――side 頼久
昼休みが終わり、午後はヒーロー基礎学。
白眼も360%かつ広範囲サーチモードの視野の広さを要求しなければ素で問題ないくらいの生活ができると改めて思う今日この頃。
『わ―――た―――し―――が―――』
廊下越しにこの声量はなかなかうるさい。
「――普通にドアから来たぁ――!!!」
ドアを開けて入ってきたのは、日本のトップヒーロー、オールマイト。
一人だけ画風違うレベルで存在感濃い彼にA組面々は驚き、あるいは歓喜する。
しかし……白眼的には心臓部あたりに残り火みたいなのが見えるだけで、めっちゃ空元気してるようにしか見えない。
そんなオレの感想など知る由もなく、オールマイトは歓声を手で制したあと、説明を始める。
様々な状況に対処できるようにするのが目的で、そのための訓練を行っていくのがこの授業の内容であることをカンペ無しで説明するオールマイト。
「初回は戦闘訓練だ!」
その言葉に爆豪や切島をはじめとした武闘派や個性使いたい者が喜びの声をあげる。
オールマイトはその声を再び手で制しつつ、反対の手で黒板の横の壁を示し、目線が移動したのを見て、制していた手に持ったリモコンのスイッチを押す。
それとともに色の違う部分から番号の書かれたケースが収納された棚が姿を見せる。
「入学前に送られた個性届と君たちの要望を元に作られたコスチューム! 出席番号順だから間違えないように! これに着替えてグラウンドβに向かってくれ! では一足先に待っているぞ!」
そう行って教室を飛び出すオールマイト。
即座にあの身体から空気が抜けるように枯れ木のような身体になって、ぽてぽてと走っていくオールマイト。
……オールマイトのヒーロー生命の延命はできるだろうが、ソレをするには……
あまり連絡したくない相手の顔が浮かび、躊躇する。
「どうしたんだ? 早く行こうぜ!」
「あ、ああ」
切島の言葉にハッとしたオレは自分のケースを手にし更衣室へ向かった。
更衣室で着替えてたら峰田とか上鳴が『デカい……』とか言っていたが、何処を見て言っていたのだろうか……。
はたけカカシ先生にあこがれて、ソレそっくりのコスチュームを作ってもらったが……
「目の色以外割とまんまになったな……」
着替えた後グラウンドに到着し、ビルのガラスの反射で改めて自分を見てそうこぼした。
髪色とかも加味するとだいたいカカシ先生である。
「千手兄弟と同じ系統の服だ……」「もしかしなくても、意識してる?」
飯田君が零した言葉を横に、緑谷君が聞いてきた。
「そうだな。否定はしない」
「ぼ……俺も兄さんを意識してるからな……なんとなく気持ちはわかる」
ほー、飯田には兄さんがいるんだな。
とか言ってたら他の面々も集まってーー
「セルフ顔面破壊!」「いきなりどうした!?」
自分の顔面に石破天驚拳を打ち込んで顔面破壊する。
そのあと気配を頼りにヒミコに身振り手振りで説明。
喉も余波で潰れたから、喋れねぇ……。
「…………」「……あっ、葉隠ちゃんもしかして、そのコスチュームって……靴と手袋だけだったりします?」
「そうだけど……なにか問題あった?」
「「「「!!??」」」」
その場に走る衝撃(主に男子)。
「……頼久の目はお母さんの個性を個性じゃなくて一部として引き継いだのか、個性の縛鎖と別枠で持ってるらしくて……。その能力が……透明とか光学迷彩とかを無視したり、集中とか発動してるのが分かるくらい目の周りの血管が隆起すると障害物や視野角度とかも無視とかできるんだけど……たぶん葉隠ちゃんの身体が見えたから全身見てしまう前に反射的に自分の目を潰すために顔面破壊を強行したんだと思う……」
「えぇっ!?」
「マジかよお前。見えるならそのままガン見してやればよかったのに」「峰田サイテー」
「女の子に恥をかかせないためとはいえ、自分の顔破壊をためらわないのはすげえな……」「というかコレリカバリーガールのところに担ぎ込むレベルの重症では?」
瀬呂と尾白が感心と心配を向けてくるのはわかるが、表情わからんなぁ(顔面破壊してるので当然である)
「とりあえず葉隠ちゃんのその恰好どうにかしないと、頼久君が顔面陥没したまま授業受けることになりますね……」
それは困るので……宝物庫を漁って着用者と同調する礼装(日向ヒナタの服バージョン)を取り出す。
気配を頼りに葉隠れさんに差し出す。
「……えっと、これは?」
「多分コレを着ろってことだと思う」「あ、着てる人の個性と同調できるやつですわね。たぶんそれを着れば同化するはずですわ。私この服なら着てても創造を服越しでもできますし」
焦凍と百の言葉にうなずく。
「頼久君が顔つぶれたままなのはダメだし……そっちの方で着替えてくる」
そう言って去っていく気配。
「……もう治してもいいですよ?」
そう言われても、思ったよりダメージでかくて回復に時間掛かりそうなんだよな……。
