――Side 緑谷
レクリエーションが終わり、漸くお昼休みだ……。
「千手君……いないね」
「アイツ何処に行ったんだか」
「解説席でクラス分け隔てなく解説とかしてたのは見てたけど……」
僕たちに割り当てられた観客席のエリアに千手君の姿はない。
「とりあえずランチラッシュ先生の出張食堂に行くとするか」
瀬呂君の提案により、僕たちは全員で向かうことに。
「なんだあれ!?」「千手観音が見えるんだけど」「いくつもの工程を、並行してるのに一つ一つがランチラッシュ先生と同等の速さで進んでる!?」
千手君がランチラッシュ先生と並んで出張食堂でご飯作ってる……。
なんでランチラッシュ先生のところに???
「はえー、料理美味いのか東方不敗の孫」「なんか食材がいいな……何処から仕入れたんだ……?」
生徒・教員・警備用スペースと来客用スペースで区切られてるのだが、どちらもわりとすごい勢いで注文と受け取りがはけていく。
「買えるのは定食が4種類とざる蕎麦、クレープに……フィッシュアンドチップス……どういう組み合わせ??」
「定食はわかるが、後ろ3……いや、2つが不可解だな……?」
尾白君の言葉に飯田君も首を傾げてる。
2つと言い直したのは、クラス公認の蕎麦好きが居るからだ。
「って、爆豪既に列に並んでるし……」
「アイツの辞書に足並み揃えるとかねーの??」
かっちゃんは必要ないと思ったらそういうの全然しないし……。
レジが複雑あり、注文を有志の経営科の人たちが受け持ってたから、話しかけることはなかったけど……。
「千手君の多才さには驚かされるな……」
空いてる席に別れて座った僕たち。
僕のテーブルは麗日さん、飯田君、常闇君が一緒に座った。
「でも前世の趣味の範囲って本人言ってたし……」
「雑誌とかで星持ちって持て囃されてる料理人たちがプライド殴り捨てて教えを乞おうとしてる趣味とは一体……?」
チラっと常闇君が目線を向けた先にそういう人たちがいる。
「このフィッシュアンドチップス……煌めく銀色の身をしているこの魚はなんなんだ!?」「かけられてる金粉みたいなのが魚とポテト両方と相互に引き立てあっている……!」
「……やはり彼の自己評価が低いような気がしてならない」
「確かにな」
「かっちゃんと足して2で割ればちょうど良さそう」「んだとコラ!」
背後の声にびっくりした。
えっ、そんなところにいたの!?
っていうか……
「エンデヴァーにブレイブバーン……に轟さんと同席ってどういうこと!?」
なんか轟さんお通夜みたいに目が死んでるし!
「愚息が席取りしていなかったこの小僧の同席を認めただけだ」
「座る場所なさそうだったから誘った。困ってるのを助けるのはヒーローの仕事だしな」
ブレイブバーン。
日本のNo.2エンデヴァーの長男で、エンデヴァーの後継者と(エンデヴァー以外の)多くの人に認識される、青い炎を纏うヒーローだ。
「クソ親父と一緒とか最悪……頼久と……ダメならせめてクソ親父がいない席で食べたかった……蕎麦美味しい……」
「父より蕎麦とは親不孝者め!」
「親父のこと雑に扱う妹より、親父のこと大切にするオレをみろよ親父ィ!」
「「……」」
かっちゃんと轟さんが顔を覆ってる。
「なんだあの混沌とした席は……」
「み、見なかったことにしたほうが……」
「見て見ぬふりをするのも、時には優しさとなる……」
「だね……」
「ふざけんなデクてめぇのお人好しここで発揮しねぇでどこで発揮すんだよタコが!」
僕は……(よそ様の家庭事情に踏み込むことについては)無力だ……。
「……なんか女子いなくね?」
食事を終えて、それぞれ自由に行動の雰囲気になったから各自好きに過ごして、今観客席に戻ってきたんだけど……瀬呂君の言うとおり、女子が誰もいない。
『さぁ!午後の最終種目の発表……の前に! アメリカのチアリーダーたちによる演目だぜ!』
『何故わざわざアメリカから……? コレガワカラナイ』
なんか会話してると会場中央のステージに入場口から女性が何人も入ってきてすごいダンスとかをし始めた。
『おっと!? なんか乱入者!?』
なんか途中から乱入するのはA組女性陣。
……えっ、どういうこと??
