は、学園内で発生している霊道の封鎖作業と並行して施設や周辺環境の調査も進めていた。
「俺が見たところ、去年と同じような感じなんだが……他の皆はどうだ? 何か気になるところはあったか?」
「うーーん、私は悪霊化しやすい環境だって印象かな。本科の人を見ただけで悪霊化しちゃったのもいたし」
「僕の方も同じ感じですね。あれだけ浄霊しているのに、全く霊が減る気配がないのはちょっと気になるけど」
楓も苗木も創が去年から抱いていた所感と同じような感じだった。だが、最後の終一は違ったようだ。
「僕は……霊道に違和感を持ちました」
「違和感?」
「先週いくつか霊道を塞ぎましたが、塞いだ霊道の半分くらいが一方通行のものでした。出ることはできるけど、入ることができないものばかりだったんです」
「一方通行の霊道……か。去年は塞ぐことで手いっぱいで気付かなかったけど、確かに妙だな……」
「うん、少なくとも自然発生した霊道ではありえないよ。何かの死神道具でもない限り」
楓の「死神道具」という言葉で、創、終一の視線が苗木に向かう。苗木は首を横に振る。
「霊道を作り出せる死神道具は色々あるけど、該当しそうなのはないかな。少なくとも正規のものにはね」
「つまり、一般には出回っていない非正規のものなら可能ってこと?」
楓がそう呟くと、苗木は難しい顔を浮かべて頷いた。それを聞いた創も終一も苗木と同様に難しい顔を浮かべた。
「ということは、この現象は誰かが人為的に引き起こしている可能性があるのか」
「ええ、その可能性は高そうですね。あれじゃ、霊が迷い込んでここに留まるのも無理ないですよ。今のところ予備学科校舎のある西地区しか調査できていないから、まだ確定はできないですが」
思いがけない収穫のあった状況報告だった。人手が増えるだけで、これだけできることが変わるのか。創は、改めてそう実感した。その時、不意に「あ!」と楓が声を上げた。
「そういえば、私達、まだ交流会をしてませんよね」
「「「交流会?」」」
楓以外の三人が首を傾げた。
「ほら、自己紹介とかは前にやったけど、まだ完全に皆の為人は分かってないなって」
「まぁ……確かに、今のところ浄霊の話以外はあまりしてないな」
創が腕を組みながら頷く。
「だから、今度の週末に皆でどこかへ遊びに行きませんか?」
「遊びに?」
苗木が聞き返す。
「うん! これから一年間は私達四人で活動することになるんだし、仕事抜きで皆と過ごす機会があっても良いと思うんだ! 息抜きも兼ねて!」
楓が笑顔でそう提案する。
「まぁ……悪くないかもね」
終一も頷き、更に提案する。
「場所はファミレスとかどう? 準備も特に必要ないし、費用もそこまで高くはならないよ」
「うーむ……」
終一の提案を聞いて、創は思案した。今年に入って、色々と進展があったのは苗木達後輩のおかげだ。そんな彼らとは今後のことを考えて良い関係を築いていきたい。それに、終一の言う通り、ファミレスであれば大きな出費にはならないだろう。
「ファミレスか……アリだな。苗木や楓もファミレスで良いか?」
「僕もファミレスで良いと思うよ。駅前のとこ?」
苗木の言葉に終一は頷いた。
「うん。あそこなら分かりやすいしね」
「私も賛成! あっ、そうだ! ファミレスの後にさ、カラオケにも行こうよ! 歌うのって結構ストレス発散になるし、もっと仲良くなれると思うんだ!」
「……そんなこと言って、本当は楓さんが歌いたいだけなんじゃないの?」
終一が少し揶揄うように言うと、楓がブンブン首を振った。
「違うよ! まぁ、歌いたいと言うのも無くはないけど……」
「まぁまぁ、良いじゃない。カラオケ、僕は賛成だよ」
「俺も特に文句はないな」
「良かったー! じゃあ、ファミレスの後はカラオケって流れにしよう!」
「そうだな。じゃあ、今週の土曜、十一時頃に駅前で集合って形にしようかと思うけど、皆それで大丈夫そうか?」
「土曜十一時、駅前集合ですね。分かりました!」
苗木が元気よく返事をする。
「僕もそれで問題ないです」
終一も頷いた。
「私も大丈夫です!」
楓も嬉しそうに答える。
「よし。それじゃあ決まりだな」
創は三人を見回すと、改めて注意する。
「ただ、一応言っておくけど、遊びに行くのが楽しみすぎるからって、浄霊を疎かにするなよ。今週もまだ始まったばかりだからな」
「分かってますって!」
楓が笑いながら答える。
「むしろ、土曜日の交流会を励みに今週も頑張りますから!」
「なら良いけど」
創は苦笑する。
「じゃあ、今週もよろしく頼むぞ」
「「「はいっ!」」」
創の言葉に三人が元気に返事をする。こうして、四人の初めての交流会は土曜日に行われることが決まった。