しゃーないと割り切って宝物庫からエリクサーモドキ出して顔にかける。
泡立つ音とともに組織が再生し、身体がもとに戻る。
「……あー、痛かった」
「痛いで済ませたらダメだと思うぞ」「寧ろ直ぐ直ったソレ危ないものじゃないか気になるんだけど……?」
視界が戻り、言葉も出せるのに一安心してると、オールマイトがやってきた
「全員……はまだかな? というか、千手少年はなんで上半身血と緑色の液体にまみれてるの?」
「血まみれなのは葉隠さんの裸見えそうになったのを頼久君がセルフ顔面破壊したから。葉隠さん居ないのは葉隠さんに着用者の個性と同調する礼装を渡したからそっちの物陰で着替え中。緑色の液体まみれなのは部位欠損も直せる頼久君だけが取り出せる神代の神秘で作られたエリクサーで再生したからですかね」
「…………ちょっと情報飲み込む時間ちょうだい?」
ヒミコの説明に頭痛そうな顔でそう告げるオールマイト。
「遅くなりました!」
その間に葉隠が戻ってきた。
うん。ちゃんと服着てるな。
「おっと、揃ったようだね。……うん、皆自分の拘りとかを感じられていいね!」
そう頷いてから、授業の説明を始めた。(オレの特異については後回しらしい)
今回は室内戦闘で、2人あるいは3人一組でくじ引きで敵役かヒーロー役をやる形らしい。
状況としては指定のビルを拠点とする敵が核兵器(もちろんハリボテ)を持っており、ヒーロー側は15分以内に核兵器か敵全員を確保(専用のテープを腕または胴体や頭に巻き付け)する、敵側はヒーロー側勝利条件を切り抜けるか、逆にヒーロー側を行動不能(こちらも専用テープ)にしたら勝利となる。
ヒーローはビル付近からスタート、敵はビルの中で先んじて5分の核兵器配置や罠設置等ができる。
一応それぞれチーム用にインカムが渡されるので、必要なら使うようにとのこと。
……核兵器というところが実にアメリカンだな。
たしかオールマイトは一時期アメリカに居たとかいうし、経験談なのかもしれない……。
「とりあえずロボットによるランダムな組み合わせと訓練の順番を決めてもらってるから……敵側爆豪少年と飯田少年、ヒーロー側緑谷少年と麗日少女が第1試合だ! 4人は屋上に根津校長のアドバルーンがつけられてるビルに向かってくれたまえ。残りの面々は私とともに観覧用と書かれたバルーンのあるビルの地下で試合の様子を見学だ」
『くたばれやデク!』
「うーん、口が悪い」「このままヒーローになれてもビルボードチャートに載る前に敵っぽいヒーローランキングに速攻で入りそう」「というか、核兵器がある前提で動いてるの飯田さんしかいないような……」
最初の試合に思い思いの感想を零す面々。
爆豪は緑谷に因縁あるのか、叩きのめさないと気がすまない、という気迫と共に割と手加減なさそうな感じで攻撃してる。
『この……!』
こちらに響いてくるほどの大爆発とカメラが煙に包まれたり、吹き飛ばされたりで情報が途絶える。
「! 千手少年!」
「――4人とも軽傷、行動に問題ありません」
白眼で得られた情報を告げる。
ほぼ同時に煙に包まれただけのカメラ(たぶんドローン)が回復して4人が確認できた。
「爆豪少年! 次同様のことをしたら強制敗北とするからね!」
その声に苦虫噛み潰したような顔をするが、直ぐに戦闘再開する爆豪。
そして――ヒーローサイドの麗日が核兵器(ハリボテ)に飛びついたことで――
「試合終了! ヒーローチームの勝ちだ!」
オールマイトからの言葉に爆豪は歯噛みし、飯田は無念と膝から崩れ落ち、緑谷は力が抜けたのか気絶した。
講評は割と手厳しいモノとなり、主に爆豪がやりすぎ!という結論で纏まる。
逆にオールマイトが宥める側になったくらいなのでお察しくれればと思う。
そして、残り3つの試合(1試合だけ3対2だった)と講評が行われ、最後にオレと葉隠が敵側、百と焦凍がヒーロー側の最終試合となった。
ビルに向かう間、人生で何度か遭遇してる気配がこちらに近づいて来ている。
敵意を感じないパターンなので、初手オールマイト呼ぶとこの辺更地になる上厚意(敵だけど)の忠告とかが聞けなくて結果後々尾を引くからオレの選択肢が実質待ち受ける一択なのよね……。
まあ忠告してくれた後、それはそれとして敵としてヒーローの卵で軽く遊びましょうとか言って半殺しに来るんだけどな!(白目)
「葉隠さんや」
「どうしたの?」
「もしかしたら厄介事に巻き込んだかもしれない」
「……えっ、どういうこと?」
「とりあえず、試合中オレの目の届く範囲……できればオレの手が届く範囲にいてほしい」
「ふぁっ!?」
割と月間命の危機なので、ワガママ聞いてほしいものだ。
……後であの連絡したくない人に連絡しないといけないのが、胃痛で仕方ない…………。
頼久豆知識その2
とある本作オリジナル敵に因縁持つエンデヴァーやオリジナル公安キャラにより、頼久君は胃痛を抱えてたりする。
詳細は追々判明するでしょう。