『たぶん誰かに偽報くらってそれをそのまま信じて来てしまったパターンですね。犯人誰か知らないけど後で締めるとして』
『般若みたいな顔こえーよ!?』
「あとで覚えておいてください上鳴さん峰田さん!!」
『えー、一悶着ありましたが、最終種目 個人トーナメント戦です。ルールは簡単。相手を倒して頂点を目指しましょう。用意されたステージから落ちて場外、参ったと言って降参、意識不明などの戦闘不能のいずれかで、殺しとかなしでたのんだぞ!』
プレゼントマイクの言葉と共に、組み合わせが表示される。
緑谷VS心操、葉隠VS発目、芦戸VS常闇、轟VS瀬呂、
骨抜VS渡我、塩崎VS八百万、鉄哲VS切島、爆豪VS麗日、
……って、僕第1試合!?
「い、急がなきゃ!」
僕は慌ててフィールドに向かうのだった。
――Side 頼久
うーん、撮れ高というには微妙な試合が多いな……。
「んで、今のところ第1回戦の7回目まできたけどどうよ?」
プレゼントマイクの言葉にオレは少し考えてから言葉を出す。
「相性互角があまり無いのですぐ決着がそこそこ多かったなという感じですかね。その意味では第七試合は互角の激戦だったので、個人的には見応えありました。ある意味技量が近い者同士の格闘技に近いモノがあったので、そのあたりの評価補正が自分のなかにあるのかもしれませんが」
「確かに第3、第4試合は瞬間で終わったしな……」
「かといって、第2試合は発目選手の発明品発表会になってて、葉隠選手の活躍が皆無。手札を隠すという意味では優位でしたがね……」
「辛辣ぅ……渡我選手や八百万選手が勝ち残ったことについては?」
「相手の得意が押しつけられる前に自分の土俵で相手を仕留めたのでまあ、試合開始前にいった通りかと」
「そんじゃ、1回戦最終試合! 爆豪選手VS麗日選手!」
入場する二人。
どちらも真剣そのものだ。
『――試合、開始!』
ミッドナイト先生の宣言と共に肉薄する爆豪。
「喰らえやオラァ!」
初手右ストレートを横回避で躱す麗日さん。
そのまま爆豪は追いかけるように攻撃。
爆発とフェイントを混ぜているあたり、本能的に使い所がわかってるのだろう。
「おいおい一方的だな。もう少し手心とか」
「マイク先生や、この試合一手ミスで負けるのは爆豪だ。だから反撃できないように連続攻撃して、しかも爆発やフェイント混ぜた『手加減なし』にならざるを得ない」
オレは訂正を求める。
「……そういえば麗日選手の個性は触れたもの無重量状態にするから……」
「触れられたら無重量になって場外に押し出されかねない。だから相手を速攻で仕留めにいってるわけ。絵面は敵とピンチなヒロインだから麗日側応援したくなるのは理解する」
『うるせぇわかってんなら言うなひと言余計だ!』
向こうからクレーム来てしまった。
しかし――爆発で砕けたフィールドの破片とかを浮かせて落下させる反撃も的確に捌き、そのまま場外に押し込んだあたり、爆豪の才能はかなり高い。
「1回戦最終試合。爆豪選手の勝ちだ!」
「2回戦はこの組み合わせ。……どうなるかわかるのがそこそこ多いが、逆転できなくもないだろうから、頑張ってほしいところさんだ」
緑谷VS葉隠、常闇VS轟、
渡我VS八百万、切島VS爆豪、
オレの言葉に電光掲示板が表示してくれた。
「舞台修理兼ねて10分後に再開するぞ!」
とりあえずブーイングとか無くて何よりだな、ヨシ!