――Side 緑谷
グラントリノというオールマイトのお師匠様のところで職業体験を受けていた僕だけど……。
「……あれ、コレほとんど鍛錬では?」
「漸く気がつくとは判断が遅い!」
4日目の訓練中になんとも言えない真実が発覚した。
「というか俊典から『鍛え方甘いかもしれない』と泣きつかれたからこうしてわざわざヒーローとして一時的に復帰してお前さんにスカウト出したのだから、期間中は可能な限り鍛えるのが優先だろう」
「ソレはそうですけど……」
ヒーローとしての職業体験なんだけどなぁ……。
「――あと、お前さん、儂の攻撃避けるとき瞬間的に『浮かんで』おったり、『一瞬速さでが変化』したりしている。自覚はあるか?」
「……! やっぱりそうですか……!」
「自覚がなければ自覚できるまで叩きのめさにゃならんかったから手間が減って助かったわい」
なにそれこわい。
「……速さの変化はともかく浮かぶ力についてだが……俊典の師匠で、儂の盟友……俊典に『OFA』を継承した志村菜奈の個性……『浮遊』と同じと見ておる」
……それって……
「歴代継承者の力の一端がOFAに含まれてる……と?」
「俊典が無個性なのと、志村の個性以外儂は詳細を知らんから可能性がある……という程度じゃがな」
千手君の言葉が頭をよぎる。
「僕の中に、オールマイトと同じオーラと、他に7つのオーラが見えると、千手君……友達に言われたんです」
「なぬ!?ソレを先に言わぬか!」
「オールマイトが既に言ってるのかとばかり……」
「俊典め、今度しごき直さねばいかんようじゃな……!」
オールマイト、なんか修行増やしちゃったみたいです。すみません……。
「OFAの中に俊典含めた8つのオーラがある……友人とやらはそう言ったのだな?」
「え、ええ」
腕を組んで考え込むグラントリノ。
「……俊典は無個性のはずじゃが超パワーという形でお主に力を与えておる。ストックし、引き継ぐ個性の影響かもしれんな……」
「無個性が故に起きたこと……かもしれませんが……」
それなら、このストックして引き継ぐ個性に、僕がストックする以上に引き出しているとしたら……
「……この個性を、不用意に使わないほうがいい気がしてきました」
「なぬ?」
僕は今頭によぎった事を端的に説明する。
ストックする個性なら、貯める以上に使って消耗することもあるのでは、と。
「……可能性は……ないとは言えんが……俊典の時はこんなことなかったから尚更なぁ……」
行き詰まりを感じていると――スマホが鳴る。
「小僧のか。出てよいぞ」
グラントリノからも許可出たので通話をオンにする。
『もしもし、緑谷?』
「あれ、千手君?」
噂をすればなんとやら……というやつだろうか。
「どうしたの急に」
『呼ばれた気がしたから電話した』
「嘘でしょ……?」
勘が良いとかを通り越してオカルトやホラーの領域に踏み込んでる気がしてならない。
『オレの勘では個性について話してると睨んでるんだが』
「千手君は安楽椅子探偵してても食べて行けると思うよ。世にも奇妙な怖い話をリアルタイムで経験してる身としては」
盗聴されてると言われたほうが安心できるまである。
『サーチの個性持ってるラグドールが側にいるから、そっちに飛んで視てもらうか、そっちでオレが緑谷の精神世界に入って発掘チャレンジするか、あるいは両方を提案するがどうする?』
「……」
チラっとグラントリノを見る。
「ん? どした?」
「えっと、クラスメイトでさっきオーラについて言ってた人が今サーチの個性持ってるヒーローと同行してるらしいんです。そこでこっちに来て個性についてサーチで調べたりしようかと提案されまして……」
「……えっ、今の会話何処かで聞かれてた?」
宇宙猫みたいな顔してそう聞き返された。
「いいえ、スゴク奇跡的に勘がよいときがあるみたいで……」
「修司を思い出すな……」
「修司?」
「今じゃ『東方不敗』の方が通りいいかもしれんが「あ、彼その人の孫です」アイツの変な所でバカみたいに勘がいいの、孫に遺伝してるんか!?」
うわぁ……と困惑強い顔してから
「……まあ粗茶しか出さんしむさ苦しい男所帯のところでよければと返してやれ」
と了承を得た。
「できるならお願いしたいかな。どれくらいで――」
「わるい、もうついた」
声をする方を向くと、目を丸くしてるプッシーキャッツの一人、ラグドールと千手君が立っていた。
「「早っ!?」」
「あちきはプッシーキャッツのラグドール!」
「ミリオンハンズこと千手縛鎖頼久です。よしなに」
二人は順に名乗ってくれた。
「これはどうも、グラントリノだ」
「ヒーロー名デク、緑谷です!」
僕たちも名乗って一礼。
挨拶は大事。
「さて、あちきが見るのはこの子だね?」
「よろしくお願いします。その間そちらのオールマイトのお師匠様にはちと別の場所でお話があるんで……」
「儂に?かまわんが……」
何かあったのかな?
グラントリノと千手君が家を出たあと、ラグドールがノートにすごい速さで何かを書き記していく。
「ソレってもしかして……」
「あちきが見た情報のまとめ!一応見た内容はすぐ忘れることにしてるから、そこんとこよろしくね」
「アッハイ」
「……よし、できた。はいどうぞ」
そういうとノートを僕に差し出してきた。
『ワン・フォー・オール
ストックし、継承する個性。
継承してきた人物が個性持ちならその個性と経験を、無個性ならそこで培った経験を超パワーや身体能力強化、継承された個性の成長という形で次に引き継がせる個性。ただし継承者が無個性でなければすべてを引き出すのは難しく、歴代継承者たちの個性も継承のうちに成長しており、本来の形から変質してる可能性に留意されたし。波長が合う継承者の個性が顕現しやすく、完全な顕現により、他の継承の個性も呼応するように顕現していくものと思われる。何らかのきっかけで精神世界に歴代継承者の残響ともいえる人格の影法師が顕現するようだ。
※ラグドールサーチ範囲の判明個性
2代目 個性:変速
5代目 個性:黒鞭
7代目 個性:浮遊』
「……なるほど……?」
無個性がいなくなりつつあるこの世界で、次にこの個性を引き継ぐ人は……
「この個性が受け継がれるかは、まだ分からないけど……僕はオールマイトのようなヒーローになるために、この個性と向き合って大切にしていかないと」
「とりあえず頑張れー?」
スゴク腑抜けた顔のラグドールがそう告げる。
「こっちも話終わった」
千手君が帰ってきた。
何話してたんだろう。
「とりあえず精神世界については……」
途中から祝詞みたいな言葉を話すと、僕と彼が一瞬光る。
「コレでよし。まあ歴代継承者たちの自我起こせたらまた言うから」
「え?あ、うん」
今からなにかやるんじゃないんだ……。
「ということでほな」「また機会あったらー」
二人が音もなく消える。
「嵐みたいな2人じゃな」
「……ですね」
さて、グラントリノがどんな話をしたのか聞いたり、情報共有しておかないと……鍛錬が理不尽にきつくなるのは勘弁してほしいし……!