――Side 頼久
こちら母胎相観の融合状態を
「……にわかには信じ難いが……」
「そう思うのはわかります。まあそれなりの付き合いあるんで、彼の人間ビックリ箱みたいな力の中にそういうモノがあっても私は驚きませんよ」
公安の降谷零(ここコナン世界じゃないんだけど……)の言葉に部下でオレ案件担当の大石が慣れた様子で頷く。
今オレは宝物庫から憂いの篩とその他色々を使い、AR映像的に行方不明者発見から母胎相観撃退までの一部始終を流し終えたところである。
他の警官たちやプッシーキャッツの面々も呆気にとられている。
ちなみに各自に即席で作った資料が生き渡っているが、ソレに目を通し終えてそうなのは公安の2人くらいだろうか。
「それで……オレでも有効打が1つしか見つけられなかった母胎相観について、何か質問は?」
「今回使用が認められた武具について、銃刀法違反として取り締まりをして接収されるか、民間人の善意の提供としてこちらが受け取るか、どちらがいい?」
真っ先に立場で圧かけるんだ……へぇ……?
「生まれたての赤子に核兵器のスイッチ握らせるような真似、自分には到底許容できないのでどちらも難しいですね。……それともヒーロー活動に必要な道具さえ、有用と思ったら何でもかんでも接収なさるおつもりか?」
「君のような子供が持っていいものじゃないことは確かだ」
「論点ずらしですがまあいいでしょう。なら――」
オレは宝物庫から一振りの刀を取り出し、鞘から引き抜いて、床に軽く刺した。
「コレを五体満足に引き抜けたら従いましょう。オレの宝物庫にあるモノの中では比較的大人しい部類なので」
「あっ……降谷さん、それは……」
大石が止めるのを無視し、彼はオレの前にある刀を手に取り――鞘から伸びた機械的触手が彼の手に突き刺さり、侵食する。
「!?」
「とある世界の妖刀紅桜。持ち主を喰らい、自分の使い手として殺人マシーンに仕立てる刀。宝物庫にいる武具からしたらかなり大人しい武器です。オレはソイツを叩きのめして屈服させたので序列分かってる犬みたいに大人しいですけどね」
降谷が左手で紅桜をつかんだ右手を引き剥がそうとしてるが剥がせないようだ。
その間にも肘まで侵食が進む。
「はい、時間切れ」
オレは別の刀で右腕を切り落とし、引き剥がす。
「――――――!」
悲鳴が聞こえるが、治療は後回し。
降谷の腕を取りこんだ紅桜の柄をつかんで鞘に納め、宝物庫に送り返す。
大石さんがデジャヴで遠い目をし、長野県警の立ち会い警官たちがSAN値ごっそり削れたような青い顔してるし、プッシーキャッツも似たようなものだ。
「全く……」
オレは降谷の肩の傷に手を当てて、肉体を再構築してみせる。
その様子で一部の人はSAN値削れたようだがプッシーキャッツは耐えたのでヨシ!
「コレでいい? 次は周囲にオレとか親父以外即死する猛毒放つ呪物の類出すかもしれませんがよしなに」
「……公安の後ろ盾を使いながら唾を吐くとは……」
「いや、コレは個性とは別のオレの力の一端ですんで、押し付けられたヒーロー仮免とは別の話。まあ、多少お偉いさんへの話通してもらうのとか大石さんにお願いしてるんで当たらずとも遠からずです。まあその倍以上こき使われてるんでお互い様か最近微妙ですがね」
「……」
「で、母胎相観撃退に関して他に質問は?」
「……ない。資料を見れば書いてあるからな」
治ったのに肩口をまだ押さえてる降谷がそう呻くように告げる。
他の人もそれに同調?するように激しく頷く。
「とりあえず、敵名【母胎相観】の危険性を本部で精査の上、関係各所に通達することにしましょう」
とりあえずそのあと、母胎相観撃退時に解放された魂の一部に行方不明者のものが含まれていたようで、無事に目を覚ましたという報告を聞き、オレとプッシーキャッツは飛雷神で拠点に戻る。
その後夕食とかも食べたのだが……やはりそれとなく距離を置かれている。
まあ、人には過ぎた力を持っているなら、畏れ敬うか、排除しようとするかだろうから妥当だろう。
「……」
施設の外で夜空を見あげていると
「どうしたのあなた」
寧もといサクラコがやってきた。
二人っきりだからか密着してくる。
「オレが化け物だとして、まだ好きでいるつもりか?」
「もちろん。画面越しに想いに触れ続けて、こうして転生してようやく会えた。たとえ貴方がどんな人……そもそも人でなかったとしても、私の想いと、貴方の想いは本物だから……」
「重いな」「酷くないかな?? 本気で答えたのに!」
プクーと頬膨らませるサクラコ。
頬つついたらポコポコ殴られた。
痛くも痒くもないし、彼女も怒ってる意思表示でやっただけだから当然なのだが。
「……ありがとう」
「ヒミコちゃんとかにも同じように話ふっても、同じことになるだけだから、気をつけるように」
「アッハイ」
なんか御礼を言ったら釘刺しされた。わけがわからないよ!
「私たち、貴方のジェノメトリクスを見てるから、その程度じゃ気持ち変わらないよ」
「えっ、オレの精神世界どうなってるん???」
オレの言葉に彼女は暫く考えたあと
「……コズミックホラーとギャグベースで人間否定と人間讃歌?」
と答える。
「わけがわからない」「ジェノメトリクスはそういうものだし……」
自分のこと、自分が思ってるよりわからないものなんですね(ジョハリの窓感)。
「……プッシーキャッツの人らに怖がられてしまった」
「一部始終聞いた限り、自分たちが思ってた数億倍暴走したら手に負えない存在だと分かればそうなると思うよ。それでも貴方に話しかけたりはしてたよ?壁作ってるのはあなた」
……そう、かな?
「うん。あと……私改めて宣言するね」
そういうと私の前に立つサクラコ。
「あなたの心の奥、もっと踏み込んでいくから。拒絶されるかもしれない。でも……私もあなたが踏み込んでくれたから、今ここにいる。だから……私はあきらめないよ」
「……どう反応すればいい?」「もーっ!そういうところだよ!?」
ポコポコと再び殴られる。
だが……君のおかげで、少し心が楽になった気がする。
いや、ヒミコたちもいたら、同じようなことをしたのだろう。
だから『君たち』のほうが妥当かもしれない……。