希望に潜む死神達   作:マロニエ19号

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少し短めです。


後輩

「はい、今月の報告書と決算書ですね。確認いたします」

 

ここは命数管理局。人間の寿命の管理が主な役割だが、様々な公務も担当している。創が参加している希望ヶ峰学園浄霊計画における諸々の手続きもここで行っている。

 

この計画の窓口を担当している記死神(命数管理局に勤務している死神のこと)である柊は、創から受け取った報告書と決算書にじっくりと目を通し、やがて頷く。

 

「確認いたしました。今月もお疲れ様です。決算書に関してもこの後稟議に掛けさせて頂きます」

「はい、ありがとうございます」

「いえ、この計画が順調に進んでいるのは、死神創様のご活躍のおかげです。こちらこそありがとうございます」

 

柊に言われ、胸が熱くなる創。少し照れくさそうに頬を掻く。

 

無事に報告書と決算書を提出した創は、死神道具講習会へ歩みを進めた。死神道具講習会とは、若手死神を対象に死神道具の紹介や使用方法について勉強する会である。試供品も色々と無料で貰えるので、出来る限り節約したい創にとって参加しない手はない。その道中で、知っている顔に出会った。

 

「あれ、苗木だ」

「あ、創先輩。お久しぶりです」

 

死神中学時代の後輩、苗木誠だ。苗木は、創を見ると軽く会釈をした。苗木の服装が自分の知る中学の制服ではないことに一瞬訝しむが、すぐに彼の事情を思い出す。

 

「久しぶりだな。そういえば、苗木はあの世だけじゃなくて現世の中学にも通ってたんだっけ?」

「はい。うちの方針で。大変だけど楽しくやってます。先輩はどうしてますか?」

「ああ、俺は……」

 

創は、自分が今、希望ヶ峰学園浄霊計画に参加していることを話した。苗木は死神一高に通わず、希望ヶ峰学園に通っていることを知って驚いていた。

 

「希望ヶ峰学園かぁ……ボクには一生縁のない所なんだろうなぁ」

「俺もこの計画がなかったら、入ることはなかったと思うよ」

「でもあの計画って、参加する死神が全然いなかった気がしますけど、よく参加しましたね。金はかかるし、かなりの激務だって聞きましたけど」

「まぁ一応、補助金は出るし、浄霊に関しても必要経費であれば支払われるからどうにかやってるよ。でもまさか、俺以外、参加する死神が一人もいないとは思わなかった……」

 

創がげんなりした様子で呟く。苗木は創を元気づけるため、努めて明るく言った。

 

「でも、この講習会で何か役立つものが貰えるかもしれないですし、切り替えていきましょう!」

 

苗木はどこか生き生きとしていた。創は呆れた視線を向ける。

 

「相変わらず、死神道具マニアだな、苗木は」

「いやぁ、一番の趣味なもので」

 

苗木は自他ともに認める、死神道具マニアだ。色々な道具を知っており、古いものから最新のものまで詳しい。創が苗木と親しくなったのは、彼の死神道具に関する知識が半端じゃないと噂になっていたのがキッカケだ。

 

その時、創はふと、本科校舎に入れなくなったことの原因について、この後輩に聞いてみることにした。死神道具を使ったとは思うのだが、どんなものなのか見当がつかなかったからだ。一応、死神が用意したのであれば、害はないのだろうが、かと言って知らないまま放置しておくのもモヤモヤする。

 

話を聞いた苗木はうーんと唸った。候補がありすぎるからだ。

 

「霊が入り込めなくなる道具は色々ありますけど、やっぱり実物を見ないことには……壁や窓に痕跡がないってことは結界ガムテープとかではないようだけど…… 結界溶解スプレーとかは試しました?」

「あんな高いの使える訳ないだろ。確か、あれ一缶二万円だぞ」

「まぁ、そうですよね。その現象が結界じゃない可能性もありますし……」

「苗木でも分からないんじゃお手上げだな。特に害はないみたいだし、現状は放置するしかないか……」

「ですね。でも、目は離さない方が良いと思いますよ。こういった講習会で貰った試供品だと、何らかの問題があって製造中止になったものも結構あるので」

「うげ……そういえばそうだったな」

 

確かに可能性は無きにしも非ずだ。協力者である七海がいるとはいえ、彼女は死神じゃない。一応、何かあったらすぐ自分に教えるよう言っているが、こちらでも警戒はしておいた方が良いかもしれない。放っておいても大丈夫と思っていたが、考えることは多い。

 

「はぁ、本科に誰か死神がいたらな。こっちの仕事も大分楽になるのに。なぁ、苗木。お前、本科からスカウトとかないか? 『超高校級の死神道具マニア』……とかで」

「あるわけないでしょ。そんなニッチな称号でスカウトなんて来ませんよ」

「やっぱダメか~」

 

そんな会話をしているうちに、講習会の会場が見えてきた。既に他の死神達も集まっている。席に着くと、ちょうど講師であるベテラン死神が会場に入って来た。

 

「はい、定時になりましたので、死神道具講習会を始めたいと思います。本日、ご紹介する死神道具は……」

 

――――――――――

「それで、講習会ではどんなものが貰えたの?」

「色々だな」

「役に立ちそう?」

「それは分からない」

「そっか」

 

翌日の放課後、創は七海とゲームをしながら、昨日のことを話していた。昨日の講習会で貰った死神道具は三つ。式神折り紙、未練忘れな草、三途の川防水スプレーだ。正直、微妙なものばかりで、浄霊に役立つかと言われると悩ましいものばかりだった。




苗木君は、死神として登場予定になります。苗字があることから分かる通り、彼は人間の血が通う死神です。


ちなみに、創が貰った死神道具の解説は以下の通りです。

式神折り紙:折り曲げると、式神として折った人間のサポートをしてくれる。例として、ツルを折るとツルのように自在に移動しサポートしたり、兜を折ると兜の役割を持って折った人間の頭を守ってくれる。二十四種類の機能を持つが、サイズが小さいため出来ることが限られる上に、一回限りの微妙な性能。

未練忘れな草:あの世に群生する勿忘草の花の香りには強い忘却効果があり、それを霊の未練を消す用途に品種改良したもの。講習会では小さなポッドに植えられた状態で渡された。しかし、花自体の生育が難しく、すぐに枯れてしまうため商品化としては適さなかった。後に、香りのみを抽出・化成したお香やスプレーが発売された。

三途の川防水スプレー:三途の川に入る際に使用する防水スプレー。通常の防水スプレーとしても利用可能。